こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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ロマリアの夜 いぬとパチュリー

 ロマリアに到着したパチュリーと小悪魔。

 まずは城でロマリアの王に謁見する。

 

「カンダタという者が、この城から金のかんむりをうばって逃げたのじゃ。もしそれを取り戻せたなら、そなたを勇者と認めよう! さあ、行け! こあくまよ!」

「いや別に認めてもらう必要も無いのだけれど」

 

 思わず突っ込みを入れるパチュリー。

 王と並ぶ王妃からは、

 

「アリアハンは美しいところと聞きます。きっと、人々の心も美しいのでしょうね」

 

 などと言われるが、

 

「心が、美しい……?」

 

 隣に立つ小悪魔をまじまじと見つめ首をひねるパチュリー。

『これ』を前にして、そういう感想が出て来るという王妃の眼か頭の心配をしてしまう。

 一方、

 

「そこでどうして私を見て首を傾げるんですか、パチュリー様?」

 

 本気で不思議そうにパチュリーを見返す小悪魔。

 実際、彼女は敬愛している主人に誠実に仕えているつもりなのだ。

 誠実だからこそパチュリー自身が気付いていない隠された被虐願望を察して、それを満たしてあげたい、性の奴隷に堕としメチャクチャにしてあげたいと願っているだけで。

 

(パチュリー様の理性は否定するでしょうけど、魔法使いであっても生きている、生者である限り心のどこかには生の欲動(エロス)と死の欲動(タナトス)に基づく、性への欲求とか破滅願望などが微量でも無いとは言えないわけで。

 それがパチュリー様の隠れた一面であり、本性であり、そして私はどんなパチュリー様であっても肯定する存在です。だって私はパチュリー様のすべてを愛しているのですから。

 ここは本の中の世界で誰も見ていないんですから、本当の自分をさらけ出してもいいんですよ)

 

 という具合に。

 パチュリーが知ったら、

 

「……人をおかしな性癖を隠して偽りの人生を歩んでいるかのように言わないでちょうだい」

 

 と呆れ声で言っただろうが。

 また、パチュリーにセクハラ行為を怒られても止めないのも、

 

("いや"っていうのは、"いい"ってことですよね?)

 

 というように、単に素直になれない主人、パチュリーのミエを通すため自分が悪役になっているだけ。

 主従逆転快楽調教を施すという体裁を取っているが、実際には純粋に主人のために奉仕しているだけ。

 小悪魔は何の矛盾も感じること無く、本気でそう思っているのだ。

 ……タチが悪いことに。

 

「……それじゃあ、小さなメダルでも探しましょうか」

 

 諦めたようにため息をつきながらそう言うパチュリー。

 城の花壇や篝火の脇から、小さなメダル二枚を探し出す。

 

「一々調べなくても、アイテムが隠されている場所に行くと分かるようになってますね」

 

 感心する小悪魔に、

 

「スマホ版の仕様かしら?」

 

 と返すパチュリー。

 スマホ版ではアイテムが隠されている場所に行くとエクスクラメーションマーク、俗に言うビックリマークが出て知らせてくれる親切仕様となっているのだ。

 さらに城の中を散策すると、王の父親の部屋にたどり着いた。

 

「わしの息子は遊び好きでな。王様になってもその癖が抜けん困った奴だ」

「それじゃあ御隠居様は遊び、嫌いなんですか?」

 

 首を傾げる小悪魔に、

 

「スーパーファミコン版やゲームボーイカラー版だと部屋のタンスには、すごろく券が入っていたのだけれどね」

 

 とパチュリー。

 この世界は携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版の流れをくむもので、すごろく場は省略されている。

 だから残念ながらタンスは空だったが。

 そして王の父親の部屋には本棚があった。

 

「もしかして、性格を変える本が!?」

 

 洗脳調教の恐怖に震える小悪魔。

 あった。

 ずるっこの本。

 パチュリーはそれを手に取って見定めた。

 

「正直者はバカを見る! 世の中、ズルイヤツが生き残るのさ! ……何コレ?」

 

 まぁ、国王ともなるときれいごとだけでは済まないということだろうか。

 

「お店に持って行けば60ゴールドで売れるわね」

 

