空駆けるミシラ飛行隊 荒野のコトブキ飛行隊   作:紅の1233

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アオイ零戦

ラハマ飛行場

 

無事配達先の町、ラハマに到着すると中の荷物をバケツリレー方式で運び出す。

それを横付けしたトラックへ載せ替える。

「なるほど、一式陸攻乗員の数が定員の七人より多いのはこういう作業の為ね。」

「そうです。こういう時は一人でも多く作業を手伝ってくれる人がいてくれると助かります。」

「これで最後の荷物ね。」

「ふぅ、終わりました」

全ての荷物を運び終えアオイとカグマが一息ついていると、ヒルファがトラックの運転手に運送伝票を渡していた。

「後は岩塩ですね」

「岩塩?」

「そうです。ラハマの特産品、岩塩を積んで帰るんです。」

「なるほど、あら?」

ふとエリとリエの方を見るとそわそわしている。

「どうしたの二人とも?」

「あんまりラハマには」

「長居したくないんだ」

「居心地がなんか悪いとか」

「都合が悪いと言うべきか」

「コトブキ飛行隊が怖いんですよ」

カグマがそう言って指差すのは大きな飛行船だった。

「あの飛行船があるってことはここにコトブキ飛行隊がいるってことです。」

「コトブキ飛行隊って?」

「コトブキ飛行隊はここラハマを拠点に働く飛行隊です。オウニ商会所属でその腕前はイジツでもトップクラスなんです!」

「そうなの。でもなんでエリとリエはそのコトブキ飛行隊を恐れているわけ?」

「さぁそれはわかりかねません」

これはエリとリエにもなにか過去があるのかもしれない、そう思って聞こうとしたが

「あっこれから皆さんお昼ご飯にしませんか?」

「お昼ご飯?」

「まだ岩塩が届くには時間がかかりそうですし、どうです?」

「えぇいいわよ」

「やったぁ!ほらエリさんリエさん、一緒に行きますよ!」

『引っ張らないでーカグマー』

エリとリエはカグマに引っ張られていく、一体どこにそんな力があるのかアオイは非常に気になった。

 

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スズネ運送協会女子寮

 

『ただいまー!』

『お帰りー!』

アオイ、エリ・リエ、ヒルファ一向が寮内に入るとアニラ、オルカ、ローズが出迎えてくれた。

ヒルファ達一行はそのまま寮奥へ行く。その時オルカの横を通った際に何かの臭いを感じた。

「あっ、なんかニンニク臭いぞお前ら!」

そう言ってオルカが鼻を手で覆う。

すっかり忘れていたが今日のお昼によった場所は中華屋だ。

「今日のお昼ご飯は」

「ラーメンと餃子!」

『美味しかったよー』

エリとリエは笑顔で言うとオルカは

「えぇーいいな!俺もラーメン食いたかった」

「オルカも今日仕事だった」

「郵便と新聞の配達の仕事」

『移動先で食べれば良かったじゃん』

するとオルカはちょっと悔しそうな顔をして

「今日は姉貴の弁当が食べれなかったんだよ!」

『じゃあ今から食べに行けば?』

「ラーメンは夜じゃなくて昼に食べるのが一番なんだよ!ちくしょー!」

すると横でアニラがジト目で

「へぇオルカ、私の作ったお弁当に不服だったんだ」

それを見てオルカは慌て始めた

「そんなことないぞ!いやー毎日でも食べたい!いや作って欲しい!姉貴の弁当はイジツ一番だ!」

しかし、アニラはそっぽ向いて

「いいもん、もう作ってあげないから。ふん!」

「そんなーごめんよー姉貴ー」

アニラに抱きつくオルカ、その様子をエリとリエはケタケタと笑っている。

それを見ていたアオイの元へローズが今朝見せた履歴書みたいなのを持ってきた。

「アオイぃ、これなんだけどさぁ」

「あっ、それ今朝私に見せてくれた物よね。これって...」

「あぁこれは、飛行機登録書だよぉ」

「飛行機登録書?」

「そう、誰がどの機体を保有しどのような特徴になるのか記載するの」

「つまり車検証の航空機版ね」

「?シャケンショー?」

「いいわ忘れて、ところでそれを私にどうしろと?」

「あぁ自分のパーソナルマークと機体の塗装を決めて欲しいんだぁ」

「全部同じ...ってわけにはいかないかしら?」

「そうはいかないよぉ、だってぇ皆の機体色は全員バラバラなんだもん」

そう言ってローズが見せてくれた他の皆の飛行機登録書を見ると、どれも個性的だ。

アニラの烈風には“片羽を包帯で巻いた燕”に塗装は一般的な深緑色に斜めの赤帯が二本

 

