「ヒ~マ~。」
相変わらずの雰囲気の探偵事務所の風景…。
「…お前は…少しは自分の立場を自覚してろ…。」
マオの言葉をその一言で切り捨てながら、何処か不機嫌な様子の龍斗は解決したばかりの事件の報告書を纏めていた。
風都から客を連れ地球ではない別の世界、ミッドチルダに存在していたカジノ、ミリオン・コロッセオ。その一件を解決する為にミッドチルダまで出向いた龍斗達はそこで、自分達(当人達は仮面ライダーWの事を一人と認識している様だが)を確保しようとした機動六課の面々との小競り合いが起こった。
フォアード陣と戦っていた時は何時もと変わらなかったのだが、隊長と呼ばれた二人の女性と出会った時から、龍斗の様子はおかしくなったのだ。
「う~…龍斗、冷たいー。あの人達に会ってから様子が変よ。」
「お前には関係無いだろう!!!」
「む~…。」
不機嫌この上ないと言う様子で怒鳴る龍斗に対して不満全開と言う態度で唸るマオ。それは普段の探偵事務所の光景とは何処かが違っていた。
(…機動六課の隊長…龍斗と知り合いなのかしら…?)
龍斗と相手の反応からして、それは間違いないのりだろうが、普段の彼からは想像できないレベルで不機嫌になったのだから、龍斗と六課の隊長達とは穏やかな関係とは言えないのだろう。
(…違うわね…検索して見たら…あれは『憎しみ』…。『怒り』だけじゃなくて、『殺意』も有るわね…。それに…あのガジェット…多分、『ファング』と同じ…でも、あんなメモリは私は知らない…。)
無言で報告書を纏めている龍斗を横目で見ながら、隊長陣と出会った時の事を思い出しながらマオは顔を伏せる。
その時に彼女が見たダブルを助けようとした自分の知らないガジェット…。彼女が心から嫌う『あのメモリ』を連想させるそれの事を思いだし、マオも微かに不機嫌になる。
(…何よ~…。私に相談してくれてもいいじゃない。私は龍斗の相棒なのに…私達は二人で一人の探偵…仮面ライダーなのに。………それに、『怒り』の感情でガイアメモリを使うのは危険なのに…。)
思わず抱き寄せてしまったクッションを龍斗に向かって投げ付けたくなるマオだが、それを我慢して思考の中に意識を向かわせて行く。
(…『高町 なのは』と『フェイト・T・ハラオウン』…龍斗にここまで恨まれるなんて…この二人が管理局内のミュージアム関係者の可能性は高いわね…。)
マオはそう疑惑を持っていく。
流石の地球の本棚でも、個人のプライベートな事までは検索できない。故にその二人と龍斗の関係も知る事は出来ない。そのせいで当の本人達の預かり知らぬ所で、二人で一人の仮面ライダーの片割れの中で妙な方向に誤解が広がって行くのであった。
「これで良し。おーい、マオ。」
報告書をファイルに収めて保管すると龍斗は思考の中に居るマオへと声を掛ける。
「ハウ!? りゅ、龍斗?」
初めて彼女と会った時の様な声を上げて反応するマオに思わず苦笑しながら、龍斗は言葉を続ける。
「…どうしたんだよ?」
「べ、別に何でもないわよ。」
「それなら良いけど…もう晩いから何処かで夕飯でも食べながら帰ろうぜ。」
「りょ~かい♪」
何時もの様子を見せている龍斗に何時もの調子で返すマオだった。
園咲家
「…特別な『L』のメモリですか?」
「ええ、その通りよ。興味深い能力を持ったメモリだったから、手元に置いておいたのだけど、誤って流通させてしまったのよ。」
凍也の言葉にそう答え、冴子は一度溜息を付く。園咲家の一室、凍也は冴子から相談を受けていた。
「それで…そのメモリを回収すればいいんですか?」
