『HEAT!』
『HEAT!/TRIGGER!』
ダブルのフォームチェンジしたヒートトリガーは主にトリガーマグナムの銃弾にヒートの熱属性を加えた、高出力の銃撃を得意とする姿。
非常に攻撃力の高いフォームであり、特に高熱を弱点に持つドーパントへの長距離攻撃には非常に高い効果を生むフォームである。
高熱が弱点ではないドーパントであっても、熱属性を加えた高出力の銃撃は並みのドーパントには脅威以外の何者でもないだろう。
「食らえ!」
イクスへと向かいトリガーマグナムの引き金を引き炎属性を持った弾丸を放つ。だが、
「はあ!!!」
高熱を纏ったエッジブレードによって直撃する前に切り払われる。
そう、元々最年少とは言えミュージアムの幹部である凍也の変身するイクスが並のドーパントのレベルである訳は無く、イクスのメモリ『ソル』の能力の一つはダブルのヒートメモリを超える超高熱を操れるのだから、炎属性の弾丸の効果は無い。
「くっ!」(チッ! 炎は大した事ないが、衝撃だけは抑えきれないか。)
だが、攻撃特化のフォームであるソルエッジで有るが故に、衝撃だけは完全に耐え切れず最後の弾丸は切り払えずにエッジブレードを盾にして防ぐ。
(流石にあれで零距離射撃されたら、アクアガードじゃなければ無事では済まないだろうな…。…できる事なら、六番目のメモリを使った最後のフォームも確認しておきたかったが…この辺が潮時か。)
追撃に入ろうとしたダブルを一瞥しながら、イクスは右腕を前に翳し一気に発光させる。
「うわぁ!」
突然の閃光がダブルの視界を奪い、光が消えるといつの間にかイカロスレイダーと共にイクスの姿も消えていた。
「っ…あいつ…何処に?」
周囲を見回すがイクスは既に居なくなっていた。
『もうこの辺には居ないみたいね…龍斗、今の内に依頼人を。』
「分かった。」
ダブルドライバーを外し、変身を解くと龍斗は気絶している宮子の下に近づいていく。
別の場所…
先ほどの目晦ましであの場所を離脱するとベルトを外す。彼の変身が解除されると、イクスレイダーは通常のバイクに偽装される。
「…あのメモリは向こうから持ってきた試作品…『イフリート』のメモリか…。」
多々の問題を含みながら一応の完成に持ち込んだ、『幻想』の記憶を有した某マッド製作のミッドチルダ製ガイアメモリの試作品の一つ『
完成に持ち込んだメモリは『イフリート』を除けば後二つだけ、『ドラゴン』のメモリと共に父である琉兵衛に渡した龍の記憶の中でも特に強力な物を摘出し完成させた秘蔵のメモリとなった、上位メモリの証であるゴールドのカラーを与えられたドラゴンメモリの究極進化系…否、完成系である『
其れはさておき…伝説上の怪物の『幻想の記憶』を宿したメモリは通常の『生物』『自然』『物質』と言ったガイアメモリにもない特殊性を幾つも持っている。イフリートのメモリの持つ特殊性は…
「…厄介な事だな…。…あのメモリは本体を叩かない限り、分身は何度でも現れる…。しかし、あのメモリにはまだ…『幻想』の記憶のガイアメモリ共通の欠点を有していたはずだ。」
己が持ち込んだメモリなだけ有って、その能力・殺傷力は全て把握している。そして、最低限解決させなければならない問題点も…。それの厄介さを知るが由に思わず舌打ちしてしまう。
だが、新型ガイアメモリや地球製のガイアメモリもその危険性は変わらない。そして、メモリを販売した側としては、販売してしまった商品を買った人間がどう使おうが一切関与しない。…今回は『ライフ』のメモリの持ち主に関係しているから敵対しただけで有るのだから。
「まあいい…結果は冴子姉さんに報告しておこう…。」(最悪、『イフリートドーパント』は仮面ライダーに丸投げすれば良い事だしな。)
