空駆けるミシラ飛行隊 荒野のコトブキ飛行隊 作:紅の1233
スズネ運送協会女子寮
パチ
~♪
パチ
ジュークボックスからジャズが流れ、それになにかがぶつかる音が混じる。
「それで空賊が雷電を使ってたんだよぉ!びっくりだよねぇアオイぃ」
パチ
ローズに問いにアオイは「確かに雷電だったわ」と答える。
パチ、パチ
「空賊が雷電だぁ?見間違いじゃないのかそれ。」
疑うオルカ
パチ
「ローズの工場の商品だった」
「それかコレクションの一部」
『どっちかが盗まれたんじゃない?』
エリとリエはきれいに声を揃えながらいう。
パチ
「後で回収した雷電の残骸にはうちの刻印が入ってなかったから、そんなはずないんだけどなぁ。それに最近製造したのは隼の三型と飛燕だし...後零戦二一型と...」
ローズは首を傾げながらいう。
「おっしゃあ!あがり、ロン!!」
「えぇ?!」
「あら」
『あぁぁぁぁぁ』
揃った牌をひっくり返すオルカ、驚くローズ、いっぱい食わされた顔をするアオイ、頭を抱えるエリ・リエ。
「“マージャン”なら自信あるんだ」
得意気にいうオルカ
「トランプと」
「賭け事なら」
『負けないのに~』
負け惜しみ的な事を言いながら他の人の牌を集めて、箱の中へしまうエリとリエ。
そう五人はついさっきまで麻雀をしていたのだ。
麻雀は中国発祥で、日本でメジャーになり始めたのは関東大震災の頃だ。
おそらくこれも“穴”から来たのだろう。
テーブルの四方にアオイ、オルカ、ローズ、エリとリエは二人で一人。
といった感じでやっていた。
「人生油断した奴から負けるんだぜ!」
オルカの言葉に目をキラキラさせたエリとリエ。
「なにそれかっこいい!」
「今度それ私らも使う!」
対してローズは
「マージャンに人生かかってるのはやだなぁ」
で、そんな事を無視してアオイは
「オルカは麻雀が得意だけど、親御さんの影響?」
「まぁ...な。」
目線を反らすオルカ。
なにかあるのかと、気になったがそこへ
ガランガラン
ドアに設けたベルが鳴ってアニラが入ってきた。
「おかえり姉貴」
『おかえり~』
「おかえりぃ~」
「おかえりなさいアニラ」
「ただいま」
アニラは器用に杖でドアを押して入ってきた、反対側の手には封筒を持っている。
「ミュラさんから伝言と仕事が入ったよ、集合して」
ミシラ飛行隊員全員がアニラの前にオルカ、ローズ、エリ・リエ、アオイの順で並ぶ。
「番号!」
「一!」
「二!」
『の!』
「三...うぅん!!?」
アオイはこけかけた。
アニラはやれやれって顔をして、オルカとローズは笑っていた。エリとリエはそっぽ向いている。
「もうエリとリエは、さて気を取り直して」
これはアオイにとって始めての飛行船乗務だった。
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翌日
シズマツ上空
全長200メートルを軽く越える大型の飛行船“タテヤマ”、スズネ運送協会が所有している輸送用飛行船だ。
悠々と飛ぶタテヤマの後部、ハッチが開いている。
そこへ脚を降ろし、フラップを全開にして洋上迷彩の零戦五二型がフラフラしながら近づいている。
アオイは緊張でいっぱいだ。
ハッチの広さは烈風や流星が余裕で入れる大きさだから、それより小さい五二型なら簡単に入れると思ったがそんな事はない。
妙な圧迫感があって息苦しく感じる。
自分はもう五二型には乗り慣れている、心配はない。
そう言い聞かせハッチへ近付く。
怖がったアオイは五二型の着艦フックを降すことにした。
操縦室右側にあるフック垂下把手を下方へ下げる。その下にある指示装置を見てフックが下がったことを確認する。
着艦時、前につんのめるを我慢するためアオイは足を踏ん張る、踏ん張らないと目の前の照準機に顔をぶつけることになるからだ。
着艦する寸前で機体後部を下げ、前輪と後輪を同時に着地させる。
タテヤマ内の滑走路に設けたアレスティングワイヤーに引っ掛かり、五二型は急停止した。
アオイは一息ついて、エンジンを切る。
プロペラが停止した所でタテヤマ乗員が集まってきて五二型を、滑走路横の駐機スペースへ押して移動させた。
