こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3) 作:勇樹のぞみ
「精算が済んだところで、リムルダールでお買い物ね」
小悪魔のルーラでリムルダールへ。
武器屋へと向かう。
隼の剣、バスタードソード、身躱しの服、ドラゴンシールド、オーガシールド、グレートヘルムが売られており、この中で新規の商品は、
「隼の剣は勇者、商人、盗賊、賢者が使える武器で、2回攻撃が可能なのだけれど、攻撃力は棍棒以下、たったの+5ポイント」
「それじゃあ、使えませんね」
「それがそうでもないの。例えば力の能力値による攻撃力を1、通常の武器による攻撃力を1、敵の守備力によるダメージ減を1だとするわね」
パチュリーは分かりやすく単純化した仮定で話し始める。
「この武器で攻撃した場合は1足す1、合計の攻撃力2から敵の守備力によるダメージ減1を引いた1がダメージとなる」
ここまではいいだろう。
「一方で隼の剣では武器による攻撃力が極小、ほとんどゼロに近いから、例え倍の回数攻撃しても、どちらも筋力による攻撃力1しか出せず、敵の守備力によるダメージ減1に阻まれてダメージはゼロになる」
「全然駄目じゃないですか。使えないですよ、それ」
眉をひそめる小悪魔。
しかし話はここからだった。
「では、力の能力値による攻撃力を3にまで鍛えた場合はどう?」
「同じじゃないんですか?」
それが違うのだ。
「通常の武器では、武器の攻撃力1と合わせて4の攻撃力から敵の守備力によるダメージ減1を引いて、ダメージは3」
当り前である。
「隼の剣による攻撃は、筋力による攻撃力3から敵の防御力1を差し引いて、ダメージは2」
これも当たり前。
「そこで倍の回数攻撃したとすれば、ダメージも倍の4。つまり隼の剣の方がダメージが多くなるわけね」
それが、攻撃力が極小な隼の剣が最終的には最強になると言われる理屈だった。
「さらに言えば、バラモスゾンビのように敵の守備力が0だった場合は、力の能力値が通常の武器の攻撃力より上になったあたりから隼の剣の方が有利になるわ」
「な、なるほど」
ようやく小悪魔にも理解できたようだ。
その上で、ドラクエ3のダメージ計算式は、
(攻撃側の攻撃力-受ける側の守備力/2)/2×乱数=ダメージ値
2回攻撃ならこれが2倍になるわけで。
そして、
キャラクターの攻撃力=力の能力値+武器の攻撃力+装飾品による修正
つまり、
相手の守備力<(力の能力値+装飾品による修正-他の武器の攻撃力+隼の剣の攻撃力×2)×2
が成立する条件下では、隼の剣の方が高ダメージとなる。
現在のパチュリーの力、180ポイントの能力値と豪傑の腕輪の攻撃力+15ポイントの補正が加われば、
相手の守備力<(180+15-110+5×2)×2=190
となり守備力190ポイント未満まで…… つまり守備力200越えの特別硬いモンスターでない限りは正義のそろばんより隼の剣の方が上になる。
「200越えって……」
「結構居るけど、どれも分かりやすい相手だから間違うことは無いと思うわよ」
既出:メタルスライム(1023)、はぐれメタル(1023)、スライムつむり(200)、ガメゴン(200)、ガメゴンロード(200)、バラモス(200)
ゾーマ打倒まで:バラモスブロス(300)、ゾーマ(200)、ゾーマ(闇)(350)
クリア後:天の門番(200)、キラークラブ(250)、メタルキメラ(350)、しんりゅう(350)
という具合。
「このうちアレフガルドで出るのは、はぐれメタル、スライムつむり、ガメゴンロード、バラモスブロス、ゾーマという、ごく一部の相手だけね」
「確かに分かりやすいですね」
「さらに言えば、はぐれメタルにはどうせどんな武器でも1ダメージしか与えられないから2回攻撃できる隼の剣の方が良いのだし、ラダトーム地方の一部に出るというスライムつむりは最大ヒットポイントが20だから、多少のダメージ低下なんて無視できる。バラモスブロスとゾーマは中ボスとラスボス。つまり普段の冒険で気に掛けるのは、岩山の洞窟、ルビスの塔に出るガメゴンロードだけでいいのよね」
ということ。
「それに守備力200未満はクリア後の迷宮に居るデビルウィザードの170、クリア前ならガニラス、キラーアーマーの150しか該当するモンスターが居ないから」
