(…それにしても、あの時見えたビジョン…あれがマオの家族なのか?)
マネードーパントと戦っていた時龍斗にも、恐らくはマオが見ていたであろうビジョンが見えた。
マネードーパントに逃げられた後、急いで探偵事務所のガレージの奥に有る隠し部屋に入ったのだが、
「あっ…ああっ!!!」
「やっぱり…。」
マオは虚ろな瞳で何かに怯えている姿の恐慌状態に陥っていた。
「……家族…我が家……私は…私は……。」
「おい、マオ! しっかりしろ!!!」
「うぅ……あぁ……。」
異変が起きたマオに対して説得を行おうとするが、それよりも早くマオは意識を手放してしまう。
「…マオ…。」
マオの顔には涙の跡があるのを見つけて、龍斗は心配そうな声を上げる。どう考えても今のマオの状態は普通ではない。
ミリオン・コロッセオ…
幾つものテーブルの上で仮面を着けた客達が様々なギャンブルを行っている中バットショットは優子の姿を見つける。その様子を映しているが、残念ながら龍斗のスタッグフォンへと映像を送る事は出来ない。
そして、その場にオーナーである男が現われる。
「みなさん、ようこそ。天国のカジノ、ミリオン・コロッセオに! 今宵、この私に挑戦する者が、また、現われた…。その勇気あるチャレンジャーの名は……和泉優子!!!」
優子は仮面を外し、オーナーとの賭け、全てを賭けたギャンブルに挑もうとする。
探偵事務所…
「家族、家族家族家族家族家族!!!」
マオが
「どうして…ここは、地球の全ての記憶が有るはずなのに!? 何で何で何で!?」
必死にキーワードを変えながら検索を続け、やっと“二冊”の本が残った。やっと目的だった物が見つかった事に対する安堵と歓喜を浮かべながらその二冊の本を手に取る。共に題名は『My FAMILY』。
何時ものマオならそれを疑問に思うのだろうが、今の彼女にはそんな余裕は無かった。その内の一冊を手に取り、ページを開くが…。
「う…嘘……。」
「あっ……ああっ!!!」
絶望的な表情を浮かべる中、マオは微かな希望に縋る様にもう一冊の本を手に取る。もう一冊の本と同じく同じく題名に『My FAMILY』と書かれた本を。
マオがその本を開こうとした時、その本は開けずに終わった。
「嘘…。」
鎖によって閉じられ、それらの鎖を束ねて本が開かれない様に固定している錠がその本が開かれる事を拒んでいた。
…簡単な話だ…。
この本を閲覧するにはこのままでは不可能であり、鍵となる情報を捜す必要が有る。そして、その為の手掛かり等…マオの手元には存在しては居ない。
「い…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲鳴と共にマオの意識は
「家族の事…だったんだな。」
意識が現実へと戻った瞬間に聞こえた龍斗の声に反応して虚ろな瞳を龍斗へと向ける。
「…全ての知識を持っているマオでも唯一つだけ知ることが出来ない項目…。それが、『家族』って訳か。…自分の過去…その記憶を失っているから仕方ないか。」
「私を笑ってるの…。」
「笑ってない。先生だって言ってただろう。『この世に完璧な人間なんて居ない、互いに支えあっていくのが人生だ』って。」
「やめて…止めて!!! 笑えばいいじゃない、変な同情なんて要らない!!! 私は…私は…。」
何かに怯えるようなその様子…今のマオの姿は会った時の彼女の姿を龍斗に思い起こさせる。
そんなマオをどうやって立ち直させるか言う事と、ミリオン・コロッセオの存在しているミッドチルダへどうやって行くべきかと考えていると、スタッグフォンに着信音と共に映像が配信される。
「これは…バットショットからの映像。」
それはバットショットがミッドチルダから地球へと戻ってきたと言う事だろう。だが、バットショットから送られてきたのは…幻のカジノの中の映像。
バットショットから配信されてきた映像へと視線を移すと、ルーレットで賭けをしている優子の姿が映っていた。
『黒の13だ! 来い!!!』
だが、球は無常にも赤の23へと落ちて掛け金を全て失ってしまう。周りで眺めていたギャラリーは『ああ~…。』と言う失望の声を上げる。
『そんな……一億有ったのに……。』
そして、オーナーの男が怪しい笑みを浮かべながら優子へと語りかける。
『君に残された最後の命を担保にするかな? ファイナルステージのレートはそのリスクに見合うだけの特別の100倍!!! 勝てば一瞬で全ての負けを挽回できる!』
