ごーすとたうん   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 くにむらせいじ(別名 SEY_Y 又は SAY_Y)です。

 例によって、短編集「アイデアノート ジャパリ・フラグメンツ」に投稿予定だったものが、書いてみたら長くなったため、単品で投稿することにしました。
 このおはなしは、アニメ1期のその後ですが、2期の要素も少し入っています。
 好き勝手に書いています。小説とも台本とも違う、変な書き方をしています。
 オリフレが登場しますが、他の方が考えられたフレンズとは違う子になっています。オリキャラに近いです。公式にいるフレンズも、性格などが変わっています。

 「前編」(第1話)・「中編」(第2話)・「後編」(第3話)の3話です。
 加えて、「あとがき・設定」(第4話扱い)、「おまけ」(第5話扱い)があります。



ごーすとたうん 前編

 

 午後遅く。海岸に近い道路。

 

 ジャパリバスが、舗装された道を、ガコンガコンと音を立てて走っていた。

サーバル  「なんか音ひどくなってなーい?」

 後部座席には、サーバル、アライグマ、フェネックがいた。バスはガタガタと揺れていた。

フェネック 「がりがりいってるねー……お?」

 バスがノッキングのような音を立てて、ガクンガクンと前後に揺れた。

アライグマ 「うっぷ……」

 アライグマが吐きそうになって、手で口元を覆った。

フェネック 「もうちょっとがんばってねアライさん」

サーバル  「がりがりがひどくなったよ? 下から聞こえるね」

 サーバルが床を見た。ガコンガコンという音に加えて、金属がこすれるガリガリという音が聞こえた。*1

かばん   「ラッキーさん、せいびこうじょう? ってまだなんですか?」

 運転席にはかばんがいた。

ラッキービースト(腕時計型)「整備工場マデの時間は……ナビゲーションデータ、更新中……更新中……更新中……」*2

 かばんが、ラッキービーストの丸い画面を見た。*3

かばん   「地図が切れてるね……」

 

【挿絵表示】

 

 ラッキービーストの画面に表示された地図は、右側が階段状に欠けていた。

フェネック 「このまま進んでいいのー?」

かばん   「予定通り東へ向かいます。あれに沿っていけば、ヒトがいた場所に行けるはず」

 かばんが左を見た。モノレールの高架が、今進んでいる道路と平行して通っていた。*4

かばん   「バスを直す場所だから、大きい道のそばに……」

 突然、ガクンと車体が揺れた。

アライグマ 「うっ! おええぇ……」

サーバル  「うぎゃー!!」

かばん   「なに!?」

フェネック 「うしろは見ちゃだめだよかばんさん」

 

 

 しばらく経って。

 

 ジャパリバスは廃墟の町へ入った。低いコンクリートのビルが並んでいた。その1階には商店の跡があった。ビルは汚れて一部が崩れており、ガラスのほとんどが割れていた。一部の建物には、ツタが絡まっていた。地面の舗装も割れたり剥がれたりしていて、剥がれた所に草が茂っていた。放置された自動車は、塗装が剥がれて錆びており、タイヤが溶けたように潰れていた。

かばん   「なんだか不気味な場所だね……」

サーバル  「こういうへんなところって、ヒトがいそうじゃない?」

フェネック 「四角いおっきいのは、ヒトが作ったものだねー」

アライグマ 「もう降ろしてほしいのだぁ……」

かばん   「あれ?」

 バスの行く先の道が、瓦礫に埋もれてふさがっていた。

サーバル  「すすめないよー!」

かばん   「回り道とか……」

 ガコンと音がして、バスが停止した。

かばん   「ラッキーさん? 止まっちゃいましたよ?」

ラッキー  「ほかのラッキービーストを呼んでいるヨ。チョット待っててネ」

 

 

サーバル  「あれ? なんか聞こえるよ?」

フェネック 「がりがりって聞こえるねー」

かばん   「だれかいるのかな?」

アライグマ 「がりがり? どっちからなのだ?」

サーバル  「あっちだよ」

 サーバルが、交差点を右折した方を指差した。

アライグマ 「せいびこうなのだ! バスがなおせるのだ!」

 アライグマがバスから降りて、走って行った。

かばん   「わ! 待ってください!」

フェネック 「アライさーん、そのがりがりは違う音だよー」

 

 

 4人はコンビニのような店の前にやってきた。看板には『リカーショップつぐみ』とあった。店は薄汚れていたが、この町の建物の中では状態が良い方だった。

 

 店内。

 

???   「がりがりがり、かじかじ……」

 

アライグマ 「こんにちはなのだ! バスを……」

 開きっぱなしの自動ドアから 、アライグマが店に入ってきた。

サーバル  「だあれ?」

 追って3人が入ってきた。

 店内のレジカウンターに、緑色の髪と服の、小柄な鳥のフレンズがいて、ワインの瓶のふたを一生懸命かじっていた。鳥のフレンズは入り口に対して横を向いており、店に入って来た3人には気づいていなかった。*5

