やはり俺がトニカクカワイイ美少女と結婚するのはまちがっている。 作:スキート
「知らない天井だ……」
俺が人生に一度でも言っておきたかったセリフを口にし、周りを見渡す。
「ま、病院だよな」
俺は目を覚まし、一ヶ月半程の入院をすることになっていた。
奇跡的に助かり、医者からは重い怪我とも伝えられながらも、一ヶ月半程で完治すると言われていた。
医者は俺のありえない回復力を目の当たりに、
「あんな怪我からどうやって…………」と、驚きを隠せない様子で俺を見ていた。
……俺は目だけじゃなくて体もゾンビだったんですかねぇ……と思いながらも、入学式までには退院できる聞き、少しほっとしていた。
そして、肝心の美少女なのだが、あの事故からは一度も合っていないし、家族に聞いてもそんな娘は知らないとしか言われなかった。
当たり前か……。会ったばかりの血まみれで腐った目の男なんて気持ち悪いにも程がある。
あのすっ飛んで意味のわからない質問は彼女なりに俺を振るやり方だったのかもしれないな。
怪我もそれなりに治り、退院した後の俺は、入学式の日にもう一度事故に遭う。
同じ病院に入院したため、医者からは「また君か……」と呆れられていた。
そこからの2年間。勿論一言で語りきれないような色々な出来事があり、俺は18歳になった。
「まぁ……。混乱する気持ちはわかるけど……。とりあえず……中に入れてくれるとありがたい」
司と名乗った美少女は、髪をかきあげこちらに微笑みかけてきた。
そんな仕草にドキッとした俺は彼女に言われた通り家の中へと案内しようとするが……。
……俺、一人暮らしじゃないじゃん。こんな美少女家に入れたら小町と両親が煩そうじゃん……。
カチンと動きを止めた俺に彼女は頭にハテナマークを浮かべた。
「お兄ちゃーん! 誰か来てるのー?」
トテトテと可愛らしい音を立て世界一可愛い我が妹が来襲した。
「やぁ。こんばんは」
「……? 誰?」
「あ……いや。小町……これはだな……」
「八幡くんのお嫁さんだよ」
「え────────ッ‼︎⁉︎」
小町は驚いたような悲鳴を上げ、俺の方をじっと睨む。
……おいおい。小町ちゃん。俺を睨むのはお門違いってもんだよ。だって俺もわかんないんだから。……それとこんな夜中に近所迷惑でしょまったく。
俺は小町からソッと目線を逸らすと、「はぁ……」と、露骨なため息を吐き、彼女の方を見据えた。
彼女の笑顔を見るや否や、小町はニコリと笑顔を瞬時に作り出し、お客様を迎える体制を整える。
……この妹。我が妹ながらに恐ろしいぜ! ……え? 本当に俺の妹なの?
「さーさー。すみません。上がってください」
小町はリビングの方へ手招きをし、彼女を部屋に迎い入れる。
運がいいことに、両親は社畜のように働いた体を休めるためにもう寝室で眠りに入っている。
「えーっと。お名前は?」
リビングにある机に彼女を座らせ、向かい合うように俺と小町が座る。
「私の名前は月詠司。そろそろ性が月詠じゃ無くなるから司と読んでくれ」
「え⁉︎ はい‼︎」
「何テンパってんだよ……」
あまりの出来事に頭がついていかない小町は柄にもなくテンパっていた。
勿論俺もテンパってはいるが、何がなんだかよくわからないので考えるのをやめた。
「あ‼︎ すみません‼︎ お茶いれます‼︎」
「ありがとう」
アホみたいにテンパる小町を尻目に彼女は軽くお礼を言う。
「ああ。八幡くん。大事な話があるのだが」
「……その大事な話って言うのは?」
彼女は机の上にスッと折られている紙を置いた。
「これは?」
「婚姻届」
「「─────‼︎」」
俺と小町に電撃が走った。小町なんか入れていたお茶盛大にこぼしてるし。
「「…………」」
「えーっと。妹さん? お茶溢れたけど大丈夫?」
「…………」
「ええええええええええー⁉︎ こここここここんいんとどけー⁉︎」
本来なら驚く筈の俺よりも小町が驚きまくっている。
「そ、そんな驚かなくても……」
小町の高い声にキーンとしたのか彼女は耳を塞いだ。
「だってあの日約束したじゃない。結婚してくれたら付き合うって……そしたらすぐOKの返事が来て……」
「た、確かにしたが……」
「…………じゃ……、この話はなかったことに……」
彼女が婚姻届をしまおうと手を伸ばそうとするが……。
「スススススストーップ‼︎ お、お兄ちゃんが結婚するって言ったのなら守るべきだよ‼︎ わざわざうちにまで出向いて貰っちゃってるのに‼︎」
「……え? 小町?」
いきなりヒートアップした小町に俺は戸惑いながらも彼女を見た。
確かに見た目はとてつもなく可愛いし、見てるだけでこちら側が殺されそうなくらい可愛い。
だけど、だからこそ俺なんかでいいのだろうか? 目以外は整っている自身はあるが、目が強すぎて全部台無しにしてるし……。
「お、俺なんかで良ければ……」
「私から来ているんだから嫌なわけないだろう」
「……ですよね」
「あっ! とりあえずペン持ってくるね!」
「お、おう」
小町がペンとハンコを持ってきてようやく、俺は婚姻届を開いた。
「私の分はもう書いておいたから」
そう言われてもう一度婚姻届を見ると、彼女の名前も記されていて、証人の欄にもしっかりと名前が記されていた。ちなみに証人はハンコがあれば誰でも良かったりする。
「あ、印鑑と戸籍謄本と……本人確認書類とかいるんだけど……持ってる?」
「そりゃまぁ……」
俺は小町が持ってきたペンを手に取り、自分が書くべき欄に名前を書き始めた。
本当にいいのだろうか? 完全にその場の勢いに飲まれて書いてる気がして仕方がない。
彼女は俺を騙そうとしているのではないか。そんな疑念が俺の頭をよぎりまくった。
だが、俺の隣に座る小町の目はそれはもうキランキランと輝いており、俺はもう名前を書かざるを得なかった。
「ほい。書けたぞ」
婚姻届を彼女に渡し、彼女は中身を確認した。
「比企谷……比企谷……。ふーん比企谷───『比企谷 司』……か……」
彼女は微笑みながらそう言った。そんな彼女の様子にドキッとしてしまう。
「うんうん、新しい私の名前。なかなか良い響きだ。気に入った」
「お……おう」
「お互い不安はあるだろうし、まぁ大変なこともあるだろう。でも人を見る目はあるつもりだし、何も嘘は言ってないし、何より私が信じた人だから──────」
彼女は一旦言葉を区切り、こう続けた。
「ふつつか者ですが……よろしくお願いします」
「「こ……こちらこそよろしくお願いします……」」
何故か小町も一緒にしていた。