やはり俺がトニカクカワイイ美少女と結婚するのはまちがっている。 作:スキート
「さて……では行こうか」
「行くって……こんな夜中にどこ行くんだ?」
「そんなの……決まっているじゃない」
彼女はさも当然かのように俺に答えを告げた。
「市役所。婚姻届……せっかく書いたんだから受理してもらわないと」
「そりゃそうか…………。あー小町。俺たち婚姻届出してくるから寝てる親父たち起こして説明しといてもらっていいか?」
「それはいいんだけど……小町もよくわかってないっていうか……」
「大丈夫だ。俺もよくわかってない。親父たちには結婚したとでも伝えといてくれ」
「あ、あいあいさー」
俺でもこんなにスムーズに進んでいることにおかしい気がするのだが、何故かこの現実をさらっと受け入れている自分がいた。さもずっと待っていたかのように。
「23時過ぎに区役所なんてやってんのか?」
「深夜窓口っていってね。婚姻届は24時間受け付けてくれるのよ」
「そんなんあるのか」
「昼間はずっと仕事って人や……芸能人みたいに人目に触れず結婚したいって人も多いでしょうからね」
「……なるほどな」
結婚。俺が結婚。何回聞いても聞きなれない響きと言うか。俺よりも平塚先生にしてほしいことと言うか……。
「ほら。着いたよ」
俺たちは区役所に着き、夜間受付と書かれた札の場所に来た。
「えーと、はいはいって……あ、未成年の方ですか? それだと保護者の同意書も必要になりますが……」
「はい、これが同意書です」
「なるほど。じゃあ書類の不備はないということで……これで受理させていただきますね」
我が優秀なお嫁さんが婚姻届の受付をテキパキとこなして、婚姻届は正式に受理された。
「はい、では受付は終了です。ご結婚おめでとうございます」
「……結婚、か」
婚姻届を提出した俺と彼女は家に戻る帰路についていた。
「だんな様は結婚はいやだったの?」
「……いや、本当に嫌なら無理やり止めてる……と思う」
「……そう」
「こんなにスムーズに事が進んだのは月詠さんの手際の良さもあるんだろうが、何となくだが俺も結婚を受け入れたからじゃないか……なんて思ったりしてな」
「それならそれに越したことはないよ」
「……そうだな」
「それと、私と八幡くんは結婚したんだから『月詠さん』じゃなくて名前で呼んで?」
俺にはどぎついようなことを言われ、グッと口が詰まる。
「私の性も比企谷なんだから名前呼びは当然でしょ?」
「……そう、なんだが。俺には女性を名前呼びするっていうのはハードルが高いといいますか……」
「良いから呼んでみて」
彼女からも催促され、彼女のことを名前で呼ぼうとする。
えーと、婚姻届には16歳って書いてあったから年下……⁉︎ 小町と同級生の年齢……だと⁉︎
……ま、まぁそこで詰まったらしょうがない。16で結婚は出来るわけだし。小町もしようと思えば一年以内には出来てしまう。「大志、お前にうちの娘はやらん‼︎」っ何て頭の中で茶番を行なっていると、彼女が不思議そうな顔をしてこちらを覗いてきた。
ふぅ……。意を決して言うしかない。年下なので呼び捨てで。ここで『さん』をつけてしまうものならば相手に有利だと思わせてしまう可能性もなきにしもあらず!
「つ、つきゃさっ」
「…………」
「…………」
死にたい。
「……ぷっ……ははは……はは」
「……ぐっ…………」
彼女に腹を抱えて笑われている俺はさぞかし顔とか耳とが真っ赤何でしょう。自分じゃ見えないからわからんけど何となくわかる。というか顔があからさまに熱い。
「ま、慣れながらでいいよ」
「……なるべく早く慣れるように善処はする」
すると、彼女は何かを思い出したのかこちら側にふわっと振り向いた。
「あ、そうだ。私、ちょっと用事を済ませてきたいから、先に家まで帰っててくれる?」
「え? お、おう……」
「ところで……、今日あの家に泊まらせて貰えたりする?」
「あー、多分大丈夫だと思うが……」
「わかった。じゃあまたあとでね」
そう言うと彼女はそそくさと用事とやらを済ませに向かった。あらかた荷物を何処かに置いてきているのだろう。
「そういやさっき泊まるって…………」
……え? 泊まるのん?
俺は彼女に言われた通り、大人しく家に帰った。
家の玄関を開けリビングに戻ると、両親が物凄い勢いで俺の元に向かって来て、事情を説明しろと言われまくった。
「……えーと? 小町ちゃん?」
「……結婚することは言ったから後はお兄ちゃんが説明して」
「あ、……そりゃそうか」
そりゃ両親に結婚するしか言わないとか流石に不自然だし、結婚する経緯くらいは説明するのが至極当然だろう。
……とは言われても、事故から助けてもらった後勢いでプロポーズ紛いの事をしたなんて恥ずかしすぎで言えない。
そんなこんなで両親に説明を迫られる中、彼女が帰宅した。……帰宅って言いかたもおかしいか。
「おじゃまします」
彼女は靴を脱ぎ、自然にリビングに上がって来た。
「あ、おじゃまします。はじめましてお父様お母様。比企谷司と申します」
「「────────っ‼︎」
親父とお袋にも電撃が走った。2人は口をポカーンとだらしなく開け驚いていた。
「は、八幡お前なんかがこんな可愛い子と……っ⁉︎」
「何でこんな愚息子に…………⁉︎」
いや、あんたら俺のことバカにし過ぎだろ。仮にもあんたらが生んだ子だろ。
……つーか
「かく言う俺もこんな綺麗な人と結婚できるなんて思ってなかった訳で……」
「…………は、八幡くん」
俺が綺麗という言葉を上げると、彼女は少し俯き頰を赤に染めた。
……え? 何それめっちゃ可愛い。超可愛い。さっきまで余裕な感じの態度だからこういう照れてる感じめっちゃいい。
「……コホン。お兄ちゃん。イチャイチャしてないで説明して」
「……お、おう。悪い」
小町の咳払いで夢の時間から覚め、一気に現実に引き戻される。
「……えーっと。俺と……つ、司さんの出会いはだな」
「「「出会いは?」」」
「ほ、ほら。2年前に事故があっただろ? 2月の方の」
「ってことはあの時あんたを助けたのって……」
「……おう。司さんだ」
俺がそういうと、両親は一気に体勢を整え、彼女に頭を下げた。
「! え? ちょっ……! お父様お母様⁉︎」
「……あの日、こんな息子を助けて頂いてありがとう! 君が助けてくれなければ息子の命は危なかったかもしれないと聞いている」
「トラックに轢かれったって聞いた時は私たち2人共急いで病院に向かって……息が詰まりそうでした」
「……あんま出来がいい息子とは思っていませんが、自分たちにとっては大切な息子です」
「「本当に……助けてくれてありがとうございました」」
「……親父……お袋」
正直俺は親にあまり好かれていない方だから今の言葉を聞いて目頭が熱くなった。
「……いえ、私もあの事故のお陰で八幡くんと出会えたので良かったです」
「……こ、これからも息子をお願いします」
「こちらこそ……末永く、よろしくお願いします」
親父の言葉を聞き、彼女は床にそっと手をつけ頭を軽く下げた。
「……何か小町泣きそうだよ」
「……俺もだ」
何故か蚊帳の外の俺たち2人がジーンと来ていた。