エリ・リエの夜間迷彩の三二型の隣に駐機されアオイは五二型を降りた。
周囲を見てみると烈風と流星が翼を折らないで展開した状態で並んで駐機している。
両方全幅14メートルもある飛行機なのに飛行船内はかなり余裕がある。
一式陸攻は無理だが、おそらく双発戦闘機位簡単に運用できるくらい広い。
「アレスティングワイヤー使ったとはいえ一発で着船するとは中々センスがいいな!」
オルカが手を叩きながらやって来た。
「一発でクリアしないと飛行船に衝突して私はお陀仏になって、オルカ達は火の玉になってたわ」
「げっそれはいやだな!」
そう一歩間違えば大事故に繋がる行為だ。
これからも日常的に輪くぐりをしなくちゃいけないから気が滅入る。
「それより中に休憩所があるからそこに行こうぜ」
「待って」
「なんだ?」
「運ぶ荷物が気になるわ」
「あぁ、荷物ならそこの階段を上って右へ行った先の倉庫だ。」
「ありがとうね、オルカ」
そう言ってアオイは倉庫へ向かった。
そこへ
「オルカ、ちょっといい?」
アニラがやって来た。
「なんだ姉貴?」
「エリとリエの姿が見えないの、探してきてくれるかな?」
「ローズに頼めばいいだろ?」
「ローズは整備で忙しいんだよ、これはオルカにしか頼めないの、ねぇお願い?」
アニラはオルカの手を取って頼む。
「わかったよ姉貴のお願いなら断れないな」
タテヤマ船内倉庫
多数の木箱が並ぶ。その真ん中をアオイは歩いている。
送り先はシズマツ自警団のカナリア自警団宛になっている。
なんて思っていると
ガタッ
ダダダダダ
ドッ!
なにかが駆け回る音が聞こえた。
音がする方を向くも姿がない。
サササ
後ろで音がして振り向くと箱に隠れていくオレンジ色の尻尾。
やっぱりね。
「エリー!リエー!」
そう叫ぶと箱の上からひょっこりと二人が顔を出してきた。
「あっアオイだー」
「だー」
「二人とも何してるの?!」
『かくれんぼー!』
二人は箱の上からジャンプすると空中宙返りをして着地した。
エリ・リエの身体能力の高さは一体なに?
そんなことより
「えらく大きな木箱ね。中に何が入ってるの?」
中身の方が気になった。
「エンジンのパーツ主に誉エンジンの」
「イズルマ自警団の主力戦闘機紫電用」
「紫電ってあの局地戦闘機の?」
『そうだよ』
「火力に優れて速度に優れて」
『優秀だけど』
「旋回性能は微妙航続距離は短い」
『おまけに視界が悪い』
「そんなことないわ、紫電はあの有名な戦闘機、紫電改の元にあたる機よ。水上戦闘機の強風を陸上型に設計し直したのが紫電で、多くの問題を抱えた機でもあったわ。だが、私の乗っている五二型より勝っている所もあるわ。エリとリエが乗る三二型よりもね。」
『たとえばどんなところ?』
「例えば機体の強度、強度のおかげで零戦より限界速度は高い、更に機銃を撃った時にぶれないから命中率もいいわ。それに航続距離が短いのは局地戦闘機だからよ。町を守る自警団なら長い航続距離は無用だわ。」
『あっーそっか!護衛する必要ないもんね』
使い方を考えればそれなりに使える戦闘機だ。
「でも、なんでエンジンパーツをわざわざ遠いシズマツから取り寄せるの?地図をみるとシズマツからかなりの距離があるのに。」
「機体を作る工場はたくさんあるけど」
「エンジンを製造できる工場は少ない」
『イジツには少ない』
「でもシズマツのハナマル飛行機は」
「数少ないエンジンを量産する工場」
『しかも質も価格も安いから大人気!』
確かに飛行機用のエンジンは車以上に高回転で回るし過酷な場所で使う。
それだけ頑丈に作らないといけないし精度も求められる。
シズマツのハナマル飛行機は優れた工業力を持っているのだろう。
「おい量産型!また荷物の周辺で遊んでいやがったな!」
オルカはエリ・リエにげんこつを喰らわした。
『いたーい!』
頭を押さえるエリとリエ。
「姉貴が探していたぞ、空賊がいつ現れるかわからないから配置に付いていろよ。」
「確かにそうだね」
「オルカがいると尚更ね」
「なんでそう言いきれるんだ?」
エリとリエは互いに顔を見合わせニヤリと笑うと
「似た者同士は」
「引き付け合うんだよ!」
「このやろう!!昔の俺とは違うと言っただろうが!!」
『キャー♪』