「ええ。でも、すぐにではないわ。…あのメモリを回収するのは、最終的に壊れてからで良いわ…それまで監視して欲しいの…。」
「分かりました。売却した相手の事を教えて頂ければオウルアイに監視させます。監視映像は随時冴子姉さんに届ければよろしいですか?」
「ええ、そうして頂戴。」
冴子の言葉に笑みを浮かべながら頷くと凍也は、
「しかし、そのメモリは何のメモリですか…? 特別とは?」
「貴方にだけ教えて上げるけど、霧彦さんやお父様にもまだ内緒よ。」
そう言って冴子は立ち上がり凍也に背を向けて微笑を浮かべる。
「始めはドーパントに変身しない失敗作のメモリと思っていたの。でも、それは間違いだった…。そのメモリは使った者に素晴らしい物を与えてくれたわ…。」
続けられる冴子の言葉に思わず凍也も驚愕し目を見開いて立ち上がる。
「それは凄い…。今までのガイアメモリにない力…。一体それは何のメモリなんですか!?」
そんな凍也の姿に機嫌を良くしたのか冴子は楽しそうな微笑を浮かべ、言葉を続ける。
「…それは、『ライフ』…死者を生き返らせ、命を与える『生命』のメモリよ。」
「ん~…美味しかった~♪」
「そうだな、稀には外で食べるのも悪くないな。」
夕食を終えて自宅への帰り道を歩く龍斗とマオの姿が有った。
「と~こ~ろ~で~…新しい依頼を引き受けたって言ってたけど…どう言う依頼なのよ~?」
横目で龍斗を睨むマオに対して龍斗はスタッグフォンを開き、依頼が書き込まれている掲示板を表示させる。
「多分、ドーパントは関係ないだろうけどな…普通の探偵の依頼だよ。」
ドーパント事件を解決する為の携帯ホームページだが、稀にこうして普通の依頼を受ける事もしている。飽く迄最優先なのはドーパント関連の事件なので、こうした依頼を受ける事は本当に稀である。
「普通の依頼か~…久しぶりよね、そう言う依頼って。それで、どう言う依頼なの?」
「…誰かに付きまとわれている様だから、何とかしてくれって依頼だ…。まあ、時間は掛かるけど、久しぶりに平和な依頼だろうな。」
「そうね♪」
この時の二人はまだ知らなかった…。その依頼は決して忘れる事の出来ない一つの哀しい事件に繋がると言うことを…。
『L』の名を冠する物語の元で動き出す『
翌日…探偵事務所
「………えーと、貴女が依頼人の…。」
「はい、私、ミヤコです。サクラミヤコ。」
テーブルを挟んで対峙している今回の依頼人である龍斗とマオの二人よりも一つ年下に見える少女は楽しそうにクスクスと笑いながら言った。
「桜の花のサクラじゃなくて、人偏に左って書いた『佐』に、倉って書いて佐倉で、名前が宮の子で宮子。」
制服姿のショートカットの少女…一応学生の身分に有る龍斗とマオの二人だが、基本的に探偵として活動する時には常に私服に着替えている二人とは違い、彼女が着ているのは風都の中の学校の制服らしい。
女の子らしいが彼女自身の明るい性格は何処かの冷酷な自称太陽とは違い太陽を連想させる。また、少年のような活発さを連想させるがそれも、彼女自身の魅力を引き立てていて彼女を魅力的に見せている。
「ねえねえ、探偵のお兄さん、彼女とかっているの? 私と年はかわらないでしょ? 何処の学校? どうして探偵なんてやってるの?」
自分と年も変わらない龍斗が探偵をやって居る事に興味を持ったのか、行き成りの質問攻めである。龍斗も彼女の勢いに流されて、話を進められずに居ると言う訳である。
「あー、えーと…佐倉さん「宮子でいいですよ、探偵のお兄さん。」…あー…じゃあ、宮子さん…。っ!?」(殺気!?)
