疾風迅雷   作:袈裟固め

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遅くなりました。


04. 『運命の日 中編』

 

 赤く(血に)染まった広間に立つのは、一人と一体。

 

 大剣を手にするのは、"一人"―――アル・チュール。彼は、遠巻きに眺めれば野性的なダンスを踊っている様にも見える。

 

 その相手は"一体"―――化物(ジャガーノート)

 彼らは今、殺し合い(・・・・)の真っ最中。

 その始まりから既に半刻は経過しているが、どちらも一歩も譲らず、未だ拮抗している―――ように見えた。

 

 しかし、その実情は。

 アルが、徐々に圧され始めていた。

 それは単純な理由だった。現在手にする大剣しか有効な攻撃手段がない彼に対し、化物は二対の爪に長く硬質な尾。そしてそのどれもが、必殺の威力。

 

 その上で、アルの状態は間違っても万全とは言えない。

 

 じわじわと、アルの手数は減っていく。次第に相手の攻撃への対応で手一杯となり、それが優劣を決定付ける大きな要因になりかけていた(・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 躱し切れない爪の斬撃が、細かく、極薄く。肌を、肉を裂いていく。

 代わりに化物の身体も徐々に削り取ってはいるが、明らかにこちらの方がダメージが大きい。

 

 そもそも【闇派閥】の罠で受けたダメージが、アルの最大の武器―――敏捷を大きく削っていた。

 元々アルは、相手の攻撃をガードしない。主に回避を第一に考え、稀にある対処し切れない場合は軽く受け流す。それが、【迅雷】の基本的な戦闘スタイル。

 

 しかしそれは、オラリオでもトップクラスと言わしめる敏捷があったればこその話。落石で強打しフラつく頭に、いつ限界を迎えてもおかしくない右脚。避けるにも避けきれず、受け流しの判断も間に合わない。いつもと同様の立ち回りを行うのは、極めて困難と言えた。

 相手も耐久が皆無に等しいとはいえ、現状手数も体の大きさもまるで違う。そのため、削り取られる比率が圧倒的に大きいのだ。

 

 このままではジリ貧。アルの頬を、幾筋もの汗が伝う。

 普段であれば、一度退却して態勢を立て直すことを視野に入れた立ち回りを始める頃合いだ。

 しかし、今に限っては。その考えは、元より頭の中から消し去っていた。

 

 自分の後ろには手負いの仲間(リュー)がいるのだ。それこそ、自分の命よりも大切な仲間が。

 彼女を抱えては逃げきれない。自分だけで逃げるなんて有り得ない。

 だから、アルは頭をフルに働かせた。激しく斬り合う中で、片隅程度の僅かな部分しか使えなくとも。

 

 目標は、目の前の化物を"破壊"すること、その一点。そして問題は、どうやって目標(そこ)に辿り着くか。

 

 時間の経過は破滅への片道切符だ。いずれ蓄積したダメージで身体が悲鳴を上げることが目に見えている。よって、相手に倣ってチマチマとダメージを与えていくのは下策。勝てる見込みは皆無に等しい。

 

 ならば。そうであれば。

 極大なダメージを一撃の下に叩き込む。そのための隙を、"どうにか"して作る。それが、最終的な結論。

 

『―――その"どうにか"を、具体的にするのが難しいんだろうが。間抜けめ』

 

 不意に、そんな仲間の声が脳内に響いた。

 無論、今言われた言葉ではない。記憶が蘇ったのだ。

 戦闘の最中であるのに、アルの口元が少しだけ緩む。

 

(……ホンッと脳筋だな)

 

 あれはいつだったか。極東出身の副団長(輝夜)から皮肉たっぷりに言われた言葉。

 

『貴方様は脳が筋肉で出来てるのではございませんか? (わたくし)、偶にそう思いますの。略して脳筋ですね、脳筋』

 

