こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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マイラへ

「ふぅ……」

 

 というわけで、

 

「まぁ、どうせこの魔法のビキニは使おうと思っていたものだし」

 

 魔法のビキニを着たパチュリーだったが、

 

「……水着ってゲームだとグラフィックが色々とアレなのよね」

 

 ファミコン版ではどんな職業でも水着を着たらグラフィックが共通のハイレグ水着姿でウィンクし続ける紫髪の女性に変わっていた。

 一方スーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版では、職業ごとに様々なグラフィックを見せてくれた。

 商人は浮き輪片手の紺のスクール水着、遊び人は黒いスリングショットに目元を覆う仮面、さらに鞭を持っている「それ水着と違う、女王様」という格好、などなど。

 そして携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版では容量削減のためか、またファミコン版同様、共通のグラフィックになったわけではあるが、問題は、

 

「このグラフィックの首から上は、女商人のものなのじゃあああーーーあああ!!」ガァーン!!

 

 というわけで、商人以外にこれを着せると、見た目パーティに女商人が増える。

 一応、髪の色を赤く変えたとされていたが、商人のピンクとの差は微妙なうえ、キャラによって商人のピンクそのままだったりする。

 つまり厳密に言えば同じデザインだが色違いで赤髪とピンク髪の2種類のグラフィックが用意されているということ。

 そして勇者は商人と同じピンク髪のままのものになっているので着せるとゾーマ討伐前、ロトの称号を得て勇者をパーティから外せるようになる前なのに、パーティに勇者が居ない、みたいな絵面になる。

 パーティの2番手、3番手に居ると手前に居るキャラの頭で身体が隠れるし、横から見ると水着を着ていると見分けにくい、ということもあってなおさら。

 

「なんでこんな仕様にした! 言え!」

 

 という話。

 おそらく、

 

容量節約のためグラフィックを1種類に → 自主規制で一番露出度の低い商人をベースにすることに決める → 自主規制って、よく考えたらスクール水着はヤベーだろ、と後になって気付き、慌てて修正 → 頭部デザインを変更する時間が無くなる →「商人って一番の不人気職だし、水着が手に入れられるような段階では誰も使っていないだろうし」「そもそも公式イラストのパイナップルみたいに頭のてっぺんで束ねた髪型がイメージとして定着してるけど、リメイクのグラフィックは普通にポニーテイルだから。使ってない人には気付かれもしないって」などと自分たちに言い聞かせつつ、そのままリリース。

 

 というような経緯でもあったりするのだろう。

 

「でも商人がどうこうっていう話以前に、他のキャラからの変わりようは……」

 

 眉をひそめるパチュリーに、小悪魔は、

 

「元よりピンク髪の商人は現実にもストロベリーブロンドって呼ばれる天然のピンクの髪が存在しますからともかく、清楚系の僧侶、賢者なんかが髪を染めて水着姿になってしまうのは、アレですね。エッチなマンガやゲームにもありがちな、ひと夏の経験を経てギャル化してしまったクラスメイト、みたいな感じですかね」

 

 と例えるが、

 

「あなたが何を言っているのか分からないわ」

 

 もちろんパチュリーには通じない。

 まぁ、そんなゲーム上のグラフィックはともかく、パチュリーは、

 

「守備力+65って、どんなビキニなのかしら? 私が今まで着ていた魔法の前掛けでも+45、というか、今あなたが着ている刃の鎧でも+55でしょう?」

 

 と首を傾げる。

 スーパーファミコン版の公式ガイドブックでは魔法の力を込めた布地で作られたビキニ、ゲームボーイカラー版の公式ガイドブックではむっつりスケベな魔法使いが可愛い弟子に着せようと作り出したもの、とされていたが。

 まぁ、ゲームボーイカラー版と違って他のバージョンでは魔法への耐性が付いていないので、

 

「魔法の前掛けの下に身に付けて、いざとなったら前掛けを外して切り替えるということで」

「脱げば脱ぐほど強くなる?」

「何よそれ。まぁそのとおりの状況になってしまうんだけど」

 

 肌が露出しているほど効率よく気を放出できるので、衣服を脱げば脱ぐほど強くなるという一子相伝の暗殺拳『裸神活殺拳』……

 何故小悪魔が知っているかは置いておいて、そういう効力のあるビキニなのかも知れない。

 しかし、

 

(エプロンの下にビキニ…… ちょっと見は裸エプロンってやつですねっ!)

