こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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商人の町(前編)寝取られ展開に脳が破壊される小悪魔

 教会で小悪魔の不幸の兜の呪いを解いたら、

 

「いよいよ商人の町づくりイベントだけれども」

 

 準備も整ったので一気に進めることにする。

 

「ところで商人の町の場所に行くのにポルトガとエジンベア、どちらから行った方がいいかという論争があって」

「はい?」

「試してみましょうか?」

 

 そんなわけで小悪魔のルーラでまずはエジンベアへ。

 

「ルーラでは城の南に着くけれど、船に乗るなら城に入って、出て」

 

 すると城の上からの出発になる。

 

「ここで私の経験値をメモしておいて」

 

 船に乗り西へ、マーマンや痺れクラゲを蹴散らしながら、大洋を渡った先にある大陸の森の中に開けた場所へと上陸。

 

「私は幸せの靴を履いているから、今の経験値からモンスターとの戦闘で得た分と出発前の経験値を引けば、歩数が出るわ」

「ああ、幸せの靴ってそういう使い方もできるんですね」

 

 結果は70歩。

 内訳は、平地1、海洋67、森2。

 

「そうしたらルーラで今度はポルトガへ」

 

 跳ぶ。

 

「ポルトガの場合、ルーラで跳んだ位置から直接船に乗れるわね」

 

 出発前に経験値をメモするが、

 

「あら?」

「何ですか?」

「商人の町で記録した結果から経験値が+1されているわ」

「それは……」

「ルーラすることで1歩、歩いたことになるのね」

 

 ということ。

 ここからまた船で西へ。

 大陸に当たったら北へ。

 途中で出ただいおうイカを倒しながら進み、到達する。

 同様に計算した結果は、

 

「71歩ね」

「なるほど、エジンベアの方が1歩だけ近いわけですね」

「でもルーラした位置からなら同じ歩数よ」

 

 さらに言えば、71歩の内訳は海洋69、森2。

 

「モンスターへのエンカウントは、最初にランダムで決まった歩数を歩いた時に発生するわ、そして平地の一歩を1とすれば、森は1.8歩、海洋は0.4歩としてカウントされる。これで換算すると」

 

 エジンベアから:平地1×1+海洋67×0.4+森2×1.8=31.4

 ポルトガから:海洋69×0.4+森2×1.8=31.2

 

「つまりエンカウント率はポルトガの方が低いくらいで、小数点以下0.2ポイント差なのでほぼ変わらず。見かけ上の歩数はエジンベアの方が近いからエジンベアから行った方がいい、と主張する人が居る一方で、ルーラで跳んで行くなら、ポルトガから行った方が城に出入りする必要も無いから時間もかからない。時間短縮にシビアなRTAで、どうしてエジンベアを使わずポルトガを利用するのか分かったような気がするわね」

 

 ということだった。

 そんな小さな疑問を解消しつつもイベントである。

 スーの大陸の東海岸、そこには一人の老人が居て、街を作ろうとしている。

 

「わし ここに 町 つくろう 思う。

 町 あれば きっと みんな よろこぶ。

 商人 いないと 町 できない。

 パチェ ここ 置いていく。

 お願い 聞いてほしい」

 

 という申し出にパチュリーは、

 

「はい」

 

 と答える。

 

「それ ほんと?

 パチェ 旅 あきらめる。

 骨 ここに埋めるかも。

 それで いいか?」

 

 ファミコン版では本当に帰って来なかったので「骨を埋める」だったのが、リメイクでは戻って来るので「埋めるかも」になっている。

 だからパチュリーも、

 

「はい」

 

 と、うなずく。

 

「おお それ ありがたい! わし パチェ ふたり 町づくりはじめる! すぐ!」

 

 というわけで、

 

「じゃあ私はここに残るわね。私が持っていたものは、あなたのふくろにいれておくから」

 

 そう言ってパチュリーが別れる。

 老人は、

 

「お礼に いいこと 教える。

 この大陸のまんなか スーの村 ある。井戸のまわり 調べろ」

 

 というように雷の杖の情報をくれる。

 まぁ、既に取っているのだが。

 そしてパチュリーは輝かんばかりの表情で、

 

「今までほんとに楽しかったわ。ありがとう小悪魔」

 

 と別れを告げる。

 

「ぐふっ、これが寝取られ……」

 

