こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3) 作:勇樹のぞみ
「おはよう! もう朝ですよ、こあくま。さあ、行ってらっしゃい」
勇者母に起こされ、二人はアリアハンの街から出発する。
目指すはいざないの洞窟。
アリアハンからの脱出である。
途中、大ガラスを蹴散らしながらレーベの村へ。
そこからアリアハン東部へと足を踏み入れる。
「フロッガーの群れです!」
「今さら!」
これも瞬殺。
そして、
「レベルが7に上がったわ」
名前:パチェ
職業:しょうにん
性格:タフガイ
性別:おんな
レベル:7
ちから:18
すばやさ:17
たいりょく:45
かしこさ:12
うんのよさ:8
最大HP:90
最大MP:24
こうげき力:34
しゅび力:32
ぶき:くさりがま
よろい:かわのよろい
たて:かわのたて
かぶと:ターバン
そうしょくひん:なし
「また私と2レベル差に…… って言いますか、ヒットポイント90って何ですか!」
叫ぶ小悪魔。
彼女のパラメーターは、
名前:こあくま
職業:ゆうしゃ
性格:セクシーギャル
性別:おんな
レベル:5
ちから:22
すばやさ:23
たいりょく:17
かしこさ:15
うんのよさ:13
最大HP:34
最大MP:30
こうげき力:40
しゅび力:25
ぶき:とげのむち
よろい:たびびとのふく
たて:なし
かぶと:きのぼうし
そうしょくひん:なし
なのだから、その差は歴然としている。
「素早さが上がったおかげで守備力が上がってくれたのも嬉しいところね」
「守備力? 1ポイントだけですよね、上がったの」
「守備力は4ポイント毎にダメージを1ポイント減らしてくれるの」
「ああ、32だと、ちょうど四の倍数、8ポイントまで防いでくれるってことですね。私は25だから…… 6ポイントだけですか」
たった2ポイントの差だが、ダメージが蓄積していくと馬鹿にならない違いが出るものだ。
特にいざないの洞窟には催眠呪文ラリホーを使う有角ウサギ、アルミラージが集団で出るものだから、眠らされ続けて延々と攻撃を受ける、という可能性もあるのだし。
「次は山地越えね」
ドラクエのフィールドマップでは、地形が険しくなるにつれ、モンスターの出現頻度がアップする。
「パチュリー様、覆面を被った変質者が!」
黒いローブと覆面で身体を覆った人型のモンスターが襲って来る。
「魔法使いね。単体攻撃呪文メラの使い手よ」
ナジミの塔の上層部でも出現するモンスターだったが、パチュリーたちは今まで遭遇したことが無かった。
それが二体現れ、戦闘を仕掛けて来る。
「魔法使いであるパチュリー様が商人で、魔法使いって呼ばれるモンスターに襲われる……」
というメタ視すると複雑な状況。
しかしパチュリーは、
「この程度で魔法使いを名乗られてもね……」
と気にも留めない。
ただ、
「……指が増えてる?」
諸般の事情で近年のリメイク作ではその辺、デザインが修正されていることに気付ければ、立派なレトロゲーマーである。
「私のムチは痛いですよっ!」
そう叫びつつ小悪魔はトゲのムチを振るう!
