こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

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精霊のほこらへ 自称『すべてを司る者(笑)』の正体

「二人に所有権のある祈りの指輪、地獄の鎧、破壊の剣を私が買い取ると、それぞれの売値の半額があなたに支払われるわ」

 

 祈りの指輪の売却価格が1875ゴールド、地獄の鎧が5250ゴールド、破壊の剣が33750ゴールドであるから、その合計の半額、20437ゴールドが小悪魔に渡される。

 

「それに元からの所持金と、前回精算時以降にあった収入を足すわけだけれど」

「足りません……」

 

 35000ゴールドの王者の剣の代金には、これでも足りない。

 

「あとは眠りの杖を質に融資を受ける?」

「眠りの杖を?」

「ええ、精霊ルビスを解き放つためのキーアイテム、妖精の笛は戦闘中に使うと眠りの杖と同じくラリホーの効果を持つから」

「代わりに使える? いえ、それならなぜ質に出す必要が? 普通に売ればいいんじゃ……」

「妖精の笛は使用時に結構長い曲がかかるから、使うたびに一々それを聞くのはね」

 

 ゲームボーイカラー版なら曲が流れないので問題なく使うことができるのだが。

 

「だから質に入れての短期間の融資にするわけ。お金を作ったら質請け、借入金を弁済して取り戻してちょうだい」

 

 質入れと言うとあまり良い印象は無いだろうが、パチュリーは期限を設けることも利子を付けることもなく融通しているので、これは破格の優遇だったりする。

 報酬の公平配分による勇者と商人の比較検証を行っているので、こういう理由付けも無しに小悪魔に資金提供するわけにはいかない。

 そのための処置だ。

 

 そして良い印象が無いと言えば…… そもそも、パチュリーのせいで小悪魔が貧乏になっているわけではないのだが。

 あなほりは面倒だから使わない、または商人は役立たずだから使わない、というプレイヤーが別のキャラと公平配分しながら二人旅した場合と同じだけの収入を小悪魔は受け取っている。

 小悪魔に役立つようなアイテムをあなほりで見つけた場合は買い取ってもらっているが、実際には、買値ではなく売却価格で買えている、25パーセント引きの価格で買えているのだから超お得であるし、そもそも普通にプレイしていたら入手が困難なアイテムも得られるのだから、十分以上のメリットは享受している。

 パチュリーがあなほりをしたからといって、小悪魔の収入が減るわけではない、逆に得をしているということである。

 

 今回の眠りの杖を担保とした融資にしても……

 二人旅というと道具として使用することで攻撃魔法の力を引き出せる剣が使える戦士が実は有力候補なのだが、勇者、戦士の二人旅をした場合、戦士だって装備に金がかかるので、勇者に貸すだけの金は用意できない。

 

 つまり商人を使わず公平配分をしたら、勇者は小悪魔以上に金に困る。

 これが四人パーティだったら収入も半分になるのだから、そもそも冒険が困難なレベルで貧乏になる。

 勇者の強さはパーティの金を吸い上げることで保たれている。

 そういうことだった。

 

 眠りの杖の売却価格、3150ゴールドを融資してもらい、小悪魔は何とか王者の剣を購入。

 結果、二人の所持金は、

 

小悪魔:2522G

パチュリー:751591G

 

 ということに。

 

「まぁ、メルキドに行ったら眠りの杖の分も、すぐ払えるようになるでしょう」

 

 というわけで小悪魔のルーラでドムドーラの街へ跳び、城塞都市メルキドを目指すことに。

 ドムドーラの街の住人が、

 

「町を出て南にくだり、橋をこえてしばらく東へ旅をすると、メルキドの町へつきます。高いカベにかこまれた町ですから、すぐにわかると思いますよ」

 

 と教えてくれるため、ルートに問題はない。

 

「前にも言ったけれども、ドムドーラ周辺にはザキを使って来る魔王の影が出るから命の石は必携よ」

 

 ついでに言えば、ダメージ呪文を使って来る敵も居ないので、魔法耐性防具は必要無い。

 ビキニ姿でドムドーラ砂漠を南へ進むパチュリー。

 

「夜の砂漠は冷えるはずなのだけれど、魔法のビキニと言うだけあって寒くないのね」

「私は刃の鎧ですから、昼間だったらチンチンに熱くなっているところです」

「そう? 一応、中世の板金鎧がピカピカに磨かれていたのは、太陽光を反射させて少しでも熱を持たないようにするためとも言われていたのだけれど」

 

 そして金属鎧は寒い所では逆にガンガン体温を奪っていくものなのだが。

 途中、キメラとスライムベスが出たが、

 

「王者の剣で一撃です!」

 

 と新たな武器の威力にニッコリの小悪魔。

 しかし、

 

「いえ、キメラなら、これまで使ってきた雷神の剣でも十分だったわよ」

 

 という身もふたもないパチュリーの指摘と、王者の剣を装備した小悪魔以上の攻撃力を発揮するパチュリーの正義のそろばんの威力に肩を落とす。

 砂漠地帯が終わり、次は山地へと足を踏み入れたところで、今度はキメラ3体とスライムベスの群れが!

 

「キメラはバギ系呪文に無耐性! 王者の剣のバギクロスの効果ならまとめてお終いです!」

 

 今度こそ、と意気込む小悪魔だったが、その目の前で、パチュリーが炎のブーメランで敵をなぎ倒していく!

 

「あ……」

 

 モンスターはキメラ1体を残して壊滅。

 そこに小悪魔の王者の剣がバギクロスを放つが、

 

「別にそこまでの威力は要らなかったわよね」

「ぐぅ……」

 

 そして現れたのはキメラ2体と魔王の影2体の群れ。

 

 小悪魔は魔封じの杖を振りかざした!

 怪しい霧が敵を包み込む!

 

 魔王の影はマホトーンに無耐性のため、これでザキが封じられる。

 さらにパチュリーの炎のブーメランが閃き、それだけでキメラは全滅する。

 魔王の影は通常攻撃を仕掛けて来るが、

 

「効きませんよ!」

「痛くないわ」

 

 その程度、問題ない。

 次のターン、小悪魔がドラゴンテイルを振るっただけで終了である。

 

 橋を越えた所で東へ進むと、今度はキメラ4体の群れ。

 

「今度こそ王者の剣の威力をお見せします!」

 

 小悪魔は王者の剣を振りかざした!

 黒い雨雲が敵を包み込む。

 

 そうしてバギクロスの効果、竜巻状に発生した真空の刃がキメラを襲うが、

 

「あっ!?」

 

 キメラはバギ系に無耐性なので確実に効きはする。

 しかしバギクロスのダメージは60~120とムラが大きく、最大ヒットポイント80のキメラに対しては……

 案の定、1体倒し損ねてしまい、反撃を受ける小悪魔。

 

「うっ!」

 

 しかし、刃の鎧の反射ダメージがキメラに返され、

 

「あっ!?」

 

 それでキメラが倒される。

 

「ど、どうです、この威力!」

「はいはい」

 

 胸を張って誤魔化そうとする小悪魔の主張を、パチュリーは生暖かい目をして流すのだった。

 そして今度は魔王の影4体の群れ。

 小悪魔の魔封じの杖がザキを封じ、パチュリーの正義のそろばんが一撃で一体を葬り去る。

 残った魔王の影は通常攻撃と、ザキを無駄撃ちする。

 そして次のターン、パチュリーの炎のブーメランと小悪魔のドラゴンテイルが薙ぎ払うが、

 

「あれっ!?」

 

 最後の1体が小悪魔の攻撃から素早く身をかわす!

