こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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イシスへの道 あばれザルによるわからせ!?

 アッサラームの宿に泊まり一夜を明かしたパチュリーたち。

 宿のタンスからは毒蛾の粉が回収できた。

 

「それってどういうアイテムなんですか?」

「これを使うとモンスターが混乱して同士討ちを始めるのよ」

 

 メダパニの呪文と同じ効果を持つアイテムだ。

 普通では打撃ダメージが1しか通らないメタルスライムだが、モンスターからの打撃は何故か通るため、メタル狩りのためにも取って置いた方が良いだろう。

 

「じゃあ、これをパチュリー様に使えば……」

「この世界は携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版の流れをくむもので、パーティアタックは禁止だから!」

 

 冗談じゃないと釘をさすパチュリーだったが、小悪魔は能天気に、

 

「確かに、勇者一行が粉を吸ってキメちゃって混乱とかマズ過ぎますもんね」

 

 言い方ァ!!

 

 そんなこんなで、朝から絶好調な小悪魔にため息をつくパチュリー。

 やはり昨晩、入浴の手伝いをさせたのはサービスが過ぎたか。

 元気になったのは良いが、興奮しきって大変だったので、術式で縛って朝まで部屋に転がしておいたのだが、それでもこれである。

 

「次はイシスね」

 

 南西の砂漠を超えた場所にあるイシスに向け出発をする。

 そしてモンスターと遭遇するが、

 

「キャットフライと…… しっぽの付いたゴリラさん? 大き過ぎません?」

「い、いけない!」

「でも、一匹ずつなら何とか!」

「あ、こら!」

 

 勝手に戦いを選択してしまった小悪魔に、慌てるパチュリー。

 

「おさるさんはタフそうなので、先にコウモリねこさんを…… マホトーンで呪文を封じられるのも嫌ですし、痛恨も怖いし」

「ダメ、先にあばれザルを倒すのよ!」

「はい?」

 

 そして、しっぽの付いたゴリラ、つまりあばれザルは先制で……

 

「おさるさんが増えました!?」

「あばれザルは仲間を呼ぶ習性があるのよ」

 

 ということ。

 仲間を呼んだモンスターも呼ばれたモンスターもどちらもこのターンはこれ以上動けないため、後はキャットフライだが、

 

「マホトーンで呪文が封じられちゃいました!」

「これで回復は薬草頼りになったわね。まぁ、薬草の蓄えは十分なのだけれど」

 

 トゲのムチを振るう小悪魔。

 トゲのムチはグループ攻撃武器であるがゆえに、このターンに呼ばれたあばれザルにもダメージが入る。

 

「こちらの武器が二人ともグループ攻撃できるもので良かったわ」

 

 と言いながらチェーンクロスで攻撃するパチュリー。

 そして次のターン、あばれザルの攻撃がパチュリーに連続で命中!

 

「ぐっ」

 

 20ポイント前後のダメージを二発という恐ろしいまでの攻撃力。

 

「ヒットポイントが100越えのパチュリー様ですから耐えられましたけど、最大ヒットポイントが39の自分ならこれだけで死んでますよ!」

 

 と背筋を震わせる小悪魔。

 実際にはパチュリーが借金を許してまで防具をガチガチに固めさせているので、もう少しダメージは減るのだが。

 その小悪魔にもキャットフライからの攻撃があり、

 

「これぐらいなら……」

「薬草でヒットポイントをフルに回復させて!」

「はい?」

「そっちに攻撃が集中したら危ないでしょう!」

「は、はい!」

 

 なお、あえてパチュリーは語らなかったが、あばれザルもキャットフライも痛恨の一撃がある。

 モンスターが繰り出すこの痛恨の一撃は守備力無視で攻撃力の約0.9倍程度のダメージを与えるもの。

 攻撃力48のキャットフライなら43ポイント前後。

 あばれザルはキャットフライより痛恨の一撃を繰り出す確率が低いとはいえ、攻撃力は55なので50ポイント前後のダメージを叩き出す。

 つまり小悪魔の39という最大ヒットポイントではいずれにせよフル回復状態でも一撃死するのだが……

 

 次のターン、

 

「ま、また増えた……」

 

 さらに増殖するあばれザル。

 小悪魔は自分を薬草で回復。

 そして残ったあばれザルが仲間を呼ぶ。

 

「や、止めてくださーい!!」

 

 が、失敗。

 

「と言うか、あばれザルが出現できる枠って3匹が上限なのよ」

「ああ、なるほど」

 

 ゲーム的に言えば、キャラクターグラフィックが大き過ぎて表示できるスペースがそれ以上無いということ。

 今回のように他のモンスターとの混合出現で表示位置がずれると4体まで表示できそうに見えるが、そこはシステム的に制限が成されているらしく、やはり上限は3体である。

 そして、ここからは殴り合いだが、

 

「は、はぁ? そんな拳を突き付けて、私に勝つつもりですか……? いや、冗談ですよね……? そんなの私入らな……」

 

 あばれザルのわからせフィストにブチ抜かれ、

 

「ひぐぅぅぅっ!!(ビクンビクン)」

 

 強制的にわからせられてしまう小悪魔!