 

 などと密かに盛り上がる小悪魔だったが、パチュリーは魔法の前掛けと普段着の下に、魔法のビキニを装備する。

 下着の代わりに身に着けているだけなので、小悪魔の期待していたようなことにはならない。

 故に小悪魔は、

 

「ビキニの上に、直接前掛けを着た方が、外しやすくないですか?」

 

 と食い下がるが、

 

「そんな恰好、いくら何でも恥ずかしすぎるわよ!」

 

 と、パチュリーは拒絶するのだった。

 

 

 

「それじゃあ、出るわよ」

 

 ラダトームの西から船で出港。

 マイラの村は大陸沿いに北の海をぐるりと回って行かないといけないため、長距離の航海となる。

 マリンスライム、しびれクラゲなどといった海のザコモンスターを蹴散らし、二人はまずはガライの家へ。

 

「初代ドラクエではガライが造ったと言われるガライの街のあった場所ね」

 

 今は一軒家が建っているのみで、そこが吟遊詩人ガライの実家である。

 あいにくガライは留守というか母親からは、

 

「歌を歌いながら旅をすると家を出たまま戻って来ませんの」

 

 と言われており、

 

「放蕩息子扱いされてますね」

「まぁ、実際、ゾーマ討伐後にメルキドに居るガライに話しかけると「やあ、僕ですガライです。いつまでもぶらぶらできないし家に帰ることにしました!」とか言い出すし、間違っていないんじゃ」

 

 そんな風であった。

 一方、父親からは、

 

「銀の竪琴なら息子のガライが持っていたと思うが……」

 

 という話を聞ける。

 部屋のタンスからはモヒカンの毛と小さなメダルが手に入る。

 地下には宝箱があったが、

 

「空?」

 

 しかし、

 

「何かありますよ、パチュリー様」

 

 小悪魔が宝箱の側の床に落ちている銀の竪琴を見つけ拾う。

 

「ファミコン版だと宝箱の中に入っていたものだけれど」

「何でこんな……」

「ガライは留守で、銀の竪琴は彼が持っているって話が聞けたでしょう?」

「はい」

「ドムドーラの街で話があったようにガライはメルキドに居るのだけれど、彼は竪琴は実家に置いて来たと言う。でも実家に行っても宝箱は空」

 

 これでプレイヤーは悩むことになる。

 

「おそらくドラクエ2の王子たちの行き違いイベントのように、行ったり来たりさせるつもりだったんじゃない?」

 

 小悪魔が気付けたように、スマホ版ではアイテムが隠されている場所に行くとエクスクラメーションマーク、俗に言うビックリマークが出て知らせてくれる親切仕様となっているのだが、スーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版では盗賊のレミラーマを使うか、床を一歩一歩調べていかないと分からなかったのだし。

 さらに言えば、

 

「このガライの家はルーラに登録されないから、船か歩きでしか来れないし」

「スタッフ、性格悪過ぎですね……」

 

 それで、この銀の竪琴だが、

 

「魔物たちはこの竪琴の音がとっても好きなようね」

 

 という具合に、

 

「奏でると魔物を引き寄せてしまうという曰く付きの品ね。経験値稼ぎにも使えるけど……」

「けど?」

「ゲームだと使うたびに曲が流れるから、今一つ使い勝手が…… それよりなら山地を歩いたり、ファミコン版なら黄金の爪を使ったりした方が早いし、曲が多少短くなったリメイクならリメイクで、同じ効果を持つ遊び人の特技『くちぶえ』の方がいいから」

 

 ということ。

 

「まぁ、ふくろに入れて置きましょうか」

 

 ファミコン版では7ゴールドで売れたが、リメイクでは売却不可になっていることだし。

 

「それにしても、何で魔物を惹き寄せるんですかね」

「戦闘中に使うと「○○は よろこんでいる。」って表示される、これはゾーマですら喜ぶものなのだけれど」

 

 だからといって攻撃は止めないし、さらに言えばファミコン版ではゾーマ戦で使うとBGMが通常戦闘のものになってしまうというバグがあった。

 このバグは妖精の笛でも起こるものだが……

 それはさておき小悪魔は、

 

