空駆けるミシラ飛行隊 荒野のコトブキ飛行隊   作:紅の1233

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主人公の名前(サクラ→アオイ)
理由はアプリ版のキャラにガッツリ名前かぶってたことに気付いた
後、一式陸攻の操縦士の名前もややこしいから変更


スズネ運送協会 前編

「それじゃあ私は後ろに乗るからアオイは前に乗ってね」

アニラは赤トンボの後部座席へ向かって行く

「アオイのその格好、飛ぶ気満々だったみたいだねぇ」

ローズが言う通り今のアオイの格好は緑色のフライトスーツを着ている、ってかこれしか着る物がなかった。

病院からここまで上下緑色のつなぎ姿で来たことを思い出したが、道中周りの人から稀有な目で観られていなかった。

それだけ飛行機乗りとこの町は密接な関係を築いている事なのだろう。

アニラはオルカの手を借りて後部座席に乗り込む、オルカが操縦席に乗り込みと人差し指を上に向けくるくる回す。それを合図に赤トンボに付けたイナーシャをローズが回す。

数回の爆発音と共に赤トンボのエンジンが動き出す。

「おい姉貴、本当にアオイを飛ばすのか?」

「えぇそうよ。」

心配するオルカをよそにアニラはゴーグルを装着する。

「一度空に揚がってしまえば何とかなるものよ。大丈夫、いざとなったら私が操縦するから。それに...」

「それに、なんだ?」

「私には解るのよ、アオイは翔べるって事を!」

オルカは思った

出た、姉貴の根拠のない絶対的な自信。だけど、そう言っていつもいい方向へ進むから侮れない。おそらく今回は...いや考えるのは止めた

オルカは席を降りてアオイへ向く。

隊長の言う事を信じて今があるんだ。今回も上手くいく、絶対にな

オルカはアオイの肩にポンッと手を置いて

「がんばれよ!」

そう言ってハンガー奥へ歩いていく

アオイが赤トンボの方へ向くとアニラが手招きしている。

アオイは数回両頬を手で叩いて

「...っよし!」

ステップに足をかけ赤トンボに乗り込んだ。

乗った第一印象は、とても簡素だった。操縦桿は本当に只の棒だ。練習機だからこれは仕方ないだろう。

それと赤トンボのメーターは思ったよりも見やすい、水平計がないぐらいで一通り必要なものは揃ってる。有り難いことにメーターの下に何の数値かそれぞれ説明してある、しかも漢字でだ。

一気に飛べる自信が湧いてきた。

そこへ

「おぉ~いアオイ」

ローズ声がする方向へ向くと、ローズが何か手に持って降っている。

「忘れ物~」

そういって持っていた物を投げた。

アオイは投げられた物を見た、ゴーグルだった。受け取って確認すると、ゴムバンドの所にアオイの名前が入っていた。

どうしてこれが、よく見るとハンガー内のテーブルの上に私と一緒に移出された、サバイバルキットが入った背嚢が置かれていた。

中身を詳しく見ていないことを祈りながらアオイは赤トンボをハンガーから出した。

 

滑走路手前でアオイは機体チェックをする。

操縦桿を右左右左、ラダーペダルも同様に行って翼の可動を確認する。

「こちらスズネ運送協会のミシラ飛行隊隊長アニラ、滑走路使用の許可を貰いたい」

『こちら北シズマツ管制塔、離陸を許可する』

「了解アオイ、発進。」

アニラは管制塔から発進の許可を得る。

「OK, Runway 01 Cleared for takeoff」

「えっなんて?」

「ただの独り言...」

元の世界にいた時のやり取りをついやってしまった。

気を取り直してスロットルを全開にして赤トンボを滑走させる。ある程度、速度が出たところで後輪を浮かす。

試しに操縦桿を引いたら、機体が綺麗に浮いた。

速度メーターは百少し超えた所を指していた。

さすが複葉機だ。

「それじゃあ町をぐるっと一周して」

「了解」

機体を傾け町の中心部へ向ける。

水資源に優れているため、町の各所に地下水を貯めた水タンクがある。

町の中心部にある十字路には噴水広場になっている。上空を通過して西向きへ向かう。

西側は住宅街が拡がる。アオイが入院していた病院も見える。住宅のベランダでは洗濯物が干されている。

住宅街から少し離れた公園では子供達が此方に手を降っていた。

アニラは手を振り返しいた。

しばらく飛んで町から離れ、荒野に出ると

「それじゃあ千クーリルまで上昇して」

「了解」

スロットを全開にして上昇する。

この世界全体が見えてきた。

町から離れると周りは荒野が拡がっている。なにもない荒れ地が地平線のその先まで、どこまでもどこまでも続く。枯れた海だ。

町は島だ。

その島を繋ぐのが飛行船と飛行機だ。

陸路で繋ごうにも今の世界、イジツにある技術力では、鉄道や車で行き来できるようにするには途方もない時間がかかる。

エンジンとプロペラ越しに見える空は雲一つなく、どこまでもどこまでも果てしなく続く青空。

その色はアオイがいた“世界”の空より綺麗だった。

 

