問題:俺は今どこにいるでしょうか。
答:空。
あ…ありまま今起こったことを話すぜ! 日向ぼっこをしに屋根の上で昼寝していたと思ったらいつの間にか空を飛んでいた。な…何を言ってるかわからねぇと思うが俺も何をされたのかわからなかった…。夢だとか妄想だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。
そう、鷲に捕まったのだ。普通、鷲は千葉に生息しておらず山岳地帯を住処としている。こいつの両翼は目測でも二メートルを超える大きさだ。かなり大きい、即ち強い種である事がわかる。レンタルされる事が決定された翌日からこれだ。面倒事が増えるなぁ…。
案外寝心地が良かった鷲に揺られる事約一時間半。漸く地面に降ろされる。…もう少し揺られていたかった。
「お願い! わたしじゃ面倒見切れないからあの子たちの面倒見てくれない?」
ちょっと待て。色々突っ込みたい事があるんだが。まず第一に、何故鷲の声が聞き取れるんだ。もしかして動物全般と会話できるのかしらん? 第二に、面倒が見切れないとは何ぞ。多頭飼育崩壊でもしちゃったの?
「んー、ちょっと多いんだよね…。四羽」
俺の周りエスパー多過ぎないっすかね…。呆れ過ぎて大志の口癖が
「巣に引き篭もってて、捻くれてて、虚勢を張ってる、そんな子達なのよ…。ああ! 私の育て方が間違っていたのかしらっ!」
予想していた物と真逆だった。俺みたいな奴が四羽もいるとか今まで精神崩壊しないでよく耐えられたな…。まぁ育児、元い世話が大変な事は分かった。だが何故そこで猫である俺を連れてきたんだ。猫は幼鳥を食べる事もあると言うのに。
「んー、なんでかしらね。うちの子たちと同じ匂いがしたから、かしら」
動物の本能凄ぇ。まさか鷲に見抜かれるとは思いもしなかったぞ。
「お願い、うちの子を何とかして! 二日経ったら貴方の住処に帰すから!」
そんな鬼気迫った表情で詰め寄られたら頷くしか無いじゃないか。断った後にその四羽に死なれたら後味が悪いからな。うん、仕方ない事なんだ。
「…はぁ、まぁいいですけど期待しないでくださいね。それと俺の家に二日後に帰るから安心してくれって伝言してくれると助かるんですが」
「本当? 助かるわぁ〜。伝言なんて軽い物よ、私に任せなさいっ」
こうして、俺の二日間限定の世話係が決まった。
沈黙。それがこの場を支配していた。現在母鳥は伝言を伝える序でに餌を探しに出掛けている。軽くこの依頼を受けてしまったが早々に後悔し始めた。全員が全員他人に不干渉なのだが、俺という名の異物が混ざっているお陰でチラチラと視線が交差する。つまり何が言いたいかと言うと、…気まずい。
「はぁ…」
俺が溜息をついただけで四羽全員の肩がビクッとなる。君ら案外仲良いのね…。因みに引き篭もり隊のメンバーは雄雌それぞれ二羽ずつで、オセロの初期配置状態で、風車のように互いが背を向けて座っている。俺はその中心にいる。
渋々、頃合いを見計らって話し始める。
「これは俺の友達の友達の話なんだが…」
毎度お馴染みの断りを先に言っておく。決して俺に友達がいないわけではない。…ほんとだよ?
「そいつは周りのみんなからの憧れの対象だそうだ。みんなから求められる発言や行動、即ちみんなの理想。それに応える事がそいつが選んだ道だったわけなんだが、そいつには友達と言える存在が皆無と言っても差支えないレベルだった」
俺はそこで一旦区切る。四羽はそれこそ顔は外に向けているが、しっかり聞いているようで耳と思しき部分はヒクヒク動いている。これで聞かれていなかったら即座に帰宅を希望した事だろう。
「だがそいつにも友達…らしき人物はいる。よく皮肉を使った口喧嘩もするそうだ。…あとは自分達で考えろ」
途中からめんどくさくなったので適当に投げる。なんか、らしくねぇな、俺。
__俺は君が思っているほどいい奴じゃない。
ふと、奴の言葉を思い出す。ああ、俺だってそうだ。お前が思っているほど
少し、前進したのだろうか。オセロ配置は変わらないが各々の座っていた向きが反転した。こう座られると俺が神への生贄として捧げられているみたいだ。若しくは新手の宗教団体。…変に言及するのはやめておこう。
「戻ったわよー。…あら?ふふふ、上手いこといきそうね」
仕事の早い母鳥が戻ってきた。お宅まだ二時間しか経ってませんぜ、どんな超速で飛んだんすか。俺は数学が苦手だから分からないがユキペディアに聞けば一発だろう。
__貴方の家から鷲の巣までの距離をxとすると行きに掛かった時間:1.5時間と鷲の飛行速度:y(km/h)から次の式が立てられるわ。x÷y=1.5これを計算すればx=1.5yという事がわかるわ。次に往復に掛かった時間は2時間。往復だから距離は2倍よ。往復した時の鷲の飛行速度をzとすると3y÷z=2となってz=1.5yとなるわ。つまり貴方が最初に連れ去られた速度の1.5倍のスピードで往復してきたのよ!
…っは! 何か知らんが数学の授業を受けていた気がする。そしてドヤ顔の雪ノ下が一瞬見えた。だが寝ていたから分からんな。まぁ気のせいだろうと思い、頭の中のゴミ箱へとシュートした。
お昼から日向ぼっこをしに屋根に登っていったお兄ちゃんが見当たらない。でも屋根の上に登るなんて事は怖くて出来ない。うーん、カマクラに見に行ってもらう? …ダメだ、私動きたくないですオーラをぷんぷん放ってる。あー、もう! どうしたらいいのさ!
ピンポーン
ん? 小町何かネットショッピングしてたっけ。…してないなぁ。じゃあ結衣さんたち?でも基本あの人たちは事前にメールを送ってくれる。となると…、中二さんくらいかなぁ?
「はいはーい、どちら様ですかー? ……ん?」
小町の目がおかしくなったのかな、目の前に鷲が居るんだけど。手の甲を抓ってみても痛いだけ。どうやら夢でもないらしい。
「え…えっと、何の用…ですか…?」
鷲が咥えていた手紙を此方に差し出してくる。…読めってこと?恐る恐る手紙の封を開け、目を通す。
小町へ
お兄ちゃん鷲に攫われちゃいましたっ。てへっ☆
なんか知らんが世話係に任命されちゃったから帰ってくるのは明日の夕方になると思う。
まぁ、そういうことだから。後はよろしく。
今日は、小町の絶叫が木霊した。その声は総武高校の校内で反響したとかしていないとか。
多機能フォームで少し遊んでみた回。
何だかんだで4日連続で投稿してますが果たしていつまで続くのだろうか。
ではまた次回に。