 小悪魔に読ませてもろくなことにならないだろうから、これは道具屋に持ち込んで売り払ってやることにする。

 そのためにも城を出て、街に向かう。

 

「街の方にも何かありそうだけど」

 

 街を回り、建物つきの住居精霊(ヒース・スピリット)が隠し持っている財宝を見つけ譲り受ける。

 城下の教会の本棚からは、頭が冴える本が見つかった。

 

「驚異の大脳発達術! 頭の良くなる食品リスト! 超思考法! ……ねぇ」

「あ、あやしーっ! あやしさ大爆発ですっ!」

「お店に持って行けば、75ゴールドで売れるわね」

 

 さすがに怪しすぎて、小悪魔で試してみる気にもなれない。

 またタンスからはくじけぬ心というアクセサリーが見つかったが。

 

「くじけぬ心…… これは装飾品のようね。どんな苦労にも負けない心が、逆にその人を苦労人にしてしまうわね」

「パチュリー様、そんなのしかないんですか?」

「そんなのだからタダでくれるんでしょうね。でもこれ、お店に持って行けば187ゴールドで売れるわね」

 

 その他にも民家からは革の帽子、小さなメダルを入手。

 そして、

 

「あら、かわいい犬ね」

「うーっ、わん、わん!」

 

 町外れの木陰には、ボビーという犬が居るが、近づくと吠えるだけで動こうとしない。

 

「な、何よ、そんなに吠えることないでしょ……」

 

 結局近寄れないため、すごすごと引き下がるしかないパチュリー。

 諦めきれず夜になって行ってみるとボビーの姿はそこにはなく、代わりにひのきの棒を手に入れることができた。

 

「犬は宝物を埋めておく習性があるから、これを埋めて守っていたのかしら?」

「夜も遅いですし宿屋に泊まりませんか、パチュリー様」

 

 宿屋に泊まり、一晩を明かすパチュリーたち。

 そうして翌日、ボビーに会いに行くが、ひのきの棒を持ち去っても昼になるとまた吠えられる。

 

「嫌われているのかしら……」

「パチュリー様、犬にそんなに執着するなんて、まさかバター犬プレイをお望みで?」

 

 昨晩は空いている客室が無く仕方なしに先客の母子と相部屋になった結果、当然エッチなのは禁止になって欲求不満を貯め込んでいる小悪魔の頭は少しおかしくなっている。

(元々こんなものという説もあり)

 しかし、それに対するパチュリーの答えは、

 

「バター?」

 

 よく分かっていない様子。

 それどころか、

 

「そうね、バターをあげたら喜んでくれるかしら? 手ずから与えたら、ゆ、指先を舐めてくれたりして」

 

 などと言い出す始末。

 

「ああ、バターは無塩のものじゃないと犬の身体に悪いわね」

 

 いそいそと買いに行く様子を見せる、その姿に小悪魔は、

 

「ピュアすぎますっ!」

 

 と叫ぶのだった。

 なお宿屋では住居精霊(ヒース・スピリット)たちが持っていた精霊の隠し財宝、毒消し草、満月草を譲ってもらっていたが。

 

「パチュリー様、満月草って?」

「これは麻痺を治してくれる薬のようね」

 

 不用品を売り払うため道具屋に行くと、取扱いの品の中にもあった。

 

「パチュリー様、ここで満月草が手に入るってことは、麻痺攻撃をしてくる魔物がこの先現れるということですよね?」

「そうね、念のため追加で買っておいた方が良さそうね」

 

 ドラゴンクエストのマヒはしばらく歩くと自然に解除される、そんなに重い症状では無いのだが、全員がマヒした場合、パーティは全滅となる。

 少人数プレイの場合、これが怖いのだ。

 そういうことで満月草を買って、お互い一つずつお守り代わりに持つことに。

 またモンスターを解体して手に入れていた毛皮や爪など、そして不用品を売り払うと、まとまった額のお金が手に入った。

 

「精算してみましょうか」

 

 と、それぞれの所持金を計算する。

 前回の精算時の計算が、

 

小悪魔:51G

パチュリー:13G

 

「それでその後に得た収入が592ゴールドで、一人当たり296ゴールドの配当だけど」

 

小悪魔:347G

パチュリー:309G

 