オルカはエリとリエは追いかけはじめた。
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イズルマまで後18時間で到達する位置に、飛行船タテヤマを飛んでいる。
現在は夜。
夜のはずなのな外は頑張れば見える位に明るい。
理由は月だ。
月からくる月光の影響でかなり明るい。
ビッービッービッー
艦内を警報音が響く
『現在本船に向けて多数の航空機が接近中、数は十二、向きは本船正面接敵までおよそ二十分。情報によると近辺に出没する“ウノメ”団と思われる。』
無機質なアナウンスを合図に格納庫内の整備士がイナーシャを持って、急いで各担当の戦闘機に向かう。
それに混じってローズ、一足遅れてアオイとエリ・リエ、アニラをお姫様抱っこしたオルカが続いた。
手早く各機、エンジンを回すと格納庫真ん中の白線に並ぶ。
前方のハッチが開き、整備士達が退避を確認すると上のランプが赤から青に変わる。
順に各飛行機が離陸していき、最後にアオイの零戦五二型が出た。
先頭をアニラの烈風、右翼にオルカの流星、その反対にローズの彗星、その両翼端にエリとリエの零戦三二型、そして真ん中にアオイの零戦五二型がくる。
綺麗な編隊飛行だ。
各戦闘機、飛行特性が違うのに揃えられるのはそれぞれが信じあってあるからこそ出来る芸当だ。
そこへ
『ミシラ飛行隊へ緊急連絡!』
「どうしたの?」
アニラが応答する。
『本船右方向から別部隊が接近中!』
「別部隊?」
「伏兵じゃない?」
エリとリエは口々に言う。
『数は八!』
「これで合計二十だねぇ。でもおかしいねぇ、ウノメ団だったらせいぜい七機程度なのにねぇ。」
ローズは手帳に記載してある空賊の情報と照らし合わせる。
「だからって放っぽっておく訳にはいかねぇだろ。姉貴、別部隊は俺に任せてくれ!」
オルカの流星はバンクすると編隊から離れていった。
「あっ!アオイ、オルカに付いていってあげて!」
「了解」
アオイは零戦を上昇させ編隊から離れるとオルカの流星を追った。
「といって無茶して飛び出したはいいが一機で八機相手にするのかきついな」
「そりゃそうよ、でも一機で四機相手にするならまだ気は楽じゃない?」
「ア、アオイ!」
「見栄はるのはいいけど墜とされたら元も子もないわ。」
「見栄じゃねぇ、こうでもしねぇと姉貴に顔向けできねぇんだ。」
「ねぇ、オルカとアニラはどういう関係なの?もしかしてオルカがミシラに入ったのと関係あるの?」
「...俺は空賊の団長だったんだ。でもそこから俺を救いだしてくれたのが姉貴、アニラだったんだ。」
「オルカは元空賊だったの」
「そうさ、俺は空賊の前の団長が拾ってきた捨て子でな。族長がいなくなった後はそのまま頂点にされちまった訳だ。団長になったからには仕方がないと、色んな悪事をしたもんだ。」
「麻雀ももしかして」
「あぁ、金稼ぎのやり方として覚えたことだ。とにかく腕を磨いて掛けマージャンで稼ぎまくった。」
「それであんなに上手かったの」
「イカサマなんてない、マージャンも空戦も自分の実力を磨いて勝ってきたんだ。だけどそれを姉貴、アニラに砕かれたんだ。」
「なにがあったの?」
「あれはスズネ運送協会の一式陸攻を集団で襲おうとした時だった。一機の零戦が迎撃に来たんだ。こっちは六機で機体は紫電、性能だけならこっちが上で楽勝だと思ったが違った。ヘッドオンで一機撃墜されたと思ったら次の瞬間にはもう一機、また一機とどんどん仲間達が堕ちていったんだ。」
「ちょっとまって、アニラは零戦一機で紫電六機を相手にしたの?!」
「今でも信じられないぜ、でもあの光景は今でも目に焼き付いてる。あんなに華麗に撃墜されたのは始めてだった。」
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不時着した紫電の前に俯くオルカ
「団長機に乗ってたのは貴女だったんだ」
オルカが顔をあげるとアニラが両手に松葉杖を持った状態でやって来た。
「お前はなんだ?」
「貴女たち空賊を撃退した零戦のパイロット。」
「マジか...」
オルカはアニラの姿を見てため息が出そうだった。
「俺は手負いの奴に墜とされたのかよ」