依頼人の宮子の事を彼女に進められるまま名前で呼ぶと、何処からともなく放たれた殺気が迫ってくる事を感じ、慌てて振り向いた時…それを目撃した。
「マ、マオ!?」
「龍斗ぉ~…。一回死んで♪」
ハートマークが付いていそうな声で殺気全開で釘バットを振り下ろすヤンデレモードになっている相棒であるマオの姿…それが、龍斗が目撃した最後の光景…
「勝手に殺すな!!!!」
………失礼。釘バットで殴られる物の熟れているのか、すぐに置き上がると犯人であるマオを睨みつけ、
「殺す気か!?」
「龍斗なら大丈夫だから♪」
龍斗のツッコミにサムズアップと共にそう返してくれるマオで有った。
「いや、死ぬから!!! オレでも絶対に死ぬから!!!」
「現在進行形で生きてるじゃない。」
「あははは~。探偵のお兄さん達って、面白いですね。」
ツッコミを入れる龍斗と、彼なら大丈夫だと言うマオ、そして、それを見て心底面白そうに笑っている依頼人の宮子…有る意味平和な探偵事務所の光景+1だった。
数十分後…
何時もの漫才のような光景も落ち着きを取り戻し、妙に殺気だって睨んでいるマオをなるべく視界に入れずに龍斗は宮子に話しかける。
「それで、依頼の方は…誰かに付きまとわれている気がするから、何とかしてくれと言った物ですね。」
「そうなんですよ~。私なんかを付けても何が楽しいのかわからないんですけど、何だか気味が悪くって。…お願いできますか?」
宮子の言葉に龍斗は軽く息を吐き、
「分かりました。その依頼、引き受けましょう。」
「本当ですか!?」
「ただ、飽く迄“気がする”と言う話ですから、飽く迄貴女の勘違いという可能性もあるので、調査して見ますが…。」
「はーい。」
彼女からの依頼の解決に向けての説明をする龍斗。不機嫌な表情で無言のまま釘バットへと手を伸ばしているマオ…微かに彼女の姿を視界の隅に居れて、龍斗は冷汗を流すのだった。
(…オレ、この依頼終わるまで生きてられるか…?)
はっきり言って、ミュージアムの幹部達も裸足で逃げ出しそうなダークオーラを纏った相棒(マオ)によって抹殺されそうな現実に身の危険を感じる龍斗だった。
「それじゃあ、明日からよろしくお願いしますね。」
「ええ、お任せ下さい。」
一礼して帰って行く依頼人をそう言って見送りながら、龍斗は『ギ・ギ・ギ』とでも擬音が付きそうな動作で後を振り返る。
「あのー…マオさん…何故に釘バットで素振りをしているんでしょうか?」(^_^;)
「これが、野球の練習でもしてるように見える~?」(^_^#)
いいえ、どう見ても、龍斗を殴り飛ばす準備です。
ジリジリと後退していく龍斗と、彼が下がったのと同じ位距離を詰めるマオ。
「さ、流石に死にそうなんですけど…そんな物で殴られたら。」
「大丈夫よ~、死なないで苦痛だけを与える殴り方を地球の本棚で検索したから~。」
『それは何と言う拷問なのだろうか?』と本気で疑問に思いながらも、マオのダークオーラに押されて口には出せずに居る龍斗…。
どうでも良いが、地球の本棚もそんな事に使われたくは無いだろう。
「だ、大体、お前は…何をそんなに怒っているんだよ!?」
「うーん、よく分からないけど、マオちゃん物凄く面白くなくて、龍斗を殴りたくなっただけ!!!」
「り、理不尽だぁー!!!」
「逃げないで!!! 逃げたら…上手く殴れないじゃない!!!」
風都の街を舞台に繰り広げられる二人で一人の仮面ライダーの鬼ごっこを、多くの住人達が目撃していたのだった。
更にどうでもいいが、マオのそれはどう考えても『嫉妬』という感情に他ならないだろう。
某所…
凍也はビデオカメラを取り出し、梟の絵が描かれたガイアメモリ…龍斗達が持つ疑似メモリと同じ疑似メモリを取り出し、そのスイッチを押す。
《OWL!》
それをビデオカメラに指し込むと、ビデオカメラは
そして、もう一つ…通常のUSBメモリをオウルアイに指し込み、通常の物とは違う携帯電話を取り出し、それを開く。
「監視対象のデータ入力はこれで良し…監視映像は冴子姉さんの所にと…。」
一通り操作を終えると携帯電話を閉じ、オウルアイが翼を羽ばたかせながら、凍也の掌から飛び去って行くと、同時に周囲に溶け込み、その姿が見えなくなる。
メモリガジェット『オウルアイ』…ビデオカメラに変形するイクス用のメモリガジェットの一つで、撮影した映像を予め登録してある所と、凍也の携帯電話型メモリガジェットへリアルタイムで転送可能で有り、高いステルス性を有している為、主に凍也が監視・スパイ活動に用いる。特定の対象の情報を通常のUSBメモリを介して入力する事により、自動的に対象を見つけ出し、監視する事も出来る高性能ガジェット。その能力は誰にも気付かれずに『機動六課』の会議風景を盗み見していた事からも明らかである。また、イクスの武器とも合体可能である。
(さて、後はオウルアイが監視対象を見つけ出してくれるまで待つだけだが…どうするかな…?)