「凄い、こんな大金持ったの初めてです!」

 

 喜ぶ小悪魔にパチュリーは苦笑して、

 

「それじゃあ、武器屋の品ぞろえを見てみましょうか」

 

 次いで武器店に顔を出す。

 

「鉄の槍が売っているわね」

「防具の類も充実していますよ?」

 

 そう言う小悪魔に、

 

「ドラクエではまず武器を優先して揃えるべきなの。防具を買っても守備力4ポイント毎にダメージが1ポイント減らせるだけだから」

 

 ということ。

 

「そして私たちが買う意味のある武器は、ここでは650ゴールドの鉄の槍だけね」

「でも、それだと二人とも手持ちのお金では買えませんよ」

「そうね、私も今使っている鎖鎌を下取りに出しても手が届かないわ」

 

 考え込むパチュリー。

 

「あとはあなたと私、どちらかが借金して買うならぎりぎり何とかなるのだけれど」

「いっ、嫌ですよそんなのっ!」

 

 というわけで武器の新規購入はお流れに。

 

「それじゃあ、少し不安だけれど北のカザーブの村まで行ってみましょうか」

 

 ロマリアの街を出て北上していくと、ポイズントード四匹と遭遇する。

 

「毒ガエルですね」

「さっさと蹴散らすわよ」

 

 戦闘を開始。

 

「行くわよ」

 

 パチュリーの鎖鎌がポイズントードを斬りつけ、

 

「これで!」

 

 小悪魔のトゲのムチが群れ全体を薙ぎ払い、パチュリーがヒットポイントを削っておいた一体を倒しきる。

 パチュリーは反撃を受けるものの、

 

「この程度なら」

 

 3ポイントでは問題ない。

 しかし、

 

「逃げ出した!?」

 

 驚く小悪魔。

 ポイズントードは立て続けに逃げ出したのだ。

 

「ああ、カエルは基本、バカだから」

 

 とパチュリー。

 判断力が0のモンスターは敵の強さを推し量るような知能は無いから、こちらのレベルが低くても逃亡するのだ。

 ともあれ、残るは小悪魔のムチで弱っている一体だけ。

 その一体が今度は小悪魔に口から毒液の泡を吹きながら攻撃。

 ダメージを与えるが、

 

「毒を受けるのは免れました。そしてこれでお終いです!」

 

 小悪魔のムチが止めを刺した。

 

「肉は毒で食べられないから。皮ぐらいしか剥ぎ取る物が無いわね」

 

 パチュリーは鎖鎌の刃でポイズントードを解体しながらぼやく。

 現実でも駆除した毒ガエルの皮を使った革細工があったが。

 

「毒腺は……」

 

 小悪魔が言いかけるが、パチュリーはそれを否定する。

 

「毒も薬も同じもの。使い方によって毒は薬に、薬も毒になるとは言うけれど、これは売るには危険すぎね。幻覚作用があって中毒になる者も居るって話だから」

「麻薬(ドラッグ)ですか?」

「そのような物よ。舐めるとクラクラして楽しい、とも聞くけど」

 

 現実でも毒ガエルにハマって、その背をベロベロ舐めてラリってる犬なんてものが居るらしい。

 まぁ、そういった生物毒などを利用してトリップしたりするのは魔女の業(ウィッチ・クラフト)の内だからパチュリー自身は扱いに精通しているわけだが、一方で魔女の薬のレシピに『ヒキガエル』などが入っている場合、それはオオバコ科の植物、ホソバウンラン(Toadflax)のことだったりするのでややこしい。

 

 さらに北上を続けると、アルミラージとキャタピラーが襲って来る。

 

「ラリホーが怖いからアルミラージを先に倒すわね」

「はい、睡眠姦なんてされたら、太くて硬ぁい芋虫さんに暴れっぱなしにされてしまいますからね」

 

 使い魔が何を言っているかわからない件。

 アルミラージの攻撃を受けながらも二人がかりで倒しきる。

 しかし、

 

「痛っ!」

 

 やはり強力なキャタピラーの攻撃を受け、9ポイントものダメージを受ける小悪魔。

 

「大丈夫?」

「はい、まだ平気です」

 

 今度はキャタピラーに攻撃を仕掛ける二人だったが、

 

