こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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おちる恐怖、パチュリーを苛む催眠とムチの二重奏!

「あはっ、本当なら催眠呪文なんて効くはずもないパチュリー様ですけど、この世界では効いちゃうんですねぇ……」

 

 アルミラージの催眠呪文、ラリホーを受け洞窟の床に倒れ伏すパチュリーを見下ろす小悪魔。

 

「フフ…… その床に這いつくばった格好も素敵ですよ、パチュリー様。とてもよくお似合いです」

 

 小悪魔はそう言って瞳を細めると、トゲのムチを振り上げた。

 

「それじゃあ、ご奉仕を始めましょうか」

 

 小悪魔がそれを使って打ち据えたのはモンスターではなく……

 

「ひぐうぅぅぅぅっ!?」

 

 意識を失い、完全に無防備だったパチュリーの背を、イバラのトゲを編み込まれたムチがしたたかに打ち据えた!

 

(フフフ、いい声で鳴くんですね、パチュリー様。ゾクゾクしますよ)

 

 小悪魔は声に出さずに笑う。

 そして目を覚ましはしたものの、あまりの痛みにビクンビクンと震えるだけで動けないパチュリーに小悪魔は、

 

「物理ザメハ(パーティアタック)は睡眠状態を100パーセントの確率で解除させる。そうですよね、パチュリー様」

 

 残酷なまでに優しい声で告げる。

 そう、ドラゴンクエスト3では睡眠状態の者を仲間が叩くことで起こすことができる。

 つまり、これは治療行為なので主従契約の抑止力には引っかからないのだ。

 しかし、そうやって叩き起こされたパチュリーを、再びアルミラージの群れの放つラリホーが襲う!

 

「う、ぐ……」

 

 必死に睡魔に抵抗するも、この世界でのパチュリーの能力では抗えない。

 彼女の性格『タフガイ』は運の良さの成長にマイナス30パーセントもの補正を受ける。

 つまり状態異常に陥る危険を運の良さで回避するこのドラクエ世界では、アルミラージのラリホーに抗うのは困難なのだ。

 

 そして逆に小悪魔の性格『セクシーギャル』は運の良さの成長にプラス20パーセントの補正がかかり、すなわちラリホーを受けても小悪魔だけが起きているという状況が作り出せることになる。

 さらに素早さに対する成長補正は『タフガイ』がマイナス10パーセント、『セクシーギャル』がプラス20パーセント。

 これが何を意味するかというと、

 

「それっ!!」

「ひぎっ!」

 

 再び小悪魔のムチがパチュリーを叩き起こし、

 

「あ、かはっ……」

 

 訳も分からず覚醒し混乱するパチュリーを、アルミラージのラリホーが襲う!

 

「パチュリー様、負けないで下さい。絶対に眠ったりしないように頑張って下さい!」

 

 催眠呪文に抗おうとするパチュリーに、小悪魔の励ましが届く。

 セリフだけ聞くとパチュリーを応援しているように思える。

 だが、今にも落ちようとする意識にささやくそれは、しかし逆に落ちてしまって楽になりたいと主張する身体を責め苛むもの、言葉責めとして認識される。

 そして、

 

「くっ、ふ……」

 

 抵抗むなしく、ふっと崩れ落ちるパチュリー。

 そこにすかさず振るわれるムチ!

 

「ひ、ひいいんっ!」

 

 落ちた意識を無理やり覚醒させる鋭い痛み。

 そしてカッと見開かれたその瞳には、ラリホーを唱えようとするアルミラージの姿が……

 

「やっ、やめ……」

 

 

 

 ドラクエにおいて、素早さが高いということは必ずしもいいことばかりであるとは言えない。

 逆に低い方、行動順位が遅い方が有利な場合もある。

 

 例えば攻撃能力上昇呪文バイキルト。

 行動順が早い者は、呪文をかけてもらう前に攻撃してしまう。

 その点、行動順が遅ければ確実にバイキルトをかけてもらってからの攻撃ができるのだ。

 

