こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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パチュリーが鎖鎌を握った!!

 二人は奥に進み、前回通過時はスルーした宝箱から32ゴールドを回収。

 さらに進んでいくと、モンスターと遭遇した。

 

「一角ウサギね」

「でも何だか驚いている様子ですよ」

 

 モンスターは驚き、戸惑っている。

 先制攻撃のチャンスだ。

 

 カマこうげき!!

 

 とばかりにパチュリーの鎖鎌が一角ウサギの喉笛を掻き切り一撃で絶命させ、

 

「call me queen!!(女王様とお呼びっ!!)」

 

 小悪魔のトゲのムチが唸り、残り3羽の一角ウサギを打ち据える!

 その先端は音速すら超えるというムチの範囲攻撃、触れれば皮膚が裂け、肉が爆ぜるトゲのムチの攻撃フィールドに痛打され、即座に全滅する一角ウサギ。

 しかし、

 

「やっぱり素早さは上げるべきでは無かったのかしら? 後攻攻撃のパターンが崩れているわね」

 

 パチュリーはつぶやく。

 

 ドラクエにおいて、素早さが高いということは必ずしもいいことばかりであるとは言えない。

 逆に低い方、行動順位が遅い方が有利な場合もある。

 今回は問題なかったが、本来なら小悪魔がグループ攻撃をかけた後に、倒しきれなかった敵に対しパチュリーが止めを刺す、とした方が効率的に敵を倒せるのだ。

 

 一方、小悪魔は、

 

「レベルが上がりましたー」

 

 この戦闘の結果、レベルが上がっていた。

 ヒットポイントやマジックパワー、各能力値が上昇したが、さらに、

 

「ヒットポイント回復呪文、ホイミを習得しました!」

 

 これが大きい。

 

「これまでメラだけしか使えなくて使い道のなかったマジックパワーがようやく役立つようになりましたー」

 

 ということ。

 そして小悪魔は思い出す。

 

「そういえばパチュリー様、前に勇者のメラにも使い道があるって仰ってましたけど」

 

 普通であれば物理攻撃していた方がダメージが高くなる勇者で、一番攻撃力の低い単体攻撃呪文メラの使い道はというと、

 

「人面蝶は幻惑呪文マヌーサで、こちらの物理攻撃の命中率を半分に引き下げるけど、そうしたら確実に当てられるメラによる呪文攻撃に切り替えるといいってわけ。人面蝶はそのままでも通常攻撃を回避することがあるモンスターだし」

 

 半分の確率で攻撃を外すよりは、ダメージは多少減っても必ずヒットする呪文攻撃の方が速く敵を倒せるというわけである。

 

 しかし、

 

「それもホイミを習得する前までの話だけれど」

「ホイミを使えるようになりさえすれば、多少攻撃を外して戦闘が長引いたとしても、回復のためにマジックパワーを温存させておいた方が良いという話ですね」

「ええ、マジックパワーをケチって戦闘を長引かせた結果、かえって治療に必要なマジックパワーが増える、というケースもあるけど、序盤の戦いでは考えなくても大丈夫でしょう?」

 

 まぁ、今後冒険を進めて行くとそういったことも起こり得るので気を付けねばならないが。

 

「あと考えられるのは、味方にヒットポイントが危険なまでに削られている者が居て、攻撃を外したら死亡する可能性があるっていう場合かしら」

 

 その場合も確実に当たるメラで倒してしまった方が良いだろう。

 

「逆にホイミを覚えていない段階でも、グループ攻撃が可能なトゲのムチを装備させた場合に敵が大人数のグループなら、命中率が半分になっても全体で見れば当たる確率は上がり、与えられるダメージもメラより上になるケースも考えられるわね」

 

 そういうパターンも有り得るか。

 それら考察はさておき、倒したモンスターの処理である。

 

「一角ウサギから採れる肉と毛皮だけれども、これぐらいなら解体せずにインベントリ…… 魔法の『ふくろ』に入れて持ち帰ればいいわね」

 