オルカの流星には“銀色のシャチホコ”に濃い緑色と茶色、ベトナム戦争期の東南アジア迷彩に似た塗装

 

ローズの彗星には“クロスしたレンチと薔薇”に現代飛行機によく見られるグレー塗装

 

エリの零戦三二型には“白の道化師の仮面と王冠”

 

リエの零戦三二型には“白の道化師の仮面とナイフ”

 

そしてそれぞれが夜間戦闘機のように黒色塗装だ。

 

多種多様であった。

「それでどんな色とパーソナルマークにする?」

「ところで機体は何?」

「零戦五二型だよぉ」

「あの銀色無地になっていた?」

「そうそれそれ、話が早くてぇ助かるよぉ。ちなみにぃ今提出すれば明後日には出来るよぉ。」

「そんなに早く出来るの!?」

「塗料についてはアテがあるんだよねぇ」

せっかく塗装するなら忠実に基づくべきか、やっぱりここは自身の考えで行くか。

一度現実でやってみたかったことを。

 

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シズマツ北飛行場

 

あれから二日たった。

アオイは朝早い時間に飛行場端のスズネ運送協会所有の第四格納庫へ来た。

第四格納庫は他の格納庫より何倍も大きい。

中に入ると大きな機体が目に入った。

二枚の垂直尾翼に四発エンジン、全長31メートル、全幅は42メートルと、大きさだけならアメリカのB-29爆撃機に匹敵する大型の四発爆撃機。

深山

六機だけ試作製造された爆撃機だ。後に輸送機に改造された機でもある。

さらにハンガー奥には回収したと思われるT-4の残骸が放置されていた。

あれじゃあ修理不可能ね

なんて思っていると

「あっ、アオイーこっちだよぉ」

深山の影からローズが手を降っている。

ローズの方へ向かうと、これから自分の愛機となる零戦五二型がいた。

アオイはその零戦の翼を軽く撫でる。

「いいできね」

「へへ、塗り立てですからねぇ」

アオイはその出来に満足だった。

「じゃあ早速乗ってみる?」

「いきなり?!」

「大丈夫だよぉ、始動までは私がやるしぃ、脚の操作とか細かい操作は私が随時教えるよぉ。後、私も先導するからぁ」

そう言って目線をハンガーの外へ移す。そこにはローズの愛機、灰色の彗星が止まっていた。

「じゃあ乗るわ!」

「よぉーし!処女飛行だぁ!」

 

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スズネ運送協会女子寮

 

「ふぁあいい朝」

「そうか普段通りの朝だろ」

「毎日無事に朝を迎えられるってのは有り難いことなんだよ」

「そうか?」

寮を出たアニラとオルカに近づく二つの轟音。

「うん?」

「おぉ?」

液冷V型12気筒エンジンのアツタ32型、空冷複列星型14気筒エンジンの栄二一型、それぞれが奏でる爆音。

建物を掠る程の低空飛行で彗星と零戦五二型が通過した。

「あの灰色のはローズの彗星だな後ろの、青いのか黒いのかよくわかんない零戦は見たことがないな」

彗星を追い掛ける零戦は二色の迷彩が施してあった。

黒色に近い蒼色と空色に近い水色の二色、それぞれの色が交わる箇所は波打っている。

尾翼についたパーソナルマークは“一枚の花弁が赤く塗られた桜花”。

その塗装はアオイが元いた世界、元いた部隊に配備されていた“平成のゼロ”と呼ばれていたF-2戦闘機とそっくりそのまま同じ塗装だった。

もちろんその事を知っているのはアオイだけだ。

「あの零戦、アオイが乗ってるわね」

「あっミュラさんお早うございます」

ミュラが出勤のためにやって来た。

「アオイって、見えるのかミュラ?!」

「見えるわこれぐらい、それにしてもいい機動するわね。」

見てみると彗星の機動を綺麗にトレースするかのように零戦が飛行している。

 