 今のセリフはNPCモードによる固定セリフ。

 イベントムービーなどでプレイヤーキャラが勝手にしゃべり出すアレのようなものなので、パチュリーの意思は介在していないわけではあるが、笑顔で言われるとくるものがある。

 なので、仕方がないわね、みたいな顔をしてパチュリーは、

 

「たまにでいいから、ここに遊びに来てよね」

 

 と言ってやる。

 

「こ、今度はツンデレ! パチュリー様、私を何度、地獄に突き落としたり天国に昇天させたりするつもりなんですかっ!」

 

 叫ぶ小悪魔。

 どっちにしろ死ぬのか…… という話ではあるが。

 

「それで、最初は船に乗って降りることが必要なんでしたっけ?」

 

 商人の町の発展が進む条件については色々な説があるが、とりあえずはこれで進むはずである。

 そうやって小悪魔が再び町を訪れると、池の北側の空き地でパチュリーが働いている。

 

 なおスーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版では男女ともにこのシーンから専用のイベント限定服を着たグラフィックに切り替わっていたのだが。

 この世界の元となったスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版では容量節約のためかそのような着替えは無い。

 ……まぁ、スーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版でも、この時限りのレベル1の商人を作って人身売買するだけ、というプレイヤーが多いためか、ほぼ気付かれない変化だったりするのだが。

 

 そんな話はともかく、

 

「ああっ、小悪魔! 私よ私。パチェよ。来てくれたのねっ」

 

 そう言って出迎えてくれるパチュリー。

 

「今ここにお店を建てようと思ってるの」

 

 そう語るが、

 

「ニセモノ……?」

 

 首を傾げる小悪魔。

 パチュリー・ノーレッジと言えば『動かない大図書館』とあだ名されるほどのダウナー系美少女魔法使い。

 それが、

 

「信じて送り出したパチュリー様が陽キャラにチェンジしてしまうなんて……」

 

 と嘆く小悪魔だったが、もちろん今のセリフはNPCモードによる固定セリフなので、

 

(セリフ一つでここまで言われるって……)

 

 裏で密かに怒りを覚えているパチュリーだった。

 

「こんなの私のパチュリー様じゃないっ!」

 

 そう言って走り去る小悪魔。

 

(誰があなたのものだと言うのよ……)

 

 呆れ顔で見送るパチュリーだった。

 

 

 

 町の外で頭を冷やした小悪魔が返って来ると、

 

「さっそく 店 できた。

 これ あなたのおかげ。

 ありがとう ありがとう」

 

 と、老人が言うとおり、そこには既にパチュリーの店が完成していた。

 

「早っ!?」

「あっ、小悪魔じゃない! なんだかなつかしいわね」

「いえ、さっき会ったばかりですよね?」

 

 という話だが、やっぱりNPCモードによる固定セリフなので黙殺され、

 

「見ててね小悪魔。私きっとこの町を大きな町にしてみせるから!」

 

 などと言われてしまう。

 なお、この段階で店で扱っているのは薬草と革の帽子だけだったりする。

 

「……夜になったらどうなるんでしょうか?」

 

 と、店の奥に置いてあるパチュリーのベッドに興味を惹かれる小悪魔。

 そうとなれば、闇のランプに火をともして夜にする。

 町の外に運ばれるので再び店に向かうと、パチュリーは既にベッドで眠っており、夢でもあなほりをしているのか、

 

「あっ、ゴールド見っけ…… うーん、むにゃむにゃ……」

 

 などとつぶやく。

 一瞬の後、

 

「イヤイヤイヤイヤイヤ!」

 

 パチュリーの肩に手をかけ揺さぶる小悪魔。

 

「今「うーん、むにゃむにゃ」って言ってましたよね!?」

 

 何そのベタな寝言!