 パチュリーの鎖鎌の鉄の刃で解体してしまうという手もあるが、ここは先を急ぐため『ふくろ』に入れて持ち運ぶことにする。

 

「次は、前回は通らなかった岬の洞窟だけれども」

 

 普通は岬の洞窟を経由して、ナジミの塔へと向かうものだが、パチュリーたちはこの地下通路を利用してパスしてしまったため、まだ行っていなかった場所だ。

 しかし、

 

「パチュリー様? そっちはナジミの塔に上がるための階段ですよ?」

「そうね、でも私たちの気配を察知して近づきつつあるモンスターをやり過ごすには、一度階段を昇り降りするのが一番よ。モンスターたちの縄張りは階ごとに分かれていて、階段を使って移動すると、もう追いかけては来ないから」

 

 ドラクエのモンスターは歩いた歩数で遭遇する。

 これは勇者たちに反応して引き寄せられたモンスターが接触するまでそれぐらいの時間がかかるということ。

 一方、モンスターたちはフロアごとに出現する種類が異なる。

 つまりモンスターたちの縄張りは階ごとで、階段を使った移動はしないということ。

 だから階段を上ったり下りたりしてやり過ごすことが可能。

 システム的に言えばフロアを移動すれば遭遇までの歩数のカウントがリセットされるということ。

 それを利用した遭遇回数軽減策である。

 これを使えば、

 

「なるほど、敵に会わずに岬の洞窟への階段にたどり着きましたね」

「それじゃあ、宝箱の中のアイテムとゴールドを回収しましょう」

 

 途中、大ガラス4羽に襲われ、パチュリーは攻撃されるが、

 

「大ガラスの攻撃が外れた? 守備力を上げたおかげね」

 

 ということでノーダメージ。

 そして、

 

「そこです!」

 

 レベルが上がって攻撃力が上昇したせいか、小悪魔のトゲのムチによるグループ攻撃で敵は一掃。

 そうして宝箱までたどり着く。

 中身はというと、

 

「56ゴールド。この時点で革の鎧が一つ買えるわけだけど、ここは一気に攻略してしまうわね」

「了解です」

 

 次に現れたのはスライム5匹。

 グループ攻撃が可能な鞭は、最初はフルにダメージを与えることができるが、後に攻撃を受けるモンスターほど与ダメージが低くなる。

 ここまで数が出ると小悪魔のムチでも1匹は倒し損ねるが、

 

「止め」

 

 パチュリーが鎖鎌で止めを刺し戦闘は終了。

 そしてたどり着いた宝箱には、

 

「旅人の服ですね。私たちには不要ですけど」

 

 二人とも旅人の服を着込んでいるわけであるし。

 だが、

 

「でも売れば52ゴールドになるわ」

 

 パチュリーが言うとおり資金源にはなる。

 そして最後の宝箱に向かうが、

 

「またスライムが5匹ですか」

「既に敵じゃないわね」

 

 ということで前回同様あっという間に戦闘終了。

 

「宝箱の中身は薬草ね」

 

 これで宝箱の中身の回収は終了。

 

「ところで、どうしてこんな風に宝箱にものが入っているんでしょう?」

 

 首を傾げる小悪魔にパチュリーはこう答える。

 

「これは精霊の隠し財宝…… ダンジョンの宝箱は財宝を守る精霊スプリガンのものでしょうけど」

 

 実際、魔法使いであるパチュリーが持つ魔術的視野、セカンド・サイトには財宝を守る精霊スプリガンの姿が捉えられていた。

 パチュリーはわずかな微笑で謝意を伝える。

 するとスプリガンは満足したように消えて行った。

 また別の場所で眠る財宝を守って行くのだろう。

 

「じゃあ、これらのアイテムはどこから来たものなの、という話もあるわね」

 

 そういうこともある。

 まさか精霊が買ってきたり作ったりしたものではあるまい。

 

「まず考えられるのは、この洞窟でモンスターの犠牲者となった者の持ち物」

「そ、それは…… 確かに死体や棺桶が宝箱扱いのゲームもあるようですけど」

 

