力はゴブリンスレイヤーよりも体格的に恵まれている彼に分があった。
だが、ゴブリンスレイヤーには仲間がいる。
分があったとは云え、彼には周囲の行動までは理解出来ない。
「いまだ!」
ゴブリンスレイヤーのその言葉に彼が振り返った瞬間、女神官の聖なる光が辺りを包む。
その閃光は彼の視界を遮り、その目を眩ませるには十分だった。
その瞬間を見逃さず、ゴブリンスレイヤーが彼に迫る。
まさに好機であったが、ゴブリンスレイヤーにはただ一つ誤算があった。
それは反射的に素早く対象が身を屈めた事である。
その動作故に彼の一撃はそのマスクを掠める程度に収まり、そのまま、リストブレイドで胴体を貫く。
その一撃は鎖帷子と鎧の二重装甲のゴブリンスレイヤーの肉に達していた。
フルフェイスの兜からゴブリンスレイヤーの血が零れる。
だが、ゴブリンスレイヤーは後退りするのではなく、寧ろ、深く自分に押し込め、覆い被さるような姿勢で彼の背中に何かを仕掛ける。
それが自分の仕掛けた罠の一つである事に気付いた彼だが、時既に遅く、ゴブリンスレイヤーと共に爆発に巻き込まれる。
ゴブリンスレイヤーは後方に吹き飛び、ゴロゴロと転がる。
血塗れだが、彼は奇跡的に一命は取り止めていた。
故に見る。
発光する液体に染まりながらも佇む彼を・・・。
無論、彼とて無傷ではない。
爆発で背中が大きく焼け爛れ、壊れたマスクから素顔が露出している。
その異形に誰もが言葉を失ったが、彼は千切れた腕にも焼け爛れた身体にも関わらず、ゴブリンスレイヤーへと前進した。
何か仕掛けるのかと鉱人道士や蜥蜴僧侶が身構えるが、彼は転がったゴブリンスレイヤーの前に転がる壊れた兜を無事な手で拾うだけであった。
『また会おう、勇者よ』
彼はそれだけ言うとゴブリンスレイヤーに背を向け、来た道を戻っていく。
「逃げた?」
「いやいや。ありゃあ、見逃してくれたのじゃろう」
蜥蜴僧侶と鉱人道士は互いにそう呟くとボロボロのゴブリンスレイヤーと未だにネットで身動き出来ない妖精弓手の元へと向かう。
ーー出血多量で瀕死になりながら彼はなんとか自身の宇宙船に戻ると治療に専念する。
彼の腕は元々が義手であった為、あの腕自体なくても問題はなかった。
彼は横になり、マシンを起動させて治療を開始させると今一度、壊れたゴブリンスレイヤーの兜を眺め、大事にそうに抱えながら深い眠りにつく。
生死を懸けた死闘の後に生き残るのは彼の種族では恥である。
だが、異端なる彼は気にしない。
寧ろ、楽しみが増えた。
生き残るからこそ、人間が叡知を授かるように彼もまた知恵を振り絞り、生き残る事に生き甲斐を感じているのだった。
彼はナルガ・プレデター。
狡猾で異端なる戦士である。