こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3) 作:勇樹のぞみ
「それで、これからどうするんですか?」
小悪魔からの問いかけに、パチュリーは少し考えて答える。
「そうね、ナジミの塔は駆け足で通り過ぎただけだったから、今度はじっくり調べてアイテムを回収しましょうか」
「それなら前に使った、レーベの村の南の森からナジミの塔に通じている地下道から行けばいいんじゃないですか? 途中、鍵がかかっていた扉もありましたよね?」
そういうわけでレーベの村から南下し、森の中にある入り口から地下道へと入るパチュリーたち。
盗賊の鍵が必要な扉があるので入ってみると、宝箱があった。
「中身は素早さの種と、カシの木をくりぬいて作った木の帽子ね」
木の帽子は金属製のヘルメットに比べ守備力は低いが、それでも低位の魔物の爪や牙程度では貫通できないし、軽量でぶつけても大きな音を立てないため隠密行動(ステルス・エントリー)には向く。
「それじゃあ、両方ともあなたに……」
「ちょ、ちょっと待ってください! これはどう考えてもパチュリー様が使うやつですよね?」
元々そんなに素早さが高くならない商人で、さらに素早さの成長に10パーセントのマイナス補正があるタフガイのパチュリー。
また素早さの半分が守備力にプラスされる、つまり素早い身のこなしでダメージは減らせるとしたドラゴンクエスト3のシステムではその影響で守備力も低くなっている。
しかし、
「私はヒットポイントが高いから敵の攻撃にあなたより耐えられるわ。だから守備力が低くても私が攻撃を受けやすい先頭に立っているのでしょう?」
「うぐ、た、確かにその方が安全ですけど、それだったらパチュリー様の守備力を上げて受けるダメージを減らした方が、治療代が安く上がりますよね?」
「将来的には、そういうこともあるでしょうね」
「将来的?」
どういうことかというと、
「今のあなたのヒットポイントは薬草の回復量を大きく下回っているでしょう? 危ないから小まめに回復させないといけない、治療に無駄が多くなるあなたの守備力を高めて被ダメと治療の回数を減らした方が、多少、被ダメが増えても大量のヒットポイントで薬草の回復量以上に負傷するまで耐えて、1回の治療で済ますことができる私の守備力を高めるより優先されるべきなのよ」
ということだった。
「うぐぐ……」
とはいえ、
「まぁ、これは勇者と商人の比較検証だから、無制限に借金を許してもダメよね。攻略上、不利になるとしても」
そういうわけで、素早さの種と木の帽子はパチュリーのものに。
「素早さの種の売値は60ゴールド、木の帽子の売値は105ゴールド。これらは二人に所有権があるから、半額の82.5ゴールド…… このドラクエ世界だとお店での売買も端数は切り捨てなのが慣例だから82ゴールドをあなたに支払えばいいわけね」
そうして精算した結果が、
小悪魔:-37G
パチュリー:26G(+未払い分37G=63G)
「借金が減ってくれましたが、ゼロにはならないんですね……」
「ちなみに商人はコスパが良くて守備力が高いターバンを買えるから、そうしたらこの木の帽子はあなたがまた買い取らなくてはダメよ」
「そんな殺生な!」
そうして、素早さの種を口にするパチュリーだったが、
「いたたたた!?」
「あー、もしかしてパチュリー様、忘れてました?」
能力値を上げる種には、魔術的に肉体強化を促進する力が宿っている。
現実ではトレーニングをすると筋肉の一部が損傷して、次に超回復という現象でトレーニング前を上回る筋力、体力が付く。
普通は超回復に二、三日かかるが、スタミナの種や力の種、そして素早さの種などの身体能力アップ系の種は筋肉の破壊から超回復を短期間に行うものになっている。
つまり筋肉痛を凝縮した激しい痛みが襲うということだった。
無論、パチュリーも例外ではなく……
小悪魔はそんなパチュリーをマッサージでなだめるが、
「くぁっ!? そ、そこは」
「それとも――」
つい、と口の端を吊り上げてこうささやく。
「また私に鳴かされたくて、こんな風に無防備に種を使ったんですか?」
「っ!?」
瞳を見開くパチュリーの反論を、言い訳を封じるかのように少し強めにツボを押す小悪魔。
「あ、あああ!」
そうして必死に耐えるパチュリーを悪魔の…… 捕食者の目で見下ろす。
(……鳴け)
ツボに添えた指を、パチュリーの柔らかな身体にぐりりとねじり込む!
「ああああああああ!」
まるで絶頂したかのようにのけ反り叫ぶパチュリーの姿に、欲情しきった小悪魔の瞳が笑う。
(パチュリー様、イク時は足ピン派なんですね。ふふっ、覚えました)
などと考えながら。
そうして倒れ込むパチュリーの耳元に、小悪魔はささやきかける。
「あー、残念ですねーパチュリー様。素早さが1ポイントしか上がりませんでしたー」
能力値を上げる種は1~3ポイントの間で能力値を上昇させる。
これは完全にランダムなので試してみる他無いのだが、
「ところでパチュリー様。私、さっき『中断の書』にプレイデータをセーブしておいたんですけど」
この世界は携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版の流れをくむものらしい。
ということは、システム的にフィールドのどこでもセーブできる『中断の書』が利用できるのだろう。
「あ……」
パチュリーは気付いてしまった。
これは仮想体験型とはいえゲームなのだ。
つまり『中断の書』によるやり直しもまた可能。
納得がいくまで、何度でも。
「さぁ、パチュリー様、いかがされますか?」
慈愛に満ちた悪魔の微笑を浮かべ、危険な選択肢を差し出す小悪魔。
「う、ぁ……」
パチュリーはぞくりと背筋を震わせながら口を開け、
「も…… もう一度……」
と先ほどの体験を繰り返すことを選択するのだった。
(くふふふ、さすがです! さすがですよパチュリー様!)
小悪魔は内心、笑いが止まらない。
ゲーマーにありがちな、納得がいくステータスが得られるまでリセットしやり直すというプレイ。
(凝り性なパチュリー様なら、はまってくれそうだと思いましたが、これだけ私に鳴かされたっていうのに本当に選んじゃうんですね)
愉悦に歪みそうになる口元を意識して引き締め、小悪魔は決意する。
(いいですよパチュリー様。その期待、応えて差し上げます!)
再び素早さの種を食べ、全身を襲う筋肉痛に耐えるパチュリー。
その身体に、今度は最初から全力で苦痛と快楽を叩き込んでいく。
「あ゙ーっ! あっ、あっ!」
『前回』の体験により高められていたパチュリーの意識は、すぐさまその強すぎる刺激、痛みの中にない交ぜになった裏返しの気持ちよさ、快感を見つけて身体をビクンビクンと跳ねさせる。
リセットにより時を戻せばパチュリーの身体は元に戻る。
それなのに反応に変化があるのは、パチュリーの記憶まで元に戻るわけでは無いからだ。
継続している意識には、マッサージという『建前』で、自分の支配下にある使い魔であり、取るに足りない存在であるはずの小悪魔に組み敷かれ、いいように苦鳴を搾り取られるという、主従が逆転した倒錯の異常経験が刻み付けられ蓄積されていくのだ。
(そうれっ!)