「それって……」
「そう、クリア前ならガニラス、キラーアーマーの守備力150に対して有効になった時点で、今の私と同じく守備力200以上の特別硬いモンスターを相手取る場合以外には隼の剣を付けっぱなしで良くなるのよ」
ということだった。
一方、小悪魔の力145ポイント、装飾品の補正無しでも、
相手の守備力<(145+0-120+5×2)×2=70
となるから守備力70未満の比較的柔らかいモンスターなら王者の剣より隼の剣の方がダメージが高くなる計算である。
「こんな風に敵の守備力次第で変化するけれど、力の能力値と装飾品による修正の合計値が武器の攻撃力を超えたあたりから、隼の剣の2回攻撃合計ダメージの方が高くなる状況が発生するから」
という話だったが、
「あれ? せっかく王者の剣を手に入れて、武器の性能差で詰めたはずの攻撃力が、また開いてるってことになってません?」
「柔らかい敵ほどそうなるわね」
隼の剣が装備できる勇者、商人、盗賊、賢者は、力の能力値を上げさえすれば、最強剣が隼の剣になる、ということは攻撃力に差が無いことになってしまう。
まぁ、能力値の上限が255である以上、限界はあるのでクリア後に挑めるしんりゅうのように守備力350でルカニ、ルカナンに完全耐性持ち、みたいな相手には通じないのだが。
ともあれ、
「ドラクエ3における隼の剣は、ファミコン版では敵への命中がランダム…… とはいえ、もう一撃で倒せる敵には優先して攻撃するようにはなっていたのだけれど、それでも攻撃対象が散ってしまうものだったの」
1体を集中して倒しにくい反面、グループ攻撃呪文等、他のキャラの攻撃と合わせて2体を1ターンで討ち取るには良い仕様であるとも言えたのだが。
「リメイクでは同じ敵に2発連続で当てられる仕様で、なおかつ1発目で倒せてしまうと2発目は出ない。ダメージを集中できる反面、1ターンに複数を倒すことはできないようになってしまっているわ」
一方、
「ファミコン版では2発共バイキルトの効果が乗ったのだけれど、リメイクでは効果があるのは1発目だけ」
「それだと……」
「そう、通常パーティだと手強い相手にはバイキルトを使うでしょうから、その場合は別の武器を使った方が強くなるわ」
パチュリーたちのようにバイキルトの使い手が居ないパーティでは問題とはならないのだが。
「モシャスと併用することで他人の攻撃力で二回攻撃できる「はかぶさ戦法」も、リメイクだとバイキルトは初撃にしか効果が働かないから、ファミコン版ほどの火力は出せないわね」
もっとも、
「ゲームボーイカラー版だと、隼の剣を装備してドラゴラムをかけると2回炎を吐ける『はやぶさドラゴラム』って壊れ技が使えるのだけれど」
他のバージョンでは使えない技だったが。
「スマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版では、モシャスで武闘家の会心率をコピーできるという話よ」
「それって……」
「そう、高レベルの武闘家を用意しておいてモシャスで能力をコピーすれば、2回攻撃で会心の一撃を連発、という戦法が可能なの」
『会心の連撃』またはキラーピアスを装備し2回攻撃で会心の一撃を出しまくった4のアリーナ姫にちなんで、その模倣品、『アリーナ・イミテイト』とも呼ばれる技で、しんりゅうも上手くいけば6ターンで沈むとか。
なにしろ会心率はコピーするが武器の特性はコピー先であるモシャスの使い手が持っている隼の剣、ということは、武闘家に豪傑の腕輪と共に、全体攻撃武器なので通常は会心の一撃が発生しない破壊の鉄球を持たせることができるということ。
破壊の鉄球の攻撃力で会心の一撃が繰り出せるということなのだから。
「あとはメタル系の敵に対して2回攻撃、1ターンにおける1人の攻撃で最大2ポイントのダメージを与えることができるのだから、そこそこ有効よ。1回ごとに1/64で発生する会心の一撃の判定がされるから、会心の一撃が出る確率もわずかながら上がるでしょうし」
そんなわけで、
「私は買っておくわね」
パチュリーは25000ゴールドの隼の剣をあっさりと買う。
結果、二人の所持金は、
小悪魔:20241G
パチュリー:731230G
