こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3) 作:勇樹のぞみ
朝食はカラス肉を使った野菜たっぷりのスープにクラッカー、新鮮な野菜サラダに香草茶(ハーブティー)という内容。
宿の主人が器に盛りつけながら説明してくれる。
「このような辺境の地では栄養を無駄に流さず、さらには身体を温めてくれるスープが基本です。そこに腹持ちの良い具材を沢山入れるのです」
このスープは汁物であり、同時に主菜でもあるということ、
「身体を動かすのですから味付けは濃い目で。食欲も増進しますしね」
汗を流す分、塩分も摂らなくてはならないという話だった。
そんな朝食を取った後、ナジミの塔攻略に向かうことにしたが、
「一角ウサギのお肉で良ければお弁当をお包みしますけど」
「ぜひ!」
という具合で、小悪魔は宿の主人が作ってくれたライ麦パンに一角ウサギの肉と野菜を挟んだ物をほくほく顔で受け取って宿を出る。
「まずは二階にある宝箱ね」
階段を上がり、宝箱を目指す。
モンスターに遭遇することも無く無事到着し、40ゴールドを入手。
「次は3階の宝箱だけど」
階段に向かう途中、モンスターに襲われる。
大ガラス4羽の群れだ。
悪いがこの程度、瞬殺で終わる。
しかし、3階までの階段は遠い位置にあるため再びモンスターの群れに遭遇。
今度はフロッガーとおおありくい。
「今度こそ!」
と意気込むが、
「あら?」
今度もまたパチュリーの鎖鎌がおおありくいの喉笛を掻き切るのが先だった。
何だか運が悪い。
というか、おおありくいが持つという革の帽子には縁が無いということだろうか。
「それにしても、上に行く階段にたどり着くには塔の外周をぐるりと回らないと駄目ですけど、壁も手すりも何も無いって怖いですよね」
と小悪魔。
足を踏み外せば真っ逆さまなので、恐れもするか。
ゲーム的に言ってもまた1階からやり直しになるということでもあるし。
しかし、
「これには利点もあるのよ」
そうパチュリーが言い含める。
「利点ですか?」
首を傾げる小悪魔だったが、そこに人面蝶一体と一角ウサギ二羽の群れが襲い掛かって来る。
「くっ……」
ここで初めて人面蝶の攻撃でパチュリーがダメージを受ける。
人面蝶はすばやいのでこちらより先に攻撃することができるのだ。
「と言ってもかすり傷だけれども」
たった1ポイントのダメージでは何の問題にもならない。
反撃により一撃で沈めて撃破。
そして3階へ。
「フロッガーとまた人面蝶です!」
それぞれ1匹ずつが出現。
今度は人面蝶の素早さに対抗してこちらも素早さの高い小悪魔を当てて先制し撃破。
そして宝箱へ。
「これが最後の宝箱ね」
「中身はキメラの翼ですか」
そして後は帰るだけ、というところでフロッガーとおおありくい、それぞれ二匹ずつの群れと遭遇。
「これなら!」
小悪魔をフロッガーに、パチュリーをおおありくいに当て勝負する。
数が多いゆえに殴り合いになるが、敵からは1~2ポイントのダメージしか受けない。
危なげなく撃破。
「レベルアップしましたよ、パチュリー様!」
連戦していただけに小悪魔がレベル5にレベルアップ。
「これで……」
「宝箱だわ!」
おおありくいは宝箱を落としていった!
パチュリーたちが宝箱を開けると、革の帽子が入っていた。
なめした獣の革を、にかわで固めたヘルメット。
昔から旅人に愛用されてきたもので、武闘家以外、どの職業の者でも身に着けることができる。
「最後の最後で運が良かったわね」
パチュリーは、革の帽子を小悪魔に差し出す。
「これはあなたが使いなさい」
「いいんですか?」
「もちろんよ」
「ありがとうございます!」
主人からの贈り物に喜ぶ小悪魔。
そのため続くパチュリーの、
「精算は街に帰ってからするし」
という言葉を聞き逃してしまうのだった。
そして、
「そう言えばあなた、さっき塔の外周に壁も手すりも無いことを嘆いてたけど」
「はい。利点もあるって話でしたよね、パチュリー様?」
「そうね」
パチュリーはうなずくと、
「こういうことよ」
そう言って、トン、と塔から小悪魔を突き落とす!
