こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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ピラミッド 魔法の鍵とマジカルなスカート

「途中のモンスターは無視して逃げる。まっすぐ3階を目指して魔法の鍵を取るわよ」

 

 ということにするパチュリーだったが、しかし、

 

「でも本当に真っすぐ進むと、落とし穴で地下に落とされるから注意するのよ」

「財宝を秘めた王、ファラオの墓ですから盗賊除けの仕掛けがあって当然ですか……」

「ピラミッドの地下では魔法が使えないようになっているしね」

 

 つまり、

 

「これがピラミッドパワーなんですねっ」

「……そうなの?」

 

 そんな小悪魔の戯言はともかく、通路を進んでいくと、立派な像があった。

 このピラミッドに眠っている王だろうか……

 そうして、

 

「ええっ、1回もモンスターに遭遇することなく上の階への階段に到着できましたよ!?」

 

 驚く小悪魔だったが、しかし次の階でも、

 

「このフロアも敵との遭遇無しでクリアーできましたね……」

 

 と敵に遭遇しないまま、魔法の鍵が隠されたピラミッド3階へたどり着いてしまう。

 

「スーパーファミコン版以降のリメイク作では遭遇率が下がっているとは聞くけど、この世界は携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版の流れをくむもの。つまりそれよりさらに下がっているということかしら?」

 

 首を傾げるパチュリー。

 

「いいんですか、それ? ボタンの謎解きも簡単になっているっていうのに」

「あるいは笑い袋による資金稼ぎを防止するためかも知れないわね」

「はい?」

「笑い袋は色々と面倒な相手なのだけれど、スーパーファミコン版以降のリメイク作だと、ピラミッドの1階、2階での出現率が異常なくらい上がっていて、5割前後の確率で現れることになるわ」

「うーん? 遭遇率を下げてプレイヤーのストレスを緩和した代わりに、厄介なモンスターの出現率を上げることで難易度を調節したってことですか?」

「そうかも知れないわ。そして笑い袋はニフラムに耐性を持たず100パーセント効くから簡単に排除できるはずなのだけれど、350ゴールドという破格のお金を持っている」

「それは…… 迷いますね」

 

 退魔の呪文、ニフラムで吹き飛ばすと経験値とゴールドが手に入らないのだ。

 

「そう、お金の誘惑に負けて倒そうとするととんでもない損害を被り最悪、全滅しかねない。存在自体がピラミッドの財宝を狙う欲深い墓荒しを破滅に導く罠ということね」

 

 しかし、

 

「でも逆に言えば、倒せるなら資金稼ぎに最適ということでもあるわ。同じお金持ちモンスターの踊る宝石やゴールドマンと違って絶対に逃げないし、これを乱獲すれば、あっという間に万単位のお金がたまるの。リメイク版のゲームバランスを破壊した要因の1つとも言われているものね」

「ああ、それで携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版では、ピラミッドの1階、2階でのモンスターとの遭遇率をさらに下げた?」

「そもそもモンスターが現れなければ稼ぎの効率は下がるものね」

 

 そういうことだった。

 そして、

 

「まずは東の東ね」

 

 イシスで聞いた童謡のとおりにボタンを押していく。

 間違うと足元の床が開いて下の階に落とされるので慎重に。

 

「次は西の西と」

 

 階段を下りたりしてフロアを離れると、最初からやり直しになる。

 東に行ったり西に行ったりする通路の途中にはこの階へ昇って来るのに使った階段がある。

 直進してうっかり階段を踏んでしまったり、慣れた人間だとエンカウントまでの歩数カウントをリセットしようとつい昇り降りしてしまいがちなため注意が必要。

 

 そうして向かう途中でようやく敵と遭遇!