 顔を引きつらせる小悪魔。

 

「後は、このダンジョンへの挑戦者がデポしていった物とか」

「デポ?」

「登山ではね、登山ルートにあらかじめ荷物を置いておくこと、または登山中にいらなくなった荷物を置いて行くことをデポって言うらしいわ」

 

 そうすることでルート上に物資を備蓄しておく訳だ。

 補給が必要になった時には、そこから取り出して使う。

 パチュリーが読んだ本から得た知識ではあるが、そういうこともあるらしい。

 

「こういった品々も、このダンジョンを攻略しようとした人たちが置いて行った物かも知れないわね」

 

 

 

 そして帰り道、大ガラスの群れ4羽を倒すと、

 

「レベルが上がったわ」

「また私と2レベル差が付いちゃったんですか!?」

 

 パチュリーがレベル6に。

 最大ヒットポイントが13上がり、81に。

 

「私の3倍じゃないですかー!!」

 

 勇者の3倍のヒットポイントを持つ商人。

 小悪魔はオールマイティな成長補正を持つセクシーギャルであり、そのヒットポイントは決して低いわけではないのだが……

 こうしてひたすらスライムと大ガラスの群れを駆逐しながら帰還する。

 その他の成果としては、

 

「後攻攻撃のパターンは崩れていなかったわ。最初の一戦がたまたま運悪く攻撃順が崩れただけね」

 

 ということが分かった。

 しかし、

 

「おおありくいと一角ウサギです!」

 

 ナジミの塔に戻って遭遇したモンスターに対し、

 

「おおありくいが落とす革の帽子を手に入れたいから、先に一角ウサギを倒して。その後に私がおおありくいを」

 

 と指示するパチュリー。

 戦闘後に得られるアイテムは、最後に倒したモンスターのものだけだからだ。

 しかし小悪魔の攻撃より先に、

 

「あ、ら?」

 

 イネカリぎり!!

 

 とばかりにパチュリーの鎖鎌があっさりとおおありくいを倒してしまっていた。

 失敗である。

 

「どうして肝心なところで……」

 

 まぁ、嘆いても仕方がない。

 元々おおありくいが革の帽子を落とす確率は1/64。

 それほど高くは無いのだ。

 

「ともかく、宿に泊まって休みましょう」

 

 このまま塔の中を探索しても大丈夫なような気もするが、たかだか宿泊代4ゴールドをケチってもしょうがない。

 そういうわけで今晩はここに泊まることにする。

『ふくろ』の中のウサギやカラスの肉を引き取って換金してもらえることでもあるし。

 

「食事はみなさんが持ち込んでくれたウサギの肉とカラスの肉がありますけど、どちらにします?」

「そういえば、ウサギの肉ってまだ食べたことが無かったかしら」

「そうですね。前にここに来たときはカエルの足を食べましたし」

「なら今回はウサギの肉ね」

 

 というわけで、夕食はウサギ肉を調理してもらうことに。

 

「うわ、なんですかこの大きなお肉!」

 

 小悪魔が驚いたように叫ぶ。

 フライパンにたっぷりとバターを引いて岩塩とハーブで下味をつけた肉を焼いただけだが、鳥肉に似た風味のウサギ肉にバターがしみ込んでいて最高に美味しそうだった。

 バターは真夏でもない限り融けないので、どんなに栓で密封しても容器からとめどなく染み出してくる食用油を運ぶよりは便利だし、何より美味なので、こういった辺境の宿では使いやすいのだろう。

 さらには水場から摘んできたクレソンに、ボリュームを増すために干しエビを水で戻しトッピングしたサラダが添えられている。

 干しエビは軽く保存が効く上、水で戻すと驚くほど大きくなり食べ堪えがあるし、生のものより身が締まって旨みが凝縮されているという優れた食材だ。

 

 そうしてウサギの塊肉を一口食べた小悪魔が目の色を変える。

 

