こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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レーベの村で初めてのお泊り

 今度はレベルアップしてヒットポイントが激増したパチュリーを先に森の中を進んでいくと、

 

「パチュリー様、またスライムです!」

「上にも気を付けなさい、大ガラスが狙っているわ」

 

 二匹のスライム、そして上空から二羽の大ガラスが襲ってきた!

 このカラスは足で骸骨を持ち上げて飛ぶと、それを空から爆撃のように落としてくる。

 小悪魔は避けるが、続けざまに落とされる骸骨に全部は避けきれず、

 

「痛っ!」

 

 と頭に受け涙目になる。

 1ポイント程度しかダメージは受けていないのだが、しかし常人なら数発で死んでしまう威力ではある。

 

 一方、パチュリーは、

 

「カラスは道具を使う知能を持つというけど、このモンスターは骸骨を使うのね。そしてこの威力、道具と言うより呪物(フェティッシュ)? 興味深いわ」

 

 そう分析するが、

 

「見てないで戦ってください、パチュリー様!」

 

 と涙目になる小悪魔に、しょうがないと攻撃のため接近していた大ガラスに向け青銅の剣をふるう。

 青銅の剣は刃で切り裂くというより、叩くようにして使う初心者向きの剣。

 それによって大ガラスを殴り倒す。

 現状では小悪魔より力のあるパチュリーなので、大ガラスは一撃で墜とされた。

『動かない大図書館』と呼ばれる彼女だが、現実でも魔法による弾幕を掻い潜って接近してきた相手に対し物理(本)で殴る、カウンターを取る程度の能力はあるのだし。

 そして、

 

「私もお返しです!」

 

 と小悪魔も青銅の剣をふるって大ガラスを打ち落とす。

 彼女も力の種を使ってドーピングしたおかげで確実に一撃で倒すことができていた。

 残されたのは大ガラスの獲物のおこぼれを狙って同行していたスライム二匹で、これもまたあっさりと斬り倒す。

 こうしてモンスターの群れを全滅させた二人だが、

 

「大ガラスの血抜きと腸抜きだけはしておいてちょうだい」

 

 スライムを切り裂き、体内に取り込まれた金属、半貴石などの有価物を回収しながら小悪魔に指示するパチュリー。

 

「ええー、食べられるんですか、これ」

「カラスはフランス料理でも野生肉(ジビエ)として使われているものよ」

 

 フランス以外でもヨーロッパでは古くから食べられていたという記録が残っている。

 日本でも明治時代には専門の捕獲業者が居たり、農家の副業としてカラス獲りがされていたほど人気のある肉だったし、幻想郷の人里では今でも食べられている。

 普通に焼き鳥にして食べるもよし、醤油漬けにして保存食にしてもよし、鍋料理にしてもよし。

 

「……そう言われると、急に美味しそうなお肉に見えてきました」

 

 げんきんな小悪魔はいそいそと草のツルで大ガラスの足を結ぶと木の枝に下げる。

 青銅の剣の刃で頸動脈を切って血抜き。

 悪魔への生贄にはウサギやニワトリなどが捧げられることが多く、小悪魔もこの辺は手慣れている。

 だって解体ができないとせっかくのお肉が美味しく頂けないから。

 

「パチュリー様がていねいに刃を付けてくださったおかげでスムーズに切れますね」

 

 小悪魔は青銅の剣の切れ味に改めて感心する。

 

「悪魔の爪なら首の鎖骨の間から指を胸腔内に突っ込んで、心臓につながっている動脈をぷちりと切ることだってできるでしょうに」

 

 パチュリーが言っているのは、カモ猟などで行われる刃物無しに血抜きを行う方法。

 別に悪魔でなくとも爪さえ適度に伸ばしていれば人間にもできる技だったりする。

 

「後は腸抜きですけど……」

 

 尻の穴、というか鳥なので総排出腔の周囲を切って腸を抜くか、

 

「これがいいですね」

 

 適当な小枝を拾って腸抜きフック(バードフック)にして尻から突っ込み適当に腸をかき出し、砂肝の所でぷちっと切れたらお終い。

 

「さっさとレーベの街に入って売り払いましょう」

 

 とパチュリーに急かされるままに二羽の大ガラスを剣の鞘にぶら下げ、レーベの村へと入ったのだった。

 入った後で、

 

「インベントリ…… 魔法の『ふくろ』に入れて運べば良かったんじゃ」

 

 と気づくことになるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 レーベの村へたどり着いたパチュリーたち。

