こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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「三動作を一瞬で……!!」エルフの隠れ里へ

「これからどうするかだけれども」

 

 テドンで掘り当てたラックの種をかじり、運の良さを上げながら思案するパチュリー。

 小悪魔はというと、

 

「パチュリー様……!!」

 

 地面に両手をついて、

 

「お金を貯めてゾンビキラーが買いたいです……」

 

 そう、震える声で言う。

 パチュリーは、

 

(大げさねぇ)

 

 と持てる者の余裕ゆえに、その小悪魔の心情が理解できないものの、それでも、

 

「そうね、小さなメダル60枚でもらえる正義のソロバンの取得と並行して、あなたのために資金を溜めるのが良さそうね」

 

 と同意する。

 現在までに集めた小さなメダルは57枚。

 あと3枚でもらえるのだ。

 

「まずはやらずに飛ばして進めていたノアニールの村の解放イベントね」

 

 パチュリーは小悪魔に命じて、彼女のルーラでエジンベアへと跳ぶ。

 エルフの隠れ里やノアニール西の洞窟に向かう場合、ここから行った方が近いのだ。

 船で海を行く方が、エンカウント頻度は下がるのだし。

 そんなわけで海を渡り上陸するが、あと一歩というところでモンスターに襲われる。

 

「あ…… あやしいーっ」

 

 影のような正体不明の存在。

 

「あやしさ大爆発ですーッ」

 

 叫ぶ小悪魔。

 パチュリーはというと、

 

「怪しい影? そういえば、この近辺では単体のみだけど出るんだったわね」

 

 何らかのモンスターが正体を隠している状態であり、

 

「正体が分からないけど、1体なら問題ありませんよね」

「あ、こら……」

 

 小悪魔はこの程度と雷の杖を振るうが、

 

「効きません!?」

 

 しかも怪しい影は、

 

「私よりも早い!?」

 

 種で強化して素早さを67まで上げているパチュリーが攻撃するよりも先に、マヌーサをかけてくる。

 

「くっ、幻に包まれてしまったわ」

「こ、こっちもです!?」

 

 さらに怪しい影はパチュリーに攻撃。

 

「二回攻撃!」

 

 これは守備力を高めてあるため5ポイントのダメージで終わるが、安心する間も与えず、

 

「ルカナンを唱えてきました!? さ、3回攻撃ですか!!」

 

 これで小悪魔の守備力が半分に下げられてしまう。

 

「三動作を一瞬で……!!」

 

 そしてパチュリーのゾンビキラーによる攻撃もマヌーサの効果により、外されてしまう。

 

「な、何ですか、何が化けているんです、この怪しい影!」

 

 ファミコン版ではイカ系の最上位種クラーゴンだけが3回攻撃をしてきたのだが、スーパーファミコン版以降のリメイク作ではさらにバラモスブロスともう一体が、3回までの攻撃を可能とされた。

 ゆえに、

 

「ああ、大体わかってしまったわ」

 

 とパチュリー。

 

「ネクロゴンドの洞窟の一部とアレフガルドの岩山の洞窟の2箇所だけにしか出現しない、アレね」

「はい!? そんな先のモンスターがここで出るんですかぁ!!」

 

 驚愕する小悪魔だが、

 

「さ、幸い私たちはこのレベルでは非常識なくらい守備力を高めているので、ルカナンで守備力を下げられたところを攻撃されない限り大ダメージは無いはず。だから装備技で守備力を回復させながら、マジックパワー切れを狙えば……」

 

 そうつぶやいて何とか精神を立て直そうとする。

 しかしパチュリーは無情にも、

 

「マジックパワー切れは無いわ。このモンスターの最大マジックパワーの値は255、すなわち無限!」

 

 と断言。

 しかも、

 

「すべての呪文に完全耐性を持っている相手だから、攻撃は剣に切り替えて」

 

 そう指示を出す。

 

「全部の呪文に完全耐性!?」

 

 どんな敵なのか、という話だが、呪文が効かないモンスターが相手なら、諸刃の剣を使わざるを得ない。

 しかし、

 

「外れた!?」

 

 マヌーサの影響か、小悪魔の攻撃は外れ。

 だが、

 

「今度はこちらが先手を取れた!」

 

 相手の素早さは70ポイント。

 パチュリーを3ポイントほど上回っているが、この程度なら運次第でイニシアティブは取れる。

 

「当たって!」

 

 仮にマヌーサの半分の確率で攻撃を外す効果が効かなかったとしても、全モンスター中最高の回避率で攻撃をかわすこともある敵であり、油断はできないのだ。

 幸いパチュリーのゾンビキラーは敵を捉える。

 もっとも当てたとしても、

 

「硬いっ、さすが守備力100!」

 

 打撃は敵の硬い守備力に阻まれる。

 しかしパチュリーの攻撃力は諸刃の剣を装備した勇者である小悪魔以上。

 ゆえに敵の守備力を超え、一撃で切り伏せることができた。

 そして……

 

「こ、これは宝石?」

 