 

「ミイラ男さん?」

「それに笑い袋よ!」

 

 逃げ出すパチュリーたちだったが、回り込まれてしまった。

 笑い袋はマホトーンを唱える。

 が、

 

「効かないですよ!」

 

 パチュリーも小悪魔も抵抗(レジスト)に成功。

 そしてミイラ男の攻撃。

 ミイラ男の攻撃力はあばれザルと同じ55ポイント。

 小悪魔は星降る腕輪で守備力をかなりのところまで高めているのだが、

 

「かふっ!?」

 

 それでもヒットポイントが1/4近く削られてしまう。

 つまり4体すべての攻撃が偏って小悪魔に集中したら、それだけで死亡するかも、という相手である。

 そして、

 

「うぐううう…っ、なんでわたしだけぇぇぇぇぇ…」

 

 先頭に立つパチュリーをスルーして、小悪魔にミイラ男からの攻撃が次々に命中。

 

「ミイラ男は判断力が0、つまりバカだから勇者パーティの隊列が認識できず、攻撃対象は完全ランダムなのよ」

 

 ゆえにこんな風に運次第で先頭に立つパチュリーに攻撃が行かず、後ろに居るはずの小悪魔に集中するということもありうるのだ。

 

「バカな方が危険って、そんなのアリですか?」

 

 と嘆く小悪魔だったが、実際ドラゴンクエストでは判断力が低い方が厄介というパターンは多い。

 しかしミイラ男の場合は、

 

「でもバカなおかげで設定されているはずの『集中攻撃』の特性が機能していないのよ」

「集中攻撃!?」

 

 おばけありくいなど集中攻撃の習性を持つモンスターは狙いを一人に集中させ、対象を死ぬまで攻撃し続けるという行動パターンを取る。

 あばれザルと同じ攻撃力でそれをされたら、とんでもないことになりそうだが、ミイラ男はデータ上は集中攻撃持ちなのにそれを使えない。

 つまり判断力が0でバカなので狙いを絞れないというモンスターである。

 

 ともあれ、危険なまでにヒットポイントを減らされ、逃げ損ねたら死んでしまうだろう小悪魔のために次のターンは逃亡を断念。

 

「身を守って!」

 

 小悪魔には防御を選択させ、パチュリーは薬草による治療を試みる。

 そして笑い袋はマヌーサを唱え、パチュリーと小悪魔は幻に包まれてしまう。

 

「やめてくださいしんでしまいます」

 

 身を守る小悪魔にミイラ男の攻撃が続く。

 一発、二発、そして残りあと2ポイント、次に攻撃を受けたら死亡というところで、パチュリーの治療が間に合う。

 そんなパチュリーにも攻撃が加えられるが、こちらは高いヒットポイントで問題なく耐えられる。

 そして、

 

「次のターンで逃げるわよ」

 

 ということで再び逃亡を選択。

 しかし回り込まれる。

 今度は笑い袋はボミオスを唱え、パチュリーには効かなかったが、小悪魔は、

 

「すぅばぁやぁさぁがぁ、さぁげぇらぁれぇちゃいまぁしぃたぁ~」

 

 と素早さが下げられてしまう。

 ストップモーションのようにカクカクした動きで、

 

「コ・マ・オ・ク・リ・モ・デ・キ・マ・ス・ヨ」

 

 などという真似も。

 

「そんな風に遊べるなんて余裕ね。まぁ『装備技』で無効化できるから問題は無いけど」

 

 システム的に言えば、ドラクエでは戦闘中に装備を変えられる、装備を変えると能力値が変化する可能性があるので再計算される(実際に装備しなおす必要は無く、現在装備中のものを選ぶだけでも良い)、すると魔法で変化していた攻撃力、守備力、素早さが元の値に戻ってしまうというもの。

 これでスクルト、スカラ、ルカナン、ルカニ、ピオリム、ボミオス、モシャスの効果が解除される。

 不利な魔法を受けた場合に使えるが、同時に味方からの有利な呪文効果も消えてしまうのが難点。

 一般には『装備技』と呼ばれるもので、スーパーファミコン版で使えるようになり、次のゲームボーイカラー版では使えなくなったものだが、スーパーファミコン版を元に制作された携帯電話版以降ではまた使えるようになっているというもの。