「ガライさんの実家にはモヒカンの毛がありましたね。つまりガライさんはパンク系の歌い手で、この銀の竪琴もパンクギターに相当する楽器」

 

 と考察する。

 

「パンク・ロックというと『不満!』『怒り!』『反抗!』『暴力!』みたいな? まぁ、そればっかりじゃありませんが、魔物は好みそうですよね」

 

 ということだったが、

 

「惜しいわね」

 

 とパチュリー。

 

「はい?」

「モヒカンの毛は両親が居る部屋のタンスにあった、ということはパンクスなのは父親で、ガライはそれに反発して出て行ったメタルキッズだったというのが定説よ。実際、ガライが泊まっているメルキドの宿の部屋のタンスからはヘビメタリングが見つかるしね」

 

 という話。

 

「これはエモーショナル系のクライム系のさらにデス系……」

「何て?」

「「高貴なる俺様の怒りは今や海綿体を沸騰させるデスメタル!!!!」ってやつですね!」

「は?」

「『血!』『毒!』『終焉!』『死!』『悪魔!』『ナイフ!』『破滅!』『左回りの時計!』『溺れる魚!』みたいな。だから魔物に好まれるんですね」

 

 などと語る小悪魔だったが、もちろんパチュリーには、

 

「ごめん、何一つわからないわ」

 

 ということだった。

 ガライの家を出て、船で東に向かう。

 そして、

 

「マーマンの群れです! 初めて見る色ですね」

「最上位種のキングマーマンね」

 

 キングマーマン3体の群れと遭遇。

 

「1/4の確率でヒャダルコを使って来るから防具は魔法防御優先で。あなたは魔封じの杖で魔法を封じて」

 

 と指示を出すパチュリー。

 小悪魔は魔法の鎧に魔法の盾。

 パチュリーは魔法の前掛けに魔法の盾装備である。

 

「くぅ…… 物理攻撃のみのイカさんなら、パチュリー様の脱ぎが見れたのにっ!」

 

 悔しがる小悪魔は放って置いて、パチュリーは、

 

「私は……」

 

 正義のそろばんで1体を倒そうとするが、

 

「倒しきれない? 最大ヒットポイント120、守備力85程度なら一撃のはずなんだけれど」

 

 パチュリーの攻撃力は既に300に迫るところまで来ているが、攻撃力が上がると与えるダメージ幅も50ポイント以上に広がり、平均ダメージが出ていれば余裕で倒せる相手でも、リアルラックが足りないと低ダメージが出て倒し損ねる場合がある。

 

 小悪魔は魔封じの杖を振りかざした。

 キングマーマンはマホトーンに対し弱耐性、7割の確率で効いてくれる。

 そして呪文を封じられたキングマーマンは判断値が2、つまり賢くターン中、自分に行動順が回って来た段階で行動を決めるため、無駄行動をせず物理で、尾でビタンとばかりに薙ぎ払って来る。

 しかし、

 

「今さら125ポイント程度の攻撃力では!」

 

 とパチュリーが言うとおり、痛くない。

 次のターンは、

 

 小悪魔は雷神の剣を振りかざした!

 轟く雷鳴が空気を引き裂く!

 

 キングマーマンは海、水系のモンスターらしく氷結呪文、ヒャド系には強耐性を持つが、炎、そして風のバギ系には弱耐性しか持たない。

 ゆえに、雷神の剣のベギラゴンの効果でダメージを与えたところに、パチュリーが炎のブーメランで止めを刺す。

 

「極楽鳥を呼んで回復もする相手だったけれども、結局使わなかったわね」

 

 極楽鳥は2回行動で仲間1グループのヒットポイントを75~94回復させるベホマラーを使い、すかさず逃げるというモンスター。

 つまりキングマーマンは1ターン遅れのベホマラーを使う相手だったが、特にこれが優先行動に指定されておらず、単に1/4の確率で行うだけだったので使用されなかった。

 

「ヒャダルコも使われなかったし、拍子抜けですね」

 

 と、小悪魔も言うが。

 

「まぁ、軽く見て侮ると思わぬ被害を受ける、そこそこ強い相手だけれども、クラーゴンが出現する海域ではやっぱり見劣りするものね」

 