 普通のゲームならば街の中を探索したり、武器屋に行ったりするところだが、体験型VRだと、

 

「まずは宿の確保かしら。部屋が取れなかったら困るもの」

 

 と、リアリティに沿った発想となる。

 小悪魔も、

 

「大ガラスも新鮮なうちに売り払ってしまいたいですしね。宿なら引き取ってもらえるでしょうか」

 

 とうなずく。

 血抜き、腸抜きといった最低限の処置はしたが、美味しく食べるなら、一刻も早く捌いてしまうべき。

 幸い、倒してすぐにこの村へ駆け込んだので鮮度は落ちていない。

 この村唯一の宿屋に倒した大ガラスを持ち込み、おかみさんに売り込む。

 

「これは良いものですね。一羽3ゴールドで引き取りましょう」

 

 という具合に、倒した際に得られるゴールドと同額で処分できた。

 しかし、

 

「お部屋の方は生憎、相部屋になってしまうんですけど」

 

 と、申し訳なさそうに言われる。

 この宿屋、一階の鍵がかかった部屋と二階の客室、二部屋しかなく、しかもどちらも客が入っているのだ。

 

「毛布はお貸しますので」

 

 つまり、余分のベッドも無いので床に毛布を敷いて雑魚寝しろ、ということだった。

 

「その分、食事はサービスしますから。新鮮なお肉も手に入ったことですし」

 

 宿のおかみさんがそう薦めてくれたので、カラス料理で夕食を取ることにした。

 カウンター越しに調理の方法を見せてもらう。

 おかみさんは羽根を丁寧にむしって行くが、

 

「手が黒くなるのが難でねぇ」

 

 黒く染まった手を見せ、そう苦笑する。

 そうしてカラスを丸裸にすると、青銅製の包丁(キッチンナイフ)で器用に解体して見せる。

 

「あのナイフ……」

「この村で売っているブロンズナイフのようね」

 

 

ブロンズナイフ

 刃を欠けにくく加工してある青銅製のナイフ。

 料理などにも使われる軽いナイフだ。

(公式ガイドブックより)

 

 

 砂肝に肝臓や心臓といった鳥もつ。

 そしてモモや手羽、胸肉、ササミを取って串焼きに。

 食べきれない肉は煙で燻し薫製にして日持ちするようにする。

 残った骨、ガラは石皿の上に載せた磨石で骨を細かくなるまで砕く。

 そうすると中から骨髄が出て来て、つなぎになるので骨団子が出来上がる。

 これを出汁に、村で採れた新鮮な野菜を入れてスープを作るのだ。

 他にも、砂肝、肝臓、心臓はまとめて煮物に。

 こうしてできた豪勢と言ってもいい食事を取る。

 

「う…… 美味しいです。味の濃いニワトリの肉って感じで」

 

 串焼き、要するに洋風焼き鳥だが、とても大きくボリュームたっぷりであつあつなそれを、はふはふ言いながら口にした小悪魔は目を丸くする。

 パチュリーも同じく口にして、

 

「そうね、若干固めで何度も噛まないといけないけど、噛んでいるとじゅわっとあふれてくる肉汁の旨味が何とも言えないわね」

 

 とうなずく。

 

「シンプルな岩塩、そして擦り込まれた香草(ハーブ)の風味が一際肉の味を引き立たせてくれますし」

「スープも出汁が効いてていいわよ。骨団子も滑らかになるまでていねいにすり潰されていて食感もいいし」

 

 仮想体験型ゲームはこんな風に味覚を楽しめるのが良かった。

 

 

 

 食事を終えた二人は、渡された毛布を手に二階の客室に行ってみる。

 そこには男の子が居て、

 

「うわ~、こあくまさまって女の人だったんだ」

 

 目を輝かせながら小悪魔を見上げる。

 

「はい?」

「やっぱり! 女の人なのに魔物をやっつけながら 旅してるなんてえらいなあ!