 

「あっ、ゴールド見っけ…… うーん、むにゃむにゃ……」

「いや、もうそれはいいですから!」

 

 しかしNPCモードになっているパチュリーは同じ寝言を繰り返すだけで一向に起きない。

 

「もうこうなったら、朝にしてしまうしか」

 

 という話だが、一人でこの辺をうろつくのもイヤなので、ルーラでポルトガに跳んで朝にして再び訪れることにする。

 これ以降町を出入りするだけで発展することが分かっているパチュリーからすると、何でそんな苦労をわざわざするの? という話だが……

 ポルトガからだと1度はモンスターを一人で退けなければならないのだが、

 

「パチュリー様の豪傑の腕輪と炎のブーメランをお借りして……」

 

 武装を固めれば、レベルが上がっていることもあり問題は無い。

 そして再び町を訪れた小悪魔は、

 

「ずいぶん土地が開けましたね」

 

 驚くことに。

 小悪魔だけでなく、

 

「ほう…こんなところに町ができていたとは…… やはり商売は足でかせぐ! いい取引先が見つかりましたよ」

 

 というように外から商人が訪れていたり、

 一人一泊2ゴールドと、故郷アリアハンを思わせる宿もできていて、

 

「ガイアの剣…… 大地をつかさどるその剣は巨大な山をもゆるがすという…… 手に入れたい! しかしどこにあるのかさっぱりわからぬのだ」

 

 と探索中の戦士が泊まっていたり。

 

(……すみません、その剣、パチュリー様が火口に放り込んでしまいました)

 

 と思うが言えない小悪魔。

 パチュリーの道具屋は、今は代わりの店員が対応していて、品物にも聖水とキメラの翼が加わっていた。

 

 水辺には、

 

「ここはきっと大きな町になるわ! そんな気がするの!」

 

 と笑う女性。

 なお、スーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版では、この段階で池の東側の花が咲いている植木からすごろく券が見つかるのだが。

 そして今を逃すと取れなくなってしまうのだが、この世界の元となった携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版ではすごろく場が無くなったため、すごろく券もまた手に入らなくなっていた。

 そして最初の老人も、

 

「町 どんどん 大きくなる。先 楽しみ! みな あなたのおかげ」

 

 そう言ってくれる。

 そして資材が置かれた工事現場では、

 

「ああっ、小悪魔! 私よ、私。パチェよ」

 

 すっごい違和感のある、肉体労働中のパチュリーの姿が!

 

「今度はここに大きな劇場を作ろうと思ってるの」

 

 と言うパチュリー。

 普段の彼女をよく知る小悪魔にしてみれば、

 

「な、なんて嘘くさい」

 

 ということだが、

 

「じゃあ、夜になれば?」

 

 もう一度、闇のランプを使ってみる。

 夜になると住民はみな、ベッドに入り、老人も、

 

「パチェ なかなかの やりて。

 わし うれしい」

 

 と、寝床から答えてくれる。

 しかしパチュリーはというと、夜空を映し出す池のほとりで、

 

「今の私の生きがいは、ここを世界一の町にすることなの」

 

 と静かに語る。

 

「あなたと旅をしたのはもう、ずいぶん昔のことみたい。楽しい思い出よね……」

 

 などと言って。

 

「この町だけ時の流れがおかしいですよ!?」

 

 と叫ぶ小悪魔。

 通常のプレイだと商人を先に預けておいて、ボストロールややまたのおろち撃破などといった町の発展の条件を満たす毎に訪れるということになるところを、すべての条件を満たしてから一気に進めるということをしているので、おかしな具合になるのだ。

 ともかく、また小悪魔は朝にするためにポルトガにルーラで跳ぶ。

 

 ……小悪魔はバカなので、商人の町にできた宿屋に泊まればいいという、新たな選択肢に気付いていないのだ。

 まぁ、現状では街を出入りするたびに発展段階が進むので、下手に夜中に出入りして昼にしか見られないイベントをスキップしてしまうよりはマシなのだが。

 

 マーマンを倒しながらまた海を渡り、

 

「パチェバークにようこそ。ここはパチェさまがつくった町ですわ」

 

 とんでもない状況に遭遇する。

 

「パチェバーク!? 何ですか、その名前は!!」

 

 という話。

 宿は一晩一人15ゴールドまで値上がりしていて、宿泊客の吟遊詩人が、

 

「うわさではシルバーオーブはネクロゴンドのほこらに…… しかしそのほこらは、あのネクロゴンドの山のいただきにあるといいます。あんなところにたどりつける者がいるとは、思えません」

 

 そう教えてくれる。

 

「すみません、もう取って来ました」

 

 という話だが。

 なお、スーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版では、この部屋のタンスからすごろく券が見つかるのだが。

 この世界の元となった携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版ではすごろく場が無くなったため、すごろく券もまた手に入らなくなっていた。

 

 町を歩く、あらくれ男からは、

 

