その瞳に映るもの   作:シルベスター

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さあ、作者の妄想全開の二次小説の記念すべき第一話がはっじまっるよー?


奈良:始まりの地
春、それは始まりの季節!!


 肌を刺すような冷たい風が、撫でるような暖かく優しい風に変わる春。

 俺は一つ上の学年に進級しようとしていた。

 

 ここは奈良県吉野町。

 今いるのは、俺が2年間通った小学校。

 そして、今日は入学式。

 

 今は校長先生から学校生活にあたっての長い話の最中だ。

 やれ今日は桜が綺麗に咲いてるだとか、これからの学校生活がより良いものになるように願っているだとか、お手本そのままのありきたりな言葉が聴こえてくる。

 

 別にそんなくだらない話には興味もないし、2年の俺には関係ない。実際、先程まで俺は寝ていたし・・・てか、このハゲは2年間どうして、式の度に同じようなことを言えるのか・・・。

 去年も同じ話をされたこっちの身になってほしい。

 式もそろそろ終わるし、今日はどうするか・・・。

 

 ◇◇◇

 

 入学式も無事終わり、生徒は昼前には家に帰される。

 俺も家に帰るために、特に何も入っていないランドセルを持ち上げる。

 

「スズ!今日も麻雀教室行くよね!」

 

「行くけどなんだー?」

 

 うるさいくらいの大声で俺の名前を呼ぶのは、クラスメイトの高鴨穏乃と新子憧。

 麻雀教室って言うのは、名前の通り麻雀の教室。実はうちのかーさんがやってたりする。

 

「じゃあ、あたしとシズと玄とあんたで打とう!」

 

「別にいいぞ!」

 

 俺の返事を聞くと憧とシズは帰っていった。

 

 ◇◇◇

 

「ロン!12,000!」

 

 はぁ・・・また負けた。

 本当にこいつらとやると負けばっかだ。

 玄はドラを集めるなんて化け物チックな力持ってるし、憧は鳴きのセンスがとんでもないし、シズはふつーに強いし。

 この中じゃ一番下手なのは俺。

 

「スズはもうちょっと牌の動きとか見た方がいいよ」

 

 そうやって俺にアドバイスをするのはこの麻雀教室の先生・・・赤土晴絵。

 この人は、2年前に奈良県の全国大会出場常連校の晩成高校を破り、阿知賀女子を全国大会へ導いた立役者。麻雀の腕はとんでもなく強い。

 

 なんでか知らないけど、高校の部活を辞めたらしい。それで塞ぎ込んでたところをかーさんが声をかけて連れてきたとか・・・なんとか、言ってた気がする。多分・・・。

 

「・・・やってはいるんだけど、上手くいかないんだよなぁ」

 

 アドバイスをされたが、やろうとしても全然できないんだ。

 麻雀を初めて2年が立つが少ししかうまくなってない。

 晴さんは、経験が足りないからだというけど・・・センスや才能が生きるゲームは存在する。麻雀のセンスが俺にはないのかもしれない。

 

 ・・・って!いやいやいや!そんな訳ねぇ。

 俺だってやれば出来る!そう、俺はYDK。

 

「スズは相変わらず見通しが甘いね」

 

 自問自答していると横から憧が俺に言う。

 くっそ、こいつ俺が一番気にしてることをストレートに言いやがる。

 

「うっせぇ、憧。次は俺が勝つ!」

 

「ふふんー!あたしに勝つなんて100年早いね!」

 

「そんな事ねー!次は絶対俺が勝つ!」

 

「あはは、スズ君も憧ちゃんもムキにならないで・・・」

 

 そんな俺たちを玄は苦笑いしながら止める。

 

「玄は黙ってて!」「玄はちょっと黙って!」

 

「えぇ・・・」

 

「相変わらず、憧とスズは仲いいねぇ」

 

 俺たちに言い返され困惑する玄とそんな俺たちを見てニヤニヤするシズ。

 

「「仲良くない!!・・・なんだと!」」

 

 シズの言葉に声をあわせて文句を言う俺たちは故意に合わせたわけじゃないのに一言も間違わずに同じことを言う。

 

 今にも喧嘩が始まりそうな教室に一つの声が響く。

 

「2人とも息ぴったりねぇ」

 

 ビクッ

 

 体が跳ねるように反応し、嫌な汗が流れる。

 

「か、かーさん!?どうしてここに!?」

 

「今日は仕事が早く終わったのよ。それにしてもスズ?」

 

「は、はい!」

 

「私、女の子に乱暴な口聞いていいって教えたかしら?」

 

 ニッコリと笑っているようで目が笑っていないかーさんに、ガタガタと震える俺。

 

「い、いや、あの・・・ごめんなさい!」

 

 速攻で土下座しました。

 

「本当にスズは弱いよね・・・」

 

 うるせぇ、かーさんに勝てるやつなんているか!

