ありがちなISオリ主もの(?) 作:チキンカツサンド
「さて、伝え忘れていたが、クラス代表を決める必要がある。今この場で決めてしまおう。」
二時間目の授業冒頭で、織斑教諭はそう言った。
「先生、クラス代表って、学級委員みたいなものですか?」
そう質問をしたのは、自己紹介の通りならば「あいかわきよか」という生徒。漢字は知らん。出席番号一番だったからなんとなく覚えてはみたものの、明日には忘れているだろう。
「まあ、基本的にはそう思ってもらって差し支えない。委員会や生徒会の会議にクラスの代表として出席し、場合に応じては会議を開くこともある。まだ先の話だが、文化祭でクラス単位での行動をする際には中心的役割を担ってもらうことになるだろう。」
なるほど、実に面倒だ。性に合わん。他薦が飛び火しなけりゃいいが。
「また、直近の行事としてはクラス対抗戦があるな。今月末頃に、各クラスの代表が模擬戦を行う。稼働訓練の場の一つと思ってもらっていい。自薦他薦は問わん。候補があれば挙手にて発言をしてくれ。」
なるほど、稼働の機会が増える。たしかにそれは操縦者を志す連中に対してであれば大事な条件なのかもしれない。俺は知ったことではないが。
「はい!織斑くんがいいと思います!」
「私も織斑くんに一票!」
「ええっ、俺!?」
案の定と言うべきか、織斑一夏は人気株のようだ。そのままスケープゴートになってしまえ。
「あのー、ちふ「織斑先生だ」…織斑先生。これ、辞退しても…」
「駄目だ。自薦他薦は問わないと言ったはずだ。推薦されたものは、その期待に応える努力をする義務がある。」
織斑教諭からの手厳しい一言。なんとなく言ってることがおかしい気もするが、藪蛇になるのも癪だから指摘はしないでおこう。
余談だが、織斑一夏と織斑教諭の関係性については一つ前の授業の冒頭で質問があり返答もあった。姉弟なのだそうだ。まあどうでもいいが。
「他に候補者はいないか?ならこれで決定とするが…」
「お待ちください!そのような選出は認められませんわ!」
突如飛んできた苛立ちを伴う声に、直感が告げる。このあと、クソ面倒くさい事態が起こる。
見ればそいつは、一時間目の前に俺を睨みつけていた縦ロールだ。
「オルコットか。意見があるなら挙手で、と言ったはずだが?」
手を上げながら勢い任せに織斑を推薦した奴らにもそれは言うべきだと思うが…もう今さらか。
「っ、すみません。しかし、男が代表など、言語道断ですわ!代表ならこの
選挙の演説か何かだろうか。このあと「清き一票を」とか言っちゃうんだろうか。とまあ、そんなことはどうでもいい。聞き捨てならん言葉が聞こえた。明らかな女尊男卑発言だ。
「クラス代表なら、実力を持つものがなるのが当然でしょう!?それが、ISを動かせる程度で物珍しいだけの男になどと…。
日本の批判まで来たか。やりたい放題ってか言いたい放題だなこいつ。ってかそのへんにしとけよこの恥晒し…。」
「あなた!なにか申しまして!?」
突如、クラス中の視線が俺に向く。今何かやらかしたか俺。
こちらを意味有りげに見つめるクラスメイトたち、何故か一人怒り心頭な様子でこちらを睨みつけるセシリア・オルコット、どこか面白がっているかのように眺める織斑教諭、慌てふためく山田教諭、何が起きているかわからず呆然とする俺、という構図の中、少しの間教室の時間が止まったかのようだった。
「そこの何もわかってなさそうな男!あなたに言ってるんですのよ!」
どうやら俺に用事があったらしい。
「なんだ、いきなり?」
「何だも何もありませんわ!いきなり私の発言を遮って何を言い出すかと思えば『恥晒し』だなんて…!これだから男は…」
原因はそれか。声に出てたとは気づかなかった。
「ああ、そのことか。声に出ていたんならすまん。が、恥晒しはそのとおりだろう。」
「なっ…」
ただまあ、せっかくだし一応言っておいてやろう。
「日本のことを後進的っつったか?母国が産業革命起こした程度で調子づいてんのかお前。IS作ったのは日本人だぞ?そもそもここはどこの国でもねーんだから言ってることがすでにおかしいんだよ。だいたいなんだ?島国だったら何が悪い?テメーの生まれも島国じゃねーか。しかもテメェ、『男が代表など言語道断』とか抜かしたか?何性差だけでもの語ってんだ?ISがない時代に必死に男女平等訴えてたくせに力持った途端すぐこれかよ、だから女尊男卑主義者は嫌いなんだ。」
「っく、あなた…」
「だいたいお前、自分で言っといてその肩書の重さ分かってないんじゃねぇのか?国家代表候補だぞ?