 

 一方、魔法使いであるパチュリーからすると現実にも、邪視から身を守る動作として拳から人差し指と小指だけを立てるコルナというジェスチャーがあるように、一定の仕草で相手の呪詛を無効化するというのは魔術的にもあり。

 すなわち、ドラクエ世界ではそれが装備技となっているのだろうという認識だった。

 

 そして数発、ミイラ男から殴られるが、次のターンに逃亡が成功。

 

「し、死ぬかと思いましたー」

「笑い袋は色々と面倒な相手よ。ホイミスライムと同じ無限のマジックパワーで素早さを下げるボミオス、魔法を封じるマホトーン、深い幻に包み込み、攻撃の半分を外れさせるマヌーサを唱える他、ふしぎなおどりを使ってマジックパワーを減らしてくる厄介者。攻撃力は極端に低いけど、そこは一緒に出現するモンスターが補ってしまうし」

「ええー……」

 

 想像しただけで嫌になったのか、げんなりとした顔をする小悪魔に、パチュリーは、

 

「さらにはスーパーファミコン版以降のリメイク作では、ファミコン版ではデータ上設定されているだけで使えなかったスクルトを唱えるわ」

「はい!?」

「しかも地獄のハサミと同じ、敵全体を元の守備力と同じ値だけ上昇させる壊れ性能の方よ」

「ダメじゃないですかー」

「素早さはこの時点では破格の64で、星降る腕輪をもってしても先手を取るのは困難。仮に先手を取れたとしてもモンスター中最高の回避率で攻撃をかわすこともあるし、ダメージを与えても判断力が最高の2だから、そのターン中に行動を切り替えて自分自身をホイミで回復したりする」

「ええっ、そんなずるいことしていいんですか!?」

「プレイヤー側も、戦闘をAIに任せれば同じことをしてくれるわよ」

 

 ドラゴンクエスト3でも、携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版ではAI戦闘が取り入れられているから利用が可能だ。

 この場合AIはターン開始時ではなく、自分が動ける番になった時点で、もっとも有効な行動を選ぶようになっている。

 

「薬草で治療して進みましょう」

 

 マジックパワーの節約のため大量購入して『ふくろ』に詰め込まれた薬草で治療をする。

 

「……考えたんですが、パチュリー様」

「何かしら?」

「さっきの戦闘で私、ぎりぎり死にませんでしたけど、逆に言うとこれ、パチュリー様からの借金で防具を固めていなかったら確実に死亡していたってことですよね」

「そうなるわね」

「文字どおりの借り物の力ってやつじゃないですかー。やっぱり勇者の強さって、パーティの収入を吸い上げて優先的に装備を整えているが故って話ですよね」

 

 現状を鑑みると実際、そんな感じではある。

 しかも、

 

「そもそもの話で言ってしまうと、さっきの戦いであなたが死んでいても、私一人で魔法の鍵の取得は可能よ」

 

 だから今の段階で取りに来たという話でもある。

 

「うぐっ!?」

「勇者がパーティから外せないから連れて来てるけど、ひたすら逃亡と薬草による治療を繰り返して進むだけなら、私のヒットポイント頼りで十分というか」

 

 という割と身も蓋も無い話であった。

 

 ともあれ、西の西のボタンを押すと、重い岩が動く音がして魔法の鍵への扉が開いた。

 そして祭壇の宝箱からスタミナの種と魔法の鍵を入手。

 

「これでもう、最悪デスルーラをすればいいから気が楽になったわね」

「デスルーラ?」

「死に戻りを利用した脱出、移動法ね。持ち金が半分になってしまう上、仲間の蘇生費用がかかるけど、今はちょうどお金の持ち合わせは少なくなっているし、仲間の蘇生と言っても私一人分だけだし使っても痛くないわ」