そう言ってイカロスレイダーに乗り込み、凍也はその場から走り去っていく。
別の場所…
イクスと戦っていた場所で、龍斗は気絶していた宮子を抱き起こし、
「おーい、宮子さん、大丈夫か?」
彼女の名前を呼んで意識を取り戻させる。
「ぅん…あっ、探偵のお兄さん、あれ、変な怪物と派手な仮面の人は?」
「は、派手?」
そう言われて改めてイクスの外見を思い出す龍斗だが…
(…確かに…物凄く…“派手”だな。)
半身金色で半身銀色のソルエッジフォームは何処からどう見ても“派手”と言う以外には言葉が出ないだろう。
「えーと、半分が金色で半分が銀色の派手な仮面の人が白いバイクに乗って、助けてくれたんですよ~。」
(…あいつ…依頼人を助けてくれたのか…。)
そう考えてしまうと、何故あの仮面ライダーが自分と戦ったのかが理解出来なくなる。
「(…そうだ…。)家まで送ろうか? また、その怪物が襲って来たら拙いだろうし。」
「え、あはは…。大丈夫ですよ、私の家って直近くですから~。それじゃあ。」
そう言って手を振りながらその場から離れていく宮子。
ドォォォォォォォォン!!!
それを見送っていると後から衝撃音が聞こえてきて、続いてブレーキの音が響く。嫌な予感を感じ、嫌な汗を流しながら『ギギギ…』と言う擬音が付きそうな仕草で後ろを振り向くと…
「はぁ~い」
そこには、何故かリボルギャリーと共に明るい笑顔で手を振っている…マオが居た。
「あー…マオさん…何の御用でしょうか?」
「うふふふ~ そんな事…言わなくても解るでしょ~」
金属バットを持って近づいてくるマオと、距離を離すように同じだけ後に下がる龍斗…。全力で危険を感じながらマオを説得しようとするが…残念ながら効果は無いようだ。
「マ、マオ…何を怒っているのか知らないけどな…取り合えず落ち着いてくれ!」
「うふふ~。十分、落ち着いてるじゃない、私。大丈夫…死なない程度に手加減して殴る方法は検索済みだから。」
「それ、どう言う拷問だよ、オイ!?」
龍斗の悲痛な叫びを合図に、相変わらず仲の良い二人の追いかけっこが始まった。
数十分後…
「はー…はー…。」
数十分に渡る説得の末、やっとマオの説得が終わった龍斗は呼吸を整えていた。
「…それで、何の用だ…?」
「うん、あの金と銀の仮面ライダーの事よ。実はあの子に付けていたバットショットから映像が送られてきたんだけど…。はっきり言って今の私達よりも強いわね。敵だったとしたら、不味いわ。」
「…せめて、メモリの種類でも解ればな…。」
「うーん…あの仮面ライダーが使ってたメモリの内一つは、ヒート並のパワーとサイクロン並のスピードを持ったメモリなのよね。流石にそんなメモリに心当たりなんて無いわね~。」
マオのその言葉に揃って溜息を付く二人だった。
「まあ、今はあの仮面ライダーよりもドーパントの方を優先した方がいいわね。」
「そうだな。炎の怪物は金と銀の仮面ライダーが戦ったドーパントで間違いなさそうだからな。」
そんな会話を交わしている二人の元にクワガタムシ型のライブモードのスタッグフォンが着信音を鳴らしながら飛んでくる。
それに気が付いた龍斗がスタッグフォンを手に取ると手の中で携帯電話に変形する。
「ん? はい、もしもし。」
『あ、探偵さんですか? 日宮です。』
「日宮さんですか。どうでした、探して欲しい友人の写真は有りましたか?」
『はい! 何人かに聞いてみたら写真を持ってる子が居たんです。これから、会えませんか?』
電話の向こうから嬉しそうにもう一つの事件の依頼人である唯がそう言っている。余程、友達の写真が見つかったのが嬉しいのだろう。