それでもまったく揺るがないのがパチュリーの、商人の財力だった。
「バスタードソードはリメイクで追加された勇者、戦士が使える攻撃力+105の武器。クリア前の戦士にとってはグリンガムのムチと並んで最高の攻撃力を持つものよ」
呪われていない武器では、という話であるし、
「でも戦士には同じ攻撃力で会心率を上げる魔神の斧がありますよね?」
ということもあるが。
「そうね、でもリメイクではゲームボーイカラー版を除いて、バイキルトをかけると会心の一撃が出なくなるから。そうするとミスが出る分、魔神の斧の方が不利になるから」
同じ攻撃力+105で戦士も装備できるグリンガムのムチもあるが、それを他のキャラに回し、バイキルトをかけて戦う、という場合には出番があるわけである。
「それと携帯電話版から続くスマートフォン版、PlayStation 4、ニンテンドー3DS版では破壊の鉄球が完全な一品ものになった結果、攻撃力100以上の呪われていない武器の中で、唯一、制限無しで多数を揃えられる武器になっていたりするわ」
一応、魔神の斧はミミックが1/256の確率でドロップするが、ゲームボーイカラー版以外は通常敵として現れないため入手は困難だし数が限られるものなのだから。
まぁ、中断の書があれば極端な話、戦闘前にセーブ、ドロップするまでリセットでやり直すことを繰り返せばミミックの数だけ手に入れることはできるが……
「あとはバラモスを勇者一人で撃破するともらえることでも有名ね」
「それが店売りですか……」
「そうねぇ、公式ガイドブックでは「激しい怒りが込められた剣」とされていたけれど、プレイヤーの怒りは確かに買っていたかもね」
ともあれ、
「公式ガイドブックでは「Bastard sword」という英語表記がされていたけれど、これは現実にある片手でも両手でも扱えるように作られた剣よ」
通常は盾と共に片手剣として使い、強敵には防御を捨て、両手持ちで強打する。
テーブルトークRPGの元祖、ダンジョンズ&ドラゴンズの上級ルールで登場したものが日本のサブカルチャー界隈では初出だろうか?
同ゲームのリプレイを元に書かれた小説『ロードス島戦記』の主人公パーンが使っていたことでも知られているものだが。
「Bastardは「私生児」「まがい物」の他に「雑種」という意味があって、片手剣と両手剣の両方の用途を併せ持つことからこんな名前が付いた、とも言われているわ」
そして、
「公式ガイドブックの「激しい怒りが込められた剣」という記述は、Buster Sword(破壊の力を持つ剣)とのダブルミーニングかとも言われているけれど……」
パチュリーは首を傾げる。
「スラング、俗語では「You bastard!」といえば……」
「「この野郎!」「ろくでなし!」という罵り言葉になりますね」
「そう、だからそちらをイメージしたのかも知れないわね」
ということ。
なお、
「お値段は31000ゴールドとそこそこ高いから、まぁ、バラモスを一人で撃破した報奨としては良いものだったのじゃないかしら」
何だかんだ言ってもバラモス撃破直後の武器としては最強だし、次の武器を入手するまでのつなぎとしては十分に使える。
高額なのだから売り払って資金源にするもよし。
まぁ、勇者が一人でバラモスを撃破できるまでレベル上げをしているのなら、ゴールドもまた余っているだろうから嬉しくないのかも知れないが。
「ところで、この盾を見てちょうだい。これをどう思う?」
「すごく…… 大きいです……」
「オーガシールドは勇者、戦士が装備できる守備力+60の盾。戦士にとっては最高の守備力を持つものね」
とパチュリー。
「ドラクエ5で登場したものをリメイクで逆輸入したものだけれど、他の作品では巨人族が作り出したとも、オーガが使っていたとも言われる巨大で重い盾よ。あまりの重さにトルネコ2では装備していると満腹度の減り方が通常の倍になってしまうくらい」
それぐらいでかくて重いので、勇者と戦士にしか扱えないのだ。
ドラクエ6、そして7におけるこの盾の『かっこよさ』は、いずれも-10で、おなべのふたの-20に次ぐ格好悪さ。
しかしデザイン自体は3リメイクと変わらないシリーズ共通の金の縁取りに宝玉を埋め込んだ豪華なものなので、つまりは不格好に見えるほど巨大なものなのだろう。