 あ゙? と短く上品に返答し、そのまましばらく睨み合いになったことを良く覚えている。普段は宥められる側のリューが、大慌てで仲裁に入ってきたことも。

 

 容姿端麗であるのに、性格は粗暴、態度は横暴。相手を煽る時だけ無性に腹の立つ"育ちの良さそうな"口調になる。そんな彼女に、時々青筋を立ててて対応していたことが、今となっては懐かしい。クソのような煽りだったが、それでも良い思い出として想起される。

 

 しかし、もうそんな何気ない掛け合いをすることすら二度と叶わない。視界の端には、その彼女だった(・・・)モノが映る。変わり果てた、無残な姿となったモノが。彼女も、もはや手の届かぬ彼方へと旅立ってしまったのだ。自分が気を失っている間に。情けなく、岩なぞに埋もれている内に。

 

 ――――悲嘆、悔恨、憤怒。

 

 いつの間にかアルが感じていた懐かしさは、そんな負の感情へと変化していた。

 目の前のコイツが、この化物が。自分達から全てを奪っていった、奪っていきやがった。そして今も、奪おうとしている。

 

 許すモノか。許せるモノか。許してなるモノか。

 

 感情が、漆黒へ塗り潰されていく。瞳は猛禽類のように鋭くなり、歯が砕けそうな程の力を込めて口元を引き締める。

 

 ―――しかし、それでも。手足に余分な力が入ることだけは防いだ。

 

 余分な力みは隙を生み、そのまま死へと直結することを、脳だけでなく身体で良く理解していたからだ。感情が制御できなくなっても、思考だけは冷や水を注入し続けるように冷静に。目的を見失わないように。

 

 これは知能を持つ敵を相手取って戦う上で、絶対に必要だった能力。つまり、日常の悪党との戦いで身に付けた力だった。

 この時ばかりは、アルは【闇派閥】に感謝した。彼らとの闘いが無ければ、果たして感情に呑まれない自分を作り上げることが出来ていたかどうか、疑わしいからだ。

 

 そして、それと同時に。

 

 必ず今日の代価を支払わせるという、強力な感情が込み上げた。残念ながら、そこにはもはや正義も悪も関係なかった。

 

 ただ、それを果たすためにもまず目の前の障害(・・)を排除しなければならない。

 アルは、一瞬の内に頭を巡った様々な思考を一旦打ち切り、全ての意識を目の前の化物へ再び向け直した。

 

 激しい爪撃。血や汗、小石や砂が舞い散る中、変わらず化物の攻撃を躱しながら思考する。

 どうすれば隙を作れるか。そのために、自分が切れる手札は何が残っているか。この化物は、何を望んでいるのか。

 相手の攻撃に合わせ、こちらも一撃加えようと一歩前へ踏み込む。

 

「―――ッ!!」 

 

 が、その時不意に。踏み込んだ右脚がズキリと疼き、一際強烈な鈍痛を発した。電流が、一瞬で右脚から全身を駆け巡るような感覚。

 

 ―――折れた(・・・)

 

 過去数度経験した感覚に、アルの脳裏をその原因が()ぎる。

 

 気合でもって痛みを無視してはいたが、とうとう身体が悲鳴を上げたのだ。そのせいで踏ん張りが効かず僅かにバランスを崩し、アルは次の行動に移り損なった。

 

 長く斬り合ったお互いの間で、初めて生じた大きな隙。そんな決定打になり得る瞬間を、本能で生きる獣が行儀良く待ってくれるはずなどなかった。

 左上方から迫り来る必殺の鋭爪。

 眼だけを動かしそれを確認したアルは咄嗟に、そして無理矢理に。上半身の筋肉をフルに用いて上体を急激に反らし、回避を試みる。

 

 しかし踏み込んでいたが故に、間合いが近すぎた。避け切るには、時間が全く不足していた。

 飛散した血と肉片が、視界を覆う。

 

「―――ぐッ……ぅ……ッ」

 