 

「ふざけてる場合じゃないでしょうっ! 次のターンで回復させなさい!」

 

 そう言いつつパチュリー、そして小悪魔も反撃するが、

 

「全然倒せません!」

「あばれザルの最大ヒットポイントは、最初のファミコン版で50」

「ええっ!?」

「スーパーファミコン版以降のリメイク作だと10ポイント増えて60よ。守備力も25から40にまで強化されてるし!」

「な、何ですかそれー!!」

「それが群れを成し、仲間を呼ぶ……」

「ぜ、絶望的じゃないですか」

「だから逃げようとしたのに勝手に戦い始めるから」

 

 そうして壮絶な殴り合いの末、パチュリーの攻撃が先頭のあばれザルを倒す。

 

「やりましたね!」

 

 しかし次のターンであばれザルが仲間を呼ぶ。

 

「減らないじゃないですかー!」

「泣き言言わない」

 

 そうして一進一退の攻防を繰り広げるが、

 

「最初の一回以外、仲間を呼ぶ行動を空振りしませんね。してくれると楽になるのに」

「仲間を呼ぶ行為は枠が埋まっていない限り必ず成功するから。最初に失敗したのは、枠が一つしか無いのにたまたま二匹が両方とも仲間を呼ぶという選択をしたので、後から行動した側が失敗になったわけね。あばれザルの頭の良さ、判断力は1。これはターン開始時に状況を見て行動を決めるものだから」

 

 判断力が0、バカなら状況に関係なく行動し、最高の2なら行動直前に、状況に対応した行動を取る。

 そして、

 

「満塁策よ」

「満塁策? 野球のですか?」

「あばれザルが出現できる枠は三匹分。それ以上は増えないわ。つまりヒットポイント総計は最大180ポイント。仲間を呼ぶという回復行動で1ターンに最大60ポイントのヒットポイントが回復できる」

 

 一匹倒されれば次のターンで呼べるのは一匹。

 二匹倒されて枠が二つ空いても、残りの一匹が1ターンに呼べるのは1匹という計算である。

 1匹倒され、次のターンで残り二匹とも仲間を呼ぶ選択をして、そのターン中に仲間を呼んだ1匹が倒され、残り一匹も仲間を呼ぶ、というパターンも無いではないがレアケース過ぎるので考慮しなくともよいだろう。

 ともあれ、

 

「絶望的じゃないですかー!」

 

 ということ。

 しかし、

 

「でも、こちらはグループ攻撃武器だから、二人で3匹に攻撃すれば合計ダメージは60ポイントを超えるわ」

「あ……」

 

 ということは、戦い続ければ敵はじり貧になっていくはずということ。

 これが、複数攻撃武器が存在するドラクエ3のリメイク版における満塁策と呼ばれる手法。

 まぁ、こちらもダメージを受けるので回復するターンは攻撃力不足になってしまうが。

 

「後はタイミングよ。ダメージを蓄積し、弱ったところにこちらの攻撃を畳みかければ倒しきれるわ!」

 

 ただ、そう簡単に上手く行くわけもなく、倒してもまた仲間を呼ばれるということを繰り返す。

 そして、

 

「ダメです。このターン、一匹も倒せませんでした。逃げましょうパチュリー様!」

 

 キメラの翼を使おうとする小悪魔。

 戦闘中に使えば、行先はアリアハン固定だが必ず逃亡が可能なのだ。

 

「いいえ、そんなことはしないで! これがいいんじゃないの! こぁ!」

「え?」

「三匹のあばれザルにダメージを蓄積させたはずなのに一匹も倒せない状況。逃げるなんてとんでもない! これがいいのよ! この状況が「いい」んじゃないの!」

 

 つまり、あばれザルのヒットポイントをもう少しで倒せるほどにまで削ってあるということ。

 そしてあばれザルの判断力は1で、ターン開始時に状況を見て行動を決める。

 3匹の枠が埋まっているこの状況、次のターンではあばれザルは仲間を呼ぶという行動を取らない。

 そして小悪魔とパチュリーの攻撃があばれザルに叩き込まれ、

 

「このターン、二匹まで倒したわ。残りの一匹ももう少しのところまでヒットポイントを削ってある!」

「あとは?」

「祈りなさい」

「はい?」

「次のターン、あばれザルが仲間を呼ぶ前に倒せることを祈りなさい」

 

 そして次のターン、あばれザルはパチュリーを攻撃!

