こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)   作:勇樹のぞみ

78 / 88
ニートの街メルキドへ

 精霊のほこらを出て、今度こそメルキドを目指すことにするが、

 

「メイジキメラ対策でもしておく?」

 

 素早さを種を使って強化しているパチュリーが星降る腕輪を装備すると素早さが252まで上がる。

 その上でメイジキメラが弱耐性しか持たない魔封じの杖を持ち、先制で魔法を封じる手だ。

 そうして用意したうえで、来た道を戻ることにするが、

 

「不思議な帽子が出たわ」

 

 ほこらを出てついでに5回あなほりをしただけで、不思議な帽子を見つける。

 

「本当にドロップアイテムを得るために戦闘をするのが馬鹿らしくなりますね、それ」

 

 と呆れる小悪魔をよそに、出発する。

 毒の沼地を超え、砂漠地帯に出て、

 

「うーん、砂漠にクマさん」

 

 ダースリカント3匹に襲われるが、やはり二人がかりで眠りの杖で眠らせた後に雷神の剣のベギラゴンとパチュリーの炎のブーメランで全滅である。

 そして、

 

「対策をすると出てこないのよねぇ」

 

 メイジキメラが出るエリアは突破。

 装備を元に戻し、森の中襲って来るマドハンドを蹴散らしながら橋を渡り、メルキドへの道への分岐点まで戻る。

 

「今度こそメルキドに直行ね」

 

 途中、森の中で、

 

「出たわね、マクロベータ」

 

 とレアキャラに遭遇するが、

 

「催眠に対して弱耐性。二人がかりで眠らせて始末すればお終いね」

 

 といいところもなく終了。

 続けてグールに出会うが、これもまたパチュリーの炎のブーメランと小悪魔の雷神の剣のベギラゴンの効果で一掃。

 森を抜けると、

 

「橋が見えてきました!」

「こちらの橋の位置より北はまたモンスターの出現エリアが違っていて、はぐれメタルも出るのだけれど……」

 

 遭遇も無く素通り。

 橋を越え、その先の毒の沼地を超えれば、

 

「山地に囲まれた街がありますよ」

「あの山地は一応、土塁みたいなのよね」

 

 というわけで、城塞都市メルキドへ到着だ。

 だが、入り口で迎えてくれた兵士が、

 

「ここは城塞都市メルキド。しかしこんな城塞など、魔王の手にかかればひとたまりもないだろう」

 

 と言うように城塞は未だ中途半端で、モンスターの侵攻を防げるようなものではなかった。

 そのため街中で巡回している兵士が、

 

「魔王をおそれ 絶望のあまり人びとは働かなくなってしまったのだ」

 

 と言うとおり街は閑散としており、店に入っても人が居ないか、居ても、

 

「むにゃむにゃ……。はい、いらっしゃい。ぐうぐう……」

 

 と寝ているだけ。

 人を求めて入った民家では、やはり、

 

「ぐうぐう……」

 

 と寝ている男性が。

 そして、とある商店の二階住居には、

 

「どうせ死ぬんです! 働いてもしかたありませんよ!」

 

 と叫んでいる主人が……

 

「誰も働いていません。ニートの街ですかここはー!」

 

 呆れ果てる小悪魔だったが、パチュリーは、

 

「働かずとも生きていけるだけの力、財力や権力、立場があるのなら、好きにすればいいと思うのだけれど」

 

 と首を傾げるだけ。

 生粋の引きこもりである彼女には、何ら問題とは思えないらしい。

 

「前にも言ったわよね? 働かなくとも問題なく暮らせるほど家が裕福というのも先天的な『才能』だって。私のように魔法を志す者なら、それだけで学習の向上率や魔法の習得速度が違ってくるわ」

 

 イシスの街の引きこもり、ソクラスを前に言っていたことか。

 

「実際、この部屋のタンスからは8850ゴールドで売れる高額品、パーティドレスが手に入るくらいで、お金には困っていない様子がうかがえるし、隣の部屋には……」

 

「わしは魔法のちからで働く、人形の研究をしている。

 巨大な人形をつくって、この町をまもらせようと思っておるのじゃ。

 そうじゃ! そいつの名前はゴーレムにしようぞ! うむ、強そうでよい名前じゃ!」

 

 と、いう学者が住んでいて、

 

「初代ドラクエでこの街を守っていたゴーレムを作っているという学者さんね」

 

 先ほどの主人の家に部屋住み、居候して研究をしている、つまりこの家の主人には研究をさせていられるだけの財力はあるのだろう。

 そして、

 

「生活を成り立たせるための労働をせずに研究にだけ打ち込むことができたから、彼はこの偉業を成し遂げることができたとも言えるでしょう」

「そ、そういうこともあるかも知れませんが……」

 

 と納得できない様子の小悪魔に、パチュリーは、

 

「長期にわたってストレスの回避が困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなる。その現象を『学習性無力感』と言うのだけれど」

 

 ニートや引きこもりなどに見られる症状だが、

 