フェネック 「がりがりって、この音だったのかー」

アライグマ 「おーい!」

 アライグマが、鳥のフレンズの肩をたたいた。

 

鳥の子   「ちーっ!!」 *6

 

 鳥のフレンズが驚いて、カウンターの外に瓶を落とした。瓶が割れ、赤ワインが床に広がった。

 

かばん   「なんかこわれちゃったよ!」

 鳥のフレンズは、ぼーっとした顔で、こぼれたワインを見た。

鳥の子   「ちー…」

 鳥のフレンズがハッとなって、3人を見た。

鳥の子   「あ、えと、いらっしゃいませ!」

フェネック 「ごめんねー、おどろかせちゃって」

鳥の子   「いえ、だいじょうぶです」

 

鳥の子   「わたしはメジロっていいます。ここの、てんいん? です」

  鳥綱 スズメ目 メジロ科 メジロ属

  メジロ Japanese White-eye

  Zosterops japonicus *7

 

かばん   「てんいん?」

サーバル  「わたしはサーバル。この子がかばんちゃんで……」

アライグマ 「アライさんはアライさんなのだ」

フェネック 「わたしはフェネックだよー」

サーバル  「これはなに?」

 サーバルが、床にこぼれたワインを見た。

メジロ   「それはその……わたしもよくわからないんです……」

アライグマ 「ふんふん……」

 アライグマがしゃがんで、ワインのにおいをかいだ。

アライグマ 「刺激的なにおいなのだ」

フェネック 「くだものっぽいけど、ちがうねー」

アライグマ 「ぺろっ……」

 アライグマがワインをなめた。

かばん   「なめちゃだめですよ!」

アライグマ 「ぴ!」

 アライグマがビクッとなった。

アライグマ 「これは、とっても刺激的な……ぺろぺろぺろ……」

サーバル  「ぴちゃぴちゃぴちゃ……」

 サーバルもしゃがんで、ワインをなめ始めた。

かばん   「サーバルちゃんまでぇ……」

サーバル  「なにこれ! ピリピリする……」

 

 

 少し経って。

 

アライグマ 「ちょっと気分がよくなったのだ」

サーバル  「もっとほしーい!」

 サーバルは楽しげだった。

メジロ   「似たようなのなら、たくさんありますよ」

 メジロが店内を見渡した。棚には、ワイン、ウイスキー、日本酒などが並んでいた。缶ビールやカクテル、ソフトドリンクもあった。

かばん   「これあぶなくない? ふたりとも変だし……」

フェネック 「あぶないにおいはしないねえ。つんとくるけど、おいしいかもだよ」

メジロ   「おいしいのもあるんですが、殻がすっごく硬くて……」

 メジロは、ため息をつくように言った。

アライグマ 「今までどうやって飲んでたのだ?」

 メジロが、日本酒の瓶を手に取って、蓋をかじり始めた。

メジロ   「……かじかじ……はしっこを、かじるとっ、あくのもあるんですよっ……がりがりがり……」

かばん   「これは……」

 かばんが、オレンジジュースのペットボトル*8 を手に取り、蓋を回した。カチカチと音がして、蓋が開いた。

メジロ   「ええ!? どうやったんですか!?」

かばん   「え? これは回せば開くみたいです」

 

アライグマ 「まわせばいいのか」

 アライグマが、白ワインの瓶を手に取った。

サーバル  「どこをまわすの?」

 サーバルは『MATATABEER』*9 と書かれた缶ビールを手に取った。

 

 メジロはキラキラした目で、かばんが開けたペットボトル入りオレンジジュースを見つめた。

メジロ   「それぇ! いちばんおいしいやつですぅ!」

かばん   「どうぞ」

 かばんは、オレンジジュースをメジロに差し出した。

 

アライグマ 「あかないのだぁ!」

サーバル  「うみゃみゃみゃ……」

 ふたりは、瓶と缶をいじったり振ったりした。

フェネック 「ふたりともー、むりしないで……」

 

メジロ   「いいんですか! あなたが先に……」

かばん   「飲みたかったんですよね」

メジロ   「ほわあー……」

 メジロは、感動して目をうるませた。

メジロ   「ありがとうございますぅ! ……ごきゅ」

 メジロが、オレンジジュースを受け取って飲み始めた時だった。

 

 アライグマが、マッシュルーム型のコルク栓を乱暴にひねった。

 サーバルが、ビール缶に爪を突き刺した。

 

 ポン!!

アライグマ 「あう!」

 勢いよく飛んだコルク栓が、アライグマの額に当たった。

 ぶしゅー!!