「あおおおおおおっ!」
身体が元に戻っても、感じ方に変化があるのはこのため……
身体ではなく、心が小悪魔に躾けられていっているからなのだ。
(こうして私のこの手でお身体をさすって、こすって、快楽のツボをほじって、弄って、弄って弄って弄って、弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄弄――)
小悪魔の瞳が狂気に染まり、そして――
(悪魔の手管で、苦痛と快感を魂にまで刻み込んであげます。快楽の沼に突き落とし、深く深く、二度と這い上がれない所まで沈めて差し上げます)
ずぶりという表現がぴったりくるような、そんな手つきで小悪魔の五指がパチュリーの豊満で柔らかな肉体に沈められていく。
「あ゙ーーーーーーーーーっ!!」
一瞬でも忘れてはいけないのだ。
彼女はドジで力も弱い小者だが、人から快楽と苦鳴を搾り取る人外の存在。
捕食者である悪魔だということを。
「あ…… か、は……」
息も絶え絶えな様子のパチュリー。
持病の喘息が心配されるような状況だが、これは仮想体験であり、この本の中の世界のパチュリーは現時点でヒットポイントが勇者である小悪魔の倍以上あるほどの強靭さを持つ存在。
(つまり現実ではできない過激なプレイも可能なのです)
だからこそ小悪魔も遠慮せずに全力で責め立てているのだ。
そして、
「あー、今度は2ポイントアップですかー」
小悪魔は…… 悪魔は狡猾である。
主従契約の抑止力。
そして隔絶した実力差によって、小悪魔は主人であるパチュリーを害することなどできはしない。
だが、そのことこそが逆にパチュリーの危機感を萎えさせていた。
本気になれば小悪魔のことなどいつでも跳ねのけることができる……
このちょっと調子に乗りすぎでしょう、という調教じみた行為の影響だって、排除することができる。
魔法使いなら己の精神を律するなど当たり前の行為なのだから。
しかしその余裕が…… 反対にパチュリーの抵抗力を弱めているのだ。
その上で小悪魔は『建前』、つまり、
(これはゲームのため、攻略のために必要なこと)
という『言い訳』をパチュリーに用意した上で選択を任せる。
フラフラと揺れるパチュリーの心の天秤。
それを傾けるべく言葉を紡ぐ小悪魔。
「どうせ今回限りの仮想体験なんです…… 納得がいくように楽しまれればいいんですよ」
小悪魔が差し出した甘い言葉の罠に、パチュリーが押さえ続けていた衝動が溢れ出す。
そして……
そして何度やり直したことか……
繰り返す時の中でさんざんに小悪魔に鳴かされた末、ようやく素早さの3ポイントアップを達成するパチュリー。
「……力の種は酸素の他、糖質や脂質を燃焼させエネルギー源として使う有酸素運動向けの遅筋を鍛えるのだけれど、素早さの種は瞬発力に特化した無酸素運動に適している速筋を鍛えてくれるわけね」
脱力しながらも彼女の中の、魔法使いである冷静な部分がそう分析する。
なお現在の二人のステータスは、
名前:パチェ
職業:しょうにん
性格:タフガイ
性別:おんな
レベル:5
ちから:16
すばやさ:12
たいりょく:35
かしこさ:10
うんのよさ:6
最大HP:68
最大MP:20
こうげき力:32
しゅび力:20
ぶき:くさりがま
よろい:たびびとのふく
たて:なし
かぶと:きのぼうし
そうしょくひん:なし
名前:こあくま
職業:ゆうしゃ
性格:セクシーギャル
性別:おんな
レベル:3
ちから:16
すばやさ:19
たいりょく:13
かしこさ:13
うんのよさ:12
最大HP:25
最大MP:19
こうげき力:34
しゅび力:17
ぶき:とげのむち
よろい:たびびとのふく
たて:なし
かぶと:なし
そうしょくひん:なし
「勇者なのに、ヒットポイントでも守備力でも商人のパチュリー様に負けてます。と言いますか、ヒットポイントが勇者の倍以上っておかしいですよね!?」
叫ぶ小悪魔。
一方、パチュリーは冷静に分析。
「商人はタンク、壁役に向いているってことかしら? これじゃあ、この先もしばらくは私が一番攻撃の集中する先頭に立たなきゃダメね」
「攻撃力は武器の差で辛うじて勝ってますが、それもたった2ポイントだけです」
「力の能力値が一緒だもの。でもあなたのトゲのムチはグループ攻撃武器だから、数値以上に敵に与えるダメージは大きくなるわ」
そういうことだった。
このお話は健全、いいね?
納得がいく数値が出るまでリセットするプレイって多くの人がやりますよね?
小悪魔も筋肉痛に苦しむ主人にマッサージしているだけですし、なにも、問題、ありません。
心がピュアな方なら、きっとわかって頂けるはず。
みなさまのご意見、ご感想、そして、
「嘘を言うなっ!」
などというツッコミ等をお待ちしております。
今後の展開の参考にさせていただきますので。