「ランシールの村には、大きな神殿があるらしいな。

 その神殿なら、ブルーオーブのある洞くつに行けるらしいぜ。

 でもなにか、とてつもない試練がまってるって話だ」

 

 という噂も聞けるが、

 

「それ取って来たのパチュリー様ですよ」

 

 という話。

 また通りがかった商人が、

 

「私はときどき品物をとどけに、ここへ来るんですが…… 見ちがえるほど大きくなりましたなあ」

 

 と言ってくれるとおり発展している。

 パチュリーが開いた道具屋も、今は武器と防具の店に様変わりしており、ゾンビキラー、ウォーハンマー、裁きの杖、魔法のそろばん、魔法の前掛けが売られている。

 道具屋は最初の老人の家に転移していて、薬草に聖水、キメラの翼に毒蛾の粉、まだら蜘蛛糸、消え去り草まで扱うようになっていた。

 店員も老婆に代わっており、専門の薬師を入れたのかもしれない。

 なお、この老婆、裏手に回ると店の客でないと判断するのか、

 

「ん? じいさまなら外へ出とるがのう」

 

 と答えてくれる。

 

「おじいさん、奥さんが居たんですか? いや、新たに結婚した?」

 

 混乱する小悪魔。

 なお、この老婆は本当に最初の老人のつれあいで、この後、話が進むたびに訪れると、

 

「あたしはこの町に来て良かったと思うとるよ。でもこの年になって男に惚れちまうとは思わなんだよ」

 

 とか、

 

「わしも おまえ 好き。

 だから いっしょ くらす

 …って言ってくれたんだよ。

 今までは恥ずかしがって、側に居てくれなかったのに」

 

 と一々本当にラブラブなのろけを聞かせてくれる。

 しかも、このセリフと同時に二階の寝室にはベッドが二つ並ぶようになり、夜に訪れてみると二人で一緒に寝ているのだ!

 

 これらのセリフ、前者は革命後に聞けるが、革命は夜起きるのでそのまま立ち去ってしまい、昼に聞けるこのセリフを見逃してしまうプレイヤーは多い。

 さらに後者はラーミア復活後にこの町を訪れた時に聞けるセリフだが、商人がこの町に別れを告げ、勇者も町の外に出てしまうと、

 

「この町のことも、じいさまのことも心配ないぞ。あたしがめんどうみるからのう」

 

 という、そのままただの世話とも受け取れるセリフに切り替わってしまうし、夜に訪れても寝室に寝ているのはおばあさん一人。

 お爺さんは1階でうつらうつらと船をこいでいるという具合になるので、見落とされがちではあるのだが。

 

 この恋をほのぼのと取るか、何でおばあさんののろけを聞かないといけないのかと取るか、そもそも何で重要でもない名無しのモブNPCにこんなレアセリフが設定されているのかと取るかは人によるが、いずれにせよ、

 

「パチュリー様に街づくりをさせつつも、やることはやってるんですね、お爺さん」

 

 という話。

 そんな老人の恋にあてられた小悪魔がフラフラと歩いていると、

 

「あ、ここ……」

 

 パチュリーが建設していた劇場も完成していた。

 

「どうぞお通りくださいな」

 

 と、何故か入り口にメイドが立っていたのが気になるが。

 まぁ、紅魔館でも妖精メイドを使っているし、何より『完全で瀟洒な従者』十六夜咲夜が居るし、パチュリーが使う者としては違和感は無いが……

 

「ぼくらは ふたり~で~ 手と手 取りあ~って~」

 

 中のステージでは二人組の吟遊詩人がデュエットしており、

 

「キャー! こっち向いてー!」

 

 叫ぶ若い娘。

 そしてうっとりと見入っている主婦。

 二人ともステージに釘付けで、話しかけても小悪魔の方を見ようともしない。

 

「ふ~む…… 私には彼らの歌のどこがいいのか、よくわかりませんな。まあ顔がいいのは認めますがね」

 

 と言う商人の姿もあるが、

 

「来るお店を間違えているだけなのでは?」

 

 という話だった。

 男商人を預けた場合はキャバレーになっているので、そちらの方が良いだろう。

 さらには、

 

「ひっく…… ぼくよっぱらっちゃいました~」

 

 ふらつく男に、

 

「いらっしゃい。お酒ならいっぱいあるよ。ゆっくりしていってくれ」

 

 とカウンターから酒を勧めるバーテン。

 なおステージの詩人は、

 

「なんだいキミたちは ぼくたちのファンかな?

