材木座と戯れてからはや五日。俺はこの日が楽しみで楽しみで仕方がなかった。そう、戸塚にレンタルされる日なのだっ! ドキドキワクワクメロメロな俺は中々寝付くことができず、やや寝不足気味だ。遠足前日の小学生かよ。
襲いくる眠気と戦いながら小町と朝食を食べ、カマクラと雑談し、鷲に
ピンポーン
その音が聞こえた瞬間、玄関先まで猛ダッシュ。ここ二週間ほど戸塚ニウムが摂取できていない為、本能がそうさせるのだ。
「こんにちはー、……わっ! びっくりしたぁ、八幡驚かさないでよぉ」
会えたのが嬉しすぎて飛びついたら可愛い反応が見れた。戸塚可愛いよ、とつかわいい。
「…小町の苦労はなんなんだろう」
「あはは…、僕も手伝おうか?」
「ほんとですか! いやぁ、助かります!」
何の話をしているのかは分からないが天使同士の会話を見ていると心が癒される。戸塚になら小町をあげてもいいかもしれんな。
そんなこんなでやってきました、戸塚の部屋! 部屋には「武勇伝」と書かれた謎のポスターや修造カレンダーが置いてある。……少し “男らしさ” を履き違えているような気がするが、敢えて言わないでおく。戸塚は戸塚のままでいいんだ。
「八幡、何して遊ぼっか」
「戸塚の身体で鬼ごっこ」
そう言うが早く、戸塚の身体によじ登り全身を駆ける。これが俺の編み出した戸塚堪能法である。追ってくるは幸せ、逃げる先も幸せ、夜中に考えた甲斐があったものだ。
戸塚も「ひゃぁ!」と叫んだものの、乗ってくれたようで俺を捕まえようと手を伸ばしてくる。
「そぉい」
しれっと服の内側に滑り込む。ここならば五感全てで戸塚を感じることが出来る。……決して変態ではない。ほんとだよ?
「ひゃわっ?! く、くすぐったいよう…」
そんな戸塚の色っぽい声が聞こえる。俺は本能のままに服の中を這い回る。戸塚は立っているのもままならないのか、ぺたんと床に崩れ落ちた。
「はちまぁん……、ひゃぅっ! …もう耐えられないよぉ」
エ、エロい…、そこらの女子より女子々々してる感じ様だな。経験ないから分からないが。
「も、もう! いい加減にしてよぉ!」
お怒りになられた戸塚も可愛いんじゃぁ。とは言えこれ以上やって怒らせるのも嫌なので素直に
__「やった! 一番乗り!」
__「戸塚が結婚、戸塚が結婚……」
__「よし! 一位だ!」
__「バナナまじ許すまじ……」
__「全部僕のになったっ!」
__「黒一点もないぜ……」
__「勝ったぁ!」
__「エッジにインはないだろう……」
それからというもの、遊びに遊んだ。ちょっとした回想でこれだけ出てくるのだから、多種多様なゲームをしたことになる。……この回想だけで四種類のゲームを当てられる人はいるのだろうか。
「ちょっと遊び疲れちゃったね…」
そう言いながら満面の笑みを此方に向けてくる。俺のハートが狙い撃ちされてるぅ! ここは俺も満面の笑みで返さねば。
「おう、なんなら遊び足りないまであるぞ」
……普段から笑っていない所為か引き攣った笑みしか出来ない事を忘れてたぜ。表情筋が
「ちょっとお散歩に行こっか」
俺にはその笑顔は眩しすぎる……。
「あ! あの時のねこさんだ!」
すいっと後ろから持ち上げられる俺。いきなりだったもので全身の毛が逆立ってしまった。え? 誰? もしかして誘拐?
「あ、けーちゃん。やっはろー」
「やっはろー!」
阿保っぽいと貶していた挨拶だが戸塚が使う分には全く問題はない。寧ろどんどん使って欲しいくらいだ。
しかして成る程、けーちゃんだったか。あの時と言われると尻尾の件を思い出すが今となってはいい思い出である。何事も経験なり。
だがしかし、ここで一つの問題が浮上する。けーちゃんは俺を只の野良猫だと思っている。あの時はネコリンガルを持っていなかったからな。故に取れる選択肢は二つだ。
一、野良猫のフリをする
二、自身が八幡であると打ち明ける
戸塚なら言わずとも察してくれるだろう。なんなら以心伝心しているまで……
「あ、因みにこの猫八幡なんだよ〜」
……あるな。あの戸塚が此方に悪戯顔を向けている。察した上でその上を行くとは…、恐るべし。いや待てよ、これが所謂友達のやり取りなのかっ!?
「はちまん…? うーん、あっ! はーちゃんだ!」
「おお、俺覚えられてた」
「はーちゃん喋った!」
その後けーちゃんにもよくわかる解説を挟みつつ、二人と一匹で散歩をした。偶にはこんな時間を過ごしたいものだ。亀さんの言い分もなんとなくわかった気がする。
「そういえばけーちゃんさっきまで何してたんだ?」
「んっとね、さーちゃん探してた!」
そう言えば沙希だからさーちゃんってあだ名だったか。けーちゃんのお陰で川なんとかさんの下の名前を思い出すことが出来た。次に会った時はさーちゃんと呼んで差し上げよう。
「探してたんだったら移動しちゃダメだった気がする…」
おお、さすが俺の戸塚。今日も冴え渡っていらっしゃる。散歩もそろそろ切りがいいところまで来たので引き返すことにする。
「けーちゃん!」
「あ! さーちゃんだ!」
とてとてとて、という擬態語が聞こえてきそうな勢いでさーちゃんの元へ走っていく。
俺が。
「さーちゃんのシスコン!」
「……ぶっとばすよ? あとあんまり近づかないでくれる?」
さーちゃん呼ばわりが特に言及されなかったということは問題なしという事だな。今後も優先的に使っていこう。
「しすこんってなぁに?」
「けーちゃんは知らなくていいからね」
「あはは…、あんまり川崎さんをいじめちゃダメだよ?」
「イエス、サー!」
そうして、癒しの一日は過ぎていった。
「ただいまー」
「おかえりー、お兄ちゃん」
「会えなくて寂しかったわよぉ」
「八幡殿おかえりでごんす」
「楽しめたかの? 八幡や」
「おかえりやで、八幡」
玄関を開けたらみんなからおかえりコールを貰った。心がじんわり暖かくなった気がする。因みに母親は今日も残業で居ない。……あれ? 一人多くね?
「八幡殿! 私ですよ! 私! me ! 」
「日本語…だと?!」
「いつから私が日本語を喋れないと錯覚していた?」
「言いたかっただけだろお前」
しれっと、鼠が仲間に加わった。
「今日の朝から居たんだけどなぁ…」
遅くなって申し訳ありませんでしたm(_ _)m
毎日200文字くらい書いて100文字消してを繰り返してたらいつの間にかこんな時期になってました。(言い訳
ではまた次回に。