卒業式の準備が進むにつれてハルヒの機嫌は悪くなり、その度に小泉が何かイベントを持ち込む、そんな日々が続いていた。
「キョン! ベンチだからってだらだらしない! ちゃんと見てなさい!」
いつかやったような野球大会、一応俺も参加はしているがベンチだ。
「大体なんで大会当日に風邪なんか引いて……」
「すまんな」
俺が謝るとハルヒはバツが悪そうに
「そう思うならちゃんと治しなさいよ、今日だって無理して来なくても……」
勿論風邪は嘘だ、小泉達が気を効かせて考える時間をくれている。
「まあ一応見ておきたいしな」
何かやらかさないかをだが
「そう、まあ無理はしないでよ」
本気で心配そうに言うハルヒに心が痛む。
しかしこれはやらなくてはいけない、これは閉鎖空間に閉じ込められた時よりピンチだ。
「……はぁ」
溜息をついて俺はまた考え始めた。
どうすればハルヒを満足させられるか、いや、どうすばハルヒに卒業しても良いと思わせる事ができるか。
「行くわよ! SOS団の逆襲よー!」
ハルヒは元気に手を空に突き出した。
「夏も見たなら冬も見るべきよ!」
その一言から始まった天体観測が始まってしばらくした時、俺は星を見上げながら切り出した。
「なあハルヒ」
「何よ」
「もうすぐ卒業だな」
ハルヒの機嫌がみるからに悪くなる。
朝比奈さんが驚いたように息を飲み、小泉が察したように頷いて朝比奈さんを屋上から連れ出す。
最後に長門が無表情のまま出て行った。
「そうね、卒業ね」
「ハルヒ、お前はどうしたい」
「なんの話よ」
「SOS団の話だ」
ハルヒは少し間を開けて
「解散……って所かしらね」
俺は驚いた、まさかハルヒの口から解散が出てくるとは
「まあ……SOS団は勿論解散だ」
「…………」
数分の沈黙の後、俺は決心して口を開いた。
「SOS団は解散だ、でもそれでいいんじゃないか?」
ハルヒは空を見上げたまま口を開かない
「SOS団が無くても……集まればいいだろ」
ハルヒはまだ口を開かないので続けて俺が口を開く
「大学に行けば今よりも自由になる、歳になれば俺は車の免許を取るつもりだ」
「車さえ借りれば簡単だ、何処だって連れていってやる、お前が何処に行くか知らないけどさ、文化祭だって派手にやるかもしれないぜ、まあ……その、あれだ」
「お前の呼び出しがあればいつだって集まってやる、小泉も長門も朝比奈さんも集まってくれるはずだ」
俺は空からハルヒに視線を移して
「そう考えたら、楽しみじゃないか?」
ハルヒはまだ空を見上げたまま
「き、キョンにしてはいいアイデアじゃない」
「そうだろ、いいアイデアだろ」
「調子に乗るな!」
ハルヒは目を擦ってようやく俺の方を見て
「そのアイデア、採用してあげるわ!」
今までに無い笑顔で、そう言った。
「涼宮ハルヒの精神異常が消失した、以降精神異常を起こす可能性も極めて低い」
長門がそう言った瞬間俺達三人は安堵した。
「や、やりきったか」
「おめでとうございます」
「よかったですー」
こうして俺達は無事に卒業式を迎えた。
春休み、俺はほぼ毎日ハルヒに呼び出された、自分が蒔いた種なんだがどうも複雑だ。
まあそんな複雑な春休みも終わり俺は無事に大学に入学した。
「ようキョン、調子はどうだ」
「ああ、また同じクラスか、谷口」
「なんだよそのいい草」
「入学初日に他人の席に座ったらその人が戸惑うだろ」
「んなこと気にしなくていいんだよ、それよりこのクラスの一番は……」
そんなたわいない話をして授業を受ける、ハルヒには悪いが学校にいる間、俺は平穏な生活を送れるわけだ。
「よろしくお願いします」
適当に自己紹介をすませて座る、ああ、平穏だ。
「北高出身……いえ」
こ、この声は……
俺は幽霊でも見るように後ろを向いた
……これは、笑えねぇ
「SOS団団長!涼宮ハルヒ」
えらい美人がそこにいた。
fin