 抉られたのは、左の二の腕部分。痺れる様な痛みが一瞬で脳髄まで駆け登り、目に見える光景がチカチカと明滅する。

 思わず声が出そうになった。叫んで、この痛みから気を紛らわせたかった。

 しかし、どんなに激しい痛みが襲おうとも。今この瞬間に、余計なアクションを起こす余裕など皆無だ。

 

 ―――次が来る、と。

 

 まともに相手を見てはいないが、それでも直感が大音量で警告を発した。

 

 アルは、歯を喰いしばりながら身を捩り、瞬間的に化物と距離を取る。ほんの一拍だけ遅れて、先程まで立っていた地面が轟音と共に大きく削られた。それは、明らかに斬り合う最中とは次元の違う威力。化物は、決め(・・)に来ていた。

 

「……っ―――ふっ……ぅ……」

 

 今のは、危なかった。

 

 判断が一瞬でも遅れていたら、今頃は一面に飛び散る肉片に仲間入りしていただろう。"死"という現実がこれ程まで目前に迫ったのは久方ぶりだった。

 

 一撃必殺の威力を目にし、改めて化物の脅威度を頭に刷り込む。少しでも手順を間違うと、必ず命を落としてしまうレベルだと。

 

 額に、多量の脂汗が滲む。

 

 力を失い、だらりとぶら下がる左腕の状態を、化物から顔を外さずに確認する。負傷部から来る疼痛が、絶えずアルを襲っていた。無理して両腕で剣を振るとしても、もう片手で数えられるくらいが限度だろう。こちらの攻撃力が削がれたことは間違いない。

 ただ、利き腕でないことだけは幸いだった。勝機(・・)が完全に消えたと絶望せずには済んだ。

 

 ―――そう、勝機。

 

 甚大なダメージを受けながらも、今の一瞬で見出した一筋の活路。

 賭けには違いない。が、自分に残る手札と周囲の状況を鑑みて、他に道は無いように思えた。

 

 武器を握る指に、力を込め直す。

 例え賭けであっても、失敗は許されない。失敗して失われる命は、自分だけではないからだ。

 

 化物の窪んだ瞳が、こちらを見据える。視線と視線が、絡み合う。アルに退路はなく、化物に引く意思はない。

 であれば、双方が取り得る選択肢は、たったの一つ。

 

「―――――らァッ!!!」

 

 アルは再び地面を蹴り、化物へと肉薄した。先程同様、至近距離での戦闘を挑む。主として使えるのは、右腕と左脚。

 

 ―――明らかに、遅い。

 

 万全時と比較すると、もはや5割以下の機動力にも見える。剣速は多少マシだが、敵を捉えるのがより困難になったことに変わりはない。

 

 それでも、アルが受身に回る(引く)ことはない。

 引けば、勝機が消え失せる。蜘蛛の糸にも満たない微かな道筋を、むざむざ逃すことになる。故に、肉薄。今となっては、捨身と言っても過言では無い戦法。

 

 

 代償は、大きかった。

 

 

 先程までの傷は、身体のほんの表面のモノ。それが、今は。

 

「~~~~~ッ!!」

 

 アルの身体を、確実に抉り取っていた。声にならない叫びが、アルの口から漏れ出る。

 が、耐える。歯を食いしばり激痛に耐え続け、致命傷だけは回避しながら機を待つ(・・・・)

 

 

 ―――胸当てが砕けた。

 

 何も変わらない。むしろ軽くなって良い。

 

 ―――左肩を削られた。

 

 数回保てば問題ない。それに右側はまだ健在だ。

 

 ―――右の太腿が抉れた。

 

 なんてことはない。どうせ酷使するのは後二度(・・)だ。

 

 

 化物が爪を振り下ろす度、尾を翻す度。アルの状態が変わっていく。

 もはや、最初の拮抗は露と消えていた。一方的に、アルが化物に嬲られているような状況。血に染まり、赤黒く変色していく着衣。

 

 そして、とうとう。

 

