こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3) 作:勇樹のぞみ
そして五つのスタミナの種をつぎ込み無理やり体力を付けたパチュリーを見て、受付の男性はこう言った。
「なかなか、てつじんのようですね」
「くっ……」
狙っていたタフガイにはなれなかった。
てつじんもそう悪くない性格ではあるのだが。
仕方がないと、あきらめようとしたパチュリーだったが、
「ではパチェさんを登録します。よろしいですか?」
「あ……」
パチュリーは気付いてしまった。
これは仮想体験型とはいえゲームなのだ。
ここで「はい」と答えなかった場合、キャラメイクはやり直しになる。
つまり先ほどまでのことを繰り返すことに……
納得がいくまで、何度でも。
こくんと唾を飲み込んで、パチュリーは震えそうになる声を無理に絞り出し、
「いいえ」
と答えた。
(あはははは、最高です! 最高ですよパチュリー様!)
小悪魔は内心、笑いが止まらない。
ゲーマーにありがちな、納得がいくステータスが得られるまでキャラメイクをやり直すというプレイ。
(どちらかというと凝り性な面のあるパチュリー様ならはまってくれそうだと思っていましたが、あれだけ私に啼かされたっていうのに本当に選んじゃうんですね)
愉悦に歪みそうになる口元を意識して引き締め、小悪魔は決意する。
(いいでしょう、この際、徹底的に堕として差し上げます! どこまで耐えられるか見物ですね)
そして何度繰り返したことか……
パチュリーには幸いなことにスタミナの種を4つ使った時点で10ポイントアップを達成。
今回は運がいい。
(でも11以上アップさせると今度は他の性格も候補に上がるようになるからやめておいた方が良いのね)
ガタガタにされてしまった身体にぼうっとしながら、しかし醒めた意識の一角で思考するパチュリー。
この辺はさすが七曜の魔女といったところか。
だから最後の一個は一番役に立つだろう力の種にしようとするが、
「いいんですか、パチュリー様」
(こあ?)
小悪魔のささやきが彼女を止める。
「スタミナ…… 体力というのは持久力、耐久力ですが、力というのはもっと直接的な筋力のことですよね」
(あ……)
「そう、気づかれましたね」
小悪魔は残酷なほど優しい笑顔を浮かべて言う。
「力の種を使ったら、これまでよりずっと凄いことになりますよ」
と。
(これまでよりずっと凄いこと……)
パチュリーの身体がぶるりと震え、背筋にゾクゾクとしたものが走るのは恐怖によるものだろうか?
いや、生粋の魔法使いである彼女にとって感情を制御し恐怖を克服することなど容易いはずのこと。
それならこれは……
「問題、ないわ」
パチュリーは『それ』、つまり『自分の望み』を自覚しながら、自らの選択で力の種に手を伸ばす。
そして彼女の望みはほとんど完全にかなえられた。
頭脳の片隅で魔法使いとしての冷静な意識が見守る中、彼女の身体とそれに根付く部分は感覚と感情のオーバーフローに翻弄され、小悪魔の手管により啼かされ、そして幸福な眠りの中に堕ちて行った。
「どうしたらもっとパチュリー様によろこんで頂けるか、いつだって私はそう考えていますよ」
そんな小悪魔のささやきが、意識を失う寸前のパチュリーの耳朶に届いていた。
「パチュリー様?」
パチュリーは小悪魔に優しく揺り動かされ、意識を浮上させる。
もっとも魔法使いとしての彼女の意識は途切れることなく周囲を認識していたが。
そんな自分自身と意識統合。
そうして身体に走る痛みに、
「いたた、これで力もアップ、と」
そう状況を理解する。
意識を失ってから、さほど時は流れていない。
そして体力と力のついたパチュリーを見て、受付の男性はこう言った。
「なかなか、タフガイのようですね」
目標クリアーである。
できあがったのは、
名前:パチェ
職業:しょうにん
性格:タフガイ
性別:おんな
レベル:1
ちから:12
すばやさ:4
たいりょく:17
かしこさ:8
うんのよさ:4
最大HP:11
最大MP:16
