仮面ライダーW ~双世の探求者~   作:龍牙

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EX05『Wの断章05/Cの憎悪・憎しみは止まれない』

「最近は平和だな~。」

 

 

 

「平和なのはいいけど…暇よ、暇~。マオちゃん、退屈!!! 何処か遊びに行きたい!!!」

 

 

 

「って、だから、お前は本当に組織に狙われてるって自覚有るのか!?」

 

 

 

鳴海探偵事務所のガレージを改造して作られたリボルギャリーの置き場…そこに龍斗とマオの姿と何時もの光景が有った。

 

 

 

「ねえ、龍斗、何か依頼無いの?」

 

 

 

「無い。街を泣かせる奴が居ないのは良い事だろ? 暇ならテレビでも見るか、ラジオでも聞いて、暇でも潰してくれ。」

 

 

 

そう言って龍斗はテレビのリモコンを手に取ってスイッチを入れる。何故か事務所においてあるテレビはこの部屋にのみ存在している。

 

 

 

「あれ、これって?」

 

 

 

「この事件か? 確かにドーパントが絡んでいるみたいだけど、依頼も入ってないから手の出しようが無いんだよな。」

 

 

 

「…何か変な反応ね…。何時もなら、『街を泣かす奴は許せない!』って言って依頼無くても飛び出しそうなのに。」

 

 

 

「さあな。ハーフボイルドから少しはハードボイルドに近づいたって事だろ?」

 

 

 

「ふーん。それにしても、龍斗らしくない対応よ。だって…。」

 

 

 

完全に冷めた対応を取っている龍斗に対してそう言いながら、悲しげな視線をテレビ画面へと向ける。

 

 

 

 

 

『…支店のビルは完全に倒壊しており、支社長を含め、社員全員の生存は絶望的と見られております。』

 

 

 

 

 

「こんな、酷い事件にそんな事言うなんて…絶対に龍斗らしくないわよ。」

 

 

 

「…以前、先生や兄さんから聞いた事件にこんなのが有るんだよ…。この会社に騙されたって人から依頼されて調査したらしい。」

 

 

 

「…それで…?」

 

 

 

「あと少しで犯人に辿り着くって言う所で依頼人は殺された。ドーパントに殺されて、そのドーパントはこの会社の関係者らしい。」

 

 

 

「…つまり…?」

 

 

 

「この会社も既に街を…大勢の人達を泣かせている。先生や兄さんなら兎も角、単なる高校生兼探偵見習いじゃ手も出せないから黙っているしかなかったけどな。…結局の所、この事件は街を泣かせている連中(ドーパント同士)が勝手に潰し合ってるだけだ。勝手にやらせて置けば良いさ。その証拠に、ほら。」

 

 

 

そう言って龍斗はマオにスタッグフォンを投げ渡す。

 

 

 

「証拠って…これって?」

 

 

 

スタッグフォンのディスプレイに表示されている龍斗達の携帯サイトの依頼関係の掲示板に今回の事件に関する依頼らしき書き込みがあった。…しかも、それには他の物とは違って『ドーパント』と直接的に書いてある。

 

 

 

「…そう…連中もドーパントの存在も知っているみたいだ。」

 

 

 

「…受けなくて良いの、この依頼?」

 

 

 

「…別にドーパント同士の潰し合いに、態々仮面ライダーが首を突っ込む必要も無いだろう。」

 

 

 

「むぅ…関係ないかもしれない人達も巻き込まれてるのに? 何も知らない家族の人達まで泣いてるのよ?」

 

 

 

マオは龍斗に向かってそう抗議するが、龍斗は何処かその表情に冷たい物を貼り付けて、チャンネルを変えながら、

 

 

 

「『無知は罪』だろ? 知らないって事は罪への免罪符じゃない。オレにしてみれば、『何も知らない家族』って奴等も同罪だ。あいつらは、今まