こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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ラダトームへ「貧乏に耐えてよく我慢した、感動した!!」からの一撃死

 ファンには懐かしい初代ドラクエのフィールドBGMを聞きつつ東進しラダトームの城を目指す。

 

「おおー」

 

 そうして見えてきたのはラダトームの城と街、その対岸の島にある竜王の、いやこの時代だと大魔王ゾーマの城。

 なお、

 

「ラダトームの街に入る場合は、必ず西側から入ること」

 

 そう、注意を促すパチュリー。

 

「はい?」

 

 幸いここまでモンスターの遭遇は無かった。

 故に歩数を減らすためかと小悪魔は思ったのだが……

 よくよく考えてみると、東に進んでから南に下るのも、南に進んでから東に進むのも、歩数的には変わらないことに気付く。

 どういうことかというと、

 

「用が無いから行くことが無いし気付かれにくいんだけれど、ラダトームより東って対岸に見えるゾーマの城周辺、魔の島北部と同じモンスターが出るのよ」

 

 ちょうどラダトームのある位置からエリアが切り替わる。

 ゆえに西側から入るのなら大丈夫なのだが、それ以外から入ろうとすると……

 特に今のようにエンカウントせずに歩けている、そろそろモンスターと出会うかも、というタイミングで東に進んでから南に下る、などとすると、そういったモンスターたちと遭遇する危険性があるわけだ。

 

「逆にラダトームで街に出入りしながらあなほりをすると、さざなみの杖が拾えたりするのよ」

「それって……」

 

 さざなみの杖は戦闘中に道具として使用すると魔法を反射するマホカンタの呪文の効果を発揮するもの。

 ただ、杖は装備できなくとも力を引き出せるものが多いが、残念ながら、さざなみの杖は装備できる僧侶、魔法使い、賢者にしか道具として使用できなかったりする。

 そのためパチュリーも手に入れようとは思わないが、

 

「アークマージが1/128の確率でドロップするものね」

「へ? アークマージって、ゾーマの城で出るモンスターですよね?」

 

 バラモス城で出たエビルマージの上位種で、イオナズンやザオリクを使ってくる相手だ。

 

「そんなのがこのアレフガルドの最初の街、ラダトームで出るんですか?」

「ええ、他にも例外的に敵味方共に呪文が使えない魔王の爪痕でも出るのだけれど」

 

 あなほりも呪文と同じ扱いになるので、魔王の爪痕では使えないのだ。

 

「ゾーマの城のある魔の島北部でも出るの」

 

 ゆえに、共通のモンスターが出るエリアにあるラダトームであなほりをすればそのドロップアイテムである、さざなみの杖が入手できるのだ。

 パチュリーたちには使えないので意味は無いが、パーティに僧侶、魔法使い、賢者が居るなら、掘ってみるのもいいだろう。

 この時点で入手できるなら、活用方法も色々あるだろうし。

 

 

 

 幸いモンスターに襲われることも無くラダトームに到着できたので、まずは街中を回って情報を聞く。

 

「魔王バラモスをたおしたですって? でもバラモスなど大魔王ゾーマの手下にすぎませんわ」

「そんな使いっ走りの立場で、あんな大口叩いてたの、あのつぶれカバ」

「パチュリー様……」

 

 この女性の居る武器店側の花壇からは不思議な木の実を拾うことができる。

 というか、この女性が邪魔で拾うのに苦労したり。

 

「魔王は絶望をすすり、にくしみを喰らい、悲しみの涙でのどをうるおすという。われらアレフガルドの人間は、魔王にかわれているようなものなのか……」

 

 と語る戦士に小悪魔は、

 

「やはりゾーマは曇らせ好き」

 

 と納得。

 

「どういうことなの……」

 

 もちろんパチュリーには意味が分からない。

 そして、

 

「ぼく呪いをとく勉強をしてるんだよ。みんなが呪いにかかったら、ぼくがといてあげるんだ」

 

 と語っているのは初代ドラクエで呪いを解いてくれる老人の祖先なのか。

 