「ひあああああーっ!」
「『飛び降リレミト』つまり、危なくなったらいつでも飛び降りて外に出ることができるというわけ」
一緒に落ちながら解説するパチュリー。
迷宮脱出呪文、リレミトを覚えていない序盤には、こういう建物の方が脱出しやすく安全だということだった。
まぁ、小悪魔もこうして突き落とされるのも二度目なので、
「で、デビルウィーング!」
背から黒き翼を伸ばし……
「楽ねぇ」
「ぱ、パチュリー様!」
その手をつかんだパチュリーをぶら下げながら懸命にパタパタと羽ばたくのだった。
「し、心臓に悪いです。早くダンジョン脱出呪文のリレミトを覚えないとダメです」
「勇者がリレミトを覚えるのはレベル14以降、まだまだ先よ」
そんなやり取りをしながらも、なんとか着地。
「さぁ、キメラの翼を使いなさい」
「はいぃ……」
小悪魔が帰還アイテムであるキメラの翼を宙に放り投げると、二人はレーベの村へ向けひとっ飛びに飛ばされる。
まずは今まで手に入れたカエルのモモ肉、アリクイの毛皮などを換金して、旅人の服を売り払うとまとまった額の金が出来た。
「それじゃあ、精算してみましょうか」
と、それぞれの所持金を計算する。
前回の精算時の計算が、
小悪魔:-37G
パチュリー:26G(+未払い分37G=63G)
「それでここまでの戦いで得た収入が318ゴールドで、今晩の宿代を差し引いて一人当たり157ゴールドの配当だけど」
小悪魔:120G
パチュリー:220G
「良かったです。ようやく借金が返済できました! これで旅人の服を下取りに出して売れば革の鎧が買えます!」
と喜ぶ小悪魔だったが、しかし……
「そしてあなたが使っている革の帽子の売却価格は60ゴールド。これは二人に所有権があるから、半額の30ゴールドを私に払えば自分のものにして使うことができる」
「はい?」
「つまり、こういうこと」
小悪魔:90G
パチュリー:250G
「え、ええっ?」
革の鎧の購入価格は150ゴールド。
旅人の服の売却価格は52ゴールド。
「か、革の鎧が買えない……」
ということに。
「仕方が無いわね。あなたには木の帽子を回してあげるわ」
「あ、ありがとうございます、パチュリー様!」
「木の帽子の売却価格が105ゴールド、あなたが革の帽子を60ゴールドで売れば差額、45ゴールドで入手できる」
小悪魔:45G
パチュリー:355G
「私は旅人の服を52ゴールドで下取りに出して売り払って、150ゴールドの革の鎧と道具屋に売っている160ゴールドのターバンを買うわ」
小悪魔:45G
パチュリー:97G
「……アリアハンで革の盾も買えるわね」
そういうことになった。
アリアハンに行くなら、レーベの村に泊まることもない。
装備の売買を済ませたらそのまま村を発つことに。
途中、モンスターを蹴散らしながらアリアハンに到着。
革の盾を買うことができた。
これで二人の所持金は、
小悪魔:51G
パチュリー:13G
また現在の二人のパラメーターは、
名前:パチェ
職業:しょうにん
性格:タフガイ
性別:おんな
レベル:6
ちから:17
すばやさ:15
たいりょく:40
かしこさ:11
うんのよさ:7
最大HP:81
最大MP:21
こうげき力:33
しゅび力:31
ぶき:くさりがま
よろい:かわのよろい
たて:かわのたて
かぶと:ターバン
そうしょくひん:なし
名前:こあくま
職業:ゆうしゃ
性格:セクシーギャル
性別:おんな
レベル:5
ちから:22
すばやさ:23
たいりょく:17
かしこさ:15
うんのよさ:13
最大HP:34
最大MP:30
こうげき力:40
しゅび力:25
ぶき:とげのむち
よろい:たびびとのふく
たて:なし
かぶと:きのぼうし
そうしょくひん:なし
「おかえりなさい。私のかわいいこあくま。さぞや疲れたでしょう。さあ、もうお休み」
勇者の実家では、勇者の母が迎えてくれた。
話しかけると問答無用で寝かしつけられてしまう。
しかし、
「お友だちもご一緒に…… ゆっくり休むのですよ」
「その意味深げな間は何!?」
パチュリーが突っ込む。
そんな風に言われると『ゆっくり休む』が別の意味に聞こえてしまうのだが。
「さぁ、パチュリー様。お母さんもああ言っていることですし『ゆっくり休み』ましょう?」
「ほら、やっぱりそういう意味で受け止めているし!」
パチュリーを自室に連れ込み、ねっとりとした欲情しきった眼で見つめる小悪魔。
それ、使い魔が主人に向けて良い視線じゃないから!