「ええ、大丈夫です。場所は…探偵事務所の方で大丈夫ですか?」
そう言って龍斗は電話で探偵事務所の場所を告げると、電話の向こうでは『はい。』と言う嬉しそうな声が響いた。
「ええ、じゃあ、一時間後に事務所の方で。おーい、マオ…帰るぞって…。」
「オッケー、じゃあ、急いで帰りましょうか?」
何時の間にかリボルギャリーを帰らせたマオがヘルメットを被ってハードボイルダーの後部に座っていた。
「…いや、送り返さずにリボルギャリーに乗って帰れよ…。」
「うー…そんな事言うなんて、龍斗冷た~い。」
龍斗のある種正確な指摘に口を尖らせながらマオはそう抗議する。そんなマオに溜息を付きながら、龍斗もハードボイルダーに乗るのだった。
それから一時間後…依頼人である唯との待ち合わせの時間…
「写真が見つかって良かったですね。」
「はい♪」
写真を抱きしめながら龍斗の言葉に嬉しそうに答える唯。そして、唯は写真をテーブルの上に置く。
「これがその子の写真です。…きっと…きっと生きてるはずなんです! だから、絶対に見つけてください。」
「ええ、絶対に見つけます。」
余程その友達の事が心配なのだろう、唯は土下座せんばかりの勢いで頭を下げる。そんな彼女にそう答え、龍斗はテーブルの上に置かれた写真を拾い上げて、それに視線を向けると、
「(…これは…。)あの…それで探す相手と言うのは…?」
楽しげに笑う数人の少女が写った写真…その中に写っているのは依頼人とその友人と思われる少女と…もう一つの事件に依頼人…『佐倉 宮子』だった。龍斗は直感的に嫌な予感を感じ取る。
「はい。この子です。」
そう言って唯が指差したは……『宮子』だった。
「彼女は…。」
「…間違いないわね…。」
「あの…宮子ちゃんの事、知ってるんですか!?」
その写真を見ながら呟く龍斗とマオの言葉に反応する唯。そんな彼女の様子に顔を見合わせると意を決して口を開く。
「…もう一つ引き受けている事件が有るんですが…そちらの依頼人が…彼女です。しかも、つい一時間ほど前…有ったばかりです。」
「え!? ど、どこで!?」
「でも、変よね…行方不明になってるって感じじゃ無かったのよね…。」
「ええ!?」
そう、宮子…彼女が二人に与えている印象に、自分が行方不明になっていると言う印象を与える物は無かったのだ。だからこそ、疑問である。
「そ、そんな…でも、宮子ちゃん…学校にも来てなくて…それに…それに…。」
現実に思考がついて以下ないと言う様な様子の唯が落ち着くのを待ち、龍斗は新たに一枚の写真を見せる。
「これって…宮子ちゃん!? それに…あの時の…。」
驚愕の声に続けて出るのは恐怖の感情の篭った言葉。それもそうだろう、龍斗が唯に見せたのはバットショットが撮影した炎のドーパントに襲われる宮子の写真。
「こいつが貴女が見た炎の怪物で間違いは?」
「これです! 間違い…ないです。」
「…オレ達は彼女から『誰かにつけられているので、それが何者なのか調べてくれ』と言う依頼を受けました。そして、貴女からの依頼と合わせて考えると…。」
「宮子ちゃんは……この怪物に狙われてる?」
「…その可能性は高いですね…。」
「そ、そんな…。だったら、早く見つけないと!?」
「ええ、任せてください。貴女の友達は…必ず見つけます。」
一礼して探偵事務所を出て行く唯を見送り、龍斗がガレージを改造した隠れ家に入ると、ソファーに座っているマオの姿があった。
「それじゃあ、検索を始めましょうか? キーワードは?」
その場で一回転し、龍斗の方へと向き直ると目を閉じ、意識を本の世界…地球の本棚へと飛ばす。ツインテールで紫のドレスを纏いながら、マオは龍斗から告げられるキーワードを確認する。