サーバル  「うみゃー!!」

 サーバルは、噴き出したビールを顔に受けた。*10

 アライグマも、噴き出したスパークリングワインを顔に受けた。

 

 

 1時間ほど経って。

 

サーバル  「ふへへぇ……うみゃーん……ぐるる、ぐるる……」*11

 サーバルが顔を赤くして、床に座っているかばんに抱き着き、ほおずりしていた。

かばん   「……サーバルちゃ……んん……」

フェネック 「こっちがはずかしくなるくらいなかよしだねぇ」

かばん   「そ、そっちも同じですよぅ」

 アライグマは、フェネックの膝を枕にして、うとうとしていた。

アライグマ 「……へねっくぅー……」

 アライグマは体勢を変えて、フェネックの腰に抱き着いた。フェネックは、アライグマの頭をやさしくなでた。

 床には、ビール缶と、中身が半分になったワインの瓶が転がっていた。

 

 メジロが顔を赤くして、いちゃついている4人から目をそらし……

メジロ   「……ごく」

 ……缶入りのカシスオレンジを飲んだ。*12

 

ラッキー  「カバン、ほかのラッキービーストが、バスに到着シタヨ」

かばん   「ラッキーさん、“せいびこうじょう”は……」

ラッキー  「整備工場の場所を教エテもらったヨ。バスを整備工場へ移動スルヨ」

 

 

 ラッキービースト(かばん達と一緒にいるラッキービーストとは別)が、バスの運転席に乗り込み、バスが動き始めた。

 

 

 4人が店を出た。

 

かばん   「おさわがせしました」

メジロ   「いえ、とーってもいいこと教えてくれて、ありがとうございましたー!」

 メジロは満面の笑みだった。

サーバル  「ふわぁ、眠くなっちゃった……」

アライグマ 「きもちわぅっ、うええぇ……」*13

フェネック 「アライさん、またやってしまったねぇ」

 

???   「ちちちちちちー!」 *14

 突然、店の前を茶色い鳥のフレンズが通り過ぎ、上昇していった。

 

????  「まてー!」

 茶色い鳥のフレンズを追って、ネコ科のフレンズが走ってきた。

 

ネコ科の子 「まちにゃさぃ……はあ、はあ……」

 ネコ科のフレンズが立ち止まった。

 

サーバル  「狩りごっこだー!」

 サーバルが急に元気になった。

 

ネコ科の子 「はっ!」

 ネコ科の子が、店の前の面々に気づいた。

 

メジロ   「またにげられたんですかー?」

 メジロは、からかうように言った。

ネコ科の子 「に、にげられたんじゃないわ! 手加減してやったのよ!」

 ネコ科の子が店へ近づいて来た。

かばん   「この子はお知り合いですか?」

メジロ   「この子は、この町に住んでるノラネコちゃんです」

 

ネコ科の子 「ノラネコじゃないわよ! イエネコよ!」

 

 

 

 中編へつづく

 

 

 

 

 

 

 

 

*1 がりがり音は、トラクターの後軸のデフあたりから出ています。軸受けや、ギア関係が壊れているようです。他にも、サスペンションなどいろいろな所にガタが来ています。

*2 ラッキーさんは、途中まではデータサーバーから地図データを取得していましたが、電波が弱く、通信が切れてしまいました。整備工場は大まかな位置だけ分かっています。他のラッキービーストから地図データを貰おうともしています。

*3 立体映像にすればよかった……と、書いてから思いました。

*4 地図の緑の線が道路で、青の破線がモノレールです。アニメ2期に出てくるモノレールの高架は、なんであんなに高く作ったのか不思議です。自然環境への影響を少なくするためかもしれません。

*5 コルク栓の上にキャップシールが被さってています。キャップシールは歯で破れるかもしれませんが、コルク栓を道具なしで抜くのは困難です。あと、サーバルとフェネックは耳が良すぎです。

*6 この「ちーっ!!」は、高音で、かわいらしい感じの声です。(元の鳥の地鳴きです)

*7 動物の分類と名前の紹介は、アニメ1期と2期で書き方が違います。(1期:目~英名、2期:綱~学名)本作では、詳しめの書き方にして、英名と学名の両方を書きます。

*8 350mlのペットボトルです。期限切れで、中身はちょっと茶色くなっています。ただ、この店の商品は、時々補充されているようです(どこから来るのかは謎)。

*9 BierとBEERで迷ったんですがBEERで。

*10 瓶と缶は常温で放置されていたため、内部の圧力が上がっていました。

*11 「ぐるる」は喉鳴らし(ごろごろ)です。原作ではサーバルが喉を鳴らすシーンはありませんが、元の動物のサーバルは喉を鳴らすようです。

*12 缶の口(タブ)は、かばんが開けました。

*13 乗り物酔いしていたところにアルコールが入ってひどいことに……。

*14 この「ちちちちちちー!」は、メジロよりも少し低い、普通の高さの声です。 かわいい悪ガキっぽい感じです。




 前編あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 前編の最後でやっとメインのキャラクターが登場しました。中編は狩りごっこです。

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