「本人…… ということは無いわよね?」

 

 また、この街の宿屋は破格の一人1ゴールドで泊まることができるが、

 

「あれっ? 連れ込みできるおねーさんが居ませんね」

 

 と小悪魔。

 お前は何を言っているんだ、であるが、事前に調査したドラクエ関連の書籍から得た情報により理解してしまったパチュリーは、

 

「……それができるのは、初代ドラクエのリメイクのみよ」

 

 と深いため息と共に答える。

 ローラ姫を救出した後、そのまま宿屋に入って、

 

「ゆうべはおたのしみでしたね」

 

 してしまう初代ドラクエの勇者だが、

 

「いいえ、わたしはローラひめじゃないわ」

 

 と答える町娘がリメイクでは、

 

「でも、おにいさんって、ちょっとステキな人ね。私ついていっちゃおうかしら」

 

 と街中限定だが後を付いてくるようになり、そのまま宿に泊まると、

 

「ゆうべはおたのしみでしたね」

 

 と宿の主に言われてしまうことになる。

 さらにはローラ姫を連れたまま、この娘に声をかけての宿泊も可、という……

 

「残念です。パチュリー様と三人で「おたのしみ」したかったのに……」

 

 などと寝言をほざく小悪魔だが、

 

「初代ドラクエのリメイクでも、スマホ版では削除されているものよ、それ」

 

 とパチュリー。

 そして、この世界はスーパーファミコン版を基に作られた携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版の流れをくむもの。

 もし仮にこのネタが実装されていたとしてもアリアハンの兵士の「エッチはほどほどにたのみますぞ」のセリフのように消されてしまっていたことだろう。

 

「またですか!?」

 

 叫ぶ小悪魔。

 

「くぅーっ、これだから「事なかれ主義」の「臭いものにフタ」な日本企業はダメなんです!「言葉狩り」絶対反対です!!」

 

 そう、憤るのだった。

 

 そして教会では再会が。

 

「やや あなたさまは!? 私です。カンダタです!」

 

 意外、それはカンダタ!

 

「こんな所で……」

「悪いことはできませんなあ。こんな世界に落とされて 今ではマジメにやってますよ。そうだ! 昔のお礼にいいことを教えましょう。ラダトームのお城には太陽の石ってヤツがあるらしいですよ」

「どう見ても囚人なんだけど、ここは教会付属の更生施設か何か?」

「あのカンダタさんがこんな言葉遣いをするなんて、気味が悪過ぎますね。絶対、懲りないタイプだと思ってたのに……」

 

 ジト目を向ける小悪魔。

 パチュリーはというと、

 

「宗教は麻薬だって言うけど、洗脳されてるんじゃないでしょうね」

 

 と疑う。

 

 その他に、民家の本棚からは『開運の本』と『甘えん坊辞典』が見つかった。

 

「開運の本はルザミでも見つけたけど、甘えん坊辞典は初めてね」

 

 パチュリーは甘えん坊辞典を手に取って見定めた。

 

「ひとにキラわれないあまえかた? 母性本能をくすぐる法? ……なにコレ?」

 

 という読んだ者の性格を『あまえんぼう』に変えてくれるもの。

 

「これを使えばパチュリー様も私に素直に甘えてくれるようになるんでしょうか?」

「お店に持って行けば45ゴールドで売れるわね」

 

 速攻で危険物を売り払うことにするパチュリー。

 

 城側に位置する街の壁の外側地面からは、小さなメダルが手に入った。

 また、城に向かう道の途中にある家のタンスからは命の木の実。

 

「それじゃあ、城に入るわよ」

 

 ここの宝物庫には、空になった3つの宝箱が置かれていた。

 子供たちがこう語る。

 

「お城の宝だった武器や防具を魔王がうばって隠してしまったんだ」

「魔王でもこわいものがあるのかなあ……」

 

 それを聞いてパチュリーは、

 

「ゾーマも大言を吐く割にやることが小さいわね。こんな子供に見透かされているようでは底が知れるというものよ」

 