 ということ。

 1/64の確率で魔法のビキニを落とすので、ドロップでしか得られないファミコン版では女武闘家の最強装備となるこれを得るために乱獲されていたりする。

 リメイクではイベントで一着もらえるし、光のドレスなどもっと強力な防具が追加されたので、積極的にドロップを狙うほどのものでも無くなっているが、それでも今の小悪魔が着ている刃の鎧より10ポイントも守備力が高いので、得られるなら活用できるものではあったが。

 

 そしてさらに進むと、

 

「島に塔が建っていますね」

「あれがルビスの塔よ」

 

 最短距離である島の北側から上陸し、ルビスの塔でエンカウントキャンセル、せっかくなので5回だけあなほりをする。

 さらに船に戻り、南下して島の東から上陸しもう一度ルビスの塔でエンカウントキャンセルするが、そのついでのあなほりで、

 

「あら、誘惑の剣が出たわ」

「はぁっ!?」

 

 運命の悪戯か、たったのそれだけでサタンパピーが1/256の確率でドロップする誘惑の剣を掘り出す。

 

 そしてマイラの村のある大陸に、山地を避けて上陸。

 

「……イカが1回も出ないというか、海でのエンカウントが2回だけ?」

 

 それはまぁ、ガライの家とルビスの塔でエンカウントキャンセルを行ったが。

 たった2回の戦闘だけで終わるとは、

 

「スーパーファミコン版に比べても、難易度が下がっているのかしら?」

 

 ということ。

 普通ならイカ、クラーゴンとの連戦によるザラキ、ザキと治療魔法の連発で僧侶、賢者のマジックパワーが枯渇しかねない航路なのだが。

 思い起こせば、同様に激戦を予想して突入をした、いざないの洞窟があっさりと抜けられたり。

 暴れザルを警戒して、しかし遭遇せずに着いたアッサラームへの道行きなどと同様、スマホ版を元にして構築されたこの世界、肩透かしもいいところなことが多い。

 リアルラック故か、本当に難易度が下がっているのかは判別がつかなかったが。

 さらにマイラまでの陸路も、

 

「マドハンドですか」

「同時最大登場数の7体とはいえ……」

 

 マドハンド絶対殺す剣、小悪魔の雷神の剣が繰り出すベギラゴンの効果で一掃される。

 

「たったこれだけで、一人2520ポイントの経験値は美味しいんでしょうけど」

 

 しかし、あっけなさ過ぎる。

 そして森に囲まれたマイラの村へ到着である。

 

「温泉ですよ、パチュリー様!」

「目的が違っているわよ」

 

 この村は温泉があることで有名なのだ。

 真っ先に温泉に向かうが、

 

「おじいさんが入っているわね、さすがに混浴は……」

 

 と、パチュリー。

 ドラクエ3では入り口のお姉さんが、

 

「ここはろてんぶろでございまーす」

 

 と言っているだけで効能については言及されていないが、初代ドラクエではリュウマチに効くとされていたもの。

 泉質に変化が無いとすれば、それは老人に人気が出るだろうというものだったが。

 

「大丈夫、パチュリー様は水着、着てるじゃないですか」

 

 温泉というと日本人はタオルを湯船につけず全裸で入浴するが、世界を見れば水着を着用して男女の別なく楽しむという文化が一般的である。

 しかし、

 

「あなたの分が無いじゃない」

 

 と答えるパチュリーに、

 

「私? い、一緒に入ってくれるんですか?」

「あなたを放って置いて一人でというのじゃ、楽しめないじゃない?」

 

 そう、(エロの)使い魔である自分に対し、何を言っているんだとばかりに、自然に答えてくれる。

 そんな主人の態度に小悪魔は感動し、

 

「私なら全裸でも構いません!」

 

 と言い募るが、

 

「少しは公衆道徳というものをわきまえなさい、この痴女っ!!」

 

 と、パチュリーに却下されたりする。

 その温泉の湯船の入り口には、小さなメダルが。

 また、ドムドーラの街に居たエルフから聞いたとおり、南に10歩の場所には妖精の笛が埋まっていた。

 この村に居る戦士と荒くれ男からは、

 

