宇宙船に戻った彼は洗浄し、綺麗に磨いてからゴブリンロードの頭蓋骨を壁のコレクションの一角に飾ると、ゴブリンスレイヤー達の為の武装を選び、再びゴブリン達が根城に使っていた場所へと向かう。
そこは変わらず、彼が吊し上げたゴブリン達の死骸がぶら下がっていた。
彼はそれをどけながら、右腕のガントレットを操作し、ゴブリン達の根城の地下マップを表示する。
そして、仕掛けて置いたセンサーに引っ掛かったゴブリンスレイヤー達の姿を映像として映してからズームして確認し、ゴブリンスレイヤー達がいる地下へと移動を開始する。
そこで彼はすぐに異変に気付いた。
仕掛けて置いた罠の数が明らかに増えていたからだ。
それも彼の物だけではない罠や彼が予め、設置した配置の変えられた罠もある。
彼はゴブリンスレイヤー達を罠に嵌めたと思っていたが、自身が罠に嵌められようとしているのだと気付く。
だが、彼は敢えて鳴子を鳴らして地下へと入って行った。
一族としての誇りによるものもあるが、それよりも標的であるゴブリンスレイヤーが知恵を絞って仕掛けた罠に興味が湧いたからである。
彼は慎重に罠を警戒しながら地下へと進む。
彼のセンサーにこの世界の原始的な罠は通用しない。
ーーだが、経験豊富な彼にはそれを突破するだけの技術と知識があった。
そして、学習する術も……。
数ある罠を突破すると彼は奥で待っていたゴブリンスレイヤーと対峙する。
ゴブリンスレイヤーの仲間は周囲に展開しているらしく、物陰に隠れて息を潜めている。
「ゴブリンじゃないのか?」
『ゴブリンじゃないのか?』
ゴブリンスレイヤーの問いに彼は即座に音声を再生して答える。
「目的はなんだ?」
今度の問いには音声ではなく、ゴブリンスレイヤーを指差す事で答えた。
そして、リストブレイドを出して吠える。
「決闘が望みなのか?」
ゴブリンスレイヤーが問うのに対して彼の背後の物陰に隠れていた妖精弓手が踊り出て、弓矢を構えようとする。
彼はそれより速く振り返るとネットで妖精弓手を壁に張り付けた。
そんな彼にゴブリンスレイヤーが迫る。
彼は振り向き直りながら、リストブレイドでゴブリンスレイヤーの剣を防ぐとゴブリンスレイヤーのフルフェイスの兜に顔を近付けた。
彼のマスクとゴブリンスレイヤーの兜が擦れ合い、火花が散る。
「目的は俺の様だが、俺はお前と遊んでやる暇はない」
ゴブリンスレイヤーはそう告げると彼の腹を蹴って距離を取った。
だが、強靭な彼の肉体を押し退ける事は叶わず、逆に後退してしまう。
かくして、罠だらけのゴブリンの根城で宇宙を越えた格闘が展開されるのだった。