「うーん、火傷しそうなアツアツのお肉からたっぷりと染み出る肉汁とバターの旨味のハーモニー! 口にした瞬間に鼻に抜ける、ハーブの独特の風味がまた何とも言えないですね。紅魔館の食堂で食べるお肉と全然違いますっ!」

「そうね、紅魔館だとこういう野趣あふれる料理は出てこないものね」

 

 微笑むパチュリー。

 彼女もまた、

 

「疲れた身体に肉の塩気が沁みとおるようね。食べると身体が喜んでいるのが分かるわ」

 

 と、運動をしたせいか珍しく食が進んでいた。

 そこに宿の主人が追加の皿を持ってくる。

 

「ふかしたてのジャガイモもありますよ。熱い内にバターを乗せてとろけさせるのもよし、シンプルに岩塩をふって食べるのもよし」

「食べますっ!」

「私もいただくわ」

 

 そうして食事を満喫するが、

 

「蒸し器も持たれているのかしら?」

 

 このような場所で焼く、煮る以外の料理が出てくることに疑問を持つパチュリーだったが、

 

「普通の鍋でも蒸し料理は可能ですよ。石ころを鍋の中に敷き詰めて少量の水を注げばいい。これに食材を入れて蓋をして火にかければ蒸し料理ができます。ついでに蓋の上に重石を乗せれば内部が高温高圧になって短時間に調理が仕上がりますし」

 

 宿の亭主が答えたのは意外な手だった。

 

「なるほど、石ならどこでも手に入るわね」

 

 感心するパチュリー。

 横で聞いていた小悪魔も、

 

「蒸し料理は食材の旨みと栄養を逃さない調理法ですものね」

 

 カリフラワーなんかは茹でると水を吸って甘みが残らないし、とつぶやく。

 

「湧き水にビンを漬けてキンキンに冷やした白ワインもありますが」

「疲れて火照った喉を通るキリリと冷やした白ワイン…… ああ、反則。いえ犯罪的です。身体が欲しいって言ってます」

 

 小悪魔が即座に反応する。

 そして……

 

 

 

「あれっ?」

 

 ベッドで目を覚ます小悪魔。

 

「ああ、起きたのね。顔を洗って来なさい。良い攻略は早起きからよ」

「えっ、えっ? 夕食……」

「何言ってるの? しっかり食べてたじゃない」

 

 疲れた体に満腹、そして酒が入ったら寝落ちするに決まっていた。

 お蔭で慣れない外泊でも十分回復できただろうし、早寝したから早くから活動できる。

 

「えっ? えっ?」

「何よ、時を飛ばされたような顔をして」

「ようなじゃなくて、そのものです! せっかくパチュリー様とベッドを共にする機会だったのに!?」

「だったのにって、昨日は一緒に寝たわよ?」

「それなのに記憶が無いのがダメなんですっ!」

 

 相変わらずな小悪魔だった。

 

「……逆に考えれば、パチュリー様を記憶が飛ぶほど酔わせれば」

「物騒なことを考えるのは止めなさい」

 

 喘息持ちのひ弱な主人に何をするつもりだ、この使い魔は。

 

「いえ、これは仮想体験で、この本の中の世界ではパチュリー様は現時点でヒットポイントが勇者である私の3倍もあるほどの強靭さを持つ存在。つまり現実ではできない過激なプレイも安全に行えますから、お酒も…… いいえ、そんなものに頼らずとも悪魔の手管でご奉仕し、休むことなく快楽を浴びせかけ脳を酔わせれば、あるいは? そうやって記憶を飛ばされたパチュリー様の意識の裏で、身体の方は着々と快楽に順応し……」

「夢見る乙女のような表情をして、言ってることがエグすぎるでしょう! 記憶を失うまで責めるって、なに!?」

 

 相変わらずな小悪魔だった。




 この世の時間は消し飛び…… そして全ての人間はこの時間の中で動いた足跡を覚えていない。

 というわけで宿泊時のセクハラ行動を強制スキップさせられてしまった小悪魔でした。
 が…… 駄目っ……! 小悪魔のセクハラ妄想は尽きないっ!

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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