 「――――ッ、ぅ……あ…………っ」

 

 攻撃を避けた拍子に、アルが膝をついた。

 

 「はっ……はぁっ……はぁ……っ」

 

 限界なのだろうか。顔を地に向け、アルは激しく息を切る。

 が、それを見下す化物に哀れみの感情はない。ただ、無感情に目の前の獲物を狩るだけ。

 

 化物は、この戦いを終わらせる為に爪を大きく(・・・)振り上げた。抵抗の激しかった獲物を、この一撃で葬る為に。

 

 ――――そう、間違いなくトドメをさす(・・・・・・)ための攻撃。

 

 斬り合う最中とは、明らかに質が違う。その威力は、数倍にも上るだろう。それこそ、不必要なまでに。が、しかし。その予備動作も、予想される威力に比例して大きくなっていた。

 

 そして、これがまさしく。アルが、先ほど見出した活路だった。

 化物は、気付いていなかったのだ。アルの眼が、諦めの色を欠片も帯びていなかったことに。地に顔を向けてなお、化物の様子だけは確実に窺っていたことに。

 

 リューにトドメを刺すときも、先程こちらを仕留めようとしたときも。どちらも、通常と比べて準備時間―――言うなれば、攻撃の助走(・・)が明らかに大きかった。

 

 残念ながら、演技は上手くない。が、こういった本能で生きる獣を騙すためには。その"トドメの一手()"を引き出すためには、偽りだと嗅ぎつかれてはならない。

 それ故の、肉薄。被害まで織り込んだ上での―――その身を、チップとして賭け(ベットし)た上での、分の悪い近接戦。"肉を切らせて骨を断つ"という言葉が極東にはあるらしいが、正に文字通りだった。

 

「――――ふ……ッ!!」

 

 溜めた力を開放するような短い一息。その一息の音が響いた瞬間、アルは疾風の如く動いた。一瞬後、化物の腕が振り下ろされ、暴力的ともいえる威力が叩きつけられる。既に誰も居なくなった(・・・・・・・・)地面へと。

 

 化物の視界から、アルの姿が消えた。しかし、化物が周囲を確認することはなかった。それよりも早く、その身を襲った衝撃によって獲物がどこにいるか思い知ったからだ。

 

 アルが移動したのは、化物の無防備な腹部の真下。どう足掻いても視界に入らないその場所で、化物が次のあらゆる行動に移る前に。アルはその瞬間の全力を以って大剣を振り上げた。剣の()を上方に向けて。

 

 つまり、化物の身が切断されることはなく。打撃によって砕かれた身体表面の欠片をパラパラと散らしながら、空中へと高く打ち上げられた(・・・・・・・)

 

 これが、化物を一撃の下葬り去るために作ろうとした、明白な隙。

 相対する者全てを恐怖へと突き落とす機動力も、接地面が無ければ意味を成さないのは自明の理だ。

 

 そしてアルは、そのトドメを放つための準備に移った。

 

 両手で柄を握った《エクスキューション(愛剣)》を肩に担ぎ、左脚を一歩前に踏み出して前傾姿勢。それは、吶喊(とっかん)する直前の姿そのものだ。

 

 宙に浮く化物の眼窩には、変化していく獲物(・・)の様子が映り込んでいた。

 

 アルの身体へ、徐々に光が収束していく。強さと(まばゆ)さを(たかぶ)らせながら。

 漏れ出た力が小さく爆ぜるように、バチバチと音を立てては弾けていく。彼の身体を中心に、地面との間に稲妻が走るように。その音量と規模を激しく拡大しながら。

 

 ―――――【雷轟一閃(ドゥオ・ブリッツ)】。

 

 これは、アルの切り札といえるスキル。

 その効果は、能動的行動に対するチャージの実行権。チャージすればするほど、力と敏捷(・・・・)が加速度的に増加していく。

 このスキルは色々と制約があり使い処が限られる上、体力も大幅に必要となる。が、それを補って余りある程の強大な能力補正を使用者へもたらす代物だ。

 