「誰のムチだって痛いでしょ」
と突っ込むのはパチュリー。
しかし、
「あいたっ!」
小悪魔は魔法使いの反撃のパンチを受け、驚く。
「倒しきれてない!?」
割とヒットポイントがある魔法使いは、小悪魔のムチでも一撃では倒せないのだ。
まぁ、呪文使いの素手のパンチなど大したことも無く、ダメージは1ポイントと効いていないのだが。
「油断してるから……」
呆れたようにつぶやくパチュリーの鎖鎌が魔法使いに止めを刺す。
そのパチュリーにも生き残りが殴りかかるが、やはり1ポイントのダメージで済む。
「もう一度!」
再び小悪魔がトゲのムチを振るうことで、魔法使いは全滅。
「メラ、使ってこなかったですね?」
首を傾げる小悪魔だったが、これには理由がある。
「ファミコン版だと通常攻撃と逃走が1/8ずつ、こちらのレベルが高くないと逃走することは無いから残り6/7の高確率でメラを撃ってくる。マジックパワーは10で5発まで連発が可能よ。そして隊列を無視して完全ランダムな目標に撃ち込んでくるから、ヒットポイントの低い後列に向けられるとかなり危険なのだけれど」
だからファミコン版では強敵だったのだが、
「スーパーファミコン版以降のリメイク作品だとメラを使う確立は4/8に落ちているの。こちらのレベルが高くないとやはり逃走しないから実質的には4/7だけど、そもそもマジックパワーも4まで落ちているから2発しか撃てなくなっているし」
「もの凄い弱体化ですね」
リメイク以降はプレイヤー側も強化されていることもあり、危険度はかなり下がっているのだ。
そして、
「人型のモンスターのせいか、普通にお金持ってましたね」
「そうね、制作元のエニックスから出版された書籍『ドラゴンクエスト アイテム物語』では、ゴールドは魔族の通貨であるとされ、これが全世界で普遍的に通用している理由だと説明されていたものね」
だからモンスターたちがゴールドを持っているのだと。
さらにそれだけではなく、
「宝箱だわ!」
魔法使いは宝箱を落としていった!
パチュリーたちが宝箱を開けると聖水が入っていた。
「魔法使いは1/64の確率で聖水を落としていくのだけれど」
初回で引き当てるとは運がいい。
パチュリーは聖水を手に取って見定めた。
「これを使うと自分より弱い魔物をしばらくの間寄せ付けなくできるようね」
通常時に使用するとトヘロスの呪文と同様の効果。
128歩の間、フィールド上で弱いモンスターと遭遇しなくなる。
具体的には、
先頭キャラのレベル≧現在のエリアレベル+5
「大元のファミコン版では、
先頭キャラのレベル≧モンスターパーティ内の最も高いモンスターレベル+5
だったから、これを使って特定のモンスターだけしか現れなくする方法もあったけど、スーパーファミコン版以降のリメイクでは、エリアレベルと比較して低ければそのエリアではモンスターは一切出なくなっているの」
「それじゃあリメイク版の方が効き目が強いということですね」
「ところがこのエリアレベル、その地域に出現するモンスターの中で最もモンスターレベルの高いモンスターを基準に設定されているから、聖水やトヘロスで完全に封殺できるレベル自体はファミコン版と変わらないし、逆にファミコン版では出現を防ぐことができた低レベルモンスターもエリアレベルが高いと防げなくなっているの」
「ダメじゃないですか」
そういうことだった。
そして、
「私たちだと先頭に立っているパチュリー様が7レベルなので……」
「防げるのはエリアレベル2まで。つまりモンスターレベル2の一角ウサギより弱いモンスターしか出ない地域、アリアハンの街周辺と西アリアハンだけね」
「役に立たないじゃないですか」
スライム、大ガラス、一角ウサギ程度が今さら防げても意味は無い。
今となってはそんなザコ、蹴散らして経験値と資金源にして終わりである。
「あとは聖なる水、と言うだけあって生意気に教会で祝福儀礼を施されているから、戦闘中に使用すると邪悪な魔物にダメージを与えることもできるわね」
「ああ……」
嫌そうに眉をひそめる小悪魔。
「ダメージ幅は15~32。試しに飲んでみる?」
「やめてください。しんでしまいます」
小悪魔にはよく効きそうである。
「パチュリー様の聖水なら喜んで飲みますが」
小悪魔にはよく効きそうである。
逆の意味で。
一方、
「私の?」
パチュリーは少し首をかしげた後でこううなずく。
「魔法使いの体液には当人の力が含まれているものね、涙とか」
「純真すぎます!!」
セクハラをスルーされた小悪魔が、主人の思考と知識の純粋さに気圧されたかのようにのけ反る。
「で、でもそんなパチュリー様だからこそ、私の手でいやらしい知識を教え込む、染め上げるって楽しみが……」