 

「魔王の影の回避値は1。大ガラスやフロッガーなんかと一緒で、ごくまれにだけれど回避されてしまうのよ」

 

 とはいえ、悪あがきもここまでで次のターンには止めを刺されてしまう。

 しかし、

 

「私、勇者なんですよね?」

 

 普段の不埒な悪行三昧が祟っているのか、どうもいまいち締まらない戦いばかりで、本当に今さらながらだが自分の存在意義に疑問を持ってしまう小悪魔だった。

 そして森林を出る2歩手前で、

 

「ここから先はメルキド西のモンスターに切り替わるわ。キメラ、マドハンドの他にグール、スカルゴンあと……」

 

 そこでパチュリーは眉をひそめ、

 

「マクロベータが出てくるわ」

「マクロ…… 何ですって?」

「マクロベータ。シャーマン、ゾンビマスターの最上位種で、ブラジルの黒人奴隷に由来する呪術『マクンバ』の術者『マクンベイロ(女性形マクンベイラ)』が元ネタという説がある相手よ」

「南米と言うと、ハイチのブードゥーが有名ですけど」

「北米版、NES版では『Voodoo Warlock』とされているわね。どちらも起源を辿ればアフリカ西海岸土着の原始宗教に行きつくと言われてはいるのだけれど」

 

 まぁ、

 

「あまり気にしなくてもいいわ。出現率が低いし、半端な能力と登場作品の少なさのおかげでマイナーモンスターの代名詞になっているものだし」

 

 ファミコン版ではこのあたりの他、ルビスの塔の下層、ゾーマの城のある魔の島南部、そしてゾーマの城にも出た相手だが。

 いずれも何度も行く場所ではないので遭遇せずに終わるプレイヤーも多かったし、遭遇しても脅威にならないので記憶に残らない。

 さらにはスーパーファミコン版以降のリメイクではゾーマの城からリストラされてしまっていたのでなおさら。

 

 ともあれ、命の石を袋にしまって、代わりに耐魔法防具を引っ張り出しておく。

 

「と言ってもダメージ呪文を使って来るのは、マクロベータが1/8の確率で放ってくるメラミどまりだからあまり真剣に用意しなくてもいいのだけれど」

「今さらメラミですか」

「マクロベータは通常攻撃の他にメラミ、スクルト、ベホマ、ふしぎなおどり、ほのお(リメイク版ではひのいき)、腐った死体を呼ぶ、逃げる、と合計8種類もの技を持つ技のデパートとも言うべき相手なのだけれど、実際には一つ一つが貧弱で、ただの器用貧乏になっているものなの」

 

 攻撃魔法は今さらなメラミ、攻撃力はマドハンド以下、吐く炎はイシス周辺で出ていた火炎ムカデと同じ6~9という低ダメージ、呼ばれる仲間はその系統で最下位種の腐った死体。

 無限のマジックパワーで、自分のヒットポイントが半減したら優先行動に指定されているベホマで全快する、というといやらしく感じるかもしれないが、下位種と違って回復の対象が、攻撃力が微妙な自分限定という時点でお察し。

 つまり行動が多彩なだけで、対策を必要とするような厄介なもの、危険度の高いものを何一つ持たず、回復やマホトラ連発が鬱陶しい下位種のようなインパクトも皆無。

 ついでに言えば、リメイクで下位種は4体まで同時出現するようになり脅威度が増したが、マクロベータはファミコン版同様2体までのままなのでますます印象が薄まるといった具合である。

 

 そして森を抜けたところで、

 

「骨の竜です!」

「スカルゴンが3体ね。あとは……」

「顔色が悪い人」

「グールが1体ね」

 

 スカルゴンは最大ヒットポイント200の強敵だけあって図体がでかい。

 が、そのためにグールが1/4の確率で呼ぶゾンビマスターが出現できるスペースが無い。

 ゆえにグールは放って置いて、眠りに弱耐性のスカルゴンを二人がかりで眠らせにかかる。

 パチュリーは眠りの杖を、小悪魔は妖精の笛を吹くのだが、

 

「一々演奏しなくちゃいけないのが面倒ですね」

「聞かせられる方もね」

 

 妖精の笛は使うたびに曲がかかるものだから、戦闘のテンポが悪くなる。

 さらには、

 