「うわさでは精霊ルビスさまは、西の島の塔の中にふうじこまれているそうだ」

「もし妖精の笛があれば石像にされたルビスさまの呪いを解けるはずなのに……」

 

 という話を聞くことができるように、キーアイテムとなっている。

 

 他に、井戸の中から小さなメダル。

 奥の森から不思議な木の実を拾うが、

 

「おばあさんが居ますね」

「話を聞いてみましょうか」

 

 と近づく二人だったが、

 

「アヒィッ!? ここ、毒の沼地?」

 

 アレフガルドは常に夜、しかも暗い森の中だったので小悪魔は見落としたが、老婆は毒の沼地の奥に居るので、

 

「ひいぃぃぃぃ~っ」

 

 小悪魔は悲鳴を上げ、ダメージにのたうつ。

 老婆からは、

 

「神は光。魔王は暗闇。

 神と魔王は遠い昔から戦い続けてきた、二つの力の源。

 もし光の玉があれば、魔王の魔力を弱めることができようぞ」

 

 と、竜の女王からもらった光の玉の使い道を教わることができた。

 他に村人から、

 

「その昔、王者の剣は魔王によりこなごなにくだかれたとききます。

 しかしその魔王ですら、王者の剣をくだいてしまうのに3年の年月を要したとか。

 いやはや、すごい剣もあったもんですね」

 

 という話を聞くことができるが、

 

「んふっ」

 

 思わず吹き出しそうになり、こらえるパチュリー。

 

「今の話のどこに笑いのツボが? いえいえ、そんなことよりパチュリー様っ! 王者の剣が壊されてしまったって」

「そうね、他の人からも話を聞いてみましょう」

 

 村の建物の一室にはジパング風の服を着た女性が居て、

 

「やまたのおろちという、化け物のいけにえにされそうになった時、私たちは逃げ出しました。そしてこの世界に迷い込んだのです。私の夫はジパングで刀鍛冶をしてましたのよ」

 

 と話してくれる。

 

「おおー、ジパングからここまで来た人が居るんですね」

 

 感心する小悪魔。

 しかし、その夫の姿は見えず、この部屋のタンスからは布の服が手に入るのみだった。

 他の村に居る人々からは、

 

「うわさでは、王者の剣はオリハルコンというもので、できていたそうです」

「道具屋のご主人はとても器用なひとですわ。そのままでは役に立たないものでも買いとって細工をして売り出したりするのですよ」

 

 という話が聞けて、

 

「んん? もしかして……」

 

 と考え込む小悪魔だったが、

 

「まいった! カンダタとかいう男に王者の剣だとだまされて、ただのはがねの剣を買ってしまったのだ」

 

 と嘆く商人に、

 

「もしかして、ゾーマが砕いたのはニセモノだったオチとか?」

「そっちの方向に行っちゃうわけ?」

 

 と、パチュリーは呆れるが、

 

「だってラスボスを倒すのに必要だっていうアイテムが壊されちゃったらお話にならないですよね?」

「まぁ、それもそうだけれど」

 

 仕方がないな、と、

 

「ジパングから来たっていう道具屋のだんななら、この上に居ますよ」

 

 という青年の言葉に従って、階段を昇る。

 

「ああ、なるほど、ジパングの人ですね」

 

 と小悪魔が言うとおり、カウンターにはジパングの装束に身を包んだ男性が座っていた。

 壁にかかった袋からは小さなメダルが手に入り、また売り物の中には、

 

「スライムピアスが売られているわね」

 

 商人に鑑定させると、

 

「小さなスライムが身に着けている人の寂しさを誘うみたい」

 

 とコメントされるように性格を『さびしがりや』にするというもの。

 

「『さびしがりや』は成長補正に見るものが無いし、他に能力値に補正が付くわけでも無いし」

 

 というわけで買う意味は無い。

 ドラクエ6で登場して、それ以降のシリーズ作やリメイクで登場しているアイテムなのだが、

 

「他の作品だと、そこそこ使える効果を持っているものもあるのだけれど」

 

 それに、

 

「アイテムとしては登場しないけれど、ドラクエ4のイラストでは勇者が身に着けていたものだしね」

 

 その流れかドラクエ3の公式ガイドブックでも女勇者が身に着けているイラストが掲載されていたが、

 