 驚く小悪魔。

 パチュリーたちは倫理コードの解除に伴いゴールド・ドロップが無効になって、代わりに収入はリアルな剥ぎ取り、つまりモンスターを解体して得られる素材や所持品をゴールドに換金しなくてはならないのだが。

 

「良かったわね、1023ゴールド相当の収入よ」

「はいいぃぃっ!?」

 

 何その大金。

 

「怪しい影の正体は、踊る宝石だったのよ」

 

 ということ。

 笑い袋の上位種で、ゴールドマンと並ぶ超お金持ちモンスターである。

 

「な、何でそんな敵がこんなところで」

 

 という話だが、

 

「ファミコン版の怪しい影は、先頭キャラのレベルに対し2倍までの、大体は1.3倍のモンスターID、モンスターの並び順に振られた番号を持つ相手が化けていたのだけれど」

 

 しかし、

 

「スーパーファミコン版以降のリメイク作では、モンスターレベルが参照されることになったの」

「つまりパチュリー様の現在のレベル19までの敵が出る?」

「そうね、そしてモンスターの中には出現時期の割に、例外的に低いモンスターレベルを持つ者が居るわ。魔法おばばのLv12や、踊る宝石のLv16」

 

 つまり先頭キャラがレベル12でも、魔法おばばが怪しい影に化けてベギラマを撃って来る可能性があるということ。

 

「な、何でそんな……」

「どちらもローテーション行動の最後が『逃げる』になっているから、これを確実にするためと言われているようよ。モンスターは判断力が0でない限り、先頭キャラのレベルとモンスターレベルの差が6以上ないと逃げないから」

「だからモンスターレベルを下げておいた?」

「そうみたいね」

 

 パチュリーはうなずいて、

 

「怪しい影は本来ならまだ戦うことのできない敵と戦える面白いモンスターよ。リメイクではバラモスを倒すまで雷神の剣や吹雪の剣が入手できなくなったけど、先頭キャラのレベルを上げさえすれば、上の世界にLv43の大魔神、Lv45のソードイドを呼び出してドロップを狙うことも理論上は可能だし」

「盗賊に盗ませれば、さらに……」

「それはダメ。その場合、旅人の服しか盗めないわ。ゲームボーイカラー版ではさらに通常のドロップアイテムも旅人の服のみになっているから狙えないわね」

 

 ゆえにやまたのおろち1回目に化けた怪しい影を倒して複数の草薙の剣を入手する、なんて真似もスーパーファミコン版及び、それを基に作られた携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版では可能だったが、ゲームボーイカラー版では不可能になっている。

(なお、ファミコン版では草薙の剣取得フラグが最初にやまたのおろちを倒した時のみ発生するので、ジパングで戦う前に怪しい影でやまたのおろちを呼び出せば取得は可だが、それ以降、ジパングで戦おうとも再び怪しい影で呼び出そうとも取得は不可)

 

「そんなに上手くいきませんか…… あなほりだと?」

「やっぱり旅人の服だけみたいね」

 

 ならば、

 

「ゴールド目当てに踊る宝石を狩まくれば……」

「そんな狙い通りに出たりしないから無駄よ」

 

 怪しい影の出現率自体低いものだし、出ても目的のモンスターが出るとは限らないのだ。

 

 

 

 そうして森の中にぽつんと開けている平地にたどり着く二人。

 そこは長く尖った耳を持つ少女が、

 

「ここはエルフの隠れ里よ」

 

 と教えてくれるとおりの場所。

 

「あっ、人間と話しちゃいけなかったんだわ。ママに叱られちゃう」

 

 と続く言葉があったが……

 他の住人に話しかけても、

 

「ひーっ、人間だわ! さらわれてしまうわ!」

 

 とブルブル震えるだけで話にならなかったり、店を訪ねても、

 

「あなたがた人間にはものは売れませんわ。お引き取りあそばせ」

 

 と拒絶されたり。

 エルフの女王にも会うが、

 

「あなたがた人間がこのエルフの里に一体何の用です? 何ですって? ノアニールの村の…… そう、そんなこともありましたね」

「そんなこともありましたね、って……」

 

 村一つ眠らせて置いて忘れていたのかと顔を引き攣らせる小悪魔を他所に、エルフの女王は語る。

 

「その昔、娘のアンは一人の人間の男を愛してしまったのです。そしてエルフの宝、夢見るルビーを持って男の所へ行ったまま帰りません。しょせん、エルフと人間。アンは騙されたのに決まっています。多分、夢見るルビーもその男に奪われこの里にも帰れずに辛い思いをしたのでしょう。ああ、人間など、見たくもありません。立ち去りなさい」

 

 そう言って、パチュリーたちは追い返されてしまう。

 

「種族を越えた恋愛ね。でも相手の村全体を眠らせるなんて、やりすぎじゃないかしら?」

 

 そうつぶやくパチュリーだったが、

 

「大丈夫です。種族が違っても、私はパチュリー様のこと愛していますから」

「何の話よ」

 

 小悪魔の妄言にため息をつくパチュリー。

 だいたい、

 

「愛していると言えば何でも許されると思っているでしょう」

 

 と、呆れたようにつぶやくのだが、

 