「すぐに起きて来ますよ!? 眠らせたターンに目を覚ますなんて!!」

「眠らせても起きるを繰り返すだけで、眠らなかった敵から通常攻撃や冷たい息をもらうのはともかく、全体に40~59の吹雪ダメージを与える氷の息をもらうのは……」

「うわ、グールのマヌーサをもらっちゃいました!」

 

 幸せの靴で運の良さを上げていたパチュリーは効果を跳ねのけていたが、小悪魔が幻に包まれてしまう。

 しかし、

 

「どちらも火炎呪文には無耐性だからあなたがマヌーサに囚われても問題は何も無いわ。と言うか、これ以上、眠らせようとしてもこちらの被害が増える一方だし、あなたの妖精の笛の曲を一々聞くのも面倒だし、雷神の剣のベギラゴンで攻撃して!」

 

 パチュリーが引き続き眠りの杖でスカルゴンを抑え、小悪魔が雷神の剣のベギラゴンを食らわせるが、

 

「二発当てても死にませんよ!? 最大ヒットポイントは200なんですよね?」

「スカルゴンには1ターンに20ポイントの自動回復があるわ」

「えぇ……」

「ボスキャラ以外のモンスターのヒットポイントは満タンだとは限らず、最大ヒットポイントの75%~100%程度の状態で出現するのだけれど」

「あれ? 上限が75%~100%ではないんですね?」

「そう、つまり自動回復をするモンスターは、放って置くと最大ヒットポイント、スカルゴンの場合は200までヒットポイントが上がってしまうから」

 

 ということだった。

 まぁ、それでも、

 

「次のターンは稲妻の剣のイオラで十分よ」

「はい!」

 

 イオラの効果で全体にダメージを入れ、スカルゴンを全滅させた上で、グールのヒットポイントも削っておく。

 そこに、

 

「これで終わりよ」

 

 パチュリーの正義のそろばんが突き立てられ、グールも倒しきる。

 

「さすがに治療が必要ね」

 

 ということで小悪魔のベホイミでヒットポイントを回復させるが、

 

「逆にここまで治療無しで来られるのがね」

 

 という話。

 そして、

 

「橋が見えてきましたよ」

「さて、ここで素直にメルキドに行くか、精霊のほこらに寄ってから行くかなのだけれど」

「はい?」

「結構な遠回りだし、どうせ虹の雫を作るためには船で近くの島に在る聖なるほこらに行かないといけないから、海路を行った方がいいのよね」

 

 精霊のほこらで入手できる雨雲の杖は道具として使うとマホトーンの効果があるが、魔封じの杖と違って装備可能な僧侶、賢者、魔法使いにしかその力は引き出せないため、パチュリーたちには無意味。

 しかし、

 

「小さなメダルを早期に手に入れる、という意味ではアリよね」

 

 と寄り道することにする。

 

「グールとマドハンドの群れです!?」

 

 グール4体とマドハンド3体の群れに遭遇。

 グールはゾンビマスターを、マドハンドは大魔神を呼ぶのがいやらしい相手。

 今は仲間を呼ぶスペースが無いのでいいが、半端に倒すと空いたスペースに呼ばれてしまう。

 しかし、

 

「あなたは稲妻の剣で全体攻撃を。先にマドハンドを確実に倒すわよ!」

 

 とパチュリーは指示しつつ、炎のブーメランで、こちらも全体攻撃。

 そして小悪魔の稲妻の剣のイオラの効果がグールを2体まで倒し、マドハンドは全滅させる。

 

「あとはグールがゾンビマスターを呼ばないことを祈るだけですか」

 

 と、気を引き締める小悪魔だったが、

 

「このターンは呼ばないわよ」

「はい?」

 

 パチュリーの言うとおり、グールは攻撃力95の、この時期では痛くない通常攻撃で終わる。

 

「マドハンドの判断値は最高の2でターン中、自分に行動順がまわって来た時に行動が決まるから、その時点でスペースがあれば200/256、約8割の確率で大魔神を呼ぶのだけれど」