『や、やってやるよ!!!』
その言葉にオーナーはカジノの従業員にコインを運ばせる。そのコインを引ったくり、ルーレット台へと向かう。
そして、選んだのは…
『赤の25だ! 来い!』
赤の25だった。
既に結果は出てしまっていた映像だが、龍斗がそれを食い入る様に見つめていると、マオが立ち上がり、映像を見る。
「ダメね…球が落ちるのは…赤の36よ。」
「え?」
マオの言葉に龍斗は彼女の方へと視線を向けるが、すぐに映像へと戻す。…映像の中に映し出された結果は………本当にマオの指摘した赤の36だった。
「…凄いな…マオ。」
「特別な事はしてないわよ、前に検索してみたけど腕の良いディーラーはある程度自由に数字を選ぶ事ができるそうよ。それに、彼女は勝負を焦ってディーラーが球を投げる前に数字を選択した、それじゃ勝てる訳が無いわ。」
龍斗が驚いた声を上げるが、マオは特別な事はしていないと答える。そして、映像の中では賭けが外れた優子が崩れ落ちる。そして、オーナーの男はガイアメモリのスイッチを入れる。
『MONEY!』
そして、マネーメモリのガイアウェスパーが響くとそれを首に挿し、マネードーパントへと変貌する。マネードーパントはライフコインを手に取り、
『待って、次よ! 次は必ず!!!』
『ふん、負け犬のクズはみんなそう言うのだ。確か、両親の店が破産寸前……だったか?』
『っ!?』
『最初は家族の為だった……だが、結局は金に目が眩んで道を誤った……ふん、よくある愚かな話だ。賭けた物の代償は貰う……きっちりとな!』
ライフエネルギーをライフコインに吸収されていく中、優子は何を思ったのだろうか。ライフエネルギーを吸収された優子はそのまま倒れる。
「っ!?」
「あのコインはこうやって作っていた訳ね…。本気で危なかったわね…あの時は。」
「そ、そうだな。」
危うく怒りに任せてドーパント毎ライフコインを破壊しそうになってしまった現状に思わず顔を青くしてしまう。
そして、マネードーパントは飛び回っていたバットショットを捕まえたのか、映像が揺れてマネードーパントの顔がアップで映し出される。
『ふっふっふ、見ているのだろう、探偵?』
結婚式場の教会…
「冴子様、お綺麗です。」
花嫁である冴子がウェディングドレスに着替え終わった様だ。
その頃、タクシードに着替えた霧彦は琉兵衛に呼び出されていた。
「お義父さん。」
「霧彦君…式を挙げる前に、君を一発殴らせてくれんかな?」
「まるでホームドラマですね。下っ端の私が娘さんを奪ったからですか?」
「ふふふ…。」
琉兵衛は霧彦の肩に手を置き、ガイアメモリのスイッチを入れる。
『TELLER!』
霧彦はそのガイアウェスパーの響きに驚愕する。こんな場所でドーパントとなって本気でやりあうのかと。
「園咲の人間は…我等ミュージアムの中枢、いや、この街の…いや、全ての人類の統率者だ。君がナスカメモリを極めているかどうか…それを確かめなければ…式は挙げさせん。」
「お父様、その役目、私にやらせて頂けません。」
若菜が現われてガイアメモリのスイッチを入れようとするが、凍也が若菜の前に立ってそれを制する。
「おっと、若菜姉さん。残念ですけど、その役目はオレに譲って貰います。宜しいですか、父さん。」
「ああ、構わんよ。」
琉兵衛が凍也の言葉に了承すると、若菜も渋々と言った様子で引き下がる。そして、凍也は既に三つのメモリの装着されているベルトを取り出し、それを装着すると、
『SOL!』
「変身。」
空いている挿し込み口にメモリが入り、凍也はその姿を仮面ライダーイクス・ソルエッジフォームへと変える。
「さあ、見せて頂きましょうか、霧彦さん。貴方の…力を。」
探偵事務所…
ミリオン・コロッセオで撮影された映像に映されているマネードーパントは言葉を続ける。
『お前に味合わされた屈辱、是非とも倍返しにしないと気がすまないのでね。』
そう言って映像の中のマネードーパントは映像にも関わらず正確に龍斗を指差していた。
『確かお前は私も持っていないレアなガイアメモリを、六つも持っていると言っていたな。どうだ、それとこのライフコインを賭けて私とゲームをしないか?』
マネードーパントはそう提案する。
「な!? こいつ…何を。」
相手の提案してきた賭けの品に龍斗は驚きを露にしてしまう。