その言葉にアニラはムッとした。
「失敬な私は手負いじゃないよ」
「じゃあその足はなんだ」
オルカが指差したのは引きずっていたアニラの右足。
「これは只の義足。まだ馴染んでないだけで、これ以外は健康そのものだよ。」
アニラはオルカの前に立つ。
「貴女はこれから連れていくけどいい?」
「連れていく?はっ、俺はブタ箱行きか...」
「うぅん、もっと良いところに連れていく。」
「空賊上がりの俺に行くところなんかそこ以外ないだろ...」
「それがあるんだよね。一つ。」
「それはどこだ?」
「私の働いてる場所、シズマツのスズネ運送協会。」
「はっ、なに言ってんだお前。俺はついさっきまでそこの配達便を襲おうとしていた身だぞ。雇ってくれる訳ないだろ。」
「じゃあ大人しくブタ箱に入る?私はあんなに操縦が上手い人間を閉じ込めておくのは、勿体無い気がするけどね...あっ!そうだ!ねぇねぇ!」
アニラはオルカの手を取って
「貴女は私が憎い?」
「はっ?」
唐突に何を聞いてるんだこいつは
「まぁそりゃあ仲間を墜とされたら少しは憎いけどさ。」
「なら私を撃ち落としてよ!」
「はぁ!?」
ますます言ってる意味がわからない。
「だからなんて言えばいいかなだろう?つまり私を墜とせるのは貴女だけってこと!貴女名前は?」
「えっ、オルカだけど...」
「オルカって言うの!私はアニラ、宜しくね!」
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「半ば強引に入れられたが、姉貴は凄いぜ。義足でありながら俺より撃墜数が上なんだぜ!」
「義足だったんだ...」
「あの日以来決めたんだ、姉貴を撃墜できるのは俺だけだ!ってな。」
「そうだったの、あれ?紫電に乗ってたのよね。」
「そうだが」
「流星はどこで手に入れたの?」
「ハナマル飛行機で売れ残ってた奴を姉貴が買ってくれたんだ!ちなみにいた空賊の名前は“ダイミョウエビ”団だ。」
「ダイミョウエビ...」
「ユーハングには民衆を束ねる偉い人をダイミョウと呼ぶんだったかな?」
「それじゃあ機体の鯱もその名残ね」
「いや、ちょっと違う。これは姉貴の元に付くときに付けた奴だ。」
「つまり...」
「ダイミョウが住んでるのは城っていうデカイ建物だろ、その城で一番高い所にあるのがシャチホコなんだってな。それを機体に付けていれば俺は天下を取れる、最強になれるって訳だ!」
「こじつけね」
「おっ見えてきた。」
遥か遠くでなにかが光った。月光に反射して光った翼だろう。
「相手はウノメ団、型は鍾馗だったよな。楽な相手だ。」
「そんなことないわ。鍾馗はいい戦闘機よ。上昇力と降下速度に優れ限界速度は800キロ以上。登場当時、800キロまで耐えられる戦闘機は他国でもそういなかったわ。火力はそこそこだけど、防弾性もよく、旋回性能も他国の戦闘機に比べたら良いほうよ。舐めてかかったら痛い目見るわ。」
「そ、そうだったか?」
「さらにとあるドイツ人パイロットは「日本パイロット全員が二式単座戦闘機を乗りこなせれば日本軍は最強になる。」と言い。アメリカも紫電改や疾風を抜いて「迎撃機として最優秀」との評価を得た位よ。」
アオイが話している内に鍾馗の群れが近づいてきた。
「なぁ、アオイ。なんでそんなこと知ってるんだ...?」
鍾馗の群れが射撃しはじめた。
「オルカ!あまり動きを予測できないような機動をして!」
「わかってる!」
オルカは大きくバレルロールをしながら射撃し始める。
アオイはロールをして背面飛行にすると一気に降下し、降下速度を稼ぐと上昇し鍾馗の後ろにつく。
後ろについた鍾馗は蝶フラップまで展開して機動力をあげようとしている。
だが、零戦と鍾馗の機動力を単純に比べるなら。零戦の方が圧倒的に上だ。
前のアカリス団の雷電もそうだが、この世界の戦闘機乗りは機動戦を好むようだ。
斜め上を向いて仕掛けてくる他の鍾馗がいないことを確認する。
アオイはスロットルレバーにつくスイッチを切り替えて20ミリと7.7ミリが同時に発射するようにする。
アオイは目の前の照準をにらみ敵がそこへ重なった時、発射レバーを握った。
曳光弾が生み出す四つの光の線が目の前の鍾馗に伸びる。
