私は生まれ変わったらしい。
死んだ時のことは覚えていない。
ピチョンと水が跳ねる。
ずりずりと体を引きずっていく。
おかしいな、確か私は歩けた気がするのだが。
まあ良いか。
「イワー!!」
水たまりに映った私の姿に驚いて叫び声が出た。
団子のような岩が繋がった蛇のような体とヘルメットのようなゴツゴツした顔。
間違いない、これはイワークだ。
そうだ、イワークだ。
……だからどうした?
そうだ、喉が渇いた、水を飲もう。
ゴクゴク、プハー!上手い!
たっぷりミネラルの含んだ美味しい水だ。
おっと、喉が潤うと腹が減るなー。
おっと、そこに良さげな岩がある。
いっただきまーす!
バリバリ、ゴクン。
んー、表面は硬いけど中はふわふわ、濡れせんべいみたい。
んまんま、これならどんどん食べれるよね。
バクバク……。
バリバリ……。
前世の私も食べることが大好きだった気がする。
今世は食っちゃ寝のステキなライフを楽しむぞー!
ー100年後ー
プハー、本当に美味しいなー!楽しいなー!
わたしは引きこもりライフを満喫していた。
特に外敵もいないし、食べ物は無限にある。
この10年で食べた所が大きな空洞になったから寝床にしている。
さっきもお腹いっぱいに食べて満足した所だ。
ゲプー。
ドカーン!
なんだなんだ!?
驚いて体が弾け飛んでしまった。
もう、失礼しちゃうなー。
散らばった体をくっつけて寝床に落ちてきた侵入者を見た。
大きな隕石とその前に立つ侵入者。
軟体生物のようなフォルムはスマートでどこか宇宙人じみている。
というかデオキシスじゃん。
「イワ、イワーク」
「デュア!!」
軽いノリで言葉をかけたら体当たりを食らわされた。
痛ー。やってくれたなー。
まあデオキシスも混乱してるみたいだし仕方ないけど。
ちょっと怒ったぞ。
こっちも体当たり!
ふふん、逃げようったって此処は穴の中だから逃げる場所なんてない。
って!サイコブースト!? あかん、これ食らったら一発KOだ。
穴を掘る!急げ、逃げるんだ。
ふいー何とか外れたようで私がさっきいた場所が爆発している。
体当たりは無理かー。よし、じゃあ見えないところから攻撃しよう。
穴を掘る! 本来浮いてる相手には当たらないんだけど、此処は穴の中だからね!
「ディオ!!」
デオキシスの背中から姿を現した私に、待っていたぞとばかりに技を放った。
しまったー、そう言えばイルカみたいに超音波で物を見るんだっけかー。
……でも、残念ハズレ。
サイコブーストの当たった私の岩がボテっと落ちる。
「イワーク!」
頭上から真っ逆さまに落ちていく。
私の頭突きにデオキシスはフォルムチェンジも間に合わず正面から食らって落ちていった。
イワークの重さとら自由落下の速度が合わさっているのだ。
効果はバツグン、デオキシスはのびあかって動かなくなった。
……ちょっとやりすぎたかもしれない。
目が覚めたデオキシスは警戒していたけど、私が危害を加えないと知ると大人しくなった。
……ところで、君と一緒に落ちてきた、あの石。ああ、隕石ね。あれをさちょこっとだけ噛ませて貰えないかな?
いや、先っちょだけ、本当のほんとに。
ちょっとだけなら……と許してくれたので一噛みした。
え?半分無くなった?そんなわけないじゃない。よく見てよ、あれ?半分、うーん5/3くらいだね。怒らないでよ、半分じゃないんだし。
ー300年後ー
そんなこんなでデオキシスと仲良く?なった私はそれからのんびりまったり暮らしていた。
たまに迷い込んでくる人を入り口まで送ったり災害が起こったら防いだりと、楽しく暮らしていた。
何故だか最近は寝ている間に食べ物を置いていく人が増えた。
まあ美味しくいただいてるけど、余ったものはこれまたいつのまにか穴の中で増えたピッピ達に上げている。
デオキシス君は外に出るのが好きなので穴には時々帰ってくる感じだ。
その時は色んな話をテレパシーで話してくれる。
それは良いんだけど、「岩様」って言うのやめて。
いや、元々イワークにしては体も大きい方だったけど、特にあの隕石を食べてから異様に大きくゴツくなってしまった。
頭に生えていた角も二本になってしまったし、今では穴に体が入らないから基本的に頭だけ穴から出てる感じだ。
【岩様!いわさま!】
なにさ、人が現実逃避をしてるって言うのに。
【何を悠長にしているのですか!?今世界は大変な事になっているのですぞ!!】
わかっているよ。だからこうして現実逃避しているんじゃない。
どこかのアホが世界の法則を変えて大いなる力を放射した。
それの影響を受けてあらゆるポケモン達が力を増しその野性の本能のまま暴れ出した。
それにより天変地異が引き起こり世の中はおかしくなっている。
私?勿論理性的だ。ほかのポケモンのようにならなかった理由はわからない。
地面が割れて空は狂い荒れている。
西の果てで世界の力の均衡が崩れようとしている。
日にひに麓の村からの貢物が増えている。
このままでは私の安眠が壊されてしまう。
おいしょ、と重い頭を上げて見上げると三日月が出ていた。
デオキシスが天井に開けた穴から這い出ていく。
山の頂上に来ると背伸びをして遠くを見る。
夜中だというのに遠くに真っ赤な灯りとそれを飲み込もうとする黒い雲が見えた。
目的地を決めると地面に潜り一直線に進んでいった。
そして一番エネルギーの荒れ狂っている場所で地面に出て行った。
「イヴァーグ!!」
どうやら良いタイミングで現れたらしい。
二匹は今まさにぶつかろうとしており、それぞれが持てる最大の力をぶつけようとしていた。
火砕流となったグラードンと津波となって押し寄せるカイオーガ。
そしてその間に立っている私。
絶望的な状況だ、グラードンとカイオーガの大きさを1とすると私は3といった所か。
なんだか行ける気もしてきた。
私は渾身の力を込めて渦を描いて回っていく。
削れた地面が風に吹かれて宙に舞う。
どんどんと加速していき巨大なサイクロンと化していった。
全てが終わった後、レックウザがやってきた。
神秘的なその姿はメガ進化をしたのか。
人々の思いを受けて大地に降りたのは良いけど既に戦闘は終わり見知らぬポケモンが一匹が立っている。
さてと、私は空気を読んで退散しようかしら。
後片付けはレックウザに任せて帰ろうとしたところにお声がかかる。
チッ……。簡単には返してくれないのか。
えーと、なになに……人との思いを繋ぐキーストーンを配って欲しい?
えー嫌だよ面倒だし。私はあまりにも外がうるさいから出ただけだし。……いや、冗談だって、だから体を緑色のオーラに包むんじゃない!まったくガリョウテンセイは流石の私でも消し炭になっちゃうよ。
はいはい、行ってくれば良いんでしょ。
追われるようにそこを後にすると石を配って回った。
途中暴走しているポケモンに絡まれたりポケモンマスターに会ったりしながら無事に石を蒔き終えた。
100年分の労働をした。
その分寝かせてもらうぞと誰に言うのでもなく巣穴に戻ると気持ち良く眠りに入る。
寝ている間に岩神信仰なる物ができ、かつて世界中に行くのに掘った穴が世界を繋ぐ大地下道になっているなどと、知るよしもない。
起きてからはまた別のお話。
楽しんで貰えたら幸いです。