ロキファミリアの雷兎   作:ネヘモス

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ベルの髪色について意見をいただきました。完全に忘れてましたorz
どの道(無理矢理だけど)髪色についてはこの話で補完させて貰います。


傷痕ーベル・クラネルの軌跡

ベルのロキファミリア入団が決まった直後、突然ベルが倒れ込んだ。

 

「あれ?ベル?どないしてん!?ママ、回復薬(ポーション)の手配…」

 

「待てロキ。この少年、髪の色が変わってないか?」

 

緊急事態につきツッコミを放棄したのは副団長のリヴェリア。確かに髪の色が銀色から白い髪になっている。というか今気がついたが、

 

「この子、髪の色いつの間に変わってん?」

 

最初に目撃した時は髪の色が白かった。だが、黄昏の館に着いた頃には銀色に染まってた。そして、

 

「おいロキ…。一つだけ聞いていいか?」

 

「……な、何やリヴェリア…?」

 

「この子の両腕両脚が複雑骨折してるんだが、これはどういう事だ…?」

 

「さ、流石にそこまでは…、ホンマに何も知らんねん!!」

 

リヴェリアは万能回復薬(エリクサー)をベルの四肢にかけて、空いている部屋のベッドに運んだ。容態を見ようとした彼女がベルの服を脱がせた時、絶句した。

左腕に火傷の跡、そして、何箇所もある打撲痕。

 

「ロキ、隠れてないでどういう事か説明しろ」

 

「まあ、ベルが全集中を使った時点で止めるべきやったんやろうがな…。いや、違うな」

 

全集中という聞きなれない言葉をとりあえずリヴェリアは保留する。

ロキの考えが正しければこの子は恐らく、長い間全集中の呼吸をしながら生活していた。祖父(ゼウス)亡くなった(天界に送還された)後、自分だけで生きる為に。そして、常に戦場にいた彼は普通の呼吸法を忘れてしまい、無意識の全集中の呼吸で痛みを感じなくなり、その結果高すぎる敏捷の反動をモロに食らう身体になってしまった。…あれ?それじゃあ…。

 

「この子の敏捷値に他のステイタスが着いていってへんってこと!?」

 

「はあ、しばらくこの子に全集中とやらを使わせない方法は無いのかロキ」

 

「えーと…」

 

リヴェリアの質問に手ずまりになったロキ。そこに天使が現れた。

 

「ロキ、私がこの子(ベル)の面倒を見る」

 

名乗りを上げたのは意外にもアイズだった。

アイズもダンジョンの中では常在戦場の心構えでいる。しかし、ホームにいる間は切っている状態にしている。つまり、全集中の呼吸のスイッチのオンオフを出来れば問題ない。ロキ、リヴェリア、後で話を聞いたフィンがこの意見に賛同した。

 

「それと、あの剣没収やな。とは言ってもなー、残り2振りの能力が分からん。アイズたんは剣回収したんやろ?どんなんやった?」

 

するとアイズは少し困った顔になった。普段ならからかうロキだったが、状況が状況なだけに自重した。

 

「まず大刀の方。見た目に反して軽すぎる。間違いなく魔剣。不壊属性も付いている。でも、片手剣は、分からない。そもそも、こんな物をどうして持ち歩いてたのか分からない」

 

ロキとリヴェリアがベルが床に置いた方の片手剣を抜いてみる。リヴェリアはその刀身を見て目を疑った。

その刀身は焼け焦げていた。だが、それ以上にその剣は不可解だった。

 

「妙だ。鉄が本当に焼け焦げたみたいになってる。それも中まで」

 

表面ならまだしも、その中身が焼け焦げている。最早剣の形を保ってるのが不思議だ。

 

「それにデスぺレートをぶつけて不壊属性があるのは確かめた」

 

「嘘やろ、こんな剣もどきがデスぺレートの剣戟を受けて壊れんかったんかい…」

 

「本人に聞くしかないな」

 

「リヴェリア…、ベルの左腕の火傷の跡…」

 

アイズがベルの左腕を見ると少し申し訳なさそうに呟く。ところが、リヴェリアから返ってきた返事は予想外のことだった。

 

「アイズ、これはお前を庇って出来た火傷じゃない。リオレウスの火球程度ならそもそも1年も火傷の跡が残るなんて話は聞いたことがない…!?」

 

そこでリヴェリアは「まさか…」と呟いて先程の剣を握る。

すると、焼け焦げた刀身の隙間から赤い光が放たれてることに気がついた。リヴェリアはこれを鞘に戻すと驚くべき事実を口にした。

 

「ロキ。この剣も魔剣だ。しかもかなり厄介な代物の」

 

「え?そんなにヤバい代物なん?」

 

「さっきもしやと思ってあの剣に魔力を注ぎ込んでみた。そしたらビンゴ、私の総合魔力量の半分を食らってやっと魔剣としてのの本性を現した」

 

ロキは思考を停止した。Lv6のハイエルフ、それも「九魔姫」の二つ名を持つロキファミリア副団長のリヴェリアの総魔力の半分でやっと魔剣として機能する、ここから導き出されるベルが突然倒れた理由。

