やはり俺の猫生活はまちがっている。   作:マクロ経済大回転

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掻き乱される、猫

__朝の陽射しが部屋に満ち

  絶対不変崩壊の報せ

  鈍行列車の如き刻

 

「……お兄ちゃん何黄昏(たそがれ)てるの?」

 

「黄昏なきゃやってられない時だってあるんだよ」

 

×  ×  ×

 

 小町と一緒に鼠の歓迎パーティーをしていた時の出来事だ。

 

「なぁ、鼠。俺と最初に会った時、何故英語で話しかけてきたんだ?」

 

「日本語で話しかけたら大体の奴が無視するからでごんす」

 

「何その悲しい理由」

 

「みんな『ひっ?! 幽霊?!』って言って逃げていくでごんす」

 

「……どんまい、鼠」

 

「あとはまぁ、人選の為でごんすかねぇ」

 

「人選?」

 

「英語でも構ってくれる相手が理想なのでごんす」

 

「……何か陽乃さんみたいだな」

 

「呼んだ?」

 

 ぬっと玄関の扉から顔を覗かせて陽乃さんが割り込んで来る。あれ? 玄関の鍵閉めてたはずなんだけどなぁ。怖っ。

 

「お呼びじゃないので帰ってください、どうぞ」

 

「またまたぁん♪ 素直じゃないんだから」

 

「自分には素直なので先の言葉も本音です。ですからどうぞお帰りください」

 

「つれないなぁ〜」

 

 そう言って居間の椅子に座った。……話聞いてました? というかそこは帰る流れでしょう。

 

「で、いきなりどうしたんですか陽乃さん!」

 

 先程まで惚けていた小町が急に復活する。コミュニケーションお化けに切り替わった小町に最早敵なし! ……陽乃さん相手じゃ無謀か。

 

「今日はねぇ……比企谷くんに特大のプレゼントを持ってきました! いぇーい!」

 

 そう言いながらパチパチと拍手する陽乃さん。それにつられて小町も「お、おー!」と拍手し始める始末。ノリが良い鷲と鼠も拍手している。亀さんは動作が遅い為、合掌しているかの様に見える。かく言う俺も気付いたら拍手していた。これがリア充の能力(ちから)なのかっ……!

 数瞬の後に面倒くさい事を持ってきたのだと把握するが時既にお寿司(おそし)。一冊の本が手渡されたのだ。

 

「……? 何だ、只の文庫本ですか」

 

「表紙を見てからでも言えるかな?」

 

 ご丁寧にラッピングされた文庫本の表紙はまだ見えない。しかし、非常に嫌な予感がする。動物の本能とでも言うのだろうか。

 恐る恐る、包装紙を開けていく。……ちらっと猫の尻尾が見えた様な気がするが只の猫の写真集だろうか。

 

「……『やはり我の同志が猫になるのはまちがっている。』だと?」

 

 いや、薄々感づいていたけれども。材木座、お前かぁ!

 

「あははははっ! やっぱり比企谷君は面白いなぁ……」

 

 余程俺の苦虫を噛み潰したような顔が気に入ったのか大笑いしてくる。亀さんもタイトルの意味がわかったのか「ふぉっふぉっふぉ」とスロー再生の如く笑っている。残りは(おつむ)が弱いので理解できていない様だが。

 

「……で、何でこんな真似を? まさか出版する訳でもないでしょう?」

 

「そこはちゃんと説明してあげるから安心していいよ!」

 

「……」

 

 陽乃さん曰く、丁度十日前の七月二十七日の事。雪ノ下姉妹で百合百合していた所、材木座が小説のネタ探しに取材に来たそうだ。そこで何を思ったのか材木座の書く小説に興味を持ったらしく、ネットにすら載せていない作品を製本化しようという流れになったらしい。雪ノ下家って何でもできるのな……。

 粗方出来た材木座の作品を検閲した後に俺に確認を取らせたと。あの時はネットに上げても叩かれるだけだから良いだろうと思い頷いてしまったが、まさかこんな展開になるとは思いもしなかった。

 

__そう、既に出版が決定されているのだ。

 

 

×  ×  ×

 

 

 気付けば曜日が火曜日に変わっていた。あれからよくよく考えてみたが意外と悪い事ではないという事が判明した。いや、寧ろメリットが大きいかも知れぬ。

 少し考えてみよう。俺の夢は(うち)を動物園にし、楽して金儲けしようというものだ。金儲けをするには客が必要となる訳で、一定以上の興味を持たれなければならない。今の所俺の猫化は有名らしく、この状況下で出版がされれば更に注目されやすくなる。

 しかしデメリットもある。今の所住所などは割れていないが、追っかけ(ストーカー)が確実に増える。外出を控えれば良いのかもしれないがいつかは来る未来だ。そう悠長なことも言ってられないので、対策を練らねばならない。

 ……やっぱめんどくせぇ。全ては材木座のせいだな、うん。

 そう結論付け、漸く襲ってきた眠気に身を委ねた。

 

×  ×  ×

 

 その頃、私達は動物会議を開いていた。

 

「はいはいちゅーもく! これから動物会議を開催しまーす!」

 

「やんややんや、でごんす」

 

「議題はなんじゃね?」

 

「それはズバリ、動物少なくね?! です」

 

「確かに猫二匹と鷲と亀と鼠じゃ少ない気がするでごんすが十分なのでは?」

 

「八幡は家を動物園にするっちゅう夢があるんや。それを叶えるには動物が少ないんと違うか?」

 

「それは知らなかったでごんす……」

 

「今の所水生生物が居ないのよねぇ」

 

「儂はリクガメじゃしのぅ」

 

「かと言ってマグロでも連れてきたら呼吸できずに死んでまうしな」

 

 全員、仲間を増やすために一生懸命知恵を絞っている。四匹寄れば文殊の知恵だね! 全ては八幡の為!

 

「よし、閃いたぞ。海豹(あざらし)はどうじゃ」

 

「海豹ねぇ……。哺乳類だし地上で死ぬ事は無いし、サイズも家に収まる大きさ……。完璧じゃない! 海豹を狙っていきましょ!」

 

「脇に挟める大きさだと尚良じゃな。持ち運びが便利じゃ」

 

「了解でごんす」

 

「明日…っ言うか今日だけど、起きたら皆で探しに行くわよ! ……あ、亀さんは留守番よろしく」

 

「亀さんが仲間に入りたそうに見つめておるぞ!」

 

「だが断る!」

 

「ぐすん」

 

 そうして、夜は更けていった。




毎度遅くなりすいませんm(_ _)m

はるのん書くの結構難しいですね…。他の作者さんの文章力が如何に凄いかよく分かった今日この頃です。

ではまた次回に。

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