「検索対象は連続放火事件。キーワードは『炎のドーパント』。」
僅かながら本が飛んでいくがあまり数は減っていない。
「…全然ダメね。」
「まあ、それは当然だろうしな。次は『火曜日の夜22時から23時59分』。」
キーワードと共に多くの本が飛んで行き、本棚が一つ残る。
「時間を指定した訳ね。」
「そう言う事だ。特定の曜日の特定の時間帯にのみ起こされる連続放火事件…。そして、最後は…今から言うキーワードを全部だ。」
「りょーかい♪」
龍斗の言葉にマオがそう答えると、龍斗は一つ一つ放火が起こった場所を上げていく。一つ場所が読み上げられる間に面白い程に本棚から本が減っていき、最後に一冊の本が残り、マオがその本を手に取り、捲るとマオの意識は現実へと戻る。
「分かったわ。あの子を狙っている連続放火事件の犯人の正体が…。」
そう言ってマオはホワイトボードに今まで放火された場所と犠牲になった人間の中で特定の人物を挙げていく。
「…今までの犠牲者の中に『佐倉』の姓を持った人が居るわ。しかも、それだけじゃない。依頼人も含めて、全員が養子として引き取られたのよ。」
「それで…次の犠牲者は…『佐倉 宮子』さんになるはずだった。」
「そうみたいね。そして、その被害者全員に保険金が掛けられていた。その受取人は…養父のこの人物よ。」
そう言って名前を書いてそれに大きく丸を付ける。
「急いで依頼人の所に行った方が良いと思うわよ…。場所はバットショットの反応から分かるから!?」
「分かった!」
そう言ってガレージから飛び出していく龍斗。その途中、スタッグフォンを取り出して唯に宮子の居場所を告げて。
町を歩いている宮子の下に一人の中年男性が現れる。
「あっ、お父さん、どうしたの?」
目元に隈が有り、何処と無く正気を失っている様子の男ににこやかに話しかける宮子だが、男は赤く塗られた骨をイメージさせるUSBメモリらしき物を取り出す。
「お前が死ねば…金が入ったんだ…。…どうして…どうして生きているんだ!?」
『IFREET!』
声が響くと共に掌にそれを差し込むと男は炎の魔人をイメージさせる炎のドーパント『イフリートドーパント』へとその姿を変えた。
「…あ、あの時の…。」
「お前は生きて居ちゃいけないんだよ。確かにあの時燃やしたはずだったのに…。何度でも…モヤシテヤル!!!」
完全にガイアメモリに飲み込まれている様子で叫び声を上げながら、イフリートドーパントは宮子へと襲い掛かろうとするが、
「退け!!!」
龍斗がハードボイルダーでイフリートドーパントを跳ね飛ばす。
「探偵のオニーさん!」
「はぁ…はぁ…宮子ちゃん。」
「あっ、唯。久しぶり~。」
「良かった。宮子ちゃん…本当に…本当に心配したんだからね。」
宮子を抱きしめ、泣きながら、そう呟く唯。そんな唯に視線を向けながら、龍斗は離れるように指示を出し。ダブルドライバーを装着し、ジョーカーメモリを取り出す。
「行くぞ、マオ。」
「オッケー、龍斗♪」
『CYCLON!』
『JOKER!』
別々の場所で同時に響き渡る音、そして、
「「変身!!!」」
同時に響く力を与える言霊。
『CYCLON!/JOKER!』
緑の風が吹き荒れ、龍斗の姿を仮面ライダーW・サイクロンジョーカーへと変える。そして、ダブルはイフリートドーパントを指差し、
「『さあ、お前の罪を数えろ!』」
ダブルはそのままイフリートドーパントへと殴りかかる。
「モエロォ!!!」
「はぁ!」
互いにパンチをぶつけ合うダブルとイフリートドーパントだが、ダブルのパンチはイフリートドーパントの体を何の抵抗もなくすり抜けていく。