姉の結婚式に出る為に(勝手に)ミッドチルダから戻ってきた凍也だが、それももう終わり、あとは投資先の方に出向く予定だったのだが…まだ僅かながら時間が有る。
(…今の内に向こうへお土産でも買って行くか…。)
オウルアイの高性能のお蔭で姉からの頼まれ事の数割を終えた事で思考の中心を其方へと向け、これから向かう予定の投資先へのお土産を考え始める。
オウルアイを始めとするメモリガジェットの性能の優秀さに対しては一切の疑いはなく、製作した人間に対しても何を考えているか分からない相手だが、少なくとも凍也自身嫌っている相手でもなく、その技術に関しては絶対の信頼を置いているのだ。そうでなければ仮にも組織の機密であるガイアメモリやメモリドライバーの情報を教える訳が無い。
(さて、人数も多い事だし、仲良く分けられる食べ物が良いだろう…。…和菓子が良いか、洋菓子が良いか…流石に海鳴まで足を伸ばす時間はないからな…そう考えると洋菓子の方が分け易いだろう。)
そう考えつつ、父と自分の好みから自分の家でも御用達の一流パティシエ達が営む風都の有名洋菓子店を一つ一つ頭に思い浮かべて行く。
(…まて、“彼女”は洋菓子と和菓子どちらの方が好きだ…? いや、その中でもどれが好きだ…? ここで判断を誤る訳にはいかない…。チッ! 全商品を買い占めるか? いや、そんなに持っては行けない…。)
真剣にそんな事を考え始める凍也だった。どうでも良いのだが、両方買って行くという選択肢を選ばないのは疑問である。………普段のクールな雰囲気の欠片も無くなる程に“彼女”にベタ惚れな凍也でした。…どうでも良いが…本人にしてみれば気にもしていないが、最近は“彼女”の妹達にも甘い凍也だった。…潜入している管理局での給料の大半がお土産へと消えている。(ミュージアムの関係者としての収入は全て貯金してあるが、地球でのお土産の購入には惜しみなく継ぎ込んでいる。)
現在判明している彼の交友関係の中での優先順位は↓の通りとなっている。
“彼女”=家族<(最早不動)<“彼女”の姉妹<ミュージアムと言う組織その物<“彼女”の父<霧彦<(超えられない壁)<ミュージアムの部下
ミュージアムの最年少幹部、冷酷なる太陽の騎士『仮面ライダーイクス』、『園咲 凍也』…情が沸いた(惚れた)相手にはそんな素振りの欠片も見えなくなる男だった。
…何気に超えられない壁を除けば最下位の霧彦だが、彼の中での優先順位としては、実は一つ上の人物には色々とイクスの装備の開発も頼んでいる恩が有る分の差であるのでこの順位なのだ。
その後…結局の所両方買って行く事に決めた凍也の姿が風都の洋菓子店と和菓子店で見かけられたのでした。
妙な方向へと思考が全力疾走している凍也は置いておいて、鬼ごっこを続けていた龍斗達はと言うと…。
「…お、おい…マオ…。」
真剣白刃取りの体勢で彼女の振り下ろした釘バットを受け止めている龍斗に対して、
「凄いわね~…流石龍斗♪」
釘バットを持ちながらダークオーラ全開な笑顔を向けてくれるマオ。
「お前はオレを殺す気か!?」
「大丈夫、龍斗なら大丈夫だって、地球の本棚にも有るから。そ☆れ☆に、ちゃーんと、死なない為の力加減を検索したから♪」
(…神様…一体オレは何をしたんでしょうか…?)