こうげき力:12
しゅび力:6
ぶき:なし
よろい:ぬののふく
たて:なし
かぶと:なし
そうしょくひん:なし
というステータスだった。
「ではパチェさんを登録します。よろしいですか?」
という問いに、今度こそ、
「はい」
と答える。
これでキャラメイクは終了である。
そしてパチュリーは気づく。
「そう言えば、あなたのステータスをまだ見ていなかったわね」
「あっ、それなら……」
そして小悪魔に案内されたのはアリアハン城の謁見の間。
「さぁ、あの兵士さんに聞いてみてください!」
「何でそんなに興奮しているのかしら?」
まぁ、何を言っても聞き入れそうになかったので、素直に兵士に話を聞いてみる。
「戦いでは、前にいる者ほどダメージを受けやすい。仲間たちの並び方にも気をお使いなさい」
ここまでは良い。
「こあくま殿は、みなの期待をになう勇者なのですから、ほどほどにたのみますぞ」
「はぁ?」
言ってることがよく分からず小悪魔を見るが、
「なっ、何でですか!?」
と、こちらも驚いている様子。
「そこは「エッチはほどほどにたのみますぞ」でしょう!? どうして素直に言えないんですか! 男なんでしょう!? ぐずぐずしないでください!」
そうして魂の叫びの本音を漏らす。
「人間の男性にセクハラされて顔を赤らめるパチュリー様が見たかったのにーっ!」
「ああ……」
この子、バカだ……
パチュリーが事前に読み込んだドラゴンクエスト3に関する書籍の記事を思い起こしてみると、この兵士のセリフは勇者の性格で変化するらしい。
そして先ほどのセリフは勇者が男性専用の性格『むっつりスケベ』か女性専用の性格『セクシーギャル』だった場合のものだった。
つまり小悪魔の性格はセクシーギャル。
タフガイなパチュリーと違って意外性の欠片も無い性格であるが、それを伝えるという建前でセクハラしたかったのだろう。
しかし見事な空振りに終わっていた。
「これが噂のアッ〇ルチェック!? 許せません、絶対にです!」
「言っとくけどスマートフォン版の元になってる携帯電話版の時点で消されているそうよ」
「ド〇モの仕業だった!?」
〇ップルへの熱い風評被害!
「くぅーっ、これだから「事なかれ主義」の「臭いものにフタ」な日本企業はダメなんです!「言葉狩り」絶対反対です!!」
まぁ、そんな小悪魔は放っておいて、だ。
この兵士のセリフからすると、この世界は携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版の流れをくむものらしい。
スーパーファミコン版やゲームボーイカラー版にあったすごろく場が無くなっていたりとか、ゲーム内容に変化があるわけだ。
「それはそれで面白そうだけど」
と、パチュリーは思う。
変化があるということはゲームバランスが変わっているということ。
スーパーファミコン版やゲームボーイカラー版の情報は多く、攻略法についても語り尽くされている感がある。
それに対してスマートフォン版等の情報は少なく、まだまだ検証の余地があった。
なお、
名前:こあくま
職業:ゆうしゃ
性格:セクシーギャル
性別:おんな
レベル:1
ちから:11
すばやさ:17
たいりょく:8
かしこさ:9
うんのよさ:8
最大HP:15
最大MP:18
こうげき力:23
しゅび力:16
ぶき:どうのつるぎ
よろい:たびびとのふく
たて:なし
かぶと:なし
そうしょくひん:なし
これが小悪魔のステータス。
「……商人の私の方が、力が強い?」
「しょうがないじゃないですか。ひたすらキャラメイクをやり直したパチュリー様と、万能型と言えば聞こえがいいんでしょうけど尖ったところの無いセクシーギャルな私と比べたら、そうなりますって!」
まぁ、それもそうか。
「悪い選択ではないですよね? 勇者は力と体力に優れ、それを伸ばした方が強いとはいえ、今回は商人のパチュリー様との二人旅です」
小悪魔は主張する。