「あっ!」

 

 再び攻撃を受ける小悪魔。

 もう一撃食らえば小悪魔はアウトだ。

 

「安全策で行くわ」

 

 小悪魔には防御させる。

 これで先制されても耐えられる。

 そしてパチュリーが薬草で小悪魔を回復。

 

「ぐっ」

 

 キャタピラーの攻撃が、今度はパチュリーに。

 しかし彼女のヒットポイントならまだまだ耐えられる。

 

「畳みかけるわよ!」

 

 二人がかりで追撃。

 パチュリーが反撃を受けるが、それでも何とか倒しきる。

 倒したモンスターを解体しつつ、パチュリーは状況を分析。

 

「これ以上北上するとカザーブ周辺のモンスターが現れるわね。マジックパワーに余裕があることだし、フル回復させて臨みましょう」

 

 小悪魔のホイミでパチュリーを治療し、山間部に足を踏み入れる。

 そして現れたのは、さまようよろい!

 

「硬いっ!」

「5ポイント程度しかダメージを与えられない!?」

 

 しかもさまようよろいはホイミスライムを呼び出してしまう。

 

「無理無理、逃げるわよ」

 

 ということで逃走する二人。

 幸い、回り込まれることも無く逃げることができた。

 そうしてさらに北上し、

 

「カザーブの村が見えてきました!」

 

 というところでモンスターに遭遇。

 

「腐ってる、この犬は腐っているわ!」

 

 腐った犬、アニマルゾンビ二匹とキラービー二匹の群れだ。

 

「キラービーのマヒが怖いから優先して倒して!」

「はい!」

 

 二人がかりでキラービーに挑む。

 パチュリーの鎖鎌が切り裂き、小悪魔のトゲのムチが唸る!

 

「まずは一体!」

「反撃が来ます!」

 

 キラービーの攻撃が小悪魔を捉えるが、

 

「大丈夫、マヒはしてません」

 

 少人数プレイでは怖いマヒは受けなかった模様。

 そして、

 

「来る!?」

 

 アニマルゾンビの攻撃を受けるが、

 

「この程度なら」

 

 問題なく耐えきる。

 

「キラービーに止めを!」

 

 次のターンも二人はキラービーを狙い、パチュリーは先制して止めを刺すことに成功!

 それを見て小悪魔は攻撃先をアニマルゾンビに変更しムチ打つ。

 

「くっ!」

 

 アニマルゾンビからの攻撃を受けるパチュリー。

 ダメージは割と高いが、彼女なら耐えられる。

 

「畳みかけるわよ」

「はい」

 

 二人がかりで攻撃。

 さすがに腐った犬、守備力は低く、パチュリーの鎖鎌による反撃も十分通じる。

 しかし怯まずに攻撃を仕掛けて来るアニマルゾンビ。

 それにも耐え、一体を倒しきる。

 そして、

 

「土へと還りなさい」

 

 次のターン、最後の反撃を受けつつも止めを刺すパチュリーだった。

 

「レベルが上がりました!」

 

 ここで小悪魔がレベルアップ!

 

 

名前:こあくま

職業:ゆうしゃ

性格:セクシーギャル

性別:おんな

レベル:6

 

ちから:25

すばやさ:26

たいりょく:18

かしこさ:16

うんのよさ:14

最大HP:35

最大MP:31

こうげき力:43

しゅび力:27

 

ぶき:とげのむち

よろい:たびびとのふく

たて:なし

かぶと:きのぼうし

そうしょくひん:なし

 

 

「ニフラムを覚えました!」

 

 退魔の呪文、二フラムが使えるようになった。

 

 そうして二人は手早くモンスターの解体を済ませると、カザーブの村へと駆け込むのだった。




 ロマリアに着き、初めての大金に喜ぶ小悪魔でしたが、武器のインフレはそれ以上でお買い物はおあずけという切ない状況。
 そんな装備で大丈夫か? とも思うのですが、何とかカザーブまで着きましたね。
 さまよう鎧からは逃げるしか無かったのですが、あれはここで出るモンスターとしては異常なくらい強いので。

 次回はカザーブの村の探索からですが、貧乏で物が買えない勇者こあくまは、とうとうオッサンのパンツにまで手を出してしまうという……

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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