7.7ミリと20ミリは中心から少しずれたが鍾馗の左主翼の付け根に直撃し、大穴を開ける。
鍾馗は火を吹き墜ちる。
すかさず周囲を確認する、すると直上から鍾馗が降下してくるのが見えた。
アオイは左フットレバーを思いっきり踏み、零戦を左へ滑りながらロールさせる。
鍾馗が撃った曳光弾が横を通過し、鍾馗も通過していった。
そこを見計らってアオイは右ラダーを一瞬踏んでロールを止めると、背面飛行の状態で鍾馗を追う。
例え零戦の翼が強化されているとはいえ、鍾馗には降下速度では絶対に負ける。
アオイは鍾馗が照準機にとらえた瞬間引き金を引いた。
20ミリは鍾馗の両翼に綺麗に当たり右翼のエルロンが外れた。
アオイはそれを避け、機体を水平状態にする。
一瞬、速度メーターを見て問題ない速度だと確認して機体を上昇させた。
上昇させた先では鍾馗が流星に墜とされているのが見えた。
艦攻でも十分戦えるのね。
なんて思っていると流星の後ろから鍾馗が近付いてるのが見えた。
「オルカ後ろ!」
「なに!?」
間に合うか
アオイは見越し射撃をする。
撃った機銃は無防備に晒していた鍾馗の腹に当たる。
鍾馗は火を吹き墜ちる。
アオイはオルカの流星に並ぶ。
「ありがとうなアオイ、今の何機目だ?」
「...三」
「三か俺も三...」
そうオルカが言いかけた時、後ろに鍾馗がもう一機追い掛けて来るのが見えた。
「アオイ!避けろ!」
「っ!」
アオイは咄嗟に操縦桿を引いて零戦を上昇させる。
オルカは機首を上げると同時にスロットルレバーを閉める。
流星は失速し機首を上に向けたまま降下しする。
速度が出ていた鍾馗はそのまま流星を追い越してしまった。
オルカは素早くスロットルを開いて流星を加速させ、鍾馗の後ろにつくと機銃を撃った。
翼内に設けた九九式二号20ミリ機銃が火を吹く。
鍾馗の両翼がもげた。
「よっしゃ、これで四機目!」
これでこっちの部隊は壊滅できた。
あの短時間で私は三機も墜としたの。
アオイはあまり実感がわかなかった。
「オルカ!ちょっといい?」
無線から聞こえてきたのはアニラの声だ。
「姉貴どうした?」
「こっちが思ったよりもやり手だったから手こずってるの、手助けに来てくれる?」
「わかった。アオイ、残りの一機の方を頼んだ!」
「了解したわ」
オルカの流星はアオイの零戦から離れていった。
アオイは流星を見送り残った一機がいる方を見る。
この世界の夜は昼間ほどではないがアオイのいた元の世界より明るい。
ぼんやりではあったが機影が見えた。
アオイはいざという時に備えて有利な位置、斜め後ろにつく形でその未確認機に近付いた。
見えてきた機体は戦闘機だ。
だが少し普通と違う。
空冷エンジン搭載だと絶対にできない細くなった機首、風防後部は機体と一体化されている。
その戦闘機はアオイに気付いたのか、旋回して雲の中へ逃げていった。
攻撃意思がないと読み取ったアオイはその戦闘機を追いかけなかった。
「未確認の戦闘機を確認した、機種はおそらく飛燕?」
「飛燕だぁ?」
「でも問題ないわ。今雲へ逃げていったわ。」
「ならよかった。こっちも片付いたから戻ってこい。」
「了解。」
アオイは五二型の機首をタテヤマの方へ向け帰還することにした。
それにしても気になることがあった。
さっきの戦闘機だ。
確かにシルエット的に水冷エンジン搭載した機なのは確かだった。
咄嗟に飛燕と言ってしまったが、アレは全くの別物だった。
「機体下にはラジエーターがなかったみたいだし、飛燕と違って機体が直線的だった。それに...」
そうはっきり覚えていた事がもう一つ。
「プロペラスピナーの模様...あれはなんだったのかしら?」
スズネ運送協会保有機体
その2
ローズの彗星
塗装:現代戦闘機風なグレーの迷彩
マーク:クロスしたレンチと薔薇
エンジンをアツタ三二型に換装してあるため彗星一二型である。
ローズの現在の愛機。整備も自分で行っている。行えるのは以前飛燕を乗っていたからだろう。
彗星の速度と強度を生かした一撃離脱方式の戦闘を行う。
7.7ミリ機銃では威力不足を感じ、ローズは換装を考えている。
ジャンク品をかき集めて作ったローズの傑作品。