 いっぱいいっぱい 魔物をやっつけてね! あいつらがボクのパパとママを…… ぐすん」

 

 涙ぐむ男の子。

 この子と相部屋になるらしい。

 そして小悪魔は一人ほくそ笑む。

 

 

 

 深夜……

 床の上でパチュリーを組み敷く小悪魔。

 

「んっ、こぁ……」

「ふふふ、パチュリー様、静かにしないとあの男の子が目を覚ましちゃいますよ」

「っ!?」

 

 息を飲み、硬直するパチュリー。

 声を封じられ、身動きも取れなくなったパチュリーの身体を、小悪魔は好きなように嬲りながら、その耳元に向かってささやく。

 

「本当はあの子、起きてますよ。寝たふりをしながら必死に聞き耳を立ててます」

「――!?」

 

 小悪魔の言葉が耳から脳に届き、その意味を認識した瞬間、パチュリーの身体が弓のように反り、そして二度、三度と跳ねた。

 荒く息をつくパチュリーに、小悪魔小悪魔はくすりと笑うと、

 

「嘘ですよ」

 

 とささやく。

 

「こぁ、あなた……」

「でも聞かれてるって思ったら、パチュリー様……」

 

 感じちゃったんですよね?

 

 唇の隙間だけで告げられる言葉に、パチュリーは絶句し、

 

「私はそんな、えっちなパチュリー様も大好きですよ?」

 

 とろけそうな笑顔を浮かべる小悪魔に、再び逃げ出そうともがくが、

 

「駄目ですよ、暴れると本当に目を覚ましちゃいますよ」

 

 とささやかれて動きを封じられ、

 

「でも…… あの子、本当は私にも分からないように寝たふりをしているのかも?」

 

 という言葉にぎくん、と身体を硬直させ、

 

「頭からかぶった毛布の隙間から、パチュリー様の痴態を目を凝らしながら見つめて…… いるのかも」

 

 その言葉に羞恥の極みに墜とされる。

 七曜の魔法を極めた魔法使い、あのパチュリーが取るに足りない小悪魔に、自分の支配する使い魔の言葉に縛られ、本当か嘘かも分からないギャラリーの耳目に心身を昂らせ、恥辱に悶える。

 その痴態に小悪魔の瞳は愉悦にけぶり――

 

 

 

(ベッドで必死に寝たふりをする男の子を観客に、パチュリー様と床の上で繰り広げる夜の饗宴…… ああ、宿を原作ゲームに忠実に、空き部屋が無いよう再現した甲斐がありました)

 

 一人妄想に興奮する小悪魔だったが、パチュリーは、

 

「……この子とならベッドを一緒にしても大丈夫かしら」

 

 とつぶやく。

 男の子は小さいので小柄なパチュリーとなら一緒に寝ても良さそうだ。

 

「ええっ!? 私と隣り合わせで寝てくれるんじゃ……」

「嫌よ、私はベッドを愛しているの」

「ベッドに寝取られた!」

 

 などという主従漫才をしつつ、パチュリーは男の子とベッドに入る。

 主従契約の縛りにより呪的な力でがんじがらめに拘束された小悪魔を床に転がして……

 このゲーム世界ではパチュリーは商人に過ぎないが、現実の主従契約が失効するわけでも無いので小悪魔に対してはこんな風に働きかけることができる。

 霊的視野を持つ者には、小悪魔を縛り上げる、呪力により形作られる黒革の拘束具の数々が見えただろう。

 

「ひっ、酷い、パチュリー様!」

「あなたと一緒の部屋で無防備に寝るなんてできるわけないでしょ」

 

 主従契約の抑止力もあるし、そもそも隔絶した力量差があるため危険なことなどないが、エッチな悪戯をされるのは御免だった。

 前科もあることだし。

 

「寒い…… 凍えてしまいます」

「私の分の毛布も使っていいから」

「心が寒いんです!」

「ならこれも貸してあげるわ」

 

 小悪魔に投げ渡されたのは……

 パチュリーの着込んでいた旅人の服に付属のマント。

 雨風避けや野営の為のクロークだった。

 しかしパチュリーは過去の、あのやり取りを忘れていないだろうか。

 

 

 

「パチュリー様の匂いが染みついた服…… それを売るなんてとんでもない!」

「人の着ていた服に顔をうずめないでちょうだい」

 

 

パチュリーの着ていた服

 これを与えられた小悪魔は本能に従うまま魅惑の匂いに包み込まれ、濃厚なフェロモンを吸ってしまい魅了状態にされてしまう。

 さらに、すでに魅了状態の場合は恍惚・朦朧状態にまで堕とされてしまう。

 

 

「ちなみに私は素でパチュリー様に魅了されているので、即座に恍惚・朦朧状態にされてしまいます」

「どうしてそこで胸を張ることができるのか本気で分からないし、そもそも人の着ていた服に勝手に変な特殊効果を設定しないでくれる?」

「いえ、犬にとって主人の匂いの付いた衣服がフェロモンを発する魅惑的な存在に思えるように、私たち使い魔には主人の魔力の残り香が付いた服はごちそう……」

「嗅ぐな!」

 