「これも生き物の生存戦略というものよ。山で遭難した人でも生存率が高いのは救助が来るまで動かず何もしなかった人。逆に積極的に状況を打開しようとするポジティブな人はこういう状況下では体力を使い果たし、早々に死んでしまう。何をしてもダメなら無駄な努力にエネルギーを浪費しない方が生き残るには有利なのよ」

 

 ということ。

 また、

 

「勇者の性格判断で「お前は運が悪いんじゃなくて、単にやる気がないから結果が出ないだけ」と痛烈に批判される『なまけもの』の性格。実際、力と体力にプラス補正があるけれど素早さ、賢さに大幅なマイナス補正があって使えない、とされていたものだけれど」

 

 スーパーファミコン版のドラクエ3が出たのはニートという存在が世間に知られるより10年近く前だったが、扱いはまぁ、そんなものだった。

 しかし、

 

「実際にはこの性格、RTA(Real Time Attack)、ゲームスタートからクリアまでの実時間(時計で計測した現実の所要時間)の短さを競うプレイでは勇者の性格として一番重宝されているものなの」

 

 短時間で簡単に作れ、最重要であるヒットポイント、そして力が伸びてくれる。

 素早さが低いのも、仲間からのバイキルトを確実に受けてから攻撃できるという点で有利。

 つまりニートこそが、最短、最速で世界を救うことができるわけである。

 

「結局、価値や評価なんて状況に合致しているかしていないかで簡単に、いくらでも裏返るものなのよ」

 

 なお、

 

「ちなみに…… この街に限らずアレフガルドにある宿屋ではいつだって「旅人の宿屋へようこそ。こんな夜更けまで、おつかれさまでした」と言って迎えてくれるわ。また教会なら「こんな夜更けに、我が教会に何のご用じゃな?」と迎えてくれるの」

「は? 夜?」

 

 戸惑う小悪魔。

 闇の国アレフガルドでは昼夜の区別が無い。

 しかし街の人々は活動しているので、暗くても昼間時間帯だと思っていたのだが。

 実は夜扱いだった?

 ということ。

 

「そうすると24時間営業で店を開いている他の街や村が異常、ブラック職場なのであって、店を閉めて寝ているこのメルキドの街の方が正常、ということになるのだけれど」

 

 という話。

 そしてブラックな職場が無くならないのは、それでも勤めてしまう人間が居るから。

 労働者が居る限り、ブラック企業は劣悪な職場環境を改善することなく、そのまま存在し続けることができてしまうからだ。

 さらに言えば、不当に人件費を削減して安く上げたサービスを提供することによって、まともに従業員を雇用している同業他社に損害を与え、公平な競争を阻害する。

 その悪行に加担しているとも言える。

 

「ね、見方によって評価は簡単にひっくり返るでしょう?」

 

 そういうことであった。

 そして、

 

「このドラクエ3では、ゾーマが三年かけて王者の剣を砕いた努力が、短時間で意味の無かったことにされてしまっているのだけれど」

 

 とパチュリーは笑みを見せるが、それはゾーマのことを笑っているだけではなく。

 

「なぜ三年なのか? つまり「石の上にも三年」という考え方、硬直的な努力賛美を否定しているとも取れるエピソードを制作者側がさりげなく入れたとも取れるわ」

「考え過ぎなんじゃ……」

 

 と小悪魔は言うが、パチュリーはゆるゆると首を振って、

 

「週刊少年ジャンプの編集者、編集長を勤め、ドラクエにも大きく関与している鳥嶋氏が、近年になってジャンプの標語とされた友情・努力・勝利のうち、努力だけは否定している、昔から、当時からそうだったと言っていることを考えると、深読みのし過ぎとは言い切れなかったりするの」

 

 つまり、

 

「クリエイティブな人たちは気付いていたけれど、それでも努力が妄信されていた当時の日本の価値観では明言しなかった、できなかったことが、今は言えるようになった」

 

 ブラック職場や、やりがい搾取、「石の上にも三年」などといった努力を尊ぶ国民性を悪用した洗脳そのものの従業員教育、こういったものの実体が知られ、盲目的に努力を賛美するのは危険だという認識が広まり。

 一方で他人の敷いたレールの上で、他人の価値観、ルールに基づいてナンバーワンを目指し争い合うより、自分の個性、オンリーワンを生かして生きる方が良い、という多様性を認める素地が育ってきたことが、世間を変えつつある。

 

「これが時代の流れと価値観の変化というものよ」

 

 そして価値観が変化すれば、物事に対する評価もまた変わって行く。

『なまけもの』の性格が後年になって見直されたのと同様なことが、現実でも起きているということであった。

 

 

 

 この学者の本棚からは『豪傑の秘訣』『優しくなれる本』『淑女への道』『頭が冴える本』『負けたらあかん』が入手できる。

 パチュリーは初めて目にする『豪傑の秘訣』を手に取って鑑定してみるが、

 

「男なら大胆に! 女でも大胆に! 肝っ玉を鍛えろ! ……だって」

 

 豪快に生きてゆくための秘訣が書いてあり、

 

