魔王と歌姫   作:banjo-da

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「おい戦兎!何か俺のニセモノが出てきたぞ!」
「ハイハイ、そうみたいね。」
「てことは次は俺のアーマーも出るんじゃねぇか!?」
「知らないよ。興味無いしな。」
「何だよ!最近ビルドアーマーが影薄いからって拗ねてんのか!?」
「はぁ!?薄くありませんー!カブト編で隕石に穴開けましたー!」
「それっきりじゃねぇか。」
「うるさいよ!大体仮にお前のアーマーが出ても、所詮いちファンの妄想垂れ流し小説だろ!公式デビューしてる俺の方が上ですー!」
「そんな言い方ねぇだろ!せめてファンによる二次創作って言えよ!」
「お前バカの癖に偶に難しい言葉知ってるよな。」



始まります。


2019:悪魔の囁き

王を目指す少年『常磐ソウゴ』。

彼には魔王にして時の王者、『オーマジオウ』となる未来が待っていた。

 

彼は幼馴染みにして駆け出しのアイドル『緒方智絵理』を守る為、仮面ライダージオウとなってアナザーライダー達と対峙するが…寸での所でアナザーライダーを取り逃がしてしまった。

そんな彼の元へ、招かれざる客が訪れる……。

 

 

 

 

 

 

「スウォルツ…!」

 

「そう睨むな。今回俺は、言ってみればお前達の味方だ。─── 無碍に扱うより、話だけでも聞いておいた方が得だとは思わないか?」

 

全ての物が動きを止めた世界。ソウゴですら言葉を発するのが精一杯なこの場で、何事も無かったかの様に不敵な笑みを浮かべる大柄な男。

恐怖に目を見開く智絵理も、ソウゴらの敵意剥き出しな視線も意に介さず。まるで親しい友とでも話すかの様に、スウォルツは落ち着き払った様子で傍のベンチへと腰を下ろす。

彼が何気無く片手を上げれば、何事も無かったかの様に時は再び動き始めた。

 

「白々しい事を。以前、私達と手を組む…等と宣っておきながら、虎視眈々と仮面ライダーギンガの力を狙っていたのを忘れたのかい?」

 

「ハッ!お前がそれを言うのか、ウォズ。魔王に試練を与える為、俺達を利用しようとしたお前がな?」

 

不信感を隠そうともしないウォズに怯む事無く、挑発的に口角を吊り上げ応えるスウォルツ。

 

「お前の戯言に付き合うつもりは無い。とっとと失せろ!」

 

「ほう?どうやら、常磐ソウゴに感化されて丸くなった様だが…どうやら血気盛んな所は変わらんらしいな、ゲイツ。腐ってもレジスタンスの戦士という所か。」

 

「貴様…ッ!」

 

「まあ聞け。俺はお前達と口論しに来たワケでは無い。

…あのアナザーライダーには、俺も頭を抱えていてな。お前達の力を借りに来た…というワケだ。」

 

「…どういう事?そもそもアナザーライダーを生み出してるのは、貴方達タイムジャッカーでしょ。」

 

スウォルツの言葉に疑問を抱いたツクヨミが、彼へ問い掛ける。

そんな彼女をスウォルツは一瞥するが─── その視線に途轍もなく邪悪な何か(・・)を感じたツクヨミは、咄嗟に半歩後退る。

が、次の瞬間には既に彼はジオウ達へと向き直っており、結局その視線の意味するものが何かは分からなかった。

 

「ツクヨミ。その発言は半分正解で、半分間違いだ。

確かに今回、アナザーライダーを生み出したのはタイムジャッカーで間違い無い。…だが、そいつは俺でも、ウールでもオーラでもない。」

 

態とらしく肩を竦めると、スウォルツは事のあらましを語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「端的に言ってしまえば、今回の黒幕はティードという男だ。奴は確かに俺がスカウトし、力を分け与えたタイムジャッカーの一員。

だが、奴の目的は『オーマジオウに代わる王を擁立し、傀儡政権を作り出す』…という俺達の目的とは異なるものだ。」

 

「目的?」

 

「ティードは、自らが王と成る事を目的に動いている。目的の不一致から奴は離叛。独自に行動を続けていた。

恐らく奴は、アナザーリュウガの一件を何処かで知ったのだろう…そうして今回、行動を起こした。」

 

「成程。今後我が魔王が力を継承すべき電王やドライブでもなく、既にこれまで力を継承してきたライダー達でもない、サブライダー…確かに、基本的にはジオウⅡやゲイツリバイブで無ければ対処のしようがない。筋は通っている。」

 