特に神様などは信じてはいない龍斗だが、自分の置かれている状況に対して、そう思わずには居られない龍斗だった。
「それで……この依頼って、どう片付けるつもりなの?」
軽く深呼吸して釘バットを下ろすとマオは龍斗に向かってそう問い掛ける。
「ああ。暫く、予備のバットショットも有るから、バットショットに彼女の廻りを探ってもらう。」
「それが妥当よね~。幾らなんでも24時間付きまとったら、私達の方が怪しい人扱いになっちゃうし♪」
飽く迄明日から行動する自分達は囮として、本命のバットショットには今日から彼女の周辺の調査を任せる事に決めていた。探偵としては多少反則技になるだろうが、折角高性能な道具があるのだから、使わない手はないだろう。そう判断して龍斗が考えた今後の活動方針である。
「それじゃあ、早速、バットショットには頑張ってもらいましょうか♪」
「そうだな。」
そう言って龍斗は早速バットショットと疑似メモリを取り出し、
《BAT!》
「そうそう。」
コウモリ型に変形したバットショットが飛び去って行く姿を見送りつつ、マオはスタッグフォンを取り出し、携帯サイトを表示させる。
「私もちょっと気になる依頼を見つけたのよね。多分、ドーパントが関係していると思うけど。」
「…おいおい…まだ引き受けたばっかりの依頼が片付いてないのに、こんなに早く、もう一つ受けて良いのか?」
「今回のは時間が掛かりそうだしね~。マオちゃんとしては、話くらいは聞いておいた方が良いと思ったのよね。ドーパント関係の事件だと特にね♪」
そう言われ、一度溜息を付き、事情が事情なのだから仕方ないと考えて、マオから渡されたスタッグフォンのディスプレイへと視線を向ける。
「大丈夫よ、私が詳しい話を聞きたいって書いておいたから♪ それも今日だから、問題ないはずよ♪」
別の意味で問題は有ると思いながらも、そんな考えは表に出さず龍斗はもう一人…ドーパント関係の事件の依頼を確認する。
「…最近起こったアパートの放火事件の被害者からか…。依頼は………おいおい、これって…。」
「ね、興味深い依頼でしょ♪」
その依頼を見た瞬間、龍斗は表情を変えた。
その依頼人は最近起きたアパートの放火事件の被害者で、依頼内容な火事の時に見たアパートを燃やした化け物を探してくれと言う物ともう一つ……。
二人の…特にマオの興味が引かれたのはもう一つの依頼の方である。
「約束の場所はこの近くか…兎に角会って話を聞かないとな。行くぞ、マオ。」
「りょ~かい♪」
そう言って二人は約束の場所へと向かう。
「そうそう、あとで、ゆ~っくり……O☆HA☆NA☆SHIしましょうか?」
(神様…オレ、明日の朝日拝めないかもしれない。)
良い笑顔を浮かべて釘バットを構えるマオに恐怖を感じずには居られない龍斗だった。
数分後…マオに追い掛け回されていた場所の近くの喫茶店で、二人はもう一つの依頼の依頼人から話を聞いていた。
「……………。」
「あー…こいつの持ち物は気にしないで下さい。」
「あ、あははは…。」
マオの持っている釘バットに怯えている依頼人の少女に対してそう言う龍斗であった。よく考えて見ればここに来るまで警察に捕まらなかった事が幸運かも知れない二人であった。
「えーと…依頼の方ですけど…。良ければ話してもらえますか…貴女が見たと言う放火事件の犯人の事を…。」
「は、はい。」
依頼人の少女…『