ということだがパチュリーは忘れている。
以前、
「パチュリー様の匂いが染みついた服…… それを売るなんてとんでもない!」
「人の着ていた服に顔をうずめないでちょうだい」
パチュリーの着ていた服
これを与えられた小悪魔は本能に従うまま魅惑の匂いに包み込まれ、濃厚なフェロモンを吸ってしまい魅了状態にされてしまう。
さらに、すでに魅了状態の場合は恍惚・朦朧状態にまで堕とされてしまう。
「ちなみに私は素でパチュリー様に魅了されているので、即座に恍惚・朦朧状態にされてしまいます」
「どうしてそこで胸を張ることができるのか本気で分からないし、そもそも人の着ていた服に勝手に変な特殊効果を設定しないでくれる?」
「いえ、犬にとって主人の匂いの付いた衣服がフェロモンを発する魅惑的な存在に思えるように、私たち使い魔には主人の魔力の残り香が付いた服はごちそう……」
「嗅ぐな!」
このようなやり取りがあったわけであるが、今の小悪魔はパチュリーが被っていた木の帽子をゆずってもらい装備している。
つまりパチュリーの髪から移った甘い残り香に常時包まれているわけで、
「何その、もう我慢できないって顔は?」
「はい、パチュリー様の匂いがこもったヘルメット…… しっかり堪能させていただいています」
ふうわりと漂い鼻腔を優しくくすぐる香りに、小悪魔は心地よい陶酔感を覚え、頭には桃色の霧がかかっていた。
魅了、恍惚、朦朧状態が常態化しており、体内で湧きたつ欲情をこらえきれない……!
「堪能って……」
ドン引きするパチュリーだったが、
「さすがパチュリー様です。自分の匂いが付いたヘルメットを下僕に被せ、魅了、洗脳してしまうなんてヒドイこと、平然となさるのですから」
「勝手に人が被っていたヘルメットを洗脳道具にしないでちょうだい!!」
酷い言いがかりである。
とにかく、このままではまずいと小悪魔から木の帽子を取り上げようとするが、魅了されている小悪魔は激しく抵抗する。
「本当に呪いのアイテムみたいになってるし!」
外せない……
が、もみ合った結果、ベッドに倒れ込んだ二人。
パチュリーの胸元に顔をうずめる形になった小悪魔の動きが止まる。
「あら?」
発情しきっていたところに、パチュリーの身体から漂う甘い体臭を密着したまま直に吸い込んでしまったことで、ビクンビクンと痙攣する小悪魔。
結果、魅了、恍惚、朦朧、興奮、発情に、さらに匂い中毒、屈服、堕落、etc.……と状態異常まみれにされ、パチュリーに対する抵抗力がとめどなく下げられて行ってしまう。
そうやってろくに抗うこともできなくなった小悪魔から、パチュリーは木の帽子を取り上げることに成功する。
「ハーブを使って消臭するしかないわね」
持っていたタイムを詰めたサシェ、香り袋を使い一晩かけて消臭することにする。
タイムは爽やかな芳香で魚料理の香りづけなど料理に使われるものだが、アロマやハーブティーにも活用できる。
防腐、抗菌の効能の他、殺菌消臭、リラックス効果もあるものだ。
「パチュリー様ぁ」
小悪魔がすがりついてくる。
状態異常が蓄積しまくった結果、赤ん坊のように弱体化しきっているその様子にパチュリーはため息をつくと、
「今晩だけよ。消臭が終わる前に木の帽子を取り戻そうとされても困るし」
小悪魔の耳元にそうささやくと、ベッドを共にし眠りにつくのだった。
>「お友だちもご一緒に…… ゆっくり休むのですよ」
>「その意味深げな間は何!?」
これ、ゲームのセリフそのままなんですよね。
男勇者が男の仲間を連れ込んだ場合でも同じです。
勇者母……
みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
今後の展開の参考にさせていただきますので。