「あ、あなた、私の祖国を侮辱してますの!?」
「何自分がしたこと棚に上げて他人の批判始めてんだお前。最初に日本バカにしたのお前だろ、極東だの後進的だの言いたい放題言いやがって…。つか、そもそもお前がイギリス国家代表候補だって認知してたやつがこの部屋に何人いたよ?誰かに推薦して欲しいんなら、まずは話題性くらい持ってこいってんだ。そもそも自薦他薦問わないっつってんだから織斑一夏の批判する前にさっさと立候補しやがれってんだ。なんで開口一番喧嘩売ってんだよ。それに…」
「ストップ佐倉。お前も落ち着け。」
…ハッ、いけ好かねえ。とはいえ、俺もそろそろ静まらねぇと雰囲気が大変なことになってる。セシリア・オルコットは顔を真っ赤にして震え、山田教諭含めクラスの多くは呆然とし、織斑一夏はどこか苛立ちを見せている。唯一冷静そうなのは織斑教諭くらいのものだ。実際今も俺を止めた。
「先程のオルコットの態度に問題があったのは間違いないが、お前も言いすぎだ、佐倉。暴言に暴言で返しても何も生まれんぞ。」
「…すまん。」
こういうときは、さっさと謝ればOKだ。何も問題はない。それで終わりだ。と思ったが、現実はそう甘くはないらしい。
「こ、このセシリア・オルコットに恥をかかせましたわね!?決闘ですわ!」
問題があるのはどうやら俺ではなくこちらの縦ロールお嬢様だったらしい。しかし決闘とはまた古風な…。
「私とISで勝負しなさい!あなたが負けたら今後一生私の奴隷にいたしますわ!」
「やだよ、めんどくさい」
「んなっ!?」
実際面倒くさいじゃん、こういうプライド高い系。どうせこっちがギリギリ勝てたとしても、「今のはマグレですわ!」とか言って勝つまで再戦するに決まってる。嫌な予感は的中したわけだ。
「だいたい俺、IS動かしたの試験のときだけだし。国家代表候補がわざわざ自分が確実に勝てるであろうIS模擬戦持ってきて、決闘だと?そりゃただの自己満足の弱いものいじめだ。そんなものを決闘呼ばわりする意味がわからん。」
「ならば、負けを認めるのですね?」
「認めねーよ。そもそも戦ってすらいねーだろうが。何勝手に戦ってる前提で話してんだ。まず第一、こんな生徒同士の揉め事で学園からISの使用許可がおりるわけないだろうが。もっと後先考えてから発言してくれ。」
「くっ…」
ようやく黙った。しかしこいつ相手だと、実に会話が成立しない。非常にやりにくい。
「…はあ。」
一応、この場を凌ぐための解決策は浮かんだ。正直、こんな手段を取るのは面倒だし気が引ける。だが、この状況に突っ込まなくてもいい首をわざわざ突っ込んでいったのは俺だ。つまり俺が授業を妨害してまで、くだらない茶番を繰り広げてしまったわけだ。だからというのもなんだが、自分の尻は自分で拭うとしよう。
「織斑教諭、質問をしても?」
「…構わん。が、口のきき方には気をつけろ。今お前が話しているのはあくまで教師であり、お前はその生徒だ。相応の対応というものがあるだろう?」
敬語、ということだろうか。敬ってもいない相手にわざわざ使う必要あんのか、それ。何よりこの女に敬意を払えと?たとえ天地がひっくり返ってもそれだけは絶対にない。
とはいえ、ここはおとなしく従うのが今後のためでもあるだろう。なんとなく、織斑教諭の顔面を睨みつけながら、絞り出すように言う。
「…わかりました。それで、質問なのですが。」
「言ってみろ。」
さあ、果たしてどうなるやら。これで俺の予想が外れれば、この授業は完全に潰れるかもしれん。
「先程、セシリア・オルコットがこちらに提示してきた決闘のことですが。
「ほう?」
「可能なら、で構いません。オルコットとの決着は、そこでつけます。これ以上この話を長引かせれば授業妨害にもなりかねませんので。」
これならおそらく、学校側としても許容範囲内のはずだ。こっちである程度ISは動かしておきたいし、一応、国家代表候補とやらの実力を見ておきたいってのもある。
「そういうことなら構わん。ではこうしよう。一週間後、オルコット、織斑、佐倉の3名による模擬戦を行い、その結果によってクラス代表を決定する。質問のある者は?」
「っちょ、待てって千冬姉、俺は参加するなんて一言も…」
「織斑先生、だ。」
「アダァッ!?」
織斑一夏ヘッドに出席簿アタック再び。だからなんで白煙が出るんだよ…。
ただまあ、これが認められたのは助かった。これ以上長引かせる意味がないからな、あんな会話は非生産的すぎる。あとは俺が打ち切って終了だ。
「ありがとうございます。オルコットもそれで構わないな?」
「自分で決闘を拒否したくせに結局模擬戦をするのですね…。まあいいですわ。コテンパンにして、一生奴隷にして差し上げますわ!」
奴隷、ねえ。ほんとにいけ好かねえな女尊男卑主義者は…。
「よし、では遅くなったが授業を始めよう。今日話すのは…」
その後の授業はつつがなくすすんだ。