放火事件当日、幸か不幸か学校の都合で夜晩くなってしまった事で遅くなった彼女はアパートへと帰宅した時、同じアパートの友人の部屋から炎が噴出しているのを発見する。慌てて携帯電話で消防へ通報しようとした時、彼女の前に燃えている友人の部屋から人型の何かが飛び出してきたのを目撃した。
最初はそれを友人かと思ったが、それは炎が人の形を持ったような怪物だった。思わずその姿に悲鳴を上げてしまい、怪物に気付かれる唯。唯を始末しようと腕を伸ばすが他にも野次馬が集まってきた事でそれを断念。彼女が落した携帯電話を踏みながら走り逃げ出して行く怪物。恐怖と安堵からか意識を手放し彼女は気絶してしまう。次に意識を取り戻した時、同じアパートの住人…外出していて無事だった者達に介抱されていた時だった。
結局、消防へと通報した時には時既に遅く、アパートは完全に全焼してしまっていた。燃えたアパートからは誰の遺体も発見されず、被害者は居ないかに思われたが、彼女の友人である出火元の部屋の住人だけが発見されず、今も行方不明となっている。彼女は炎の怪物を目撃したと言っているが、警察には記憶の混乱として相手にされていない。
(…多分、彼女が見た怪物はドーパントだな。)
龍斗は唯の言葉をそう結論付ける。
「それで、依頼は真犯人である炎の怪物と、行方不明の貴女の友人を探す事でよろしいですね?」
「はい。」
龍斗の言葉に唯は頷きながらそう答える。
「それで…貴女の御友人の写真とかがあれば貸して頂きたいんですけど?」
「すみません…高校に入学してから友達になった子で…あのアパートに引っ越したのも、それからですから…写真もあの火事で燃えてしまって…残っているのは…。」
続く言葉も分かる。…話によれば、炎の怪物の存在を証明する唯一の物証である怪物が踏んで行った携帯電話は警察に有り、彼女の手元には行方不明の友人との思い出を残した物は何一つ無いのである。
「あの…他の友達にもその子の写真が無いか…聞いてみます…。」
「お願いします。」
そう話して彼女の依頼を引き受けるか受けないかの判断はその時にすると話して唯とは分かれた。
彼の師ならばどうかは分からないが、探偵見習である龍斗には名前だけで人を探すのは難しいのだから、最悪は“炎のドーパント”探しだけでも引き受け様と判断した結果である。
「…うーん…あの子が見たって言うドーパントのメモリは…分かり易いわね。マグマは前の事件の時にメモリブレイクしたし、多分、“炎のドーパント”のメモリはファイヤーか、フレイム、フレア…火に関係したメモリね。」
「…そうだな…。あとは…『ヒート』か?」
「う~…私のメモリをそんな犯罪者のと一緒にしないでよ~。」
龍斗の言葉にマオはこれ以上無く不機嫌そうに声を上げる。龍斗も最後の言葉は冗談で言ったのだ。その事は当然ながら、マオも理解しているだろう。自分達の持っているメモリをそんな相手が持っているとは思いたくないし、考えられない。
今までガイアメモリは一種類に付き一つだけしか存在していないのだから、件の“炎のドーパント”のメモリがヒートである可能性は完全にあり得ない事だろう。
「二つの依頼を同時にって、ずいぶん面倒なことになっちゃったわね~。」
「…あのな…炎のドーパントの件はお前が勝手に引き受けたんだろう…。まあ、早めに解決した方が良いんだろうけどな。」
「そうよね~♪」
「…勝手に依頼受けた事に付いては………大いに反省しろ。」
「……う~…。…はい…。」
そんな会話を交わしながら探偵事務所へと帰って行く龍斗とマオの二人…。これが、WとX…現在の風都に存在する二人の仮面ライダーの会合へと通じる事件に関わった瞬間だった。
EX02 END