苦虫を噛み潰した様な顔を浮かべながらも、納得した様子のウォズ。

彼の言葉に満足そうに頷くと、スウォルツは続ける。

 

「そもそも、俺達がサブライダーどものアナザーライダーを作らなかったのは…所詮サブライダーはサブライダー。何処まで行ってもそれは変わらん。アナザーライダーにした所で、ライダーの歴史そのものを奪い取れる王の器ではない。」

 

「勝手な事を…!第一、それならばリュウガは何なんだ!」

 

「奴は特別だ。サブライダーで在りながら、仮面ライダー龍騎と表裏一体の存在。奴が王と成れば『城戸真司』という男の存在を媒介に、龍騎の歴史そのものを乗っ取る事も不可能ではない。」

 

今にもスウォルツへ殴り掛かりそうなゲイツに、然しスウォルツは興味無さげに淡々と応える。

 

「それってつまりさ。リュウガ以外のサブライダーじゃ、アンタ達の目的を達成出来ないって事?」

 

「話が早いな、ジオウ。その通りだ。

所詮何処まで行ってもワームの擬態であるダークカブト。葛葉紘汰そのものが変質してしまった存在であるが故に、独立した存在を生み出す事が不可能な鎧武・闇。他にも似たような連中は居るが、俺達の求める条件に見合うのは『城戸真司』で在りながら『城戸真司』ではないリュウガのみというワケだ。」

 

「じゃあ、何でそのティードって奴は…。」

 

「さっきの話をもう忘れたか?奴はあくまで、自分が王と成る事を目指している。

単なる尖兵として使うなら、簡単には撃破出来ないサブライダーの方が都合が良い…というワケだ。」

 

ソウゴ達からしてみれば、あまりにも一方的かつ自分勝手な理屈。だが、ここでそれを口論する事に意味が無い事も彼等は理解している。

やり場の無い怒りをぶつける様に、ソウゴはありったけの敵意を込めスウォルツを睨む。

 

「……アンタの話は分かった。要は、俺達にあのアナザーライダーを倒せ…って事だろ?」

 

「理解が早いのは良い事だ、ジオウ。

もう一つ、ついでに教えておいてやるとすれば…あのアナザーライダーは、所詮ティードにとっては手駒に過ぎん。奴等にはアナザーライダーの力を制御するだけの目的も、それを向ける矛先も定まっていない。

──── 今日は祭りなのだろう?奴等が無秩序に暴れれば、どれだけの犠牲が出るかも分からんな?」

 

「スウォルツ、貴様ァ!」

 

ここまで必死に感情を抑えていたゲイツが、限界とばかりにスウォルツへ殴り掛かる。

だがスウォルツは、面倒くさそうに彼へ掌を向け、その動きを完全に停止させた。

 

「ぐっ…!」

 

「俺を殴った所で状況は変わらんぞ?

ああ…犠牲者もそうだが、今言った通りアナザーライダー自身、その力を御しきれていない。そもそも先に自滅するかもしれんな…そうなれば、ウォッチを埋め込まれた連中も只では済まんだろう。」

 

くっくと愉快そうに笑いながら、スウォルツは彼等に背を向ける。

 

「俺の持つ情報は伝えた。後は好きにするが良い。

ティードは俺の方で始末しておく…それだけは約束しよう。」

 

「…アンタに協力するつもりはない、って言ったら?」

 

アナザーライダーを放置する事など出来る筈もない。

そう分かっていながらも、半ば意地を張る様にソウゴはスウォルツへ問い掛ける。

だが、彼の真意等お見通しとばかりに、スウォルツは不気味な笑みを浮かべながらソウゴへと振り返り。

 

「その時はその時だ。他にも手がないワケでは無い。

 

常磐ソウゴは、民を見捨てる王だった…俺の期待外れだった、という話。それだけだ。」

 

パチン、と指を鳴らし───── スウォルツはその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~…智絵理ちゃん、大きくなったね。本当に久し振り!まさかアイドルになってるなんて…おじさんビックリだよ!」

 

「はい…えっと、お久し振り…です!おじさんも、元気そうで何よりです。」

 

「うんうん、ありがとね。あ、お茶淹れてくるからちょっと待ってて!」

 

いやぁ、感慨深いなぁ…と呟きながら奥へ消えて行く順一郞。

 

スウォルツの襲来の後、一度体勢を整えるべくクジゴジ堂へと戻った一同。

ステージや、機材の一部が破損してしまった為、智絵理も待機せざるを得なくなり、彼等と同行している。

 

「えっと…それじゃあソウゴ君は、王様になるために…ずっと、あんな人達と戦っていたの…?」

 