 と肩をすくめる。

 なお、またバリアー床があって、

 

「ひぐあああぁぁぁっ!!」

 

 と悲鳴を上げる小悪魔を引きずりながらその奥、何故か居る兵士に話を聞くと、

 

「大魔王ゾーマをたおすなど、まるで夢物語だ。しかし……

 かつてこの城にあったという王者の剣、光の鎧、勇者の盾。

 これらをあつめられれば、あるいは……」

 

 という話が聞けるが、

 

「いや、別になくても倒せるわよ」

 

 と首を振るパチュリー。

「お前は私を倒すのに「聖なる石」が必要だと思っているようだが… 別になくても倒せる」

 みたいな話である。

 実際、パチュリーたちが、

 

やまたのおろち「お前は私を倒すのに「ベホイミ」が必要だと思っているようだが… 別になくても倒せる」

 

ボストロール「お前は私を倒すのに「ベホマ」が必要だと思っているようだが… 別になくても倒せる」

 

 してきたように、絶対必要だと思い込んでいたものが、実は「別になくても」問題ないというのはゲーム攻略でも、そして人生でもよくあること。

 先入観を捨て、工夫をすれば結構なんとかなるものなのだ。

 

 しかしまぁ、意味ありげにバリアーの奥に居た兵士に聞けるのがこんな話ということで、

 

「引きずられ損じゃないですかぁ!」

 

 ベホマで治療しつつ叫ぶ小悪魔。

 しかしパチュリーは自分も小悪魔に治療をさせると、

 

「この城にはあのおじいさんが居るから」

 

 と、とある老人を指し示す。

 勧められるままに小悪魔が声をかけると、

 

「おお、はるか国より来たれり勇者たちに光あれ!」

「うおっまぶしっ!!」

 

 光と共に二人のマジックパワーが全快する。

 有名な『光あれじいさん』である。

 

 その後、城内の台所のタルからは、小さなメダル。

 台所の奥の階段から上がった2階のタルからは素早さの種と550ゴールドを見つけた上、宝箱から重要アイテムである太陽の石を手に入れた。

 街の老人が、

 

「雨と太陽があわさるとき虹の橋ができる。古いいい伝えですじゃ」

 

 と言っていたように、雨雲の杖と合わせて虹の雫を作り、ゾーマの居る島へ虹の橋を架けるのに必要なイベントアイテムだが、

 

「戦闘中に道具として使うと、眠りから回復させるザメハの呪文の効果が引き出せるのよね」

 

 という効果が見込める。

 

「虹の雫を作ると無くなってしまう…… 少なくともプレイヤーには使えなくなってしまうアイテムだけれど、裏技で複製したりして、しんりゅう戦に活用するなど使い道は無いでもないわ」

「はい? 「少なくともプレイヤーには使えなくなってしまう」って?」

「それはね……」

 

 パチュリーたちが城外の地下室、初代ドラクエで太陽の石が隠されていた場所へ行くと、

 

「なに? 太陽の石? そんな物はここにはないぞ。

 しかし、おかしなものじゃな。わしは夢を見たのじゃ。

 この国に朝が来たとき、誰かがわしにその石をあずけに来る夢をな……」

 

 と言う貴人が居る。

 そして、

 

「クリア後に彼に話しかけると太陽の石を託す初代ドラクエにつながるイベントが発生するわ。つまりプレイヤー視点では雨雲の杖を作ったら所持アイテムから消えるのだけれど、物語的には持っているということになるわけ」

 

 また、城内の宿泊施設に行くと、

 

「うう… ギアガの大穴にもどって、このことを報告しなければ… だが、おそろしくて外へなど出れない… うう……」

 

 という具合に、ギアガの大穴からここに落ちた兵士が恐怖からベッドに引きこもっているが、

 

「それは、ホモセッ〇ス中にここに落ちて他人にその姿を見られたりしたら引きこもりにもなりますよね」

 

 と、小悪魔。

 

「何の話よ!」

 

 パチュリーはそう叫ぶが、

 