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宙返り、捻りこみ、失速、立て直し等、ある程度の機動飛行を行って赤トンボは帰路についていた。

「やっぱり筋が良いね、記憶喪失していても飛ばし方は体がおぼえてるのかしら?」

まあ記憶喪失でもバイクの免許を取る人だっているし、十年も戦闘機に乗ってない人がいきなりVTOL機を手足のごとく操る人だっている。

一応記憶喪失って事になってはいるが、このぐらいの飛行機を操縦するなんて、私にとってはお茶の子さいさいだ。

着陸しようと滑走路側へ向かうと

「待って定期便が先に入るから待機して」

アニラに注意され私は滑走路へのアプローチをやめ上空を旋回する。

滑走路反対側から三つの影が見える。

葉巻型の機体が特徴的な二色迷彩の一式陸上攻撃機と、翼端がスパッと切り落としたような形をした翼を持つ零式艦上戦闘機三二型が二機、一式陸攻を中心に編隊飛行をして滑走路へ進入してくる。

零戦三二型は通常と違い全体を真っ黒く塗装されかなり目立っている。

アオイも三機の後に続く。

エンジン出力を下げ機首を揚げぎみにする。

車輪のゴムと滑走路が擦れる音が一瞬して、赤トンボは着陸した。

「合格ー」

どうやら合格したようだ。

「でもすぐ仕事って訳じゃないよ、ボスの了解を得ないといけないからね」

「ボス?」

「私達ミシラ飛行隊が所属している所がスズネ運送協会、そこの会長がボス。ほら、この赤トンボもあの一式陸攻も零戦もあの飛行船も全部同じマークが付いてるでしょ?」

確かに同じマークが付いている。

デザインは日本国籍のマークに似ているが真ん中にカタカタの『ス』が入っている。

「あれもこれも全部ボスの持ち物!」

「すごいのねえ」

感心しながら赤トンボをハンガーへ向かう。

 

「手を離さないでね!」

「わかってるわ」

アオイはアニラを手で支えながら赤トンボから降りる。

「飛んでたのアオイだったんだー」

「だー」

エリとリエが走ってきた。

「あっエリ、リエ、輸送護衛お疲れさま」

『おつかれさまー♪』

二人はアニラに敬礼してその場を後にした。

「あの黒い零戦はあの二人の...」

「そうだよ」

アオイの問いに、アニラが黒い零戦三二型指差しながら答える。

「じゃああの一式陸攻は...」

「あれもスズネ運送協会の物」

一式陸攻の胴体横、スズネ運送協会マークがある所が開いた。

そこから八人、搭乗員が降りてきた。

先頭の頭には鉢巻きを付けた女子。

若い、多分高校生にもならない位の年齢だ。

他の七人は行進してその場を後にしたが、その鉢巻きを付けた女子はアニラの元へやって来た。

「ヒルファ、お疲れさま」

鉢巻きを付けた女子はアニラに敬礼した。彼女はヒルファという名のようだ。

「...」

「あとこっちは新しくミシラ飛行隊に入る隊員、アオイよ」

ヒルファはアオイのことをジッーと見て、去っていった。

「ヒルファは口下手でね、あんまり喋らないタイプなの。でも操縦は上手いから機長なんだ。」

口下手ねぇ...

「ちょっと一式陸攻を見てきてもいい?」

「うんいいよ」

アオイを一式陸攻へ向かった。

 