ここまできた以上、彼女に何も告げないワケにはいかない。そう思い、ソウゴはやむ無く智絵理に事情を打ち明けた。───── 無論、オーマジオウと最低最悪の未来に関しては伏せておいたが。

 

「うん。ライダーの力を集めて、王様に成る為に。」

 

「何で…?危ないよ…!王様になりたい、って夢は凄いと思うけど…そんな、危ない事する必要無い…と思う。」

 

ここまで話をしていて、ソウゴ以外のメンバーも智絵理がどういう人間なのか理解しつつあった。

 

─────── 優しいのだ。

 

彼女は他人が傷付く事すら、自分の事の様に苦しみ、嫌がる。

ツクヨミやゲイツは勿論、普段は他人への興味の薄いウォズですら、彼女の前では流石に普段の言動を控える程に。

現に彼女は、仲の良いソウゴのみならず、ゲイツやウォズの事も同じ様に心配していた。

だが、それはそれ。現実問題、アナザーライダーを放っておく事も出来ない。

 

「智絵理さんの気持ちも分かるけど、今はその事を話してる場合じゃないわ。あのアナザーライダーを野放しにしていたら、大勢の人達が苦しめられる。」

 

「そうなれば、あんたのステージ…いや、祭りどころの話じゃない。何としてもアイツらは倒さなくては。」

 

「ステー…ジ…。」

 

ゲイツの言葉にピクリと小さく反応し、俯く智絵理。その表情は何時に無く曇っている。

 

「智絵理…?もしかして…ステージ、中止にしようって思ってる?」

 

「え…!?あ、えっと…それは…!」

 

「……どうやら、図星の様だね。確かに、観客の安全を考えればそれも有りかもしれない。」

 

「…でもそれってさ。折角今日まで智絵理が頑張って来たのに…それで良いの?」

 

「わ、私は…!………うん。だって、私のせいで沢山の人達が…危ない目に遭うのは…嫌だから…。」

 

だから大丈夫───── そう言いながら、彼女は笑って見せる。

けれどその笑顔が、無理矢理作り出した作り笑いだという事は、その場に居た誰の目にも明らかであった。

 

「でも…。」

 

「ごめんなさい、皆さん。ちょっと、気分転換に散歩してきますね。」

 

ソウゴの言葉を遮り、彼女は珍しく早口でそう告げると、足早にクジゴジ堂を後にした。

 

「智絵理…。」

 

「ソ、ソウゴ君!?何か智絵理ちゃん、泣きそうな顔して出て行っちゃったけど…どしたの!?」

 

智絵理と入れ替わりに、お茶を手にした順一朗が慌てふためいた様子で部屋へと戻って来る。

 

「叔父さん…。ちょっとね…色々あって、智絵理…凄く苦しんでるみたいで。」

 

その言葉だけでは、何があったのかは到底見当も付かないだろう。

けれど。深く追及はせず、必要な言葉だけを伝えて人の背中を押してあげられる…常磐順一郎は、そういう人間だった。

 

「……そっかぁ。なら、ソウゴ君は、智絵理ちゃんを助けてあげないとね。ソウゴ君は、智絵理ちゃんの『白馬の王様』なんだから。」

 

「白馬の…王様?………いやいやいや、叔父さん。それを言うなら白馬の王子様じゃないの?いや、俺王子様じゃないけど。」

 

順一郎の発言に、困った様に苦笑するソウゴ。

けれど順一郎は、心底真面目な様子でソウゴに語り掛ける。

 

「あれ?ソウゴ君、忘れちゃった?白馬の王様、言い出しっぺはソウゴ君って聞いたよ?」

 

「え?…俺?」

 

「そう。何時だったかな…ほら、昔叔父さんがソウゴ君達の家に遊びに行ったとき。なんか智絵理ちゃんが、意地悪されてたみたいで…ソウゴ君が助けてあげた日があったじゃない。」

 

「え…?それって…。」

 

心当たり、というより、つい先程聞いたばかりの日の事に間違い無い。

確かにその日の事は覚えていたが、何か特別な事等有っただろうか…と、ソウゴは首を傾げる。

 

「まあ、随分昔の話だからねぇ。

その日、智絵理ちゃんがね。凄く嬉しそうに教えてくれたんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界には、白馬の王子様よりずっと優しくて格好良い『白馬の王様』が居る…ってね。」




『普通の地球外生命体、エボルト。
彼に待っている未来というか話の初っ端から最低最悪のおじさんだった。』

順一郎「僕は、そんな前作のせいで黒幕疑惑掛けられまくったけど!最高最善のおじさんになる!」



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