1つは常在戦場の心構えで全集中の呼吸を長い間使っていた反動、そしてもう1つは精神疲労(マインドダウン)。てことは、

 

「私はレフィーヤに頼んで高等魔力治癒薬(ハイマナポーション)を持ってこさせる。ロキはこの事を幹部連中に伝えてくれ。アイズはベルが起きるまでそばに居てやれ」

 

各々リヴェリアの指示に従い持ち場を離れた。ベルと唯一の顔見知りのアイズを除いて。

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『ベル!しっかりせい!』

 

『分かってるよ、じいちゃん!!』

 

これは夢だ。ベルの祖父が生きていた10歳頃の夢。祖父から英雄の話を聞かされたベルは自分も英雄になりたいと祖父に言った。すると祖父はベルに戦いの基礎として「全集中・雷の呼吸」を教えこんだ。その修行は過酷で、何度も何度も音を上げそうになった。そして2年後、全集中・雷の呼吸が完成したのを皮切りに、祖父は亡くなった。

行く宛がないベルは、祖父の遺言を思い出す。

 

「ダンジョン都市・オラリオでハーレムを作るのじゃ、ベル。そうすれば、英雄に近づけるかもしれんぞ…」

 

ベルは正直ハーレムには微塵も興味が無い。でもオラリオには興味があった。そして、祖父が僕の為にヘファイ…誰だっけ?から預かった1振りの刀を持って傭兵紛いのことをやっていた。その結果、ベルは常に雷の呼吸を行うことで4年間食いつないで来た。ちなみにベルは(本人は知らないが)外の世界で「幼雷公(リトルライトニング)」の二つ名で呼ばれている。

そう言えば、後頭部に幸せな感覚がするなぁ。

 

……え?

 

ハッとなって目を覚ます。身体が思う様に動かないところを見るに、雷の呼吸を止めたものだと思われる。そして、ベルを見つめる碧の双眸と金色の長髪。うん、なるほど。どういう訳かアイズさんに膝枕されてるのは分かった。

 

「あのーアイズさん?何で僕はこんな事に?そして何故に頭を撫でられているんです?」

 

「綺麗な白髪で赤い目をしてるから、何だか兎みたいで可愛くて…」ナデナデ

 

「……」ショボーン

 

兎みたいで可愛い、この言葉は何故かベルの心に深く突き刺さった。しかも怠くて身体が動かない。つまり、この状況を打破する方法は(無情?にも)存在しなかった。

 

「もう少し待ってて。レフィーヤが高等魔力治癒薬を持ってくるから」

 

「アイズさん、高等魔力治癒薬を持ってきま…した…。何してるんですか?誰の差し金でこんな事してるんですか?」

 

「ロキ」

 

ずんずんと擬音がしそうな勢いでこちらに歩いてきたのはブロンド髪のエルフの少女。ベル・クラネルとレフィーヤ・ウィリディスの出会いは(ある意味)最悪の形で訪れた。

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ロキは自室でベルの動きを思い出す。何も知らないエルフ族の手前、全集中の呼吸の詳細は伏せたが、それを加味してもおかしな点がある。確かにジジイがベルを鍛えて全集中の呼吸を覚えさせたのは事実だと確信した。だが、

 

(それを鑑みても、ベートはLv5の冒険者やで…。推定Lv3のベルがベートが対応できない速度で動いてたとしたら、雷の呼吸じゃありえへん…)

 

雷の呼吸、どうもこの単語に違和感を覚える。ロキは一つだけ有りうる可能性を考えていた。

 

(もし、ベルが使ってる全集中が「雷の呼吸」とは別のものだとしたら?)

 

ベルから没収した(本人の了承は得てないが)ベートとの戦いで使われた金色の魔剣を見る。刀身の根元にはオラリオ屈指の鍛冶神・ヘファイストスの名前が神聖文字で刻まれていた。

明日は忙しくなりそうだと、らしくもなくロキが溜め息をついた。




備考
ベルの持つ魔剣
・共通して不壊属性を付与してある。
・ラストボルトの刀身にはヘファイストスの神聖文字。
・物理法則をガン無視したような軽さの大刀と剣かどうかを疑うような黒焦げの刀身の片手剣。2本とも製作者は不明だが、少なくともグロッソの魔剣では無い。
・しかも黒焦げの片手剣はかなりの魔力を使わないと魔剣として機能しない。性能は不明。

ベルの雷の呼吸の弊害
・敏捷が上がりすぎたため他のステイタスが追いつかず、加速の加減を間違えると四肢の複雑骨折も有りうる。
・無意識下の発動中は髪色が銀色に変わる。

ロキの懸念
・「雷の呼吸」という単語にある違和感を覚える。そして、ベルの雷の呼吸によく似た型の技がある別の呼吸を使っているのではと疑っている。ジジイのことだから伏せてる可能性大。

今後の展開をどのルートにするべきか

  • アイズルート
  • レフィーヤルート
  • リヴェリアルート
  • リリルカルート
  • ハーレムもしくは作者に任せる

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