「上の世界でこの人のことを「私のあいぼうがこの穴に…… ああ!」って嘆いていたこの人のパートナーさんは、どこに居ましたか?」

「えっ? 広がった亀裂の横……」

「その亀裂に二つ並べられていたベッドの内の一つが飲み込まれていましたよね。その横から穴を覗いているんですから、この人は彼とホモセッ〇スしようと自分のベッドで兜を除いて全裸になったところをベッドごと落ち、その姿をこの世界の人に見られてしまった。だから他人の目がおそろしくて外に出れないんですよ」

「妄想が過ぎるでしょう!?」

「ええっ? 腐女子や貴腐人のみなさんに比べればこの程度の発想、可愛いものですよね?」

 

 そんな馬鹿な、という話だが腐っている方々の発想は実際、小悪魔の語った内容など可愛いものと思えるほどぶっ飛んでいることも多々あるため、その点に限ってはウソでは無かったりする。

 幻想郷の外では、男同士の気安い関係や友情表現が『腐女子フィルターを通して見るとこれこの通り』になっている薄い本(スリムブック)が大量に創作されているのだし。

 

 なお、別の部屋のタンスからはステテコパンツが見つかるが……

 

「ベッドもあることだし、ここで先ほどの素早さの種、使っておきません?」

 

 と小悪魔。

 しかしパチュリーはそんな小悪魔をジト目で見つつ、

 

「いいけど、真面目にやらなかったらさっき見つけたステテコパンツを頭からかぶってもらうわよ」

「勇者がパンツかぶって混乱してたらヤバすぎますって!!」

 

 というわけで素早さの種を使うパチュリーを、真面目にマッサージする小悪魔。

 さすがに知らない男性のステテコパンツを頭にかぶるのは遠慮したいようだ。

 

「無様エロも嫌いじゃないんですが、きたない系の尊厳破壊はNGで」

「あなたが何を言っているのか分からないわ……」

 

 パチュリーには意味が分からないし、分かったとしても、そんなプライベートな性癖を暴露されても…… という話。

 

 王に面会し、旅の記録を取るが、ここでパチュリーたちは驚くべきことを聞く。

 勇者小悪魔の父、オルテガがこの地を訪れていたということを。

 

「意外な人たちがこっちに来てるのよね」

「パチュリー様、アレ(カンダタ)と仮にもお父さんを一緒くたに扱わないでください」

 

 本当に仮だが、しかし、

 

「……グラフィックデザインは一緒よね」

「そうでした!」

 

 ということ。

 なお、

 

「今度は宿に腰巻きは残していないようね。いえ、まさか勇者たちが泊まっていたという部屋にあったステテコパンツが……」

 

 小悪魔に確かめさせてみるべきか。

 

「だからオッサンのパンツなんて被りたくありませんよっ!」

「そういう意味じゃない」

 

 また、神父からこの世界の地図である『妖精の地図』を受け取って城内の探索を終える。

 

「それじゃあ、いよいよ街に行ってお買い物ですか?」

 

 と逸る小悪魔だったが、

 

「その前に、小さなメダルが80枚貯まったから、アリアハンのメダルの館で引き換えよ」

 

 ということで小悪魔のルーラでアリアハンに戻りメダルの館でドラゴンクロウと引き替える。

 

「武闘家と盗賊が使える単体攻撃の武器で攻撃力は+85。クリア前に入手できる中では武闘家の最強武器となるものね」

 

 クリア後にはこれ以上の攻撃力を持つ魔獣の爪が得られるが。

 しかしそちらは完全な一品ものなので、武闘家が複数居る場合はこのドラゴンクロウを使い続けることになるだろうというもの。

 

「バラモス戦の前に手に入っていれば、武闘家と盗賊も活躍できたんでしょうけど……」

 

 と小悪魔。

 残念ながら75枚で手に入った携帯電話版を除けば、上の世界、バラモス戦以前には入手できないものである。

 まぁ、

 

「お店に持って行くのはもったいないと思うけど……」

 

 スーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版なら、しんりゅうを既定のターン以内に倒して使えるようになるジパングのすごろく場で宝箱マスから得られたり、何も無いマスを調べると低確率で拾うこともできるが、この世界はすごろく場の無い携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版の流れをくむもの。

 ゆえに完全な一品ものになるが、

 

「12750ゴールドで売れるわね」

 

 パチュリーたちには使えないため資金源にするほかない。

 

「た、大金ですね」

 

 と息を飲む小悪魔だったが、

 

「それ以上のお買い物が待ってるでしょう、あなたは」

 

 そう言われて、納得する。

 そして再び小悪魔のルーラでラダトームへ向かう。

 

 前回精算時の所持金は、

 

小悪魔:30308G

パチュリー:295207G

 

「これに不用品を売却した収入を足すと」

 

小悪魔:36773G

パチュリー:302324G

 

「それで私が使った分の、力の種、ラックの種、素早さの種の売却価格の半額をあなたに支払って」

 

小悪魔:36915G

パチュリー:302182G

 

「そしてラダトームの武具屋で売られているのはドラゴンキラー、パワーナックル、天使のローブ、ドラゴンメイル、ドラゴンシールド、水鏡の盾、ミスリルヘルム」

 

 このうち初めて見る品は、

 

「ドラゴンメイルはドラゴンのウロコを素材に作られた鎧で守備力+45、勇者と戦士が装備できる炎のブレスのダメージを2/3に減らせる優秀な防具よ」

 

 炎のブレスに耐性を持つ鎧はこれまでに無かったもの。

 ドラゴンシールドと効果を重複させれば炎のブレスのダメージを半分までに減らすことができる。

 お値段は9800ゴールド。

 

「水鏡の盾は守備力+40、勇者、戦士、僧侶、賢者、盗賊が装備できて、僧侶、賢者、盗賊にとって守備力の数値的には最強の盾よ」

 

 ただし、

 

「耐性が付いていないのが難だから、買わないならそれでもいいけど」

 

 耐性のことを考えれば、既に持っている魔法の盾やドラゴンシールドの方が優秀という問題がある。

 お値段は8800ゴールド。

 

「ミスリルヘルムは守備力+38、勇者、戦士、僧侶、魔法使い、商人、盗賊、賢者が使用可能で、勇者と戦士にはこれ以上のグレートヘルムがあるけど、他の職業だと最強の兜になるわ」

 

 ということ。

 

「お値段は18000ゴールドとお高いから迷うかも知れないけれど」

「むむむむむ……」

 

 頭を悩ませる小悪魔。

 

「一応、所持金で全部買えますよね」

「そうね」

 

 合計で36600ゴールド。

 ギリギリ買えるし、実際にはミスリルヘルムを買えばオルテガの兜を処分できるので、もう少し余裕ができる。

 

「この先、防具が問題になるのは……」

「呪文が使えないラダトーム北の洞窟でバラモスと同じ全体に約90ダメージを与えてくる激しい炎を使うサラマンダー3体に襲われた場合、ドラゴンシールドでダメージを3/4に減らしたとしてもきついわよね」

 

 戦闘中の回復手段に薬草しか使えないのでは、焼け石に水。

 倒しきるまで、こちらのヒットポイントが持つかが生存の鍵。

 ゆえに、炎のブレスに耐性のあるドラゴンメイルがあると心強いし、攻撃力150の打撃を半分の確率で繰り出して来るので守備力だってあればあるだけ良い。

 とはいえ、

 

「もちろん買わないというのも手よ。奥で勇者の盾を入手できればブレスダメージは2/3まで減らせるわ」

 

 それに、

 

「盾だって、今使っているドラゴンシールドの守備力+32と水鏡の盾の守備力の差は8ポイント。守備力は4ポイント毎にダメージが1ポイント減らせるのだから、実ダメージにして2ポイント差よ。しかもラダトーム北の洞窟で勇者の盾を手に入れれば不要になる」

 

 そして、

 