 

 それでふと、小悪魔は思い出す。

 

「ピラミッドの1階、2階のエンカウント率を下げることで笑い袋による資金稼ぎを防止するっていうお話ですけど」

「ええ」

「このピラミッドの地下にはモンスターのエンカウント率を強制的に上げる黄金の爪が眠っているんですよね? そのデスルーラを使って取れば……」

「ああ、それは無理よ。スーパーファミコン版以降のリメイク作だと黄金の爪だけは死に戻りをすると、元の安置場所に戻されるっていう特別な処理がされるようになっているから」

「ええっ!?」

「その上で、入手した際に上昇するエンカウント率もファミコン版より強烈に上げられていて持ち出すのは大変。レベルを上げてから来れば、というのもピラミッドの地下には先頭キャラのレベルに合わせて中身が変わる『あやしいかげ』が出る。しかもリメイク作ではファミコン版より中身のモンスターが手強くなっているから、ピラミッド地下の呪文が封じられた状態でブレスを使って来る敵なんかに遭遇するとヒドイ目に遭う。だから制作陣は、ピラミッドの1階、2階のエンカウント率を下げるだけで笑い袋による資金稼ぎは防止できると考えたんじゃないかしら?」

 

 実際には複数攻撃武器の威力と、薬草を大量に買い込んでふくろに詰めるという技で無理やり突破し黄金の爪を持ち帰るというのは可能であるが。

 

 いったん下の階への階段を降りて歩数カウントリセットをするなど小技を使い、上の階まで敵に遭遇せずに到着。

 そして魔法の鍵で扉を開け、四階の宝物庫へ。

 

「これを取ろうとすると呪われるんでしたっけ?」

「そうね、だからここのアイテムは後で取りに来るけど、マジカルスカートだけは先に入手しましょうか。ニフラムを使えば、経験値やゴールドはもらえないけど比較的安全に敵を倒せるわ」

「なるほど、それでマジックパワーを温存してヒットポイントは薬草で回復させてきたってわけですね」

 

 王の財宝に手をつけると、どこからともなく不気味な声が聞こえる……

 

「……王様の財宝を荒らすのは誰だ。我らの眠りを妨げる者は誰だ」

 

 四階に安置されている十二個の宝箱は、ファミコン版、そしてリメイクのスーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版では開けると四体のミイラ男が襲ってくるというものだった。

 呪いのため、このミイラ男たちからは逃げることができない。

 しかし、

 

「はい? マミーとミイラ男の混成!?」

 

 小悪魔が驚愕の声を上げたとおり、携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版では、マミー2体、ミイラ男3体に増強されているのだ!

 ミイラ男の上級モンスター、マミーの攻撃力は、あばれザルの55ポイントを上回る60ポイント。

 守備力を高めている今の小悪魔でも3発殴られたら死にかねないし、一撃死する痛恨もある。

 ゆえに最優先で小悪魔の退魔の呪文ニフラムが光を放つ!

 出合い頭にこれを食らったマミーたちと、

 

「うわっ、とてもまばゆいっ! どんな姿をした誰だっ!?」

「我は小悪魔なり!」

「あ、悪魔が光につつまれて…… 不謹慎だぞ君っ!!」

「ほっといてください!! ぶしつけですが特に意味もなくあなたがたを光の中へ消し去ります」

「うそ─────────っ!!!」

 

 などといったコントじみたやり取りをしつつも、その存在を抹消する。

 そして残ったミイラ男の反撃だが、パチュリーに一発、しかし、

 

「防御していれば、問題ないわ」

 

 敵の排除は小悪魔のニフラムに任せ、こちらは防御で敵の攻撃を受けることに専念。

 続けて小悪魔に一発、そして最後の一発を小悪魔は素早く身をかわし回避!