「へぇなかなかいい動きするねぇ」

ローズは後ろを希に見ながら機動飛行している。かなりの余裕を持っていた。

「ローズ、こんなに低空飛行して住民は迷惑しないの?」

アオイは心配する。

「大丈夫だよぉ、皆お祭り感覚で見てるからぁ。」

確かに今の二人のランデブー飛行は格闘戦と言うよりは、スピードを競うエアレースだ。

下を歩く住人達を見ていると

「おぉ今日もかっ飛んでな!」

「後ろの零戦もいい機動してる」

「いやぁまだまだだぁ」

が聞こえそうな感じでこちらを見上げている。

目線を前に移すと彗星がいなかった。

いつの間にか零戦の後ろに移動していた。

「それじゃあ模擬空戦ねぇ」

初めて乗る機で空戦なんて無理だ。

だが乗っているのは一番有名な戦闘機、零戦だ。

どんな戦い方をしていたかはアオイは知っている。

アオイはスロットルを前まで倒し操縦桿をゆっくり手前に引く。

零戦は軽い機体を生かし急上昇し、巴戦に入ろうとする。

「おっ零戦の戦い方がわかってるねぇ、けど」

ローズもスロットルを前へ倒し追撃する。

「上昇力ならこっちも負けないんだぁ」

搭載されるアツタ32型は最大1400馬力を叩き出す液冷エンジンだ。上昇力の優れた零戦にも負けない。

機首が頂点を向いたところでアオイは操縦桿を目一杯引いて機首を下に向ける。

そのまま下降状態になる後ろを見ると彗星がさっきと変わらない位置にいる。

アオイは水平に機体を戻して一回右に機体を傾けてフェイントすると、左へ旋回し始める。

「ぐぅ...うぅ......」

アオイの体にきついGがかかる。下手にこういう時は呼吸をしない、息を殺し耐える。

首を筋張らせて後ろを見るが、彗星は主翼のフラップを展開して旋回力をあげていた。

「もうなにもやってもダメ!ならば...!!」

旋回をやめ若干降下させると左フラップを力一杯踏み、操縦桿を左斜め下に思いっきり引く。

すると機体は進行方向に腹側を見せるような状態になり、尾翼を滑らせる形でバレルロールをした。

これは一歩間違えれば機体は失速し、最悪機体がきりもみ状態になる可能性がある。更に敵からも撃たれやすくもなる、いわゆる諸刃の剣だ。

だが成功すれば後ろの敵を自機より前に出させることが出来る。

うまく成功したとアオイは思ったが、ローズの方が一枚上だった。

ローズは彗星のダイブブレーキを展開して減速していた。

「後もう一歩って所だったけど、惜しかったねぇ。そろそろ降りてくれる。機体の検査しないといけないしぃ」

「うん...わかったわ」

 

滑走路に降りた零戦と彗星。二機を深山が駐機してある第四格納庫の手前まで近づけ、降りてくるアオイとローズ。

「いやぁいい機動だったよぉ。おかげで可動部分がよく見えたよぉ。」

「そう」

「少しぃ尾翼の右側を調整する必要があったけどすぐ直るよぉ!」

「うん」

アオイは元気のない返事が続いていた。あきらかに気を落としていた。

「がっかりすことないよぉ。それに初めて乗る機体であれだけの機動が出来たから、慣れてきたらきっと負けなしになるよぉ!」

ローズがアオイの肩を優しく叩き励ます。

「そっそうかしら、へへ」

ちょっと嬉しくてアオイは笑った。

「あっそうだ。ローズ、この町に図書館ってあったかしら?」

「図書館ねぇ、そうだぁ!ここよりラハマにある図書館の方が大きいよぉ!」

「ラハマに」

「ところでぇ何か読みたい本でもあるのぉ?」

「ううん、零戦に関して書いてある本がないか探そうと思ってね。」

「おぉ勉強熱心だねぇ!」

「今日はここに停めてある深山について教えて貰おうかしら」

「いいよぉ!この深山はスズネ運送協会二機目の輸送機なんだ!下部機銃座を荷物搬入口に改造した大型輸送機なんだ!一式陸攻では運べない飛行機のエンジンやガソリンの入った缶、といった重量物を運べるようになってるんだ!」

「搬入はどうやるの?」

「機内に設置したクレーンで釣り上げて入れるんだ!ちなみに人員は機首下から階段を下ろして乗るんだ!」

「エンジンはやっぱり“護”?」

「おっよく知ってるねぇ!でもこれは整備面を考えて一式陸攻と同じ、火星二五型乙に換装してあるんだ!搭載するの苦労したんだよぉ。」

「へぇ、武装も...」

「そう!交換出来るところは全部交換したよ!例えば...」

ローズの抗議が長く続くなかアオイは気付いていなかった。

深山の後ろに置いてあったT-4練習機の残骸、そこからエンジンの部品、二つあるうちの一つ、一基分が丸々一つ無くなっていたのだ。

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