「つまりドラクエ4の勇者は『さびしがりや』?」

「アクセサリーの効果でそう見えるから、仲間である導かれし者たちが集まって力を貸してくれる、ということなのかもね」

 

 そういうことなのかもしれない。

 

「ともかく、不用品を売り払っておきましょうか」

 

 ということでドムドーラやマイラで手に入った不用品を売り払って行くが、

 

「オリハルコンが22500ゴールドで売れるわね」

「はいぃぃぃっ!?」

 

 値段が付けられない、売れないはずのオリハルコンを超高額で買い取ってくれるという。

 

「こ、これさえ売れれば借金が無くなりますっ!」

 

 と興奮する小悪魔。

 

「それじゃあ、売ってしまうわね」

 

 そういうわけで二人の所持金は前回精算時の、

 

小悪魔:-11713G

パチュリー:484627G(+未払い分11713G=496340G)

 

 から、

 

小悪魔:925G

パチュリー:508979G

 

 となった。

 

「あとは、小さなメダルが貯まったから」

 

 小悪魔のルーラでアリアハンに跳び、メダルおじさんから小さなメダル85枚で得られるドラゴンローブを手に入れる。

 

「ドラゴンローブは僧侶、賢者、魔法使いが身に着けられる守備力+80の防具で、ブレスのダメージを2/3に軽減する耐性を持っているわ」

「凄いですね」

「これ以上の守備力を持つのは勇者の光の鎧か、女性だけが身に着けられる神秘のビキニか光のドレスのみよ。ただ……」

「ただ?」

「魔法使い、賢者なら守備力が+50まで下がるとはいえ、ブレスだけでなく呪文にも同時に耐性を持った水の羽衣があるわ」

「ああ……」

 

 水の羽衣を着ることができない僧侶には有用だし、特に男性なら最強防具と呼んでいいのだろうが、男性僧侶は人気が無い上、僧侶という職業自体が賢者の完全下位互換のためこの時点で連れていることは少ないのだし。

 

「それにドラゴンローブはスーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版なら、マイラのすごろく場にあるよろず屋マスで27000Gで買えるものなのだけれど」

「たっか……」

「そこ、ゴールの景品が光のドレスなのよね」

「それは……」

「光のドレスはクリアー後にしんりゅうを規定ターン以内に倒したら開いてもらえるジパングにあるよろず屋マスで、19000Gで買えるものだし」

「うーん、そう聞いて買うか買わないかで言うと、買いませんね」

 

 ということ。

 

「ただ、スマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版ではすごろく場が無くなったせいで、小さなメダルの景品としてもらえるだけの一品ものになった上、光のドレスもやはり一着しか手に入らなくなったから」

「それなら出番はありそうですね」

 

 色々と不満が出ているスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版だったが、最強装備を量産できないことがゲームバランスと攻略法を変化させており、それはそれで面白いものになっているのだった。

 ともあれ、パチュリーたちには使えない装備なので、

 

「お店に持って行くのはもったいないと思うけど…… 20250ゴールドで売れるわね」

 

 ということで売ることにする。

 結果、

 

小悪魔:11050G

パチュリー:519104G

 

 となるが、

 

「そういえば、私があなほりで得た誘惑の剣を使うとなると売却価格7350ゴールドを私に払ってもらわないといけないのだけれど」

「あ……」

「それとも保留にする? それはそれで、使い捨ての毒蛾の粉を使い続けることになるけど」

「う、うう……」

 

 迷う小悪魔。

 

「まぁ、今残っている毒蛾の粉は全部あなたのものだから、それを売り払えば支出も抑えられるでしょうけどね」

「それです!」

 

 パチュリーの提案に飛びつく小悪魔。

 そうして何とか誘惑の剣を手に入れたのだったが、

 

「それじゃあ、マイラの村に行きましょう」

 

 もう一度小悪魔のルーラでマイラの村へと跳ぶ。

 

「今度は武器屋ね」

 

 マイラの武器店では、ゾンビキラー、ウォーハンマー、パワーナックル、刃の鎧、水の羽衣、水鏡の盾、賢者の杖が売られている。

 

