やはり俺の猫生活はまちがっている。   作:マクロ経済大回転

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まさかの、猫

 目が覚める。昨日の出来事が夢だったら、と思ったが生憎現実だったらしい。手を見れば肉球が、後ろを振り返るとピコピコ揺れる尻尾が、頭に触れるとアホ毛が。最後は変わらないな。さぁ、猫生活二日目頑張りますか。

 

「おはよう、小町」

 

「おー、おはよお兄ちゃん。待ってたよ」

 

「ん? なんだそれ」

 

「じゃじゃーん! 猫になったお兄ちゃん用に作りました、ミニリュック! ネコリンガル入れるのに最適だよ! あっ、これ小町的にポイント高ーい!」

 

「はいはい高い高い。…まぁ、ありがとな小町」

 

 するっと手を通すと身体にフィットする。おお、生地も柔らかくて背中が蒸れないとは…ポイントカンストだよ小町ちゃん。四足歩行する時にリュックが前方にずれないように尻尾を通す穴まで完備してある。売りに出せちゃうレベル。

 

「そういえばお兄ちゃん、キャットフード食べる?」

 

 人間だった時はなんとも思わなかったが猫になってからキャットフードが美味しそうに見えて堪らなかったのだ。興味本位で頷く。

 

カリカリ…

 

 柔らかな食感と芳しい香り、口の中で広がるジューシーな肉…。うまい。ただその一言に尽きる。

 

「でも毎日これ食べてたら飽きてくんねんな」

 

 隣で一緒に食べていたカマクラがそう言った。確かに…、今度違うキャットフードでも買ってこようかな。小町に連れて行ってもらおう。

 

「あ、食べ終わった? じゃあ学校行こっか。平塚先生が正門の前で待ってるってさ」

 

 …おかしいな、急にお腹がギュルギュル言い始めたぞ。最早逃げる術は無くなったのか…。

 小町が俺を肩に乗せて家を出発する。大丈夫か? どこぞのサトシくんの相棒と同じ重さだぞ、俺。

 

×  ×  ×

 

 小町の中学校に着くと優しく地面に降ろされた。一回も降ろさなかったけど肩大丈夫なのかしらん?

 

「あー、肩凝った。帰りは小町が迎えに行くから待っててね! じゃねっ」

 

 そんなおじさんみたいな声を出すんじゃありません、小町よ。そこまでして肩に乗せること無かったのに、と考えながら歩を進める。

 暫く歩くと正門前に平塚先生が立っているのが見えた。あと人まさかずっと待ってたんじゃないだろうな、と思わせるほどそわそわしていた。…ちょっと驚かせてみるか。

 

 

 学校の正門には行かずに少し遠回りして平塚先生の横顔が見える位置に移動し、消火器ボックスを足場に学校の塀に登る。肉球を上手く使いながら平塚先生へと迫って行く。そして…

 

「首は貰ったぁぁ!」

 

ひしっ

 

「…衝撃ノォ…ファース、ト…」

 

 平塚先生が此方を向いて固まっている。因みに既に先生の前に飛び降りている。

 

「猫を殴れるわけないだろォォ!」

 

 登校していた生徒の視線が一気に集まった。あ、やべ。これ端から見たら動物虐待してるように見えるな。大事にならない事を祈っておこう。

 

×  ×  ×

 

 首根っこを掴まれてぶーらぶーら。どうも、八幡です。掴んでいる張本人は頭を抱えている。

 

「はぁ…、お前という奴は。いつからそんな悪戯小僧になったんだ?」

 

 恐らく猫になったからでしょうね。行動が単純化してますから。理性の化け物から本能の化け物へとジョブチェンジだ。

 

「まぁいい。折角だ、授業でも受けてきなさい」

 

「え゛」

 

「なんだ? 嫌なのか?」

 

 今度は平塚先生が悪戯な顔を浮かべている。攻守交代だと言わんばかりのオーラ。ふえぇ、怖いよおぉ。

 まぁ、嫌がっても連れて行くけどな、と言い放ち俺を掴んだまま教室へと向かっていった。俺の拒否権は何処。

 

×  ×  ×

 

ザワ…ザワ…

なんで猫がいるの?

しかもあれ? 誰だっけ、あの本読んでる時にキモい顔してる人の席に座ってるよ?

えーっと、確かヒキ、ヒキ…ヒキタニくんだっけ

あー、そんな人居たなぁ

でもやっぱ猫可愛いよね!

ね!

触ってもいいのかな…?

うーん、いいんじゃない?

 

 やっぱり超目立ってる。ぼっちは注目を浴びることに慣れていないから萎縮しちまうんだよ。みんなの目線が怖いよぉ…。

 

「あ、やっはろー、ヒッキー!」

 

 !? いきなり爆弾投下しやがったぞ、こいつ。何やってくれてんだ、と目線で訴えかけるも首を傾げるだけだ。ちょっと可愛いのが余計に腹が立つ。

 

ザワ…ザワ…

え? ヒッキーって言ったよ? 結衣

えっと、ヒッキーってあのヒキタニくんの事だよね

で、でも猫に向かって言ったよ?

ヒキタニくん居ないもんね…

どゆーこと?

 

 漸く自分の失態に気付いたのか由比ヶ浜がこっちに向かって手を合わせてくる。そんな事したら余計にバレそうなんだが…。はぁ、もうどうとでもなーれ☆

 

キーンコーンカーンコーン

 

 一時間目の開始を知らせるチャイムが鳴り、由比ヶ浜はいそいそと自分の席に戻る。暫くした後数学の先生が教室に入ってきた。生徒に遅刻するなよと言っておきながら先生って大体授業に遅刻するよな。と、忌々しい目で先生を見ていると此方に目を移してきた。

 

「授業始めるぞー……は?」

 

 テンプレ、ありがとうございます。




午後になって気付きました…。今日は八幡の誕生日じゃないかっ!
という事で第5話を執筆した次第です。
結局今日も二話投稿するという…。

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