「な…に?」
『嘘でしょう、手応えが無いなんて?』
攻撃したはずなのに、空気でも殴ったように一切の抵抗を感じずにすり抜けた感覚。それだけではない。
「「ガァァァ!」」
イフリートドーパントの腕が崩れ落ち、同時に腕が再生する。そして、崩れた腕はそのまま新たなイフリートドーパントへとなった。
「『増えた!?』」
『…なによ、あのメモリ!? マグマでもないし、ファイヤーも…。』
「考えるのは後だ。メモリを変える。」
『METAL!』
ダブルドライバーからジョーカーメモリを抜き取り、メタルメモリを指し込む。
『CYCLON!/METAL!』
左半身が銀色のメタルへ変わり、サイクロンメタルへとフォームチェンジすると、風を纏ったメタルシャフトを振るい、イフリートドーパント(分身)へと叩きつける。
「ガァァァア!!!」
風によって炎が吹き消されるようにイフリートドーパントの分身は飛び散っていく。そして、そのままイフリートドーパントの本体へと向かっていくが、
「グゥゥゥゥゥゥ…ガァァァァァァァァァ!!!」
咆哮と共に自身の腕を引き千切り、次々と分身を生み出していく。
「チッ、こいつ等!」
『弱いけど数は多いわよ、こいつ等、無制限に出てくるし!』
風を纏うメタルシャフトを振るいながらイフリートドーパントの分身達を蹴散らしていくが、その数は一向に減る様子が無い。
後から襲い掛かるイフリートドーパントの分身がダブルの隙を着いて襲い掛かり、羽交い絞めにする。
「くっ、しまった!」
ダブルCMの動きが止まったのを切欠に次々とダブルCMへとしがみ付き、火力を増していく。そして、ダブルを押さえつけるイフリートドーパントの分身達の数が十を超えた時、ダブルCMの全身を巨大な炎が包んでいた。
「ハハハ…ソノママモエテシマエ!」
『キャァァァァァァ!』
「ぐぁぁぁぁぁぁあ!」
全身を襲う高熱に叫び声を上げる
「死ぬなよ。アクアヴェール!」
そんな声が響き、ダブルCMを水の壁が包み込むと全身を包んでいた炎が消火された。
「はぁ…はぁ…。今のは…?」
『SOL!/EDGE!』
ガイアウィスパーが響き渡り、銀と金の仮面ライダー『仮面ライダーイクス』は太陽の記憶と騎士の記憶を併せ持つ、ソルエッジへとフォームチェンジし、ダブルCMとイフリートドーパントの間に降り立つ。
「さあ、己の愚を悔いろ。」
「お前は…あの時の…仮面ライダー!?」
立ち上がりながらそう告げるダブルCMへイクスは視線を向けると、
「生きてたの様だな。」
「キサマァ!!!」
叫ぶイフリートドーパントを横目で観察し、
(…完全にメモリに飲まれたか…。僅か一ヶ月でここまでとはな…まあ、当然の結果では有るが…。)
そう判断を下す。
『あの時は私達と戦ったって言うのに、今度は助けるなんて…どう言うつもり?』
「そうだ、お前は何者なんだ!?」
「…答える必要が有るとは思えないな…。そんな事より、無駄話している間に敵は増えるぞ。」
そう告げたイクスに従ってイフリートドーパントへと視線を向けると、そこには何時の間にか先ほどの倍の数に増殖したイフリートドーパントの姿が有った。
「『ウソォー!?』」
思わず声を揃えて叫んでしまうのも無理もないだろう。大軍と言う数に増殖しているイフリートドーパントを見てはそう言う他に無かった。
『ちょ、ちょっと、こいつ、どう言うメモリ使っているのよ!?』
「…『イフリート』だ。…ガイアメモリの『幻獣型』…。」
「イフリートだって!」
『それに…幻獣型なんて嘘でしょう、そんなメモリ…私が組織で作らされてたメモリの中には無かったのに!? 第一…地球にはそんな記憶は…。』