 ステージにはあがらないで。ぼくたちからのお願いだよ」

 

 とステージに上がっても紳士的に対応してくれるが、

 

「キミ…… たち?」

 

 今の小悪魔は一人なのだが、見えない何かが見える人なのだろうか?

 怖くなった小悪魔は、この場から逃げ出そうとするが、入り口に居たメイドさんが、

 

「お帰りですね? それではお代をちょうだいします」

 

 と会計を迫る。

 

「しめて50000ゴールド。払っていただけますね?」

「劇場じゃなくて、ボッタクリバーですこれ!?」

 

 叫ぶ、小悪魔。

 いや、パチュリーから預かっている金があるので余裕で払える。

 払えるが、払ってしまったら、この先ずっと何も買えない借金奴隷が確定である。

 

「ああ、アリアハンの銀行にお金を預けてから来るべきでした……」

 

 と、今さらながら忘れ去られていた銀行の存在を思い出す小悪魔。

 

 まぁ、幻想郷の外の世界でもかつてはそんな風に、ボッタクリバーでぼったくられても大丈夫なように、ある程度の現金だけ持って夜の繁華街に繰り出し被害をそこまでにする、という手法を取る者が居たが……

 そして被害に遭っても宿泊先のホテルの部屋に帰ってまた金を補充して街へ、という懲りない観光客も居たが……

 

 そんな事前の仕込みは当然していない小悪魔。

 降って沸いたような話だが、しかし契約を重んじる存在、悪魔である彼女はこれを踏み倒すことができない。

 

「は、はい……」

 

 終わった……

 そう覚悟する小悪魔だったが、

 

「あら? パチェさまのお知り合いでしたの? あらら、これはこれは……」

 

 ということで、無かったことになる。

 

「た、助かりましたーっ!!」

 

 と大きく息をつく小悪魔。

 しかし、何だか町の様子がおかしい。

 

「パチェさまは、私たち町の人間を働かせすぎる! このままでは私たちは、たおれてしまいますよ」

 

 と訴えるおじさんが居るし、

 

「おお あなた! わし わし! ここ はじめから いた じい!」

 

 最初の老人をようやく見つけたと思ったら、

 

「パチェ よく やる。しかし やりすぎ…… 町の者 よく 思ってない。

 わし とても 心配」

 

 などと訴えられる。

 そこは大きな屋敷の前で、入り口には門番の姿が。

 

「ここはパチェさまのおやしきだ」

「ええっ! パチュリー様の家!?」

 

 こんな短期間に、こんな立派な家を?

 小悪魔が入ってみると、そこには赤い絨毯が敷かれ、王侯貴族もかくやといった豪奢な椅子に腰掛けたパチュリーの姿が!

 

「よく来てくれたわ。どう? この町もやっとそれらしくなってきたでしょ?」

 

 と、パチュリー。

 

「でもまだまだこれから。まあ見ててちょうだい」

 

 そう語る彼女。

 なお、その両脇には宝箱が置かれているが、今の段階で取っておかないと無くなってしまう。

 取り忘れに加え、この屋敷には昼にしか入れないので、夜に来て進めてしまうとそもそも取る機会すら与えられないという。

 まぁ、この世界の元となったスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版では後の段階でも残るようだが。

 

 その夜……

 

「わし パチェ 会って いう。町の者 どう 思ってるか」

 

 パチュリーの屋敷の前で押し問答をしている老人。

 

「わし ここ 通りたい。 あなたも たのんで」

 

 と言うが、

 

「パチェさまはお休みだ。帰れ帰れ!」

 

 と追い返されてしまう。

 そして町の片隅では男たちが集まっており、

 

「……してしまうのはどうだろう?」

「しかしそれでは あまりにも……」

「だがこのままでは……」

 

 などと話し合っている。

 話を聞いてしまった小悪魔に気付く男たちだったが、

 

「パチェのやりかたはあんまりです! ぼくたちはもう、たえられませんよ!」

「こうなったら革命を起こすしかなさそうだ。あんたたち、止めてもムダだぜ。オレたちゃ、やるっていったらやるんだ!」

「この話…… 他言はなりませんぞ!」

 