 さすがのパチュリーも、ここまでの攻防でヒットポイントを危険なまでに削られていたが、

 

「勝ったわ!」

 

 それこそ望む状況。

 小悪魔のトゲのムチが、パチュリーのチェーンクロスが唸りを上げ、最後に残ったあばれザルを倒しきる!

 

「やりましたね、あとはキャットフライを!」

「ちょっと待って、さすがに回復しないと」

 

 パチュリーは小悪魔に薬草で治療してもらい、そして、

 

「これで終わりよ!」

 

 キャットフライへ攻撃。

 殴り合いの末、倒す。

 終わってみれば、

 

「結局、5匹のあばれザルと戦う羽目になったのね」

 

 ということ。

 戦闘中に薬草を三つ使い、戦闘後の治療でホイミ三回を消費した。

 

「だから逃げたかったのに」

 

 ということだが。

 そうやってようやく砂漠に。

 ただし、

 

「そのまま南下するとアッサラーム地方のモンスターが出る領域だから少し西に進んでから南下した方がいいわ」

 

 ゲーム的に言えば、一マス西にずらしてから南下するということ。

 そして、

 

「カニさんです!」

「地獄のハサミ!? 逃げる逃げる」

 

 何しろ守備力が110もあって、こちらの攻撃はほぼ通らないのだ。

 しかも、

 

「回り込まれたわ!」

「ただでさえ固いカニのモンスターなのに、スクルトで守備力を上げてますよ!? というか+110って何ですか!」

 

 モンスターが使って来るスクルトには二種類あり、地獄のハサミのものは敵全体の守備力を元の値と同じだけアップさせるというぶっ壊れ性能を誇る。

 

「こうなったらニフラムで光にな……」

「地獄のハサミはニフラムに完全耐性だから!」

 

 邪悪な魂を聖なる力で光の彼方へと消し去る退魔の呪文、ニフラムを使おうとする小悪魔を止めるパチュリー。

 

「こちらから通じるのはあなたのメラだけよ」

「倒しきれないじゃないですかー」

「そうね、全部倒す前にマジックパワー切れになるのがオチね。使用することで何度でもメラを撃てる魔導士の杖でも買ってあれば、地道に削るとかできるかもしれないけど」

 

 そういうわけで、敵から殴られながらも3回目の逃走で何とか逃げ切る。

 小悪魔のホイミで回復し、さらに南下するが、

 

「またカニさんです! 今度は火炎ムカデさんと一緒ですよ!」

「ああ、もう逃げる」

 

 どうしようもないのだった。

 そして、

 

「またまたカニさんと火炎ムカデさんです!」

「逃げる逃げる」

 

 一回逃げ損ね、パチュリーが一発殴られた後、逃亡。

 

「全然戦えませんね。アッサラーム周辺のモンスターの方がまだ戦えていましたか?」

「そうねぇ。でも、ただ逃げながら進むだけなら、アッサラーム周辺の問答無用で大ダメージを与えて来るモンスターよりは怖くないのだけれど」

 

 逃げ損ねても受けるダメージが小さいので安全なのだ。

 

 そうして南の、毒の沼地に囲まれたほこらへとたどり着く。

 いつものように、住居精霊(ヒース・スピリット)がツボや本棚に隠していた精霊の隠し財宝を手に入れるのだが、小さなメダル、そしておてんば事典が手に入る。

 

「また、おてんば事典? 本当にあなたに使えるような性格へと変える本は無いのかしら」

 

 ため息をつくパチュリー。

 

「そんな気軽にひとを洗脳調教しようとしないでください!」

 

 プルプルと震える小悪魔。

 そしてほこらの住人から話を聞いてみる。

 

「魔法の鍵をお探しか?」

「はい」

「鍵は砂漠の北、ピラミッドに眠ると聞く。しかし、その前にまずイシスの城を訪ねなされ。確かオアシスの近くにあるはずじゃ」

 

 その助言に従って、今度は砂漠を西へ、イシスを目指す二人。

 途中、また地獄のハサミが現れたので、逃げるとオアシスが見えてくる。

 

「よ、ようやくイシスです」

「砂漠に入ってからカニから逃げてばかりって感じなんだけど……」

 

 それでも何とか、無事イシスに到着する二人だった。




 イシスに向かう二人でしたが、とうとうアッサラーム周辺の恐ろしさを象徴するモンスター、あばれザルと遭遇。
 アッサラームはロマリアに着いた時点でも行ける、つまり一本道ではない自由度の高いゲームだよ、としつつも、街の住人の忠告を聞くことの重要性を演出するためもあって、これほど強いモンスターが出るのだと言われていますね。
 そして砂漠では攻撃魔法の重要性を教えてくれる地獄のハサミの登場。
 複数攻撃武器があれば魔法なんて要らない、としてきたパーティーは、ここで絶対に勝てない相手に遭遇するのでした。
 まぁ、パチュリー様たちみたいに逃げればいいんですけどね。
 次回はイシスの城と街。
 色々と装備が整えられますね。

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