「兜ならオルテガの兜の守備力は+30でこれもミスリルヘルムとの差は同様の8ポイントで実ダメージにして2ポイント差よ。そのために18000ゴールドかける? ってお話で」

 

 ということ。

 

「まぁ、このドラクエの世界では不要になったアイテムは買値の75パーセントという高値で売れるんだから、25パーセントの差額ぐらいは次のアイテムを手に入れるまでの安全を確保する、そのための投資であり必要経費と割り切れるならそれでもいいんだけれど」

「ぐぅ……」

 

 そして小悪魔が下した決断は、

 

「うぐぐ…… 我慢。ここは我慢です」

 

 と断腸の思いで手に取って見ていた防具たちを戻す。

 一方、パチュリーはというと、

 

「じゃあ、せっかくだから私はこのミスリルヘルムを買うわね」

 

 と、小悪魔が諦めた、その中でもけた違いに高く一際コスパが悪い品にポンと手を出す!

 まぁ、商人のパチュリーにとっては最強の兜であり、金は余っているのだから買わない理由は無い。

 無いのだが!

 

(お金が無いのは悔しいよぉ、みじめだよぉ、イギギギギギ……)

 

 と血の涙を流さんばかりになる小悪魔。

 いや、

 

(お金はある、あるのだけれど!)

 

 あっても使えないのが、こんなに苦しいことだとは思わなかったっ!!

 

(どうしてっ!? 借金があるよりずっといいはずなのに、お金があるって幸せなことのはずなのに、どうしてこんなに心が痛いのっ!!)

 

 立ち尽くしたまま、心の中で絶叫する小悪魔。

 そんな使い魔を尻目に、パチュリーは今まで使っていた銀の髪飾りを売り払うと、さっさとミスリルヘルムを購入してしまう。

 神秘の金属であるミスリル銀で造られた高級兜。

 非力な魔法使いでも身に着けられるほど軽く、しかも頑丈な品。

 

「どうかしら、変じゃない?」

 

 と聞くパチュリーに、小悪魔は引き攣った笑みを返すしかない。

 その守備力は小悪魔がいつも被らされている不幸の兜より上。

 小悪魔が呪われ、運の良さをゼロにされることと引き換えに、解呪料を払って使い捨てにしている13ゴールドの兜とは比較にならない高級品。

 

「………」

 

 それを被ったパチュリーを死んだ目で見ている、見ていることしかできない小悪魔だった。

 これで二人の所持金は、

 

小悪魔:36915G

パチュリー:284752G

 

 これだけの高額商品を買ってもまったく揺るがないパチュリーの財力。

 いや、これなら使えるものがあれば全部買うだろう、という話だった……

 

 

 

 ラダトームから南進。

 途中、スライムやらスライムベスやらマドハンドやら地獄の騎士やらを蹴散らしながら岩山の洞窟を横目に見つつ、対岸にゾーマの城がある魔の島、その南部を望める半島の端まで進む。

 そして中断の書を利用したあなほりを始める。

 あなほりは連続で5回掘ったら終わりで、街やダンジョンに出入りする、階段を昇り降りしてフィールドを切り替えるなどしてカウントをリセットしなければならないのだが、スマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版ではフィールドのどこでもセーブできる『中断の書』が利用できる。

 これでセーブとロード、ゲーム的に言えば『タイトルに戻る』をして、それから再開すると、あなほりのカウントがリセットされてしまうのだ。

 カザーブから西に進んだ端、竜の女王の城周辺のモンスターが出るエリアがはみ出ている場所で諸刃の剣を掘るためにも使った技だが、そんなわけで掘り続けていると、

 

「世界樹の葉が出たわ」

「えっ?」

 

 そして開始11分で、

 

「雷神の剣が出たわね」

「はいーっ!?」

 

 そう、ここはゾーマの城がある魔の島、その南部の敵が現れる範囲が1マスだけ大陸側にはみ出ている場所なのだ。

 故にヒドラが1/256の確率でドロップする世界樹の葉が拾えたし、トロルキングが1/256の確率でドロップする雷神の剣が拾えたのだ。

 アレフガルドに降りたらすぐ、一番弱いラダトーム南西部の敵と3度戦っただけでたどり着けるこの場所で。

 わずか11分のあなほりで雷神の剣は拾うことができるのだ。

 