 

 

 

 これが俺たち麻雀教室の生徒のいつも。

 

 ◇◇◇

 

「あー、今日も勝てなかったー!」

 

 麻雀教室帰りに玄と歩きながら俺はそう呟く。

 かーさんは説教の途中で、電話がかかってきて仕事場に飛んでった。なので、俺は一人

 

 それとすっかり忘れていたが、玄って言うのは松実玄。俺の1個上、麻雀教室だと一番上で一番強い。

 

「あはは、そんな時もあるよ」

 

「てか、なんでそんなに玄にはドラが集まるんだよー!チートだ!チート!」

 

「うーん、昔からドラを捨てないようにしてたらこうなっちゃったからなぁ」

 

「そうしてるとドラが来るようになるってどんだけだよ!オカルトだー」

 

 俺の嘆きも程々に松実館に着いた。

 

「なぁー玄ー」

 

「どうしたの?スズくん」

 

「今日、宥ねぇいる?」

 

「お姉ちゃん?いると思うよ?」

 

「んじゃあ、宥ねぇに会ってから帰る」

 

「あはは、相変わらずお姉ちゃん大好きだね」

 

「宥ねぇは優しいからな!」

 

「そうだね。あ、ただいま帰りましたー」

 

 そう言って、玄は松実館の中に入った。

 その後を追うようにして俺も中に入る。

 

「お邪魔しマース」

 

 ◇◇◇

 

「でな!宥ねぇ、今日はまた憧のやつがな・・・」

 

 今、俺は松実館でこたつに入った宥ねぇと話している。

 さっきからちょくちょく出て来る宥ねぇってのは、玄の姉ちゃんの松実宥って人のこと。

 俺の二個上で、めちゃくちゃ寒がりなやさしい姉貴分。

 昔っから、俺は宥ねぇが大好きでよくここに遊びに来ている。

 

「そうなんだ〜。スズくんと憧ちゃんは仲良しだね〜」

 

「仲良くないよ。いっつも、あいつ突っかかってくるし」

 

「そうなの〜?」

 

「そうだよ。この間なんか、俺が服褒めただけで突然キレだすし、アイツ短気なんだよなぁ」

 

 いつもと違う感じの服着てたから「おっ、可愛いな!」って言ったら防災頭巾ぶつけられて「な、何いってんの!馬鹿じゃない?!」って罵倒された。解せぬ。

 

「スズくん〜、憧ちゃんが可哀想だよ〜」

 

「なんで?」

 

 どうやら宥ねぇには憧がキレる理由がわかるらしい。

 

 ◇◇◇

 

「んじゃ、俺帰るよ」

 

「え、スズくん帰っちゃうの?」

 

「スズくん〜もう、帰るの〜?」

 

「な、なんだよ。二人して・・・」

 

 そんな顔するから、帰りづらいだろ!

 

「そうだ!スズくん、今日はうちに泊まればいいんです!」

 

「はぁー?」

 

 何を言い出しているですかね、この人は。

 

「こないだも泊まったばっかだし、今日は帰るよ」

 

 荷物を持って帰ろうとした時、腕をつかまれた。

 振り向くと、俺の腕を掴んでいたのは宥ねぇだった。

 目をウルウルさせて、こっちを見上げるようにして見つめてくる。

 

「ス、スズくん、お願い」

 

「・・・わ、分かったよ。だから、そんな顔しないで・・・」

 

 ちょっと涙目になっている宥ねぇの頭を撫でる。

 本当にこの人には弱いなぁ俺。

 

「あー!お姉ちゃんだけずるい!わ、私も!」

 

 そう言って、俺の方に寄ってくる玄の頭も撫でる。

 

「はいはい、玄もいい子いい子」

 

「ふにゃぁ〜」

 

 猫みたいに目を細め、撫でられるがままの玄と宥ねぇはとっても可愛かった。

 

 ◇◇◇

 

 夕食を食べ、風呂に入り、少しだけおしゃべりを楽しみ、俺たちは寝ようとする。

 

「あのさぁ、本当にこれで寝るの?」

 

「そうだよ〜?」

 

「スズくん、なんか問題あった?」

 

 問題あった?あるわ!

 

「ありまくりだよ!なんで、一緒の布団なの?!」

 

 なんで、この広い部屋(玄の部屋)に布団一つで寝ようとしてんの?!