 

 

 小悪魔は自分の身体にかけられたパチュリーのクロークに顔を埋めた瞬間、即座に恍惚・朦朧状態に堕とされてしまう。

 そして、

 

「あ、ああ……」

 

 これはまずい。

 まずいのだ。

 

 幼い少年とベッドを共にするパチュリー。

 

「軽いわね、ちゃんとご飯を食べてるの?」

 

 などと言って少年をその豊満な胸に抱え…… 抱きしめる。

 その姿を、拘束され、芋虫のように床に這いつくばり見上げるしかない哀れな小悪魔。

 羨望の視線を向けながら、パチュリーの香りが染みついた衣服を犬のように嗅いで自分を慰める、あさましくもみじめな代償行為。

 それなのに、いつにも増して興奮している自分が居る……

 

(これって寝取られでは?)

 

 ずくん、と身体に、いや精神に衝撃が走る。

 

(まずいまずいまずい……)

 

 そう焦っても、すでに心身はクロークに沁み込んだパチュリーの香りに包まれ、恍惚・朦朧状態に堕ちてしまっている。

 

(……う、ウソ……ウソぉッ! だ、だって…… 触れられても、触れてもいないのに、ね、寝取られ…… 寝取られなんかで……)

 

 ガクンガクンと、ギリギリの痙攣が身体を走った。

 あと少し、ほんの一押し。

 それで…… それで踏み超えてしまう。

 寝取られで興奮し、達してしまうというアブノーマルな性癖を、その身に焼き付けられてしまう……

 

「ふふふ、そんなに揉んでもおっぱいは出ないわよ」

 

 パチュリーのささやき。

 そして涙に滲んだ視野に映る、無邪気に、不思議そうにパチュリーの胸に触れる少年のモミジのような手と、もちろんその小さな手ではつかみきれない、零れ落ちるような大きなバスト。

 

「あんっ……」

 

 パチュリーの吐息が、やけになまめかしく小悪魔の耳に、いや頭に響いた。

 瞬間、

 

(……っ! ……っ! ~~~っ?!)

 

 びくびくと脈動して、ちょっとでも気をゆるめれば暴発しそうになる身体。

 この被虐に満ちた倒錯のシチュエーションは、小悪魔を生まれて初めての異常な事態に陥らせた。

 無理やりにこらえることにより、いつもなら数秒で終わるはずの絶頂直前の状態が、長く長く引き伸ばされていく。

 パチュリーの悩ましい吐息に突き上げられて達した苦しいホワイトノイズが、もう十秒以上、小悪魔の中で続いていた。

 意識が真っ白に中断している。

 その中で、自分の心身に異常性癖を刻まんとする被弄の感覚だけは、針のように鋭く小悪魔の意識を犯し続けていた。

 

(パチュリーさま……)

 

 小悪魔はパチュリーの、いつもの怜悧で不愛想な、しかし小悪魔が好きなご主人様の顔を脳裏に思い浮かべることで耐える、耐える、耐える……

 えっちなことばかり考えているみたいに思われる小悪魔だったが、一方で純粋にパチュリーのことを慕っている、ピュアな部分もあるのだ。

 それを支えに小悪魔は耐えた。

 けなげに、心の中で敬愛するご主人様の名前を何度も何度も唱えながら。

 無限にも思える一時の後、何とかこらえ切った小悪魔は、

 

「はぁっ……」

 

 と息をつく。

 そうして、ジンとしびれる身体を、

 

「むきゅ?」

 

 踏みにじられた。

 パチュリーに。

 

(うむあむああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!)

 

 目の前にあったパチュリーのクロークに顔をうずめることで悲鳴を上げることだけは耐えたが、それだけだ。

 意識が透き通り、そのまま白く、真っ白に塗りつぶされていく。

 新規開発されてしまった性癖に、身体と精神が染め上げられる――

 

 

 

 翌朝……

 暗い中、水を飲むために立ったパチュリーに誤って踏まれたのだと知る小悪魔だったが、その時にはもちろん手遅れになっているのだった。




 戦闘と剥ぎ取りの続き。
 実際、カラスって美味しいのでフランス料理はもちろん、現代日本でも食べさせてくれるお店があるのです。

 そしてパチュリー様との初めての外泊に興奮する小悪魔でしたが……
 親を亡くした男の子と一緒に寝てあげる聖母のようなパチュリー様を前に、不純なことを(勝手に)考えて自滅してしまうのでした。
 どうしてこうなった。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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