 

 しかし、

 

「グールの判断値は1でターン開始時に行動が決まるわ。つまりその時点で空きスペースが無いなら、そのターンは仲間を呼ぶことが無いの」

 

 ゆえに、グールは後回しでマドハンドを先に倒したのだ。

 そして次のターン、小悪魔が雷神の剣のベギラゴンの効果で残りのグールを焼き払い、戦闘は終了した。

 森を抜け、砂漠、というか海岸線に有るので、

 

「砂丘ねこれ」

 

 という砂地に出たところで、

 

「モンスターの群れです!」

 

 グール、マドハンド、キメラ、各1体の団体。

 しかし、小悪魔の稲妻の剣のイオラとパチュリーの炎のブーメラン、二人の全体攻撃で何もさせずに終了。

 

「雷神の剣を手に入れても、稲妻の剣はまた別で重宝するんですね」

 

 と、改めて実感する小悪魔だった。

 そして戦闘終了後、

 

「ここより南はメルキド東のモンスターが出てくるわ。キメラ、メイジキメラ、ダースリカント、マドハンド、スライム、スライムベスにはぐれメタル」

「はぐれメタル! 誘惑の剣の出番ですねっ!」

 

 せっかくお金を払って手に入れたのだからと興奮する小悪魔だったが、

 

「いいえ、ここのはぐれメタルは他のモンスターとは一緒に出ないから使えないわ」

 

 ということ。

 

「それとも破壊の剣を装備して、会心の一撃を狙ってみる?」

「このためだけに33750ゴールドもする破壊の剣を使い捨てにするなんて、できませんよ!」

 

 悲鳴を上げる小悪魔だった。

 そして、メイジキメラ3体とスライムベス3体に遭遇。

 

「早いっ」

 

 メイジキメラは1体が逃げ出し、残りはパチュリーにメダパニをかけてくる。

 

「メイジキメラの素早さは、はぐれメタルと同等の150。先制される確率はとても高いわ」

 

 それゆえメダパニを受けることを覚悟して幸せの靴で運の良さを上げていたパチュリーは無事、抵抗に成功。

 そしてパチュリーの炎のブーメランが唸り、小悪魔のドラゴンテイルが止めを刺す。

 

「3/8の確率で自分たちをベホマで治療し、3/8の確率でメダパニを、1/8の確率でマホカンタを、1/8の確率で逃げる相手なんだけれど」

 

 しかし、

 

「判断値は1でそこそこ頭が良く私たち同様ターンの初めに行動が決まるから。つまり最初のターンは確実にベホマは無く、3/5の高確率でメダパニを、1/5の確率でマホカンタを、1/5の確率で逃げることになるわ」

「あれ? 攻撃するって選択肢は無いんですか?」

「そうね、だから単独か、今回のように同時出現モンスターが大したことのない相手だったら逃げるのも手よ。その場合、メダパニで混乱した仲間からの同士討ち以外はダメージを受けないから」

 

 それに、

 

「逃げ損ねても、向こうが勝手に逃げて数を減らしてくれるしね。キメラの上位種、のはずなんだけれどキメラのモンスターレベルが36なのに対してメイジキメラはレベル30と異様に低いから」

 

 判断値が1なのでパーティの先頭キャラのレベルとモンスターレベルの差が6以上でないと逃げないのだが、ここに来るパーティは大抵それ以上に育っているだろうから逃げ出すのだ。

 

「何でまた……」

「メイジキメラは1/64の確率で不思議な帽子をドロップするの」

「ああ、ドロップアイテムは最後に倒したモンスターのものになるから……」

 

 メダパニで場を掻きまわし、マホカンタとベホマで自分たち『だけ』守り、そしてトンズラすることでドロップさせないという手。

 そのために確実に逃げるようモンスターレベルを下げているのか。

 

「なんていやらしい」

 

 ということだし、

 

