「さて、帰りますか」
猫に塵取りと箒をやらせるという鬼の所業もあったが、かったるい掃除も終わり後は家に帰るだけである。今日は母鷲は同窓会に出席するとか何とかでいない為足が無いのが欠点だ。
それにしても今日はあれ以降雪ノ下の追求が無かった分余計に怖い。ガクブルものである。由比ヶ浜さんや、何で喋っちゃうんですかねぇ…。
「 Hey you ! Help me ! 」
…今変な声が聞こえた気がするんだがここはスルーするのが吉だな。変に絡むと面倒極まりないからな。
「 …oh. I’m very sad 」
…気にするな八幡。俺の不屈の精神が試されているんだ!
「 Wow ! Your rotten eyes are so cool ! 」
…耐えろ、耐えるんだ八幡。目が腐ってるなんて散々言われてきたじゃないかっ! 無駄に流暢な英語が腹立つだけだ。
「 And your flizz is cute ! Can I grab it ? 」
おい待て、アホ毛を掴もうとするな。遠慮なさすぎるだろ。お前はリア充なのか? リア充ですか、そうですか。完全スルーに持ち込めばヤツも諦めるだろうと思い逃走を図る。
「 Don't ignor me…. I want to interact with you !」
構ってちゃんかよ…。これまた面倒なヤツに当たったもんだ。いい加減諦めて声のする方に振り向くが姿が見当たらない。…え? もしかして幻聴?
「 Look down ! Look down ! 」
言われるがままに下を向くと、鼠がいた。…自然に涎が垂れてきたのは本能の所為だから許してくれ。ほんとだよ? 食べようだなんて思って無いんだからねっ!
「 Thank you ! I love you ! 」
しかしよく喋る鼠だ。夢の国の鼠とは違って低い声の持ち主で無駄にイケメンボイス。恐らく雄の鼠だろう。…なんかゾワっとするな。腐女子が湧きそうだからやめてくれ。
「 Then, can you help me ? 」
「…そういえばそう言ってたな。まぁ見たらわかるんだが、雨樋から引っ張り出して欲しいのか?」
何を隠そうこの鼠、雨樋に挟まっているのである。肥満体質である事もついでに分かってしまう。…今一番要らない情報だな、これ。
「 Yes ! Please pull ! 」
…仕方ない、引っ張らざるを得ない状況に置かれてしまったからには任務は果たさなければならない。一人芝居でおおきなかぶでもやってやろうかと画策していると再び鼠が話しかけてくる。
「 Please do as seriously as possible 」
…一々注文が多い奴だ。敢えて放ったらかしにしても良いのよ? というかお前も俺の心の中を読むんじゃない。
「…ほれ」
スポン
拍子抜けするほど簡単に抜けて吃驚なうだ。…太るって怖いな。俺も適度に運動したほうが良いかもしれん。カマクラみたく引き篭もっててもいいんだがな。
「 thank you ! I’ll repay you someday 」
「いや、別に借りは返さなくていいぞ」
「 Really ? Are you a god ? I call you teacher ! 」
「何故そこにたどり着くんだ…」
俺は神でもないし、師匠になるつもりもない。強いて言うならば只のボランティアする猫である。…あれ? いつからそんなに立派な猫になったのかしらん? 雪ノ下の調教の賜物だね!
「…あー、でも一つ相談があるな」
「 What ? 」
明日の最大の悩みをこのデブ鼠に相談してみることにする。敢えて事情よく知らない人に聞くことによって別視点の回答を得ることが出来るのだ。相談なんて生きてきた中で片手で数える程しか無いがな! …自分で言ってて悲しくなってきたわ。
「 Then, could you fawn on her at full strength ? 」
…俺が猫じゃなかったら即死レベルの返答だった。fawn on が “猫などが人間に甘える” 、 “人間に媚びへつらう” の二つの意味があるから間違って捉えると事件になる。生存ルートと死亡ルートの二つのみ。なにそれ雪ノ下ルート始める前からから鬼畜すぎない? そもそも甘えたところで生きて帰って来れるかも疑問だが。
「…まぁ参考になったわ、サンキュな」
「 Sure ! 」
さあやって参りました、夏休み初日。学生が喜ぶ期間でもあるのだが俺は全くそうは思わない。
そもそも夏休みとは暑くて勉学に集中できないから学校を休みにしようと設置された物であり、課題とやらに追われる筋合いは全く以って無いのである。寧ろ最近はエアコンの普及により何処でも快適に過ごせる様になったから夏休みは要らないまである。
…まぁ高校三年生でこんな持論を持ち出している時点で相当やばい事は自明の理なのだが、生憎俺は猫なので受験勉強とかしなくてもいいのだ。あれ? 俺もう勝ち組?
だがしかし、猫である俺にも課せられた課題、八幡レンタルがある。今日は雪ノ下の番で一昨日の出来事を根掘り葉掘り聞かれるというおまけ付き。そういう訳で朝からテンションだだ下がりなのだ。
「はぁ…」
「溜息つくと幸せが逃げてくよって言われなかったの? お兄ちゃん」
「俺は幸せを最初から持ち合わせていないから大丈夫だ」
「悲しい事実だねー」
そうやって棒読みで返される方が悲しい事実だよ、小町ちゃん…? でも、少し気分は晴れた気がする。家族との時間はストレス解消にぴったりだからね!
「んじゃ、雪乃さん来てるから後はよろしく! 小町友達と遊んでくるから!」
おい待て。由比ヶ浜といい雪ノ下といい、俺の家にやってくるの流行ってるの?
「よろしくね、比企谷くん♪」
…何故にそんなにテンション高いのでせう? …動揺し過ぎてウニ頭の口癖が伝染っちまったじゃないか。多分そげぶされるのは俺なんだよなぁ…。
「ではまずお風呂に入りましょうか」
「…ファッ!?」
…え? 逆そげぶを食らった気分なんだが。いやこれ普通に困惑ものなんですが…。ゆいゆいに嫉妬でもしましたのん?
「…少し、悔しかったのよ」
可愛いかよ。
遅れに遅れてすみませんでしたぁ!(ジャンピングドゲザー
英語苦手なのに調子こいてこのようなキャラを生み出してしまった自分を恨みたい…。果たしてこの英語が正しいのかすら不安ですが。なんなら添削して頂けると助かります。…fawn onは間違ってないよね?
と言うわけで言い訳盛りだくさんの15話でございました。本作はこれからもしっかりと続けるのでお願いします。
ではまた次回に。