「上の世界でも一つだけ手に入れられた刃の鎧だけれど、マイラでは6500ゴールドで売られているわ。パーティに戦士が居て攻略にこの鎧の反射ダメージを当てにしている場合はここで買うのが手ね」

 

 RTAや低レベルクリアなどでも貴重なダメージソースとして活用されるし、メタル系に対しダメージを積むのにも有効であることだし。

 

「水の羽衣は……」

「透け透けです!」

「………」

 

 叫ぶ小悪魔を、生暖かい目で見るパチュリー。

 ファンには小悪魔の言うようなイメージで認識されている、ドラクエ2の公式ガイドブックに掲載されたムーンブルクの王女が着たイラストからセクシー系の防具とされ、プレイヤーの少年少女たちを魅了してきた防具だったが……

 少なくともリメイク版ドラクエ4のトルネコの鑑定だと、水と言っても透けているわけではないとされていたし、そもそも初登場したドラクエ2以降、全作品に出ているものだが、透けている公式イラストも、ゲーム中のグラフィックも存在しない。

 前述の公式ガイドブックのイラストも、当然透けたりはしていない。

 

 さらに言えば、水の羽衣は2で初登場した当時から別に女性専用というものではなかった。

 ファミコン版なら裏技で2着作ってサマルトリアの王子に着せたり、3の男魔法使いや4のブライなどといったお爺さんキャラたちの最強装備だったりもするし。

 

 ただまぁ、小悪魔が考えているような思い込み、というか夢を、わざわざ打ち砕いたりするのも無粋だと、パチュリーは思うのだ。

 世の中には正しくても役に立たない、いや、逆に害になる情報だってある。

 それをただ正しいからといって押し付けるのは視野の狭い、思慮の足りない者がやることだと、パチュリーは知っている。

 ゆえにパチュリーは小悪魔の叫びに特にコメントはせずに、

 

「魔法使いと、リメイクでは賢者も着られるようになった防具で守備力+50、ブレス、呪文のダメージを共に2/3まで減らせるという耐性が優秀な逸品よ」

 

 と、性能面についてだけ言及する。

 

「リメイクでは?」

「そう、ファミコン版では魔法使い専用防具だったの。もちろん光のドレスなんて無くて、賢者、僧侶は魔法の鎧が最高のものだったから、この耐性の優秀さで賢者ではなく魔法使いを選ぶプレイヤーも居たというくらいよ」

 

 ファミコン版においてはゾーマの吹雪に耐性を持てるのは、これの他には勇者の光の鎧、勇者の盾しか無かったのだし。

 また、リメイク以降に話を戻せば、

 

「お値段も12500ゴールド、ドラゴンローブの27000ゴールドに比べれば半分以下のお手ごろ価格だし」

「確かに。これがマイラで買えるなら、ドラゴンローブはよほどお金が余っていないと買いませんよね」

 

 ということ。

 

「賢者の杖は攻撃力+50、魔法使い、僧侶、賢者が使える武器だけれど、この杖の真価は戦闘中に道具として使うとベホイミの効果が得られるということ」

 

 道具使用だけなら誰にでも使えるものであるし。

 そんなわけで、当然パチュリーは買う。

 小悪魔は物欲しそうにそれを見るが、

 

「回復呪文が使えるあなたには、あまり必要無いでしょう?」

 

 首を傾げるパチュリー。

 薬草をふくろに99個まで入れられるリメイクでは、通常の回復はそれで間に合うし。

 賢者の杖も、戦闘中に緊急回復するためにしか使われないだろうし。

 しかし小悪魔は、

 

「ところでパチュリー様、賢者の杖って鳥の頭に似てますよね」

 

 と言う。

 T字になっている上端は、平たい方と尖った方があって、宝玉が埋め込まれている。

 宝玉を目、尖っている方をくちばしと見ると、まぁ、鳥の頭に見えるかもしれない。

 

「ドラクエ3で回復と言えば、ホイミスライム系統。エニックスが出版した書籍『ドラゴンクエスト アイテム物語』では、回復アイテム『賢者の石』にはホイミスライムが多数封じ込められているとされていましたし」

「そうね」

「他に回復というと、シャーマン系や魔女、魔法使い系などの術師系……」

「それから極楽鳥、鳳凰かしら」

「そう、それです。つまり賢者の杖は、極楽鳥の力を模倣したもの。ゆえに鳥の頭、そしてくちばしを模した形状をしているという説があるんです」

 