 と逆にいきり立って事を起こそうとしてしまう。

 それを聞いた小悪魔はしかし、

 

(計画通り)

 

 とばかりに悪い笑みを浮かべる。

 

「街の有力者にまで登りつめてクーデター起こされて牢獄ですよ。何も起きないはずもなく…… ああ、なんてかわいそうな私のパチュリー様」

 

 陶酔した様子でつぶやく小悪魔。

 

「このゲームのNPCは司書権限で掌握できます」

 

 つまり、

 

「そう、パチュリー様は暴徒たち(全部私)に、襲われ、牢獄につながれ調教されてしまうんです!!」

 

 というわけで町を出て革命を起こさせようとする小悪魔だったが……

 

「あれ? 干渉できない? ええっ!?」

 

 不意のトラブルに慌てる。

 

「で、デビルイヤー!!」

 

 悪魔の力で何とか音声だけは捉えるが……

 

 

 

『パチュリーのなく頃に』

 

 

「ここでの監禁生活はいかがでしたかな?」

 

 嘲るように言う男の声。

 

「肉付きの良い身体になってきたじゃねぇか、たまんねぇ」

 

 別の男の下品で粘着質な物言いが追い打ちをかけるが、パチュリーは、

 

「あぁ…… 見ないで……ッ」

 

 と懇願するだけだ。

 

「ジパングやサマンオサを救った勇者殿が、今や快楽を前にしただけでよだれを垂れ流すメスブタだ」

「……やッ、は……ッ、そんなところ……、あッ、つねっちゃ……」

 

 身をよじるパチュリーの衣擦れの音と、切羽詰まったような声。

 

「この様子はいずれ公開することを予定しています。この街の住人のみならず世界からの観客を前にあなたの痴態をご披露していただきます」

「な……ッ!? なんてコトを」

 

 驚愕するパチュリーの唇からは、

 

「こんな恥ずかしい姿を衆目の前に晒される!? ウソよ…… そんなッ」

 

 といううわごとのようなうめきが漏れた。

 

「衆目に晒される中、はしたなく恥を晒しなさい」

「いやぁ゛ぁ゛」

「まぁだ、拒むことができるなんざ、さすがと言えばいいのか」

「それでこそパチェ様だ。しかし精神は耐えても身体はどこまで持つかな? 今からコレをねじ込んで試してやる」

「イヤ……ぁ、やめ……」

「へへっ、今までのアンタなら、こんなの、なんてことなかったんだろうけど、そんなだらしない身体になっちまったらなぁ」

 

 

 

「ぱ、パチュリー様ぁぁぁっ!!」

 

 叫ぶ、小悪魔。

 

「ここはパチェバークの町。しかしもうパチェだけの町ではないのだ」

 

 そんな言葉を背に、夜の街を走る。

 

「ここは牢屋だ。本当はパチェが悪人をとらえるため、つくったそうだが…… 自分がいれられるとはヒニクなものよな」

 

 などと言う衛兵を押しのけ、

 

「パチュリー様っ!」

 

 息せききって飛び込んだ牢獄で、小悪魔が見たものは、

 

「あ……小悪魔。私よパチェ……」

 

 よどんだ眼をした囚われのパチュリー。

 

「私はみんなのためと思ってやったのに…… やりすぎちゃったのかな……」

 

 そうしゃべる声に、これまで数々の敵を倒してきた覇気は無く。

 

「…… あっ、そうそう。私のおやしきのイスのうしろを調べてみて」

 

 それだけを伝える。

 

「私、しばらくここで反省してるわ。そうすれば…… 町の人たちも、きっと私のことを許してくれると思うの。そうしたらまた私に会いに来て」

 

 小悪魔が最後の鍵で鉄格子を開けても、

 

「ありがとう、小悪魔。でも逃げることはできないわ」

 

 と、逃げようとすらしない。

 

「私、しばらくここで反省してるわ。そうすれば…… 町の人たちも、きっと私のことを許してくれると思うの。そうしたらまた私に会いに来て」

 

 そう繰り返すだけだ。

 

「パチュリー様っ」

 

 監禁調教されて、逃げ出す気力すら奪われてしまうなんてっ!

 壮絶な寝取られ展開に、脳を破壊されるような衝撃を受ける小悪魔!