「何をぶつぶつ言っているの?」
ともあれ、パチュリーはこの世界の聖水と呼ばれるアイテムに話を戻す。
「ファミコン版だと退魔の呪文二フラムへの耐性で命中率が決まったけど、リメイク版以降ではニフラム耐性に応じてダメージが軽減される仕様に変わっているわ。つまりニフラム無効の敵に効果がないのは変わらずだけど、その他の敵には必中というわけ」
「それは使いやすい、んですかね?」
「難敵には二フラムが効きやすかったりするから、それを倒したい場合には使える、のかも?」
まぁ、そういう場合は経験値は得られないが二フラムで消し飛ばした方が早そうではあるが。
「ピラミッドで出るお金持ちモンスター、わらいぶくろを倒したい場合にはいいかも知れないわね。あれは二フラム耐性がゼロだし、こちらの攻撃を避けるわ、マヌーサで命中率を下げて来るわ、こちらからの攻撃呪文や補助呪文はマホトーン以外ほぼ効かないわでどうしようもないから」
そんな使い道はあるか。
あとは、
「お店に持って行けば15ゴールドで売れるわね」
何事も無ければ換金アイテムで良いのかもしれない。
そして二人がさらに進んでいくと、
「ホイミスライム!」
宙に浮いたクラゲのようなスライムが襲って来る。
「触手ですよ、触手!」
「反応するのがそこ!?」
「やめて! 私に乱暴する気でしょう? 官能小説みたいに! 官能小説みたいに!」
「……図書館の蔵書に、そういう卑猥な本を混ぜるのは止めてくれる?」
この前は間違って手に取って、危うく紅茶を噴水のように吹き出しそうになったし。
「ええっ?『理性崩壊! 使い魔の触手に身体を差し出す魔女!!』とか名作ですよね。「無害化したのだから大丈夫、ちょっとだけ」とか言って下僕にした触手を欲求不満の解消に……」
「止めなさい! と言うか、さっさと戦って!」
このエロ使い魔は!
そうしてようやく戦い始める小悪魔だったが、ホイミスライムの最大ヒットポイントは30と、アリアハンのフィールド上で現れるモンスターの中では一番高い上、
「ダメージを与えてもホイミの呪文で回復してしまいます!」
ということでなかなか倒せない。
「持久戦に持ち込めばあるいは?」
そう考える小悪魔。
しかし、
「参考までにこれからあなたが魔力切れを狙おうとしているホイミスライムのマジックパワーを教えておきましょうか」
とパチュリーからツッコミが入る。
「ホイミスライムのマジックパワーは255よ」
「なっ!?」
「実際には255という数値は無限扱いになっているから、この値が設定されているモンスターはマジックパワーが減らないの」
「ダメじゃないですかー! 負けたら苗床にされちゃうぅっ!!」
などと色ボケ発言をする小悪魔だったが、パチュリーは戦いながらも妙に真剣な表情でつぶやく。
「……それ、実は本当なんじゃないかって話が」
「はい?」
「制作元のエニックスが出版した書籍『ドラゴンクエスト モンスター物語』では、スライムの起源はアレフガルドの大きな湖の中。そこで分裂を繰り返して増殖し、雌雄を獲得した後に生息環境が過密になったため陸へと上ってそのまま陸上生活を始めたって言うわ」
「はぁ、でもその本って昔話風というか、そのように語る存在が居る、っていうモンスターに関する民話集みたいなものですよね?」
「なら、より資料寄りの書籍『ドラゴンクエスト25thアニバーサリー モンスター大図鑑』ではどうかっていうとスライムベスがオレンジ色なのは、肉食であるからという説と併記して、メスだからという説が載せられていたわ。ドラクエ8、ドラクエ10のモンスターリストでも「噂」「真相不明」としながらもスライムベスはスライムのメス説が唱えられていたわ」
「んん?」
「だったらスライムベスの居ないこの上の世界でスライムがどうやって増えるのかっていうと」
ここで小悪魔も話の不穏な流れに気付く。
「同種属のメスが居ず、身体のほとんどは水分でできているスライムがここ、水気の無いはげ山、荒野にも出没し増殖する。つまり、こんな場所でも増殖に適した温かく湿った場所、他種属の胎(はら)を『孕み袋』にして増えるってことですか!?」
「そういう説もあるってこと。ホイミスライムはホイミが使える女僧侶の胎を使ってスライムが産ませた亜種ってことね」
まぁ俗説だし、うちのパーティーには僧侶は居ないし、とパチュリーは言うが、小悪魔ははたと気づく。
「……あの、私もホイミ使えるんですけど」
ホイミスライムの小さな眼がキョロっと小悪魔を、その下腹部を見た、ような気がした。
そして常にアルカイックな、微笑むような形を取っている口が、
オマエガ ママニ ナルンダヨ!