 そして一番の利点と言われるのは後攻回復。

 つまり敵の攻撃が終わった後に回復呪文を唱えたり回復アイテムなどを使うことで無駄なく回復ができ、次のターンを万全な体勢で臨むことができるというもの。

 全体回復アイテムである賢者の石を使ったボスキャラ戦などに威力を発揮する戦法である。

 

 逆に言うと……

 小悪魔のような素早い者に回復を担当させると、回復した後に再び敵の攻撃を受けることになる。

 特にラリホーを使って眠らせてくる敵に対しては、素早いキャラがパーティーアタックで仲間を叩き起こしても、そのターンのうちに再びラリホーを受けて眠らされてしまう可能性が高いのだ。

 起きたターンは何もできないため、これにより一方的に責められる、ハマリのような形になってしまう。

 ドラゴンクエスト3における、いざないの洞窟突破時にはよく見られる光景ではある。

 

 

 

「あ、あっ……」

 

 小悪魔のムチの痛みで強制的に意識を戻され。

 アルミラージのラリホーで再び落とされる。

 繰り返し、繰り返し、何度も、何度も……

 

「眠りに落ちる瞬間、吸い込まれるように意識を失うって『きもちいい』ですよね、パチュリー様?」

 

 意図的に気絶状態に陥らせる、そういう『プレイ』は、コカインと同程度に強力で非常に強い習慣性がある、などという意見もある。

 場合によっては命にかかわることも有る危険なものなのだが、今のパチュリーは魔法の力で肉体には損傷の危険を与えず安全に、しかしものすごい短時間に繰り返し意識を落とされている状態。

 

「ムチ打たれる痛みと」

 

 小悪魔の手によって振るわれるムチ!

 

「落とされる快楽」

 

 アルミラージの魔法で落とされる意識。

 

「ムチ打たれる痛みと」

 

 小悪魔の手によって振るわれるムチ!

 

「落とされる快楽」

 

 アルミラージの魔法で落とされる意識……

 

 格闘技の訓練で頻繁に締め落とされると『落ち癖』が付き、少しの圧迫でも落ちる体質になってしまうというが、今のパチュリーはまさに、そのような激しい責めを受け、身体と精神を躾けられているようなもの。

 

「仕上げです」

 

 パチュリーがすっかり『できあがってしまった』ところで、トゲのムチのグループ攻撃により不要となったアルミラージを一掃。

 

「あ、ぐ……」

「大丈夫ですか、パチュリー様。今お助けします」

 

 小悪魔はパチュリーを助け起こすと、その唇に自身の唇を重ねた。

 口移しに、小悪魔の唾液交じりの薬草の汁を与える。

 反射的に吐き出そうとするパチュリーの口内を己の舌先でなだめ、飲み込ませる。

 

 生物は激しい痛みを与えられると精神と身体がパニックに陥り、痛みを和らげようと脳内麻薬を分泌させる。

 そしてそこにこうやってほんの少しの快楽を与え、後押してあげれば、通常ではありえない深い悦びを感じることができる。

 それゆえ、パチュリーの喉が『こくん』と上下し、薬草による回復と、小悪魔の体液による媚毒、そして口内をそよぐ舌先の刺激が止めとなり、

 

「んんーっ!?」

 

 ビクンビクンとひときわ大きく腰を、身体を跳ねさせるパチュリー。

 ほんの少しの軽い気持ち、刺激を楽しもうと薬草の口移しによる治療を小悪魔に許していた彼女だったが、脳内麻薬でグシャグシャになった頭と身体では、そのほんの少しが命取りになる。

 悪魔に唇を、身体を許すというのはこういうことだと言わんばかりに、迂闊にも与えた隙を無理やりに広げられ、こじ開けられてしまう屈辱。

 それとは裏腹に高い頂に押し上げられ、そして堕ちていく身体。

 そうして小悪魔は満足げにほほ笑むとパチュリーの耳元に濡れた唇を寄せ、さらに淫靡な毒を流し込む。

 