「逆にレベル差が10以上あればこちらも確実に逃げられるんだけど……」

「一緒に出て来たモンスターレベル63のスライムベスが邪魔をするという?」

「そういうことね、あとリメイクだと、上の世界でも怪しい影の正体として先頭キャラのレベルが30になった時点で出てくるし、すごろく場でもエンカウントするようになっているわ」

 

 ということで中々に面倒なモンスターなのだった。

 そして、

 

「砂の次は毒の沼地ですか……」

「初代ドラクエではロトの印が落ちていた場所ね。もっとも、この時代はまだ沼の面積が小さいようだけれど」

 

 目指すほこらは毒の沼地の中にある。

 

「ビリっときましたあああああ!!」

 

 毒ダメージに悲鳴を上げながら進む小悪魔。

 そんな中、メイジキメラとキメラのコンビに襲われるも、

 

「今度は先制できました!」

 

 と斬り捨て、精霊のほこらに到着。

 そこには一人のエルフが居て、

 

「人間はきらいだけど、オルテガは好きよ。きっと大魔王をたおしてくれるわ」

「人間嫌いのエルフにまで好かれるなんて、お父さんも、なかなかやりますね」

 

 と小悪魔。

 勇者の父オルテガは、このアレフガルドに来た際、自分の名前以外の記憶を失っていたはず。

 もちろん、自分に妻子が居たことも。

 と、いうことはここで愛人を作っていたりすることも、十分に考えられ……

 

「……勇者母に言いつけてやろうかしら」

 

 パチュリーは眉をひそめてつぶやくのだった。

 そして、ほこらの2階では一人の妖精が小悪魔を待っていた。

 

「わたしはその昔、ルビスさまにおつかえしていた妖精です。

 そしてあの日、ルビスさまにかわり、こあくまによびかけたのも、このわたし」

「こ、この声はプレイ開始直後の性格診断、誕生日の夢の中で「あなたはエッチですね」「自分でもうっすらエッチであることにきづいている」「ひといちばい男の子がすき」「あなたはエッチです。それもかなりです」なんて連呼してきた……」

「合ってる、合ってる」

 

 つぶやく小悪魔に、そのとおりよね、とうなずくパチュリー。

 しかし妖精はそんな二人の様子をスルーして、

 

「あの時はずいぶんと失礼なことをいったかも知れません。許してくださいね。

 しかしこあくまはついに、ここまで来てくれました。

 わたしの想いをこめ、あなたにこの雨雲のつえをさずけましょう」

「さらっと流されました~っ」

「どうかルビスさまのためにもこの世界をお救いくださいまし」

 

 というわけで、雨雲の杖を得る。

 

「雨雲の杖は虹の雫を造るための材料、キーアイテムなんだけれど道具として使うとマホトーンの効果があるわ」

「私の使っている魔封じの杖と同じ効果ですか」

「そうね、ただし魔封じの杖と違って装備可能な僧侶、賢者、魔法使いにしかその力は引き出せないものよ」

 

 つまりはパチュリーたちには使えない下位互換品だし、所持できるのは虹の雫を造るまでのわずかな間。

 裏技で複製して、というのもどうせなら魔封じの杖を増やした方がいいので無意味というものだった。

 

「まぁ、ここまで来たのはこれの回収のためだったんだけれど」

 

 と中央の床から小さなメダルを回収するパチュリー。

 他に花壇から銀のロザリオを見つける。

 そして階段を降りるが、そこで先ほどのエルフが目に入り、

 

「このエルフさんがあそこまで信頼しているということは、オルテガ、お父さんもこのほこらを訪れたはずですよね? なのにどうしてさっきの自称『すべてを司る者(笑)』は雨雲の杖を渡さなかったんでしょうか?」

 

 と首を傾げる小悪魔。

 

「そのエルフはリメイクで追加されたキャラクターなんだけれど、そのせいでそんな風な疑問が生じたと書かれた書籍もあったようね」

 

 それで、その答えだが、

 

「まず、オルテガは虹の雫無しでゾーマの城のある島に渡っている。つまり単純に必要としなかったから、という意見があるわ」

 

 そして、もう一つの意見は、

 

「そもそも大精霊ルビスの代役に過ぎないのにも関わらず、性格診断で「私はすべてをつかさどる者」と自称し「あなたはエッチですね」「自分でもうっすらエッチであることにきづいている」「ひといちばい男の子がすき」「あなたはエッチです。それもかなりです」なんて連呼してきた者がまともに役目をはたしていると思っているの、という話が」

「ああー」

 

 実際言われた小悪魔には納得の意見である。

 先ほども悪びれもせず、いけしゃあしゃあと話していたし。

 

「もしかしたら汚染精霊と呼ばれるものに近いのかもね」

「はい?」

「精霊と妖精の区分は曖昧だという話はしたわよね」

「はい」

 

 パチュリーは七曜の属性魔法、つまりは精霊魔法の使い手であり、その方面には深い見識を持つ。

 その彼女が、かつて湖上の氷精、チルノとの勝負に勝利した時に、

 

「妖精は自然現象その物であり、魔法では妖精を操る事もしばしばある。つまり奴隷」

 

 と言い残したように、精霊と妖精は線引きが難しい存在なのだ。

 

「このアレフガルドを造った精霊ルビスに仕えていたという妖精だもの、特性的には精霊、多分自然精霊寄りの存在でしょう?」

 

 そして、

 

「精霊の本質として周りの環境を自分の色に染めようとするところがあるの」

「私もパチュリー様を自分色に染めたいと思ってます!」

「……まぁ、そういうのは神魔、神霊の類には共通の特性かも知れないけれど、自然精霊はその名のとおり、自然環境に干渉するの」

 

 しかし、

 

「この精霊のほこらの周囲は?」

「……毒の沼地ですね」

「自然精霊が居るのにどうして? 二階の彼女の居るフロアの周囲には、新鮮な湧水が周囲を囲っていたはずなのに」

 

 さらに言えば、

 

「この後、この沼地は初代ドラクエの時代にはもっと大きく広がっているわ。つまり……」

「あの妖精の存在が、毒の沼地を広げて行った?」

「そう、自然精霊は自然を豊かに変えて行くけど、汚染精霊は逆に自然を荒廃させていく存在。そして……」

 

 上のフロアで見つけた銀のロザリオを手にするパチュリー。

 

「この装身具は身に着けた者の性格を「人には親切で、それでいてさりげないので、だれからも好かれる人柄」とされる『ロマンチスト』に変えてくれるもの」

「まさか、それを身に着けてルビスを騙して仕えていた?」

「そしてルビスの目が無い今は外して「すべてをつかさどる者」を自称し、勇者に毒舌を吐き、そして綺麗な湧水を毒水に変え周囲に垂れ流し、着々と毒の沼地を広げ続けている……」

 

 そんな存在だから、このほこらを訪れたオルテガには、雨雲の杖を渡さず。

 しかし、ルビスの指示を受けた勇者に対しては、しれっとして渡した。

 そういうことである。

 

「まぁ、毒の沼地が広まって行ったのは、別の理由があるとされている考察もあったのだけれど」

「はい?」

「単に自称『すべてを司る者』が下水に油や生ごみなどを流すような、ずぼらな生活をしていたから初代ドラクエまでの年月の間に汚れが溜まり汚染が、毒の沼地が広がって行ったって話ね」

「うぇぇぇっ!?」

 

 毒の沼地でダメージを受けながらここまで来た身としては、受け入れがたい。

 

 吐き気をもよおす『邪悪』とはッ!

 

 という意見であった。




 精霊のほこらと自称『すべてを司る者(笑)』の正体についてでした。
 TRPG『シャドウラン』だと水の汚染精霊として『汚泥』や『酸』が登場していましたから、そんな感じですかね。
 まぁ、火の汚染精霊が『核』だったりしますし、それよりはマシでしょうけど。

 次回はニートの街、メルキドに到着の予定です。

 ご意見、ご感想、リクエスト等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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