「欲しいって言ってたでしょう」

 

 雷神の剣をポン、と小悪魔に手渡すパチュリー。

 なお、その他にも1/512の確率で拾える所持金の半分のゴールドや、ドラゴンがドロップするスタミナの種が複数、手に入っていたりする。

 あなほりで参照されるこの場所の遭遇モンスターテーブルデータは、

 

『混成モンスター用(×5枠)』

00: ----------------

01: トロルキング

02: ヒドラ

03: マクロべータ

04: ドラゴン

 

『1体のみ+混成5種をお供にするモンスター用』

05: ----------------

 

『単一種出現モンスター用(×4枠)』

06: ----------------

07: トロルキング

08: ドラゴン

09: ヒドラ

 

『夜のみモンスター用』

10: ドラゴン

 

『1体のみ出現用』

11: マクロべータ

 

 となっている。

 まず雷神の剣のドロップだが、リメイクでは大魔神とトロルキングがどちらも同じ1/256の確率でドロップするのみになっており。

 大魔神はマドハンドに呼ばれるか、固定編成のモンスターパーティでしか出現しないため、あなほりでは狙うことができなくなっている。

 トロルキングについては、ラダトーム北の洞窟では、呪文が封じられるためあなほりができず。

 ゾーマの城1階、地下1階では、判定は1回だけ。

 2回判定があるのはここゾーマの城がある魔の島、その南部の敵が現れるエリアだけになっていた。

 

 そしてスタミナの種はというと、わらいぶくろとドラゴンがそれぞれ1/64の確率でドロップするのが一番確率が高いのだが、わらいぶくろはピラミッド1~2階で2回判定があるものの、1/16のドロップ確率を持つミイラ男が邪魔をする。

 それに対し、ここゾーマの城がある魔の島、その南部の敵が現れるエリアでは、アレフガルドは常時夜のため、ドラゴンのドロップ判定は一度に3回行われることに。

 実際、30分で9個、3分に1回程度のペースで掘ることができる。

 

 つまり中断セーブであなほりの回数がリセットできる機種限定とはいえ、雷神の剣、そしてスタミナの種を狙うならここがベストとなるのだ。

 そうでない場合は、どちらを狙うにしろゾーマの城1階、地下1階しかないが、こちらは雷神の剣のドロップ判定は1回だけ、ドラゴンのスタミナの種のドロップ判定も2回だけとなる。

 

「雷神の剣は攻撃力+95で勇者と戦士のみが装備できる武器」

 

 ファミコン版ではこの剣以上の攻撃力を持つ戦士が装備可能な武器はどれも呪われているため、これが実質戦士最強の武器となっていた。

 リメイクでは魔神の斧の攻撃力が+105まで引き上げられたし、バスタードソード、グリンガムのムチ、ゾーマ撃破後なら破壊の鉄球、ゲームボーイカラー版ならルビスの剣などが追加されたので最強とまではいかないが、それでもアレフガルドに降りた直後に使える武器としては十分強い。

 さらに、

 

「この武器の一番の強みは戦闘中に道具として使用するとベギラゴンの効果を引き出せることね」

 

 ベギラゴンは魔法使いと賢者がLv29で覚えるギラ系最上位の火炎呪文で敵1グループに88~111のダメージを与える。

 消費マジックパワー12ポイントのこれを使い放題にできるのだ。

 なお、

 

「雷の杖といい、何で雷なのに火炎呪文のギラ系なんですかね?」

 

 と首をひねる小悪魔だったが、

 

「そこは初期にはギラ系を雷撃呪文としていた弊害ね。そもそもドラゴンクエスト3でもファミコン版の取扱説明書では、まだ雷撃呪文として紹介されていたのよ」

 

 当時発売された攻略本や半年後に出た公式ガイドブックでは現在の呪文分類体系に切り替わってはいたのだが。

 そしてこの雷神の剣、

 

「お店に持って行くのはもったいないと思うけど…… 48750ゴールドで売れるわね」

 

 と、お値段もスペシャルである。

 つまり、

 

「え、ぁ……」

 

 小悪魔の顔が一気に青ざめる!

