こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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ところでこのタマを見てくれ。こいつをどう思う?

 小悪魔のセクハラもあったが、それ以外は何の問題もなくレーベの村にたどり着くパチュリーたち一行。

 

「それじゃあ、さっそく武器のお店に行くわね」

 

 武器店に行って、まずはパチュリーが使っていた銅の剣を売却。

 買値100ゴールドの7割5分、75ゴールドで売却できた。

 

「破格の買い取り額ですよね」

「そう?」

 

 その辺疎いパチュリーに小悪魔が説明する。

 

「はい、故買品の買い取りは基本が三割ですよ。足下を見られるともっと安く買い叩かれるのが普通ですから」

 

 そうしてパチュリーの手持ちの資金と合わせて購入したのは、鎌の柄に分銅付きの鎖がつなげられた武器。

 アリアハン大陸、店売りのものの中で最強の攻撃力を持つ鎖鎌だった。

 

「珍しい武器ですよね」

「そうね、鎖国中で鉄が貴重なアリアハンでは、食糧を自給するための農具に優先的に鉄器が使われる。それを流用して武器としたのでしょう、きっと」

 

 鎖鎌。

 日本では武芸十八般の一つとされた他、隠し武器、そして帯刀を許されない身分の農民、商人、職人の護身用の武器として用いられていたものだ。

 とはいえ特殊な武器ゆえ、店主の親父が扱い方を教えてくれる。

 

「分銅で打つ、鎖を絡めたところを鎌で止めを刺す」

 

 鎌の刃を示して、

 

「命を刈り取る形をしてるだろ? 鎌刃は引っ掛けただけで大きく傷を広げる。動きを封じた上での組討ちにはもってこいだ」

 

 と言う。

 また元々は農具の鎌であるのだから、普通に山菜、ハーブなどの収集にも役に立つ。

 幻想郷でも里の人間たちは鎌を片手に山に入って山菜採りに励んでいた。

 

「この鎖の取り付け部分は、鎌の頭端部にも鎌の柄尻にも付け替えが可能でね」

「どうしてまた?」

 

 首を傾げるパチュリーに、店主は実際に片手に鎌、もう一方の手に鎖付き分銅を持って振り回して見せる。

 

「鎌の柄尻に鎖分銅を付けた形態では、こんな風に操るのに両手が必要だ。今のところ盾を持ってないようだからいいが、この先盾を買って片手が塞がったら困るだろう?」

「そうね」

「でもこうして鎌の頭端部に付け替えれば」

 

 そう言って取り付け部を変更すると、なるほど、ムチやフレイルに近い操作感で、

 

「片手でも扱える。そのための仕掛けだよ」

 

 そういうこと。

 

「どこかのバンパイア・ハンターが使う鎖のムチみたいですね」

 

 と言うのは小悪魔。

 彼女はこの『読者に物語を仮想体験させる魔導書』に外の世界のコンピューターゲームを組み込むに際し、様々な資料を取り寄せ試行錯誤した訳であるが、その中にはアクションゲーム『悪魔城ドラキュラ』シリーズに関するものも存在した。

 鎖のムチはこのゲームの主人公が使う武器であり、その柄に鎌刃を付けたと思えばイメージがしやすいのか。

 

「そして…… 鎌の刃の付け方も工夫してあるぞ。根元は取り付け金具で刃が付いていない」

「それは?」

「想像して見な、鎌の柄尻に鎖分銅を付けた形態で使用した場合に、投げた時の反動や敵に鎖を捕まれて引っ張られたら……」

 

 それで手が滑ったら?

 

「鎌の刃で自分の指が――」

 

 想像して青ざめるパチュリーと、

 

「ポポポポ~ン!?」

 

 まったくためらうそぶりも無く結論を口にする小悪魔。

 

 指がなくては鎖鎌も持ちようがないか……

 

 ということになるのだ。

 

「手入れのための鎌砥も付けよう」

 

 小型で細長い棒状の砥石をくれる。

 内側に反った鎌刃を研ぐには普通のサイズの砥石は向かないのだ。

 店主は砥石を固定して刃を滑らせるのではなく、逆に鎌を固定して鎌砥を滑らせて刃を研いでみせる。

 また鎌砥は小さくて携帯できるので、屋外で刃物を酷使する場合にタッチアップと言って応急的に切れ味を蘇らせる用途にも使えて便利である。

 

 

 

「盗賊の鍵で入ることのできるようになった場所の確認もしないといけないわね」

 

 パチュリーたちは盗賊の鍵を使って鍵のかかった家へと入る。

 