 

 次のターン、今度はパチュリーがミイラ男の攻撃を回避。

 そしてパチュリーは薬草で小悪魔の治療。

 さすがに続くミイラ男の攻撃は当たるが。

 

「残り全部! 光になぁれぇぇぇぇっ!!」

 

 小悪魔のニフラムが今度はミイラ男たちに炸裂。

 全部は無理だったが、二体を光の中に消し去る。

 そして攻撃を受ける小悪魔。

 

 最後に残ったミイラ男はしぶとくさらに2回、ニフラムに耐えきった後、ようやく消え去った。

 

「結果論だけれども、最後の一体は殴った方が早く倒せたわね」

 

 ということだが。

 こうして二人はマジカルスカートを入手。

 魔力を込めた生地で作られた女性用の服。

 機能性だけでなく見た目にもこだわった、オシャレな女性冒険者のためのスカート状の法衣である。

 

「女性なら誰でも着れるし、武闘家、盗賊、遊び人にとっては、光のドレスとゲームボーイカラー版の魔法のビキニを除くと耐性持ちの鎧がこれしかない。特に光のドレスが一着しか手に入らなくなり、魔法のビキニから耐性が消えた携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4・ニンテンドー3DS版では重要性が増しているものね」

 

 ドラクエ3では後半は守備力より耐性持ちの防具を優先した方が有利なこともあって、武闘家と盗賊両方がパーティに居たり、武闘家が二人、盗賊が二人など、それぞれが複数居たりすると最後までこれを使うことになる。

 

「こぁ、あなたこれを……」

「これ以上の借金は無理です!」

 

 お許しくださいパチュリー様! とばかりに悲鳴を上げる小悪魔。

 パチュリーは考え込む。

 

「……まぁ、ピラミッドもこの周辺も攻撃呪文を使う敵が出ないから呪文ダメージ軽減効果は役に立たないし、マジカルスカートの守備力は+25で、今あなたが使っている革の腰巻の+24とわずか1ポイント差。守備力は4ポイントごとにダメージを1ポイント下げるものだから、今のあなたの守備力、69ポイントが、70ポイントになってもダメージ軽減量は減らない」

 

 となると、とりあえずはパチュリーが装備した方が良いのか。

 パチュリーはこれまで使っていた革の鎧に替わって、マジカルスカートを着込むことにするが、

 

「どこに顔を突っ込んでいるの!!」

 

 パチュリーが穿いたマジカルスカートの中に頭を入れてしまっている小悪魔。

 

「パチュリー様、このマジカルスカート不良品じゃないですふぁ?」

「くすぐったいから下着に顔を埋めながら話さないでっ!」

 

 と叫んだタイミングで、すぅっ、と大きく息を吸う小悪魔。

 それでパチュリーの羞恥心が天元突破、その白皙の頬が真っ赤に染まる!

 

「犬じゃないんだから嗅ぐなっ!」

「あいたっ!」

 

 パチュリーにスカートの上から頭を殴られ、ようやく離れる小悪魔。

 下着越しに嗅いだパチュリーの匂い。

 そして両手で自分の身体を守るかのようにかき抱いて、ふるふると震えながら、まるで見た目どおりの普通の少女のように涙目でにらんでくるパチュリーに萌えるのだったが、パチュリーの手がお仕置きだとばかりにチェーンクロスを握ったところで正気に戻る。

 

「待って下さいパチュリー様! 私はマジカルスカートの機能を確かめただけです!」

「は?」

「説明しましょう、『マジカルスカート』とは、スカートの中身が見えてもおかしくない状況なのにも関わらず、不自然にスカートに妨害されて中が見られない現象、そしてそのスカートそのものを指す言葉。別名『鉄壁スカート』と言い、どんな強風が吹いてもめくれず、逆さづりにされようとも重力に逆らい、物理法則を乗り越えて乙女の秘密を隠し続けるマジックアイテムなのです!!」

 

 そんな馬鹿な。

 