濃緑色と茶色の迷彩を施した一式陸攻。この機体も美しい。

前後が細くなった外観は正しく葉巻型だ。

だが所々見ていくと私と知っている一式陸攻とは違う点が出てくる。

尾翼は若干下向きに付いているし、後部銃座の形状が違うし、各所銃座にある銃はどう見ても九二式7.7ミリ機関銃じゃない。

「これは...」

「そのぉ、一式陸攻が気になるの?」

「わぁっ!」

後ろにローズが立っていた。今まで足音も気配も何も感じなかった。

「びっくりしたわ!」

「ごめんねごめんねぇ、なんかぁ興味津々だったみたいだからぁ、邪魔しちゃ悪いかなぁって思ってぇ」

「まぁいいわ、それよりこの一式陸攻他と違うような気が...」

するとローズは目を輝かせ始め

「あぁわかる?そうなんだぁ!この一式陸攻はそんじゃそこらの一式陸攻とは訳が違うんだよぉ!なんたって三四型なんだよ!!」

「例えばどう違うの?」

「まずは防弾性!」

ローズは一式陸攻の翼をバァッと叩いた。

「一式陸攻はインテグラルタンク、つまり翼自体をタンクにしていたからちょっとでも被弾すると命取りになっちゃうんだよ!」

確かに一式陸攻は翼自体を燃料タンクにしているから、燃料の搭載量も増えて重量も軽くでき、超長距離飛行を可能にしていた。

だが、被弾時には脆弱だった。防弾性も考えてはいたようだが軽量化のために、性能は不十分な物になっていた。

一発で火が着くことから「ワンショットライター」なんてひどいあだ名が付いた位だ、だが文献によっては一式陸攻の防弾が優れているなんて記述があるからよくわからない。

ただ、他国の爆撃機と比べたら脆弱なのは確かだろう。

「でもこの機体は三四型!インテグラルタンクを廃止にして自動防漏タンクにしたの!更に厚い防弾ゴムを張って強固に!自動消火装置もバッチリ装備!ちょっとやそっとの銃弾じゃあ音をあげない頑丈な一式陸攻なんだよ!他にも聞きたい?」

おっとりした口調だったローズがすごいハキハキ喋っている。

普通の人ならこの辺で話を切り上げるだろう、だがアオイはまだ聞きたかった。

「武装も違うみたいだけど」

「そぉ!本来は後部銃座は20ミリで、それ以外は全部7.7ミリだけどこれは全部取り換えてあるの!それでね...」

 

ローズの長話を聞いてるアオイの姿を遠目に見ていたオルカは驚愕していた。

「ローズの長話を真剣に聞く人間がいるとは...」

「勉強熱心だね」

「だけどいいのか姉貴?確かボスの面接に行かせるんじゃなかったのか?」

「あっそうだった。」

「姉貴悪いけど俺は行けそうにないや、流星の調整が必要だし」

オルカはハンガーから出された流星を親指で指す。

「“くろがね”は俺とローズが帰る時に使うから、姉貴とアオイは“側車”で行ってくれるか?」

「いいよわかった」

 

「それでね、搭載している火星二五乙型も今後改良を加えていくつもりなんだよ!」

「ほぉー」

「例えば排気タービンを付けたり他にも燃料噴射装置を別個で...」

ローズの講義を聞いていたアオイの元へエンジン音が近づいてくる。

空冷V型二気筒特有の音を響かせながらやって来たのは

九七式側車付自動二輪車

三共内燃機がハーレーダビッドソンからライセンス生産して作ったバイク『陸王』、日本版ハーレーダビッドソンだ。

その陸軍向けに改良した物が九七式側車付自動二輪車だ。通常のバイクと違い横に片輪式の車台がついている。サイドカーとも呼ばれ三人乗りが可能だ。

「ローズ悪いけどアオイは用事があるの、話はまた今度にしてくれる?」

「あぁそうだったの、ごめんねぇアオイぃ長話しちゃってぇ」

「いいの今度またゆっくり時間がある時に話そう」

「うん!約束だよ!」

アオイは側車に乗り込む。すかさずアニラはエンジンを吹かし発進する。

横から見ていると九七式側車付自動二輪車の操縦は中々興味深い。

大体のマニュアル操作のバイクは、左手でクラッチを操作、左足でギアチェンジを行う。

だが、この九七式は違う。左手でブレーキ操作をして、左足でクラッチ操作、ギアチェンジはタンク隣のシフトレバーで行うのだ。

これは同年代のバイクではよく見られる操作方法で、瞬間的にではあるが片手運転を余儀なくされる。

アニラは器用に操作している。その横に乗っているアオイにはよく見えた。

 

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シズマツ中央通り

『スズネ運送協会』と書かれた看板を掲げた建物の前にアニラは九七式を停めた。

「それとって」

「はい」

側車に積んであった杖をアニラに渡しアオイは側車から降りた。

扉を開けると中は明治風な造りになっている。二階まである高い吹き抜けで、壁や天井は石材で作られ目の前のカウンターも同様に石製だ。

壁には各種ポスターや料金表が貼ってある。

目の前のカウンターでは、緑茶色の髪をした女性がタイプライターを打っていた。

その横をアニラとアオイは通過しようとする。

「アニラともう一人誰だっけ?」

その女性はタイプライターと資料から全く目を移さずに、二人を認識した。

「新しく飛行隊に入るアオイって言うの」

「あっそ」

素っ気ない反応だった。

「この人は“ミュラ”さん、事務担当でここで受け付けをしてもらってるの」

「はいこちらスズネ運送協会」

受話器を取りもくもくと事務作業をこなしていくミュラ

「ミュラさんは足音だけで人を当てられるんだよ!すごいよね!」

足音だけって、足音以外にも雑音がしているのに聞き分けたことになる。

二人は奥へ進んでいく。しばらく進んでいると重厚そうなドアの前に立つ。

「それじゃあ私はこれで、頑張ってね♪」

そう言い残しアニラはどこかへ行ってしまった。

「...すぅ、はぁ...」

アオイは大きく深呼吸して目の前の扉をノックした。

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