『お前を天国のカジノの客にしてやると言っているのだよ。しかも、特別に貸切にしてやろう。』
周りから客達のブーイングが響くがマネードーパントはそれを気にも留めずに画面の向こうにいるであろう龍斗達を挑発する様に言葉を続ける。
『明日、今日と同じ場所に迎えのバスを出す。お前にこの勝負を受ける勇気があるのなら、待っていると良い。ふふふふ…はははは……。』
その言葉を最後にスタッグフォンに映し出されていた映像は途切れた。
「くっ! どうする、マオ?」
「そうね、ガイアメモリの半分は私のだからね~。で・も、その挑戦…受けて立ってあげようじゃない。」
「って、お前…そんな状態じゃないだろう!」
「私の不調を差し引いても、あいつは大した芸はしてないわ。投下された球の回転速度等から計算して番号を弾き出していた。…同時にディーラーに球を投入する前に賭けた場所には当たらない様に指示していた様子よ。」
そう言ってマオは指を一本上げる。
「あの時の彼女は最後の大勝負、命を賭けて勝てば今までの負けを帳消しに出来ると言われた結果、勝負を焦ってしまった。勝負を焦って直に賭けてしまうとあんな風に必ず負けると言うわけね。」
そう言われて先ほどの優子の時の事を思い出す。確かに最後の勝負はディーラーが球を投げ入れるよりも早く番号を選んで賭けていた。
「つまり、冷静さを欠いた奴…それは必ず勝てないって訳か。」
「腕の良いディーラーを雇っていると言う訳ね。でも、計算をしているとは言っても、少なくともそれ以上のイカサマはしていない。計算もイカサマとは言えないから…事実上、正々堂々と戦っていると言う事になるわね。」
「………。」
そう言われると流石に何も言い返せなくなる。
「そ・れ・に・向こうは私の事を知らないって言うのは大きなチャンスね。」
そう言ってマオは龍斗に向き直り胸を張りながら、
「ふふん♪ この、天才美少女のマオちゃんに任せておけばギャンブルでも大勝利間違い無しよ!」
勝利宣言をする。
結婚式会場…
霧彦はエッジサイドのイクスの拳をかわしていた。
「余裕ですね、一撃でも当たったら即死ですよ。」
「君こそ、本来のスピードの半分程度も出していないんだろう?」
「なるほど、本気を出していないのはお互い様、と言う訳ですね。」
イクスは仮面の奥で霧彦はその表情に余裕の表情を浮かべていた。暫くその遣り取りを続けていると、互いに距離を取りエッジサイドの拳を握る。
それと同時に霧彦は始めてガイアメモリのスイッチを入れてガイアドライバーを装着する。
『NAZCA!』
ガイアドライバーにナスカメモリを挿し込み騎士の様な青い怪人『ナスカドーパント』に変わり、イクスの拳を腹で受け止める。僅かに後退するがナスカドーパントはそれを受けても倒れる事も無く立ち続ける。
それを見ていた琉兵衛と若菜の二人もそれを見て驚愕する。
「今のは中々効いたよ、凍也くん。」
「オレも…まさか本気で殴ったのに倒れないとは思いませんでしたよ…霧彦“兄さん”。」
互いにドライバーを外しナスカドーパントとイクスの姿から人間の姿へと戻ると、お互いに称え合うように言葉を交わして握手をする。
琉兵衛はそれを見て二人に拍手を送る。
「凍也が認めた以上、これは合格と言わざるを得んな……はっはっはっ。」
凍也は頷き、霧彦はその言葉を聞き一礼する。
指定されたルートの付近…
バスを待つ間、龍斗とマオの二人はそれぞれの準備をしていた。ミリオン・コロッセオがこの世界に無い以上警察への連絡は不可能だろう。だから、いざと言う時の為にリボルギャリーにバスの追跡が出来る様に予め発進の準備をしておいた。
そして、一通り準備を終えると今は
「あいつ…無茶しやがって。…自分だって気付いているくせに…家族って言う言葉が…引っ掛かっている事を…。」
「ルーレット…歴史…確立…。」
キーワードを入れると残った一冊の本、『ROULETTE』と書かれた本を手にとってそれを閲覧する。
「次はカード。念の為にポーカー、ブラックジャック、ゲーム毎にルールと必勝法を…。」
「ったく、こんな時…先生や兄さんだったら…何を言うんだ…。」
自分の相棒に対して何も出来ない己の無力さを思いながら龍斗は悔しげにそんな言葉を零すのだった。
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