「でも、そのマジカルスカートは私のような小者にも突破できてしまった、鉄壁とは言えない不良品でし…… んん? でも真っ暗で何も見えなかったから触覚と嗅覚で『ぱんつはいてない』でないことを確認したのですが」

「そんな理由で人の下着に鼻先をうずめて匂いを嗅いだって言うの!?」

「はい、そのままだと『シュレディンガーのパンツ』状態だったので」

 

 何だそれは。

 

「話を戻しますと、スカートの中は真っ暗で見えなかった、ということはやはりマジカルな力が働いているのでしょうか?」

 

 真面目に考察を始める小悪魔。

 

「………」

 

 阿呆らし過ぎる……

 これ以上話しても、まぬけ時空に引きずり込まれるだけと悟ったパチュリーは、小悪魔と他の宝箱はスルーして五階へ。

 そこに安置されている宝箱を開ける。

 

「何かしら、これ?」

 

 こちらは呪われておらず、『派手な服』が手に入る。

『公式ガイドブック』記載の英訳では「Punk Fashion」。

 守備力は鉄の鎧の+25以上、驚きの+28であるが、

 

「王の財宝にふさわしく、きらびやかだけれども……」

 

 遊び人専用の防具であった。

 

「つまりイシスの王、ファラオは遊び人だったということですか?」

「……まぁ、この先エジンベアのお城、王族の部屋で手に入る『おしゃれなスーツ』や『パーティードレス』も遊び人、もしくは盗賊しか着れないものだったけど」

「王族は労働をしないから遊び人ということなんでしょうか……?」

「そんなわけ無いでしょう?」

「でも紅魔館(うち)でも、主であるレミリアお嬢様は働いたりしないですよね?」

「レミィは、まぁ……」

 

 吸血鬼と人間の王を一緒にしない方が、という話だが、ファラオもその存在は人ではない、神の地上における化身とされているので在り方は近いのか。

 ともかく後は階段を上がって外へ、ピラミッドの頂上近くに出て床から小さなメダルを拾い終了。

 

「高いですねぇ」

「そうね」

 

 と下を眺めて足をすくませる小悪魔を後ろからトン、と突き落として、

 

「ひあぁぁぁぁっ!?」

 

 飛び降リレミトで脱出。

 

「デビルウィーング!!」

 

 ピラミッドの外壁を転げ落ちるところを、悪魔の翼を背から伸ばして空気をつかむことで何とか免れる小悪魔と、それにつかまって滑空、無事砂漠に着地するパチュリー。

 

「イシスで夜を待たなくてはいけないこともあるし、ここは歩いて帰りましょうか」

 

 キメラの翼を使えばすぐに帰ることもできるが、キメラの翼やルーラは使用後、強制的に朝になってしまうため時間短縮のためにも歩いて帰ることにする。

 しかしその場合はイシスのオアシスを前に、

 

「敵よ!」

 

 という具合にモンスターと遭遇することになる。

 

「攻撃色で真っ赤です!!」

 

 二体の真紅の芋虫、火炎ムカデだ。

 小悪魔とパチュリーが攻撃するが倒しきれず、

 

「火を吐いてきました!?」

「火の息ね」

 

 全体ダメージの火を吐かれ、二人とも10ポイント弱のダメージを二回。

 しかし次のターンで先制して止めを刺すことができた。

 

「火炎ムカデからは火炎の液袋が採れるのね」

 

 歩く油田と言えるのかも知れない。

 そうしてホイミで治療を行い、無事イシスに到着する二人だった。




 マジカルスカートは意味が違う……
 いや、テレ東規制とかを受けてるアニメヒロインなんかは、みな穿いてますけど。

 魔法の鍵をゲットできましたから、次はこれを使ったアイテム取得のボーナスタイム。
 あと深夜の百合ハーレム、イシスの女王様の寝室での密会とか。

 ご意見、ご感想、リクエスト等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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