 

 

 

『パチュリーのなく頃に解』(回答編)

 

 

「ここでの監禁生活はいかがでしたかな?」

 

 からかうように言う男の声。

 しかし監禁と言いつつ、パチュリーには温かそうなドテラとコタツが与えられている。

 石造りの牢は冷えるが、それが逆に天然の冷房のように作用し、暖房とコタツの中で楽しむアイスならぬ、冷房の中で楽しむコタツ生活というような、ぜいたくで自堕落な快楽を与えていた。

 

「肉付きの良い身体になってきたじゃねぇか、たまんねぇ」

 

 別の男の下品で粘着質な物言いが追い打ちをかけるが、この男はコックである。

 効率優先で食べる時間も惜しんで金稼ぎを続けていたパチュリーはやつれていたのだが、革命後はこの男が運んでくる美味しい料理で元のふくよかさを取り戻していた。

 とはいえ、

 

「あぁ…… 見ないで……ッ」

 

 と、肉の付いて来た自分の身体を恥ずかしがるパチュリー。

 女性は過剰に痩せた身体を理想とするところがあるので、健康的な範囲でも肉が付いたら恥じる気持ちがある。

 まだまだ大丈夫なのだが。

 しかし、

 

「ジパングやサマンオサを救った勇者殿が、今や快楽を前にしただけでよだれを垂れ流すメスブタだ」

 

 差し出されるカロリーたっぷりのプレート料理に、パチュリーの目は釘付けだ。

 そんな彼女の回復具合を確かめるかのように二の腕の肉をつかんで確かめる男。

 

「……やッ、は……ッ、そんなところ……、あッ、つねっちゃ……」

 

 当然恥ずかしがって、身をよじるパチュリーの衣擦れの音と、切羽詰まったような声。

 

 男たちがどうしてこんなことをしているのかと言うと、もちろん「働かない喜び」「だらだらすることが人の生活にもたらすうるおい」を実際に体験してもらい、パチュリーが推し進めてきた効率第一主義を改めさせるためだ。

 まぁ、やっていることは「あなたにはニートになってもらいます」みたいな「何それ洗脳なの?」というものだったが、ともあれ、

 

「この様子はいずれ公開することを予定しています。この街の住人のみならず世界からの観客を前にあなたの痴態をご披露していただきます」

「な……ッ!? なんてコトを」

 

 驚愕するパチュリーの唇からは、

 

「こんな恥ずかしい姿を衆目の前に晒される!? ウソよ…… そんなッ」

 

 といううわごとのようなうめきが漏れた。

 そうすることによって、残ったパチュリー支持者を一掃するのだ。

 

「衆目に晒される中、はしたなく恥を晒しなさい」

「いやぁ゛ぁ゛」

 

 当然、パチュリーは嫌がるが、

 

「まぁだ、拒むことができるなんざ、さすがと言えばいいのか」

「それでこそパチュリー様だ。しかし精神は耐えても身体はどこまで持つかな? 今からコレをねじ込んで試してやる」

 

 と差し出されたのは、カロリーたっぷり、液に浸して焼いた、ふわとろのフレンチトースト。

 

「イヤ……ぁ、やめ……」

 

 と言いつつ、目が離せないパチュリー。

 

「へへっ、今までのアンタなら、こんなの、なんてことなかったんだろうけど、そんなだらしない身体になっちまったらなぁ」

 

 そう、毎日の美味しいもの攻勢に、パチュリーの身体は反抗できないくらいに馴らされてしまっていた。

 そんなわけなので、食後、掃除のために一時的にコタツが片付けられた牢に小悪魔が助けに来ても、

 

「ありがとう、小悪魔。でも逃げることはできないわ」

 

 と言って、

 

「私、しばらくここで反省してるわ。そうすれば…… 町の人たちも、きっと私のことを許してくれると思うの。そうしたらまた私に会いに来て」

 

 今しばらくの間だけでも、この素晴らしい、ゆっくりとしたニート生活を続けようとするのだった。




 長くなりましたし回答編は後日公開にしようかとも思いましたが「エロじゃねぇか!」と誤解されるのも危険なので、同時併記させていただきました。
 えっ? そんなオチだと思っていた?
 なるほど、つまり、それぐらいこのお話が健全であるという、読者の方からの厚い信頼があるということですね。
 そのご期待に応えられるよう、これからも健全作家として頑張らせていただきます!

 ご意見、ご感想、リクエスト等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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