「魔法を使えるのは勇者の私だけですから、MP(マジックパワー)を伸ばすためにも賢さは必要。それに二人とも行動不能となった時点で全滅ですから、状態異常を防ぐ運の良さも無視できないと思いますし」
そういう意味ではセクシーギャルは悪い選択ではない。
ないが……
「勇者の性格診断で、何も考えずに素で答えていたら自然とこうなった?」
「………」
「図星、ね」
そういうことらしい。
「まぁ、それはいいから王様からもらったお金と装備を全部渡しなさい」
「うわっ、カツアゲですかっ! わたし勇者なのにっ!!」
ほら、と手を差し出すパチュリーにドン引きな小悪魔。
「あなたは何を言っているの?」
「そ、そこで心底不思議そうな顔をされても…… まさか『使い魔のものは主人(わたし)のもの』とでも言うおつもりですか? 酷すぎますっ!?」
「……酷いのはあなたの頭でしょう」
と言ってパチュリーは小悪魔の頭をがっしりと両手でつかむと、
「思い出しなさい」
と、静謐な色を宿す瞳でじっと小悪魔の目をのぞき込みながら命じる。
しかし……
「あれ? 勇者の特技『おもいだす』が無い? レベル1から持っているはずなのに?」
「それはスーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版だけのものだから」
この世界は携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版の流れをくむもので、これらの特技は省略されているのだ。
「知っているなら無茶を言わないで下さいよ!」
抗議する小悪魔だったが、パチュリーは意に介さない。
「もっと思い出しなさい」
「いえ、だから『もっとおもいだす』もないですから!」
そもそも最速でもレベル8にならないと習得できない『おもいだす』の上位版技能だし。
「深く思い出しなさい」
「『ふかくおもいだす』もです!」
こちらはさらにレベル20以上にならないと習得できない最上位バージョンだ。
パチュリーの瞳がすぅっ、と細められる。
「《使役される者》よ、《繋がれた者》よ、《付き従う者》よ、我が忠実なるしもべ、鉤と鎖に繋がれた小者よ」
パチュリーが舌の上で転がす詠唱に、小悪魔を縛る主従契約が鉤と鎖による緊縛というなにげにエロい形を取って視覚化される。
このドラクエ世界でのパチュリーは商人だが、元の世界の主従契約が失効するわけではないのでこのように小悪魔に対しては術式を行使することができる。
なお悪魔との契約は真名で括る西洋魔道の術だが、パチュリーの根本は属性魔法にある。
属性魔法は精霊魔法とも言い、文字通り大自然に存在する精霊の力を借りて行使する力。
そしてこの精霊(スピリット)という存在は、直截に名を呼ばれることを嫌う。
真名などもってのほかで、『お隣さん(ネイバー)』『良い友達(グッドフェロー)』などなど婉曲な呼びかけを好むのだ。
これは魔法使いや魔術師など、力ある者が直接、名を口にすると召喚や命令となってしまうことがあるからでもある。
だからパチュリーも小悪魔の真名を握ってはいるものの、口に出したりはしない。
それは優しさのようにも感じられるが、小悪魔ごとき小者、真名を口にせずとも圧倒的な力量差で押し切りねじ伏せることができるという傲慢さでもあるのかもしれない。
そんなパチュリーの詠唱は続く。
「己の主の言葉がわからぬか。己の記憶はそれほどに儚いか」
そして主人と従者の間に繋がれた魔術的なつながり、パスを通じて魔法が行使される。
「土符『スクリーンショット』」
五行の『土』は五神の『意』に対応し、思考、記憶をつかさどる。
そうして宙に映し出されたのは、小悪魔の過去の記憶。
To be continued
キャラメイクの続き。
なんだかエッチい感じがしますが、心のピュアな方ならそんなことはないと分かってくれますよね?
そしてもちろんパチュリー様はカツアゲしているわけではないのです、というのは次回更新で。
みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
今後の展開の参考にさせていただきますので。