 そう、あなほりはパチュリー個人の収入であるため、雷神の剣を受取った小悪魔は、その売値の全額をパチュリーに払わなければならないのだ!

 つまり二人の所持金が、

 

小悪魔:-11713G

パチュリー:484627G(+未払い分11713G=496340G)

 

 こうなるということに!!

 あまりのショックに小悪魔は意識が、視界が、いや世界が、

 

 ぐにゃあ~

 

 と歪んでいくかのような錯覚を覚えた。

 

「そんなっ…!

 バカなっ…!  バカなっ…!

 常識外なっ…!  ありえないっ…!

 どうして…!  こんなことがっ…!

 どうして……  こんな…

 あってはならない……!  常識的に……!

 どうして…  こんな…

 こんな…

 こ ん な こ と が っ … … !」

 

 そう、慟哭する小悪魔だったが……

 

(実際には全然ひどくない。逆にとってもお得なお話なのだけれど……)

 

 とパチュリー。

 売却価格で譲っているのだから、もっと有利な装備、例えば王者の剣が手に入ったら売ってしまえばいいのだ。

 そうすれば払ったゴールドはそのままそっくり返って来るのでまったく損をしない。

 つまり小悪魔は雷神の剣という強力な武器をアレフガルドに降りた直後の早い時期からタダで好きなだけの間、レンタルさせてもらっているようなものなのだ。

 こんなお得なサービスは無い。

 商人が居るからこそ受けられる恩恵なのだが、多額の借金(実際には全額返って来るただの保証金、しかも不足分はパチュリーが負担してくれて、それに対し利子もつかないという考えられないほどの好待遇)の与える精神的衝撃で小悪魔はそこに気付いていない。

 

 借金がある間は新たな装備を買えないという問題はあるが、光の鎧に勇者の盾といった勇者専用品やグリンガムのムチなどといったパチュリーが使えない装備が手に入ったら借金の有無に関係せず、自動的に小悪魔が使うことになるのだから問題は少ない。

 そもそも雷神の剣を使っているより有利というアイテムを買いたければ、その時点で雷神の剣を売ればいいのだし、そこは小悪魔の判断で自由にできるのだから。

 

 それに今負っている借金程度なら、すぐ近くに在る岩山の洞窟に潜って売却価格33750ゴールドの破壊の剣を取ってくれば完済できるものであるし。

 

(まぁ、教えてなんてあげないのだけれど)

 

 最近、調子に乗りすぎているから、少しお灸をすえてやる必要があるのだ。

 ……とはいえ、小悪魔が勝手に思い込みで凹んでいるだけで、実際にはメリットがある非常に好条件な話というところがパチュリーの優しさ、使い魔に対する分かりづらい愛情を示しているのだが。

 そういう風に甘いからダメなんじゃないんですかね、という話もあるのだが。

 

「それじゃあ、マッサージしてもらおうかしら。真面目にね」

 

 あなほりで入手したスタミナの種を使って体力を上げることにするパチュリー。

 

「はい……」

 

 と多額の借金を背負った小悪魔はさすがに真面目にマッサージに励むのだった。




 お金に対するお話って難しいですよね。
 どうしても感情による補正が入るのか、有利な提案であっても、ちょっと込み入った話になると、
「上手いこと言って騙そうとしているんだろ!」
 って思われちゃいますからね。
 まぁ、私も本社の経理の方々に色々教えていただくまでは「借金はしない方がいい」「どんなものでも借金は早く返した方がいい」みたいな感覚しか持ってませんでしたから、それも分かるんですが。

 次回はドムドーラへ。
 水着装備がとうとう手に入る予定です。

 ご意見、ご感想、リクエスト等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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