「読むと性格が『ごうけつ』に変わる本ね。『ごうけつ』は力を伸ばすには最適な性格で、戦士、そして他を捨てるなら勇者などに適しているのだけれど……」

「けれど?」

「伸びすぎるからこの性格のままだとレベル40台で力の能力値がカンストしてしまい、それ以降のレベルアップが無駄になるという問題も持つの」

「途中で本か装飾品などで性格を切り替えて行けばいいんでしょうか?」

 

 と言う小悪魔にパチュリーはうなずいて、

 

「豪傑の腕輪が早い時期に手に入るから、こちらで間に合わせるという手もあるわね」

 

 ということだった。

 ともあれ、

 

「この本はこの本で役に立つし、こことクリア後の謎の洞窟でしか手に入らない貴重品。スーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版なら、ジパングのすごろく場のよろず屋のマスで買うことができたのだけれど」

 

 この世界はスマホ版が基準になっているようで、すごろく場が無いため二冊だけしか手に入らないものだ。

 

 そして北西の空き家の床からは小さなメダル、

 南東の空店舗のカウンター前からも小さなメダルが拾えるが、

 

「ここで拾えるのはスーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版ではすごろく券だったのだけれど、すごろく場の無くなった携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版だと、小さなメダルになっているのよね」

 

 すごろく場で拾える分がこのように別の場所で得られるということだった。

 その他にも、建設途中で放棄されたのか、床がそのまま地面になっている建物から祈りの指輪を手に入れたり。

 

「魔王の島に渡りたいなら、この町の神殿に住む老人を訪れることだな」

 

 という話を聞いたので、バリアー床に囲まれた神殿内を、

 

「あひいいぃぃぃッ!」

 

 ダメージに絶叫する小悪魔を引きずり回しながら訪れる。

 

「魔王の島に渡るには太陽の石、雨雲のつえ、聖なるまもり。この3つをたずさえ、聖なるほこらへむかうがよい」

 

 という話が聞けるが、

 

「モンスターから受ける損害より、バリアー床から受けるダメージの方がよほど大きいって何ですか!」

 

 と不条理を嘆く小悪魔だった。

 しかし、

 

「私たち、バラモスに勝っているのよね」

「はい、割と楽でしたね」

「じゃあ、このアレフガルドのモンスターはバラモスより強いの?」

「そんなことは…… はっ!?」

 

 そう、バラモスを楽に倒せるパチュリーたちが、それよりは弱いアレフガルドの通常敵に苦戦するはずがないのだ。

 雷神の剣や王者の剣、新たな防具などが手に入り、さらに強化されていることでもあるし。

 

「これがバラモスには魔法使い、僧侶、賢者のバイキルト、スクルト、フバーハ、マヌーサなどといったバフ、デバフ盛り盛りで勝ちました、というのなら、そこまでの手間暇、マジックパワーをかけていられない通常エンカウントのモンスターに苦戦するかもしれないけれど」

 

 パチュリーたちはそれ抜きでバラモスを倒しているので問題はない。

 

「さらに言えばあなたのマジックパワーはルーラ、リレミトの他はヒットポイント回復にしか使っていないでしょう? しかもヒットポイント回復は袋に99個まで詰められる薬草で十分なところを、マジックパワーの使い道が無いから使っているだけだし、何だったらルーラの代わりにキメラの翼を使ってもいいのだし」

 

 そして他は道具使用による呪文効果でまかなっているので基本、マジックパワーを節約する必要も、マジックパワー切れも無いのだ。

 そもそもフィールド上や岩山の洞窟でなら、切れても商人の『おおごえ』で旅の宿屋を呼んで回復できるのだし。

 

 また宿屋には、

 

「うん? ぼく? ぼくはガライ。旅の吟遊詩人さ」

 

 あのガライが居て、

 

「楽器かい? ぼくはたてごと専門なんだけどね、家においてきちゃったよ。

 あの銀のたてごとの音色は、ちょっとキケンなんだ」

 

 と語る彼の居る部屋のタンスからはヘビメタリングが手に入る。

 

「やはりガライはヘビメタ系の歌い手……」

 

 という話。

 なおリメイクでは値段が付かず売り払うことのできない銀の竪琴だが、ファミコン版では売却価格がたったの7ゴールドであり……

 幻想郷の外の世界で売られた『ギター破壊パフォーマンス用ギター(税抜き5,000円)』みたいなものなのだろうか?




 ニートの町、メルキドでした。

> 幻想郷の外の世界で売られた『ギター破壊パフォーマンス用ギター(税抜き5,000円)』みたいなものなのだろうか?

 それ専用に派手に外装がバラバラに壊れるようにして、保護されているコア部分は工場に送ればリサイクルできるというものでした。
 単に壊してもいいように安く、だけでなくこれだけ凝った仕様にするところが面白いですよね。

 次回は沼地の洞窟。
 リムルダールへのトンネル掘りをやっている男ばかりのガチムチ労働者の巣窟に、迂闊にも足を踏み入れてしまったパチュリー様たちの運命は……
 をお届けする予定です。

 ご意見、ご感想、リクエスト等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。