ロキファミリアの雷兎   作:ネヘモス

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「オッタル?首尾は上手くいったかしら?」

フレイヤファミリアホームにて、妖艶な笑みを浮かべる女神が囁く。

「あのミノタウロスなら、間違いなく」

「フフ。さあ見せて、幼雷公。あなたのその澄んだ魂の輝きを!」


迷宮探索ーベルとレフィーヤと緊急事態

「えーと。武器よし。防具よし。回復アイテムもよし、と。レフィーヤさん、お待たせしましたー」

 

「待ってないからいいわよ。では、リヴェリア様、アイズ様。行ってきます」

 

「初日から飛ばしすぎないように」

 

「アイズが言っても説得力の欠片も感じないけどな…」

 

あはは、と笑いながらリヴェリアが笑みを浮かべる。今日からベルはダンジョンの探索にデビューする。フィン、リヴェリア、ロキの判断により肩慣らしに第5階層まで探索することを許可された。ベルは初めてのダンジョンでワクワクが止まらない様子だったが、レフィーヤは物凄く嫌だった。

入団早々に憧れのアイズに膝枕をしてもらい、更にはフィンやリヴェリアまでもがベルに贔屓してるように見えたのだ。確かにベートとの試合の時も、フィンとの訓練も見ていた。あの強さはレフィーヤから見ても同等かそれ以上だろう。

 

だからこそ気に食わない。あの白兎の様な新人が。

 

(どうにか懲らしめる方法を考えなきゃ)

 

レフィーヤはこの時、自分の心に魔が差したのに気づいていなかった。

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そして今日のノルマの第5階層まで来て、レフィーヤは、

 

「ベル、そろそろ魔石が溜まってきたから一旦上がりましょう?」

 

「えっ?もうそんなに溜まったんですか?」

 

マジである。ベルは全集中を使わずに、湧いてくる魔物を一掃していた。しかも、レフィーヤと一定の距離を保つように距離を置きながら。

 

「ベルはもう少しだけ潜ってて。私が魔石を換金してくるから」

 

リヴェリア様から念のためにベルに付き合えと言われてはいたが、正直馬鹿らしい。あんなに強いんだから私が居なくても大丈夫。リヴェリア様は心配性がすぎる。一応、夕方には帰るようにベルに言ってあるから1人で荒稼ぎして帰ってくるだろう。そう思い、私はバベルの魔石換金所に来た。

 

「合計5000ヴァリスになります」

 

「半日でこれだけ稼げるのか、ウチの新人は…」

 

「凄いですね。滅多にいないと思いますよ。Lv1でそんなに稼げる冒険者は」

 

換金所にいたのはベルの担当アドバイザーのエイナ・チュール。眼鏡をかけたハーフエルフの女性である。

 

「でも油断はしないで下さい。ベル君にも言ってますが、低レベルの時は『冒険者は冒険してはならない』のが鉄則ですから」

 

「でも低レベルであの強さだから問題ないと思いますよ?」

 

「ならいいんですけどね…。妙な胸騒ぎがするんですよ…」

 

「気のせいですって。アイツに限ってそんな事ある訳ない」

 

そう、この時点ではレフィーヤの己の行為が如何に愚かな事だったのか知る由もない。

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その頃ベルはひたすらゴブリン、コボルト、ダンジョン・リザード等の上層の雑魚をひたすら狩り続けた。自分の魔石用ポーチがある程度埋まるのを確認すると、

 

「うわあああ!!」

 

男のものであろう悲鳴が響き渡る。そういえば、自分が狩ったモンスターを最後にモンスターの気配がしなくなった。すると、男がベルの横を通り過ぎ、

 

「あんた、この階層にいるってことはLv1だろ!?逃げるぞ、見たことねえミノタウロスが出やがった!」

 

「ミノタウロス!?何でこんな上層に!?」

 

「知らねえよ!とにかく、逃げろ。囮がどれだけ役立つか分からねえうちにな!」

 

そう言い残すと男は上層に走り去っていった。だが、ベルはそれよりも男性が言った囮というワードに引っ掛かりを覚える。

囮のアイテムがあるならわざわざ焦って逃げる必要はないはず。何故焦る?

 

「待って…下さい…。リリを置いて行かないで…」

 

すると、後方から息が途切れ途切れの女の子の声が聞こえた。振り向くと、身の丈の2倍近くあるバックパックを背負い、フードを被ったパゥルムがベルの元にやってくる。そして、ベルはあの男が言っていた囮の意味を理解し、そして憤慨した。

 

「さっきの奴…、命をなんだと思っているんだ…!」

 

「あの、あなたは、リリを置いて逃げるなんて、しませんよね…?」

 

「当たり前だ…」

 

ベルは静かに立ち上がる。そして、後ろを振り返ると、青黒い体毛の、見たことの無いミノタウロスがそこに立っていた。しかも、明らかに人の手で作られた(・・・・・・・・)大剣を片手に担いで。そしてベルは(ロキファミリアの支給品の)刀を抜刀する。そして、

 

ーーーグワアァァァァァ!!

 

ミノタウロスの咆哮(バインドボイス)を回避する。ダンジョンの壁を蹴り、ミノタウロスを斬り付けてヘイトを自分に集める。だが、

 

「(くそっ!思った以上に硬い!)今のうちに逃げて下さい!」

 

「けど、冒険者さんは!?」

 

「ギルドに報告に行ってください!早く!!」

 

「っ!?分かりました。持ちこたえてください!!」

 

パゥルムの女性にギルドの助けを頼んで、自分はミノタウロスに向き直る。さてと、どうしたものか。速さが足りないなら、雷の呼吸でなんとかなる。仕方ないと思ったベルは刀を収めて抜刀術の構えをとる。

 

シィィィィ…

 

これが全集中の呼吸と気がついたのか、ミノタウロスが大剣を大きく振りかぶる。だが、コンマ1秒ほどその対応は遅かった。

 

ーーー雷の呼吸、壱の型、霹靂一閃…

 

瞬時、雷を彷彿させる高速の斬撃がミノタウロスを襲うが、やはり上手いこと肉を断ち切れない。だからこそ、この技を使わざるを得なかった。

 

ーーー六連!!

 

スピードをそのままに壁から壁に、蹴りながら移動する。それを6回繰り返し、一度地面に足をつける。同じ箇所を集中的に、6回連続で斬られたのは流石に応えたらしい。ミノタウロスが一時的に蹲る。この隙に逃げようかとも考えたが、

 

(まずい!両脚と右腕の感覚が無い!?)

 

足が、腕が、言うことを聞かない。ミノタウロスもある程度時間が経つと起き上がる。ベルはオラリオに来て初めて、死の危険に晒されることになる。

 

ーーーグオォォォ…

 

立ち上がる強敵(ミノタウロス)。彼の者の大剣がベルを斬り殺さんと振り下ろされる。

 

シャン、シャン…

 

死の危険が迫ろうとしている時、ベルが耳にしたのは、極東に伝わるとされる舞の祭具の鈴の音だった。




今回のベルの武器は中級者レベルの刀だけです。理由は魔剣を使うまでもないのと、もしそれで勝てないと思ったら逃げることを覚えさせる為でした。

そして、さり気にヒロイン候補が出揃いましたね。オラリオ初のピンチに陥ったベル。一体どうなってしまうんだ…。
※ベルの壁を蹴る移動方法は中の人繋がりで一番有名な某スプリガンをイメージしてください。

今後の展開をどのルートにするべきか

  • アイズルート
  • レフィーヤルート
  • リヴェリアルート
  • リリルカルート
  • ハーレムもしくは作者に任せる

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