「………」

 

 口元を押さえてプルプルと震えている小悪魔に眉をひそめる。

 

「何?」

「いえ、カップルが痴話喧嘩しているかのようなセリフですね、って考えたら、気だるげなパチュリー様の表情と口調にダダ洩れの色気を感じてしまいまして」

「はぁ?」

 

 鼻からあふれ出そうになる愛を抑えるために手を当てていたらしい。

 が、それはそれとして、小悪魔は改めて表情を取り繕うと、

 

「All is fair in love and war.戦争と恋愛においては何をやっても許されるって紳士の国の人も言ってますし」

「あなたねぇ……」

 

 どこまで本気なのか。

 

「でも今時『異類婚姻譚は悲劇で終わらないと』なんて考え方は流行りませんよねぇ」

 

 と小悪魔。

 まぁ確かに幻想郷には色々な種族が入り混じって暮しているし、中には異種族同士で愛し合っている者たちも居る。

 外の世界の創作物でもモンスター娘が普通に人間や異種族とラブコメしているのが現代であるが……

 

「そういう物語が認められるようになったのは比較的最近よ。それまではずっと、それこそサブカルチャー、ゲームクリエイター向けの書籍でも『異類婚姻譚は悲劇で終わるのがいい、いや悲劇で終わらせないといけない』という主張がされていたものよ」

「『夕〇』ですね」

「わざわざ伏字にしなくとも『鶴の恩返し』って言えばいいじゃない」

 

 ともあれ、

 

「それが崩れたのは、やっぱりネットっていうものの進歩で、クリエイターが直接、顧客にアリかナシかを問うことができるようになったから。従来の価値観と違い過ぎて出版業者という既存の販売ルートから拒まれた作品であっても、顧客に直接掛け合ってみることが簡単にできるようになったからね」

 

 それ以前の古い事例だとクイーンの名曲『ボヘミアン・ラプソディ』がある。

 レコード会社は当時のシングルの演奏時間が3分程度であることから「5分55秒では長すぎてヒットしないだろう」とリリースに否定的だった。

 そのためメンバーは友人のラジオ番組でかけてもらい直接顧客に届けてみるという方法で宣伝し、大きな反響を得たことでリリースにつなげた。

 

 同じことが個人で手軽にできる時代になり、出版社などといった従来のメディアの常識では「売り物になるはずがない」と門前払いされて日の目を見ることの無かったような作品がネットで好評を博し、実際に出版してみたら売れてしまったりする。

 そういう時代になったということである。

 しかし、

 

「ドラクエ3の発売は西暦1988年。ぎりぎり昭和の時代の作品だから」

 

 その時代に異類婚姻譚でハッピーエンドに、という発想には至れなかったのだろう。

 

 エルフの隠れ里には、エルフの王女と駆け落ちした男の父親が謝りに来ていた。

 話も聞いてもらえないと嘆いていたその父親は、既に老人だった。

 

「一体、何年前からあの村は眠らされているのかしら?」

 

 ともあれ、その駆け落ちした二人はノアニールの村には行っていないらしい。

 となると、エルフの隠れ里の近くにある洞窟が怪しいため行ってみることに。




 怪しい影、正体を知らずに思わぬ敵と戦うと驚きますよね。
 1ターン3回攻撃って、どこの大魔王かと……

> その時代に異類婚姻譚でハッピーエンドに、という発想には至れなかったのだろう。

 私が『ドラクエ2~雌犬王女と雄犬~(現実→雄犬に憑依)』(https://strida.web.fc2.com/t_sugi_ss/ss/dq2dog_00.htm)を書いたのは2009年でしたが、その時でも「異類婚姻譚でハッピーエンドというのは新しい、今までになかった作品」という評価でしたからね。

 なお、異類婚姻譚に限らず、こだわりを持つようになると「○○はこうだからいい。いや、こうでなくてはならない」という「ねばならない思考」にとらわれがちになるんですけど。
 そうなると作品を生み出すのに『苦労』を感じるようになります。
 でも、実際には「そんなの知らない、○○萌え~」と、とにかく作り手が好きで作っている作品の方が受け入れられるんですよね。

「本当に自分の好きなことを楽しそうにやっている所には、自然と人は集まってくるんだよ!」
(『マコちゃんとヒロシさん~マンガ・居酒屋「日本海」物語』より)

 ということなんでしょう。
 どんな理屈も関係なく、ただ「好き」ということは、すべてをしのぎます。
 しかし、「○○はこうでなくてはならない」という「ねばならない思考」にとらわれると、「好き」ということより、後付けで考えた「こうだからいいのだろう」という理屈を優先することになります。
 だから発想から自由さが無くなるし、作品作りが苦しくなる。
 できあがったものは苦労した分だけクオリティは高く、技術的には評価はされるかも知れませんが、人を惹きつける面白さ、という点では外した作品になる。
「好き」だから「こだわり」を持ったはずが、「こだわり」だけが先行して「好き」が置き去りにされている、そのことに気付いていない。
 そういうことなんでしょうね。

 ご意見、ご感想、リクエスト等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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