そう言っている、ような気がした……
「っきゃーっ!!」
思わずムチを振るう小悪魔。
「あなたでもそういう反応するのね?」
感心したように言うパチュリーに、小悪魔は、
「今の一瞬の脳内の化学変化と言いますか、反射的な反応は、パチュリー様のような無垢な乙女めいた方には実感できないというか、説明しづらいものがあるというか」
と妙に早口で答える。
そうやってムチを振るい続けるも、ホイミスライムは無限のマジックパワーで回復し続けるため当然倒せない。
「ど、どうするんですかパチュリー様っ!」
と小悪魔は焦った声を上げるが、パチュリーはあっさりと、
「こちらの攻撃が3回連続で通れば倒せるでしょう?」
「くっ、でも相手も早いです。先制で回復されては」
「いいえ、それがチャンスよ」
先制で回復されれば、そのターンは小悪魔とパチュリーが後からダメージを入れることができ、
「あ、勝てました」
次のターンで回復に先んじて小悪魔が攻撃できれば勝ちである。
「ドラクエにおいて、素早さが高いということは必ずしもいいことばかりであるとは言えないわ。逆に低い方、行動順位が遅い方が有利な場合もあるってわけ」
パチュリーが言うとおり、後攻攻撃によるダメージ蓄積が役立った形だった。
「ホイミスライムからは滋養強壮剤の原料になる薬液が採取できるわ」
「そうなんですか?」
「制作元のエニックスが出版した書籍『ドラゴンクエスト アイテム物語』では、回復アイテム『賢者の石』にはホイミスライムが多数封じ込められているとされていたし、それぐらい生命力にあふれているということなんじゃない?」
何しろマジックパワーが無限であるし、賢者の石が壊れず何度も使えるのはそういうことなのかもしれない。
そうしてパチュリーは、その生命力故か、それとも不定形生物であるためのしぶとさ故か、致命傷を与えられてもまだうごめき続けるホイミスライムの触手を見詰める。
それは女を苗床に、雌にするためのもの……
パチュリーが持つ知識には小悪魔によりもたらされた触手姦といういやらしい概念が、不本意ながら入っている。
知識だけだが――
しかし同時に彼女の知性は目の前の触手を持つモンスターにはもう戦闘力は無い、その気になれば即座に排除できる無害なものだということも知らせていた。
だからだろうか、魔が差したのは。
これを使って自らを慰めたらどうなるだろうか?
小悪魔のセクハラにより日々、蓄積されていく性的ストレスを発散させてしまえば良いのでは?
普段の彼女なら考えもしないことだったが、この世界では常に小悪魔と一緒の部屋、場合によっては一緒のベッドで寝ているため、要するに自分を慰める行為ができない、欲求不満が溜まっていたことが災いした。
バカバカしいと頭では否定するものの、しかし彼女の手は解体してしまうべきモンスターに少しずつ伸ばされていき、
(問題ないわ…… 少しだけ、少しだけだから……)
そう自分に言い訳しインベントリ…… 魔法の『ふくろ』に仕舞い込む。
「パチュリー様?」
倒したホイミスライムを『ふくろ』に突っ込むパチュリーに小悪魔は小さく首を傾げるが、
「先を急ぐから、後で解体することにするわ」
パチュリーはそう答える。
そして眉をひそめ、こう問う。
「また変なこと、想像してない?」
小悪魔の妄想は尽きない……
To be continued?
最後のは小悪魔の妄想…… だよね?
というところで次回に。
小悪魔が一々セクハラを入れるおかげで話が進まない進まない。
というか、これでも削ってあるんですけどね。
次回はいざないの洞窟に挑戦、そして突破したい、と思っています。
みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
今後の展開の参考にさせていただきますので。