 

 化物が宙に打ち上げられ、再び地面に到達するまで約10秒。

 

 その10秒間の完全な無防備(・・・・・・)と引き換えに。スキル(切り札)はアルに、標的(化物)を破壊するに足る力を授ける。

 

 上昇から落下に転換する中で、化物は空中にも関わらずしきりに破爪を右へ左へ薙いでいく。それが単純に攻撃するためか、もしくは目の前の光景(光を纏っていくアル)に危機感を覚え自身を防衛するためか。誰も知る由はない。

 

 ―――――もはや眼前の怪物は、アルにとって正しく獲物と化していた。

 

 アルは、地面へ近付く標的(・・)をその二つの眼で確認しながら、きつく歯を喰いしばった。全身に力を込めたせいで、左腕に残された爪痕や体中の傷が活性化し、激しい痛みと共に多量の血が流れ出す。

 

 しかしそれら全てを、アルは意識の外へ追いやった。

 この一撃に、全ての想いを乗せるために。

 

 志半ばで惨殺された仲間達の無念も。その光景を目に焼き付けたリューの悲嘆も。それらの事態に関わることすら出来なかった自身の悔恨も。

 こんな惨劇を引き起こした、目の前の化物と【闇派閥】に対する獰猛な憤怒さえも。

 

 全てを、一部も逃さず力へ変換する。呼応するように、光が急激にその輝きを増していった。

 

 そして化物の爪先がようやく地面を掠めた、その瞬間。

 

 

 ――――― 一際眩い光が弾けた。

 

 

 以前アルがこのスキルを用い、階層主への最後の一撃(トドメ)とした時。

 周囲にいた誰しもの眼に映ったのは、一筋の歪な光の線。そしてそれが、敵を刹那で断ち切った結果(・・)

 全ての反応も―――音さえも置き去りにして、瞬きの間に標的(階層主)を真っ二つに切り裂いてのけた()を見て、その場に居た誰かが口から零した。

 

 まるで"雷"のようだ、と。

 

 故に、彼は【雷】。故に、彼は【迅雷】。

 

 

 そして今。

 

 【雷】に打たれたのは、化物(ジャガーノート)。光が弾けた瞬間、敵の眼前から姿を消した獲物(アル)

 そしてほんの一瞬遅れて。化物の前方と遥か後方から同時に(・・・)轟音が響いた。

 

 アルが着地(・・)したのは、化物から見て遠く後方にそびえる水晶()。蹴りだした地面も着地した壁も、どちらも衝撃に耐えきれず円形に大きく(ひび)割れ激しく隆起した。

 

 

 

 未だ着地を終えない化物。その眼孔がぐるりと動き、アルの姿を再び視界に収める。

 

 ―――そこにいたのか、と。

 

 化物は先程までと何も変わらないように、再び狩りへ戻ろうとする。化物にとって、アルがどんな手品を使用したかなど微塵も関係なかった。重要なのは、獲物がそこ(・・)にいて、自らがここ(・・)にいること。それ以外の事象は、なんら意味を持たない。

 

 そして化物は自らの意思に従い、狩猟を再開するため身を翻しながら地面に着地―――しようとした。

 が、その"身体"はその"意思"に追随しなかった。

 知覚していなかったのだ。それが、あまりにも刹那の出来事であったために。

 

 ―――身体が、二つに分断(・・・・・)されていることに。

 

 左肩に当たる部分から袈裟に真っ二つになり、後ろ半身に当たる部分は細かく刻まれていた。ついでとばかりに、その頭部も口から先端にかけて脱落していく。

 

 

 

 広間にガラガラと響く、バラバラになった骨が幾度もぶつかるような軽い音。

 アルは地面に降り立ち、化物を一瞥する。

 そして一つ息を吐いて、その物体(・・)に興味が失せたように視線を外しリューの下へと歩き出した。

 

 

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