 こじつけに近いが、それでも、

 

「類感呪術、類似したもの同士は互いに影響しあうという『類似の法則』に則った呪術ね」

 

 という具合に魔術的視点に立ってみれば十分、理にかなっている。

 原初的な、それだけに強い効果を発揮する魔術だ。

 

「でもさすがにグループ全体を癒すベホマラーは無理で、効果は単体対象のベホイミのみ。そして呪文を唱えるくちばしを模したピック部分を対象の身体に突き立て、体内に直接治癒の力を流し込む必要がある」

「は?」

 

 確かにドラゴンクエストのライバル、ファイナルファンタジーシリーズなどでは攻撃した相手を回復させる武器が登場したりするが。

 

「大丈夫、先端が刺さってできる傷も即座に癒されますから痛みは一瞬。処女喪失(ロストバージン)ほどで、耐えられないものではないという……」

 

 小悪魔の口が三日月形に吊り上がる。

 

「つまり、パチュリー様が私にその杖を使って下さる度に、私は何度でもパチュリー様に処女を奪われる痛みを感じられる」

 

 ドスッ

「あひっ!!」

 胸に、

 

 ザシュッ

「あぁぁんんっ!」

 お腹に、

 

「突き立てられる場所すべてで、初めての痛みを奪って頂ける」

 

 ドシュッ

「んぐうぅっ!」

 背に、

 

 ズシュッ

「はぁううんっ!」

 太ももに、

 

「そうして、その痛みの後に癒されることで、身体の中から強制的に気持ちよくさせられる」

 

 ドスッ

「はあぁあぁぁんっ!!」

 腕に、

 

 ズシュッ

「あはうぅぅんんっ!!」

 尻に、

 

 ザシュッ

「はぁあぁんっ!」

 脇腹に、

 

 極楽鳥、モンスターのクチバシに模した杖の先で身体をついばまれるたびに、嬌声にも似た悲鳴がほとばしる。

 そんな未来を幻視する小悪魔。

 しかし、

 

「でも…… 攻撃力が高いパチュリー様より、サポートに回る頻度の高い私が使った方がいいでしょうか? そうしたらパチュリー様の初めての痛みを私の手で与えてあげられます。何度も、何度も……」

 

 と、陶酔した瞳を向ける小悪魔に、

 

「……それが本当だとしても、買うお金がないでしょう、あなた」

「うわ、一瞬で現実に引き戻されました!?」

 

 まるで頭をぶん殴られたかのような衝撃を受け、妄想の世界から素に戻される小悪魔。

 そして、

 

「あなたにはもっと現実を自覚してもらうわね」

 

 とパチュリーに引き連れられ、道具屋に向かう。

 

「ほら」

 

 と小悪魔が見せられたものは、

 

「お、王者の剣、35000ゴールド!?」

 

 売りに出されている勇者の最強剣!

 

「ど、どういう……」

「このお店の主人がジパングの刀鍛冶だったという話、そして王者の剣がオリハルコン製だっていう話は聞いていたでしょう?」

「あ……」

 

 つまり、この店の主人にオリハルコンを売り渡すと、それで王者の剣を造って売ってくれるのだ。

 

「ふふふっ、ゾーマも3年かけて砕いた努力を、こんな短時間で意味のなかったことにされるなんて思わなかったでしょうね」

 

 そう笑うパチュリーだったが、

 

「お、お金が…… 買うためのお金がありません」

 

 がっくりと膝をつく小悪魔だった。




 妄想に浸る小悪魔に現実をわからせする優しいパチュリー様でした。
 以前のお話にもありましたが、

「王者の剣が手に入るなら、雷神の剣を売ってしまっていいでしょう?」

 ということなのですが、小悪魔はそれができず、

 目だよ目!!
 目!!
 この目ッ
 目!!
 雷神の剣を握りしめながら王者の剣を手に入れることを考えているこの目!!

 二つともか!? 二つとも今ほしいのか? 二つ…… イヤしんぼめ!!

 となりますので次回は初代ドラクエでも金策のために活用された伝統のあの場所で、資金稼ぎをする予定です。

 ご意見、ご感想、リクエスト等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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