イクスの説明に驚愕の叫び声を上げる
「そうだな。幻獣型のメモリは今までの技術では、地球の記憶から作り上げる事は不可能だった。だが、あれは“ある場所”で製作された新型のガイアメモリだ。」
「『っ!?』」
イクスの言葉に二人は何かに気が付いた。イクスの言葉の中にあるある場所…その言葉の意味は…。
『グォォォォォォォォォォォォォオオオオ!!!』
そんな事を考え始めた瞬間、突然の咆哮に思考を中断させられる。その視線の先に居たのは、分身達を吸収し、巨大な四足の炎の獣と言うべき姿となったビッグ・イフリートドーパントの姿があった。
その高熱によってコンクリートが溶け始め、周囲にあった木は燃え始めている。
「…思ったより早かったな…暴走。(しかし、ここまで毒素が強いとは…ガイアドライバーでも完全に毒素を遮断できない可能性が有るな…。まだまだ改良の余地は有りか…。)」
「暴走だと!」
『早く止めないと…風都ごと灰にされちゃうわよ!』
「ああ!」
『JOKER!』
『CYCLON!/JOKER!』
冷静に観察していたイクスの言葉に慌ててメタルメモリを抜き、ジョーカーメモリを刺し込み、サイクロンジョーカーへとフォームチェンジする。そして、ジョーカーのメモリを外し。
「…タイミングを合わせろ。一撃で倒すぞ。」
「何でお前に指図されなきゃならない!」
『確かにね。でも、今はドーパントのほうが先よ!』
「くっ! 分かった、今だけは信用してやるよ!」
「…ありがとう…。行くぞ。」
ソルメモリを外して告げられたイクスの言葉に反発する
『JOKER MAXIMAM DRIVE!』
『SOL MAXIMAM DRIVE!』
同時に体にあるマキシマムスロットへとメモリを差し込み、
「ジョーカーエクストリーム!」
「ソーラーエクストリーム!」
風を纏って上空へと舞い上がるダブルと、太陽を思わせる光の輪を背負い上空へと舞い上がるイクス。そして、同時に放たれる二人のライダーの必殺のキック。
「「『ライダーツインマキシマム!!!』」」
ビッグ・イフリートドーパントを打ち抜き、爆散させる。それと同時に男が地面に倒れ、体外に輩出されたガイアメモリが砕け散る。
「よし…あとは…「宮子ちゃん!!!」っ!?」
イクスに対して何者なのかと問い詰めようとした時、響く唯の叫び声に気が付き、ダブルドライバーを外し変身を解除すると彼女達に駆け寄る。
「なにが…っ!? なんだよ…これは!?」
龍斗が駆け寄った時、唯に抱き抱えられている宮子の右腕が消えていた。
「…限界だな…。」
そんな彼女達を見てそう呟くとイクスは唯と宮子に近づいていく。
「来ないで下さい!」
「お前、それ以上近づくな!」
正体の分からない怪しい者に警戒する態度で叫ぶ二人だが、イクスは
「何もしない。」
そう言って左腕の袖を捲り上げるとそこにはガイアメモリのコネクターが有った。
「コネクター?」
「…もう限界だな…ライフメモリの力でもこれ以上彼女を生かす事は無理なようだ。」
徐々に消えていく宮子の体を確認し、イクスはそう呟く。
「ライフメモリ…それに、無理ってどう言う意味だ!?」
「宮子ちゃんがこうなった原因を知ってるんですか、お願いです…助けてあげてください!」
イクスは二人の言葉に首を振る事で答える。
「…ライフは一時的に死んだ人間を生かす事の出来るメモリだ。彼女は既に…多分、あいつに殺されたんだろう。」
そう言って視線を向けずにイクスはイフリートドーパントだった男を指差す。
「そ・・そんな…。」
「嘘…だろ…?」
「あはは…そうだったんだ…私…もう助からないんだよね…。」
「……ああ……。」