「幻術士や鬼面道士との戦い、メダパニを受けてしまったら、もっと凄いことになりますよ」

「もっと……?」

 

 実は睡眠状態に対してのパーティーアタックは手加減が効き、痛みはともかくダメージが抑えられるうえ、100パーセント回復する。

 しかしメダパニの呪文を受け混乱状態に陥った場合は、全力で殴らなくてはいけない上、回復する確率は低い。

 

「心苦しいのですが、パチュリー様を正気に戻すためには本気で叩かなくちゃいけません。何度も、何度も……」

「あ……」

 

 小悪魔に本気で何度もムチ打たれる。

 その様を想像してパチュリーは、ぶるっ、と身体を震わせる。

 背筋を走るゾクゾクとした感覚は、恐怖のためか、それとも……

 

 

 

「あなたねぇ……」

 

 頭痛を抑えるかのように、額に手を当てるパチュリー。

 トゲのムチを手に妄想にふける小悪魔に、何とも言えない悪寒を感じた彼女は、

 

「そのトゲのムチで何をするつもりだったか、言え!」

 

 とばかりに詰問したのだが……

 まさか自分を被虐ヒロインとした主従逆転調教劇を延々と垂れ流されるとは思わなかったのだ。

 酷いセクハラである。

 しかし小悪魔の、

 

「この世界は携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版の流れをくむもの。つまりパーティアタックはできない仕様なんですけどね」

 

 という言葉に、それもそうかと安心する。

 だが、

 

(――今、ほんの少しですけど残念そうな顔をしませんでしたか、パチュリー様?)

 

 小悪魔はパチュリーの表情をうかがい、内心ほくそ笑む。

 魔法使い、魔女であり、幻想郷でも上位に位置する圧倒的強者であるとはいえ、パチュリーも生きている、生物なのだ。

 小悪魔から受けるセクハラに、わずかでもそういった欲望を呼び起されることはない、とは言い切れない。

 その小さなほころび、被虐願望に至る芽を今、ここで植え付けることに成功した、小悪魔はそう確信する。

 

(でもパチュリー様、パーティーアタックが無くても、私自身がメダパニを受けて混乱してしまえば、パチュリー様をムチでぶつことができるんですよ)

 

 転職を執り行うダーマ神殿周辺で現れるモンスター、幻術士が普通にプレイしていて初めて受けるメダパニの洗礼か。

 混乱状態の小悪魔にムチ打たれるパチュリーの反応を想像し、ぶるっと、身体を震わせる小悪魔。

 

(そのためには、私は豪傑の腕輪を装備して性格を『ごうけつ』にして運の良さをマイナス30パーセントの成長補正で抑え、状態異常を受けやすくする)

 

 同時に、

 

(パチュリー様にはガーターベルトを身に着けて『セクシーギャル』になってもらい、プラス20パーセントの成長補正で運の良さを上げてもらう)

 

 それが小悪魔の計画。

 

(セクシーな装身具を身に着けるパチュリー様のお姿も楽しめる一石二鳥のアイディア、本当にわくわく、いいえ、ゾクゾクしちゃいますね)

 

 そう考え、口の端を笑みの形に吊り上げる小悪魔だった。




 小悪魔……
 徹頭徹尾、セクハラ回でした。
 とはいえ実際にはパーティアタックによる睡眠状態の回復と薬草による治療行為しかしていない、しかもそれすら小悪魔の妄想なんですけどね。
 なお、

> 実は睡眠状態に対してのパーティーアタックは手加減が効き、痛みはともかくダメージが抑えられるうえ、100パーセント回復する。
> しかしメダパニの呪文を受け混乱状態に陥った場合は、全力で殴らなくてはいけない上、回復する確率は低い。

 これ、ファミコン版のお話で、スーパーファミコン版ではメダパニを回復させるためのパーティアタックでも手加減されるように変更されています。
 まぁ、

>「この世界は携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版の流れをくむもの。つまりパーティアタックはできない仕様なんですけどね」

 なので、どのみちパチュリー様たちには関係ありませんが。

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