 玄はベッドあるんだから、布団で寝なくていいでしょ?!

 宥ねぇも自分の部屋あるんだから、帰りなさいよ!

 

「「だって、久しぶりだから・・・」」

 

 あー!またこの人達はそんな顔する。ずるいんだよなぁ。しょんぼりした顔されると、何も言えなくなる。

 

 まあ、いやじゃないからいいけどな。

 

「・・・分かったよ。寝よう、これでいいから」

 

「「うん!」」

 

 ・・・で、電気を消して布団に入る。

 

 ギュッ

 

 ギュッ

 

 布団に入ったとたん、両サイドから抱きつかれて抱き枕状態に、玄も宥ねぇも自分のものだと言わんばかりに抱き着いてくるから寝づらい。

 

「玄も宥ねぇももう少し力緩めてくれ」

 

「あ、ごめんね・・・」「ごめんなさいなのです」

 

 玄が力を緩めた途端に宥ねぇはさらに力を入れて俺を抱き寄せる。

 

「んー!!!」

 

「ああー!お姉ちゃんずるい!」

 

「ごめんね・・・玄ちゃん、でもこれだけは譲れないから・・・」

 

 と、謝りつつも俺を離さない宥ねぇ。すると、玄は何を思ったのかまた、俺に抱きついてきた。

 

「結局抱きつくんだ・・・」

 

「だって・・・お姉ちゃんだけずるいもん・・・」

 

 はい、そうですか。結局抱きつくんですね。

 まあ、いいですよ。

 

「はぁ・・・おやすみ」

 

「「おやすみなさい」」

 

 こうして夜は更けていく。

 




主人公

海谷涼(かいたに すず)

小学2年生の男子。
顔は素朴ではあるがまあカッコイイ方ではある。イケメンではない。普通だけどかっこいい方的な?

呑気で、気分屋、思い立ったら即行動。
頭は悪くは無いが、考える前に行動したり、考える前に言葉にするから馬鹿だと思われがち。

周りからは能天気で悩みとかなさそうと思われがちだが、実際は周りの変化に敏感で、空気を読むことに優れており、誰かの悩みに真剣に悩んでしまうからストレスを抱えやすい性格。その性格ゆえに、他人の悩みにはド直球で答えるが、自分の悩みは心のうちにしまい込む癖がある。


現在は元プロ麻雀士の母親の開いた麻雀クラブに所属しており、そこで麻雀をしている。

麻雀は一応中の下くらいの実力がある。
周りが強すぎるので弱く感じるがそこまで弱くないけど、強くもない。

運はいい方で、センスもあり流れに乗って打つ系なのだが、完全なデジタル打ちの母親の打ち筋に憧れ、デジタルで麻雀を打つのでその力がいまいち発揮出来ない。
考えて打つタイプではなく、感じて打つタイプの人間。



その他登場人物

海谷涼子

涼の母親で、元プロ麻雀士。生粋のデジタル打ちで、オカルト能力や運も認めているが、自分には無いもので必要も無いものなので特に興味はない。
持ちうるものを全力で使い、人の持つものを羨むことはしない。あくまで他人は他人、自分は自分の考えを持っている。

涼に教える際にも、デジタル打ちは向かないと思っているが、涼自体が憧れてしまっているのでそのままにしている。

現在は、夫婦で小さな旅行会社を起業し、社長を務めている。
本作開始時期の2年前の春に、全国大会での失態がトラウマなり、塞ぎ込んでいた赤土晴絵に声を掛け、麻雀クラブを開く。
麻雀クラブの子どもたちに『ラスボス』と呼ばれている。(涼考案)

大阪に妹がおり、仲良し。

容姿は長いウェーブのかかった黒髪と黒い瞳の清楚系美人。物腰柔らかで、どこか上品な雰囲気を出す大人の女性。
性格は、優しく、真面目ではあるが、評価をする時だけは辛口になる。あと、旦那と涼に対してものすごく厳しい。

◇◇◇

本作は赤土晴絵が開いた麻雀クラブだと、時系列的にバランスが取れないので主人公母が開いた麻雀クラブを舞台にして始めます。

晴絵は全国大会での出来事をトラウマとしていますが、現在は主人公母の麻雀クラブの手伝いを放課後にしています。

憧、シズは原作と変わらず元気っ子で、玄と宥もこの頃から原作のような雰囲気だったという設定で行きます。

◇◇◇

実は書いてて思ったんですけど、本文より後書きの方が筆が進むんですよね。

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