弱々しい呟きが宮子からこぼれる。その言葉を平坦な…感情の篭らない言葉で返すイクス。
「…なにか…なにか方法はないのか!? もう一度…その…ライフのメモリを挿すとか。」
「無理だ。生命を維持していたライフのメモリが抜けた時は肉体は崩壊する。死人に一時的な命を与えていたメモリなんだからな。」
「そんな…宮子ちゃん…やっと…また会えたのに…もう一度一緒に遊びに行きたかったのに…。」
「あはは…私も行きたかったけど、仕方ないよ。…私…もう死んじゃったんだからね…。」
伸ばされた手は力無く地面へと落ちる。
「…じゃあね、ゆーい。それから、探偵のお兄さん。バイバイ。」
唯の腕の中で完全に消え去った時、後に残ったの白い…ハートで『L』と書かれたガイアメモリ『ライフメモリ』だけだった。
イクスはそのメモリを拾い上げその場を立ち去っていく。
別の場所…
「冴子姉さん、無事、ライフのメモリを回収しました。…それと、オレの方にも収穫が有りました。」
『ご苦労様。貴方の方の収穫は何だったの?』
変身を解除し、偽装されたイカロスレイダーに腰掛けながらライフメモリの回収についての連絡を入れる為、マンティスフォンを掛ける。
「ええ、幻獣型メモリの戦闘データを含めて多くのデータが収集できました。色々と問題点も浮かんできたんで、次のメモリの開発に活かせると思います。正式な商品になった時は楽しみにしていてください。」
『そう、楽しみにしているわ。それと、ライフのメモリだけど…また誤って売ってしまっても困るから、ある人の所に届けて欲しいのよ。』
「構いませんけど…まさか…。」
今まで穏やかに会話していた凍也の表情に不快の感情が浮かぶ。その原因が会話の中にある“ある人物”に有る事は明白だろう。
『ええ、そのまさか…“彼”の所に届けて貰いたいのよ。』
「…分かりました…。」
後日…鳴海探偵事務所
『こうして、今回の依頼は終わった。連続放火事件はメモリの力を使って養子にした子供を殺して保険金を得ていた父親の犯行と言う事が分かり、事件は解決した。だけど…。』
「…私達…今回は誰も救えなかったわね…。」
「…そうだな…。兄さんや先生なら…もっと違う結果になっていたかもしれない。…やっぱり、オレは…
報告書を纏めると龍斗は力無く項垂れる。そんな龍斗の視界の中に写ったのは、兄から最後に聞いた『それを必要としている友人に渡して欲しい』と頼まれた一つの調査資料…それには、こう銘打たれていた。『Wのメモリ/風都連続怪死事件』と。
「仕方ないわよ…。私達は出来る限りの事はやったつもりよ。」
「…それでも…もっと他にも出来る事が有ったんじゃないのか…? そう思えてならないんだ。」
「龍斗…。」
そんな龍斗をマオは後から抱きしめる。
「…マオ…。」
「大丈夫よ。…今日救えなかった人達の分まで次は救えばいいのよ…。あのまま放って置くよりも、救われたはずよ…。だから、龍斗は頑張ったから…元気出して。…そんな姿…龍斗には似合わないわよ。」
「…マオ…ありがとうな。」
そう呟き、龍斗はマオの髪を撫でる。
こうして、WとⅩ…二人の仮面ライダーの会合する事件は終わりを告げた。
EX04 END
イフリートドーパント
備考
EX02~04の『Lの語り』に登場。凍也が試験的に流通させた幻獣型ガイアメモリで『炎の魔獣(イフリート)』の記憶を宿したメモリ。全身が炎の様になり打撃や斬撃と言った物理攻撃での効果は薄く、切られた部分の再生が可能。また、切られた部分から分身を作り出し、再度分身を取り込む事で巨大化できる。触れただけで燃やし尽くす事は可能だが、その炎も『太陽』の記憶のガイアメモリを持ったイクスにとっては冷水の様な物だった。