「でも、やってることは不法侵入の泥棒ですよね」

「その辺は住居精霊(ヒース・スピリット)(パワー)でどうにでも誤魔化せるわ」

 

 以前、パチュリーが話したとおり。

 勇者一行には精霊ルビスの加護により、各家屋に棲み付いている住居精霊(ヒース・スピリット)家の精(ブラウニー)白い婦人(シルキー)が使う疎外(エイリアネーション)隠蔽(コンシールメント)混乱(コンフュージョン)といった(パワー)が作用するため、勝手に家屋に入っても咎められることは無い。

 というより、住居精霊(ヒース・スピリット)に招かれて家に入っていると言うべきか。

 実際、魔法使いであるパチュリーが持つ魔術的視野、セカンド・サイトには、この家付きの家事妖精(ホブゴブリン)の姿が映っていた。

 紅魔館で働いているホフゴブリンと同一種だが、ここに居るのはアストラル体であるので、常人の目には見えないのだ。

 

「これ何でしょうね、パチュリー様?」

 

 一階は無人で、部屋の中心に据えられた大きな釜の中には何やら不思議な液体が煮え立っている。

 

「大体予想は付くわ。古民家の床下の土を集め温湯と混ぜた上澄みに、草木灰に含まれる炭酸カリウムを加えて、硝酸カリウム塩溶液を作り煮詰めているのね」

「???」

「古土法による硝石造りよ。この液体を冷ませば結晶が析出するから、その結晶をもう一度溶解して再結晶化すると精製された硝石ができあがるの」

「どうしてそんなものを……」

「この家の主人に会えば分かるんじゃないかしら」

 

 その家の二階には一人の老人が居た。

 

「ん? なんじゃお前さんは? どうやって入ってきた? わしの家にはカギをかけておいたはずじゃったが」

「入口で呼んでも、返事がなかったので……」

 

 と、小悪魔が慌てて誤魔化す。

 まぁ、家事妖精(ホブゴブリン)混乱(コンフュージョン)(パワー)が作用しているので、そんなことをしなくとも通報されたりはしないわけだが。

 

「なんと! それは盗賊の鍵! するとお前さんが、あの勇者オルテガの……! そうじゃったか…… であればこれをお前さんに渡さねばなるまい」

 

 勝手に一人で納得し、興奮している老人。

 そして……

 

 突然その老人はパチュリーの見ている目の前で着込んでいたローブの前を広げ始めたのだ……!

 

 

 

 大きく開けられた服の下から現れたのは、

 

「ところでこのタマを見てくれ。こいつをどう思う?」

「すごく…… 大きいです……」

 

 魅せられたように手を伸ばすパチュリー。

 その練り絹のように滑らかな繊手で、中身が詰まった、ずしりと重い"タマ"を確かめるように触れる。

 そしてパチュリーは顔を寄せると、ゆっくりと深呼吸するように匂いをかぐ。

 

「ああぁ…… は……ぅぉあああ……」

 

 途端に頭がくらくらするほどの暴力的な匂いが彼女の嗅覚を犯した。

 

「うあっ……うあああああ…………」

 

 ぶるぶると身体と、真っ赤に紅潮した顔を震わせるパチュリー。

 むせかえるような、生々しくも強烈な臭いに、ガーンと殴られたように頭が真っ白になる。

 これがパチュリーの求めているもの。

 

「どうじゃ? わしのモノの匂いは」

「臭い……」

 

 ゾクゾクと背中を駆け抜ける悪寒と快楽に小さな声が上がる。

 息を吸い込むたびに鼻腔を満たす匂いが吸い込まれ、パチュリーの肺と精神を征服していく。

 男が差し出したモノには、濃縮されきったエキスがため込まれていた。

 そこからほとばしる凶悪な匂いはムンムンと狂おしいほど鼻に香り、パチュリーの女を目覚めさせる。

 パチュリーは激しい羞恥に悶えていたが、同時に彼女が性的にひどく興奮していることは何より確かなことだった……

 

 

 

 魔法の玉を手に入れた!