現実の盾で言えばタワーシールドや、それを現代風にしたライオットシールド、日本の機動隊の盾などのようなものか。
しかし、
「耐性がまったく無いから、総合性能ではドラゴンシールドや魔法の盾には負けるのだけれど」
物理攻撃しかしてこない相手には活用できる、バラモスゾンビ戦などで有効ではあるが、普通のパーティだとスクルト重ねがけで対応するので、固めきるまでの最初の数ターン、楽になるという効果しか無いのでやはり微妙と言えば微妙。
「25000ゴールドを出す価値があるかどうかという話ね。特に勇者であるあなたは次に潜るラダトーム北の洞窟でこれ以上の守備力を持ち、耐性も万全な勇者の盾が手に入るのだし」
そして、
「グレートヘルムは勇者、戦士が装備できる守備力+45の兜。ゲームボーイカラー版以外はオルテガのかぶとに本来あるはずの補助呪文耐性がついていないうえ、これを守備力で上回る兜は呪われている般若の面のみ、戦士はもちろん勇者にとっても最強の兜になるわ」
まぁ、
「オルテガのかぶとにラリホー、マヌーサ、ルカニへの耐性が正しく付けられたゲームボーイカラー版でも、これ以降はこれらの耐性が有効になるボスは存在しないから、ボス戦の際にはこれが最強の兜と言えるのだけれど」
ということはあるが。
しかし、
「オルテガの兜の守備力は+30でグレートヘルムとの差は15ポイント。実ダメージにして3~4ポイント差よ。そのために35000ゴールドかける? ってお話があるわね」
防具は一般に鎧→盾→兜の順でコストパフォーマンスが悪化する。
その一番コスパの悪い兜の一番性能が高く価格も高い品なので、コスパ的には最悪。
店売りの品でこれ以上にコスパの悪い品は、守備力+1の危ない水着という例外以外には存在しなかったりする。
とはいえ、
「ただ、勇者のあなたには勇者の盾と光の鎧が手に入るから、これ以降、買うべき防具ってこのグレートヘルムぐらいしかなくなるし、私たちはスクルトで守備力を高めることができないから、これからのボスキャラ戦のためにも、少しでも守備力を上げておきたいというのはあるのだけれど」
「でもお金が……」
「そうね、でもゾーマ戦までに金策が間に合わないと、また不幸の兜を被ってもらうことになるわよ」
「うぇっ!?」
不幸の兜は運の良さをゼロにする呪われた装備ではあるのだが、13ゴールドと非常に安い。
解呪の費用が後からかかるとはいえ、これは魅力的であった。
「キングヒドラからゾーマまでのボスキャラ戦だと、敵が誰も補助呪文を使ってこないから、ここで不幸の兜をかぶればまったく実害なく守備力を上げることが可能よ。勇者ならザキ系を無効化する聖なる守りを装備できる上、ゾーマ討伐前ならバシルーラは元々無効だから、ゾーマの城に限れば基本的にノーリスクで行けるし」
という話。
厳密に言えば一応、ミミックが稀にラリホーを唱えてくるが、そもそも開けなければいいし、開けるにしてもザラキ対策のアストロンでガス欠にする方法で対処できるので問題は無い。
また、聖なる守りを身に着けると他の装飾品が付けられなくなる分、不利になるということもあったが。
「で、でもそんなことをしたらロトの兜の正体が不幸の兜になってしまいますよ!」
と、叫ぶ小悪魔だったが、
「実際、ファミコン版ドラクエ3では、ロトの兜に該当するような形をした兜が存在しなかったから、ロトの兜=不幸の兜説が存在したわよ」
形状的に近いものがあるし、前述のとおり勇者のみだがラストダンジョンでリスク無しに使える最強の兜でもあるのだし。
とはいえ、
「後に、リメイクで追加されたオルテガの兜がロトの兜であると、公式でアナウンスされたから、今では否定されてはいるのだけれど」
ということではあるのだが。
お買い物回でした。
隼の剣の理屈はマニアな方ならご存知でしょうけど、具体的な計算式があると使いやすいですよね。
あと、ファミコン版では不幸の兜がラストダンジョンでは最強とか、今だからこそ知られるようになったネタとか本当、興味深いです。
次回はラダトーム北の洞窟で勇者の盾の回収の予定ですが。
さっそくパチュリー様の隼の剣が猛威を振るいそうです。
ご意見、ご感想、リクエスト等をお待ちしております。
今後の展開の参考にさせていただきますので。