 

 

 

「またおかしなことを考えているでしょう……」

 

 ジトっとした半眼で妄想にふける小悪魔をにらむパチュリー。

 彼女は老人が懐から出してきた魔法の玉を手に、商人の鑑定能力と自分の知識を合わせて匂いも含め調べていたのだが。

 

「何なんです、ソレ」

 

 誤魔化すように聞く小悪魔に、小さくため息をつき、

 

「これはかなり珍しいものだわ。どんな効果があるのかよくわからないわ。ためしに使ってみたらどう?」

 

 と芝居めいた平坦な口調で言って小悪魔の顔にそれをぐりぐりと押し付ける。

 

「い、いえ、私は借金があるので、これはパチュリー様にお任せします」

 

 そう遠慮する小悪魔だったが、パチュリーは退かない。

 

「お店に持っていってもこれに値段は付けられないでしょうね。だいじょうぶ。呪いはかかっていないわ」

「呪い以前に、それどう見ても爆弾じゃないですか。やだー」

 

 まぁ、丸い玉に導火線が付いていたら分かるか。

 アリアハンの宿屋にはこれを作ろうとして爆発事故を起こし大けがをして寝込んでいる男も居たし、小悪魔がビビるのも無理はない。

 

「分かっているじゃない」

 

 とパチュリーはすん、と魔法の玉の匂いを改めて確かめる。

 火薬の匂い。

 黒色火薬は木炭と硫黄、そして階下の大釜で精製されていた硝石を混合して造られるものだ。

 魔法の玉と言いつつも、全然魔法じゃないという。

 

「その玉を使えば、旅の扉への封印がとけるはずじゃ。気をつけてゆくのじゃぞ」

 

 と告げる老人。

 この家からは他に精霊の隠し財宝、賢さの種と毒消し草を見つけて、家付きの家事妖精(ホブゴブリン)から譲ってもらった。

 

 

 

「それじゃあ、精算してみましょうか」

 

 と、それぞれの所持金を計算する。

 前回、アリアハン出発前の精算時の計算が、

 

小悪魔:-64G

パチュリー:261G(+未払い分64G=325G)

 

「それでレーベに来るまでの戦いで得た収入が10ゴールドで、一人当たり5ゴールドの配当だけど、あなたの分は借金の返却に充てられるから」

 

小悪魔:-59G

パチュリー:271G(+未払い分59G=330G)

 

「うう、収入があっても手元にお金が残らないなんて……」

 

 肩を落とす小悪魔。

 

「借金が減っているのだからいいじゃない」

 

 パチュリーはそう言ってなだめると、

 

「私の銅の剣を75ゴールドで売って、320ゴールドの鎖鎌を購入」

 

小悪魔:-59G

パチュリー:26G(+未払い分59G=85G)

 

「そして賢さの種の売却価格は120ゴールド。これは二人に所有権があるから、半額の60ゴールドを払えば自分のものにして使うことができる」

「そうですね、だからお金のあるパチュリー様が使って……」

 

 しかし、パチュリーは首を振るとこう言う。

 

「商人に賢さのパラメーターの恩恵はあまり無いわ。一方でマジックパワーを伸ばすためにも早期の呪文習得のためにも勇者であるあなたの賢さを上げることは重要よ。二人旅で呪文を使えるのがあなただけってこともあるしね」

「そんなぁ……」

 

 そうして、さらに借金を増やし賢さの種をポリポリ齧るハメになる小悪魔。

 

小悪魔:-119G

パチュリー:26G(+未払い分119G=145G)

 

「人のお金で食べる賢さの種は美味しいかしら?」

「涙の味がします……」

 

 そういうことであった。

 

「いいのよ、泣いても。たまには涙腺の洗浄も必要だわ」

 

 そう言って微笑むパチュリー。

 まぁ、種で上がる最大値の3ポイント、かしこさが上がったので良しとすべきか……

 

 なお、この光景を見た村人たちからは、

 

「勇者は商人のヒモ、はっきりわかんだね」

 

 などと噂されることになったという。




 久しぶりの更新ですが、相変わらずと言うべきか、寝かせ過ぎたせいと言うべきか、小悪魔のセクハラ妄想が酷すぎる……

「腐ってやがる。遅すぎたんだ!」

 借金体質も変わりませんしね。

> なお、この光景を見た村人たちからは、
>「勇者は商人のヒモ、はっきりわかんだね」
> などと噂されることになったという。

 カプコンのRPG『ブレス オブ ファイアII 使命の子』では選択次第で主人公たちが『タンスを調べた回数』や『全滅した回数』が噂されているという、大変にイヤな酒場(パブ)ができたりしますが。
 そこまで行かなくとも、プレーヤーの行動次第で住人の評価が変わるというのはありますよね。

 ともあれ、もう一つの連載がようやく完結しましたので、今後は気楽にこちらの続きを書きたいと思っています。
 どうかよろしくお願いいたしますね。

 次回は、

『苦痛と快楽!? 繰り返す時の中で小悪魔に苦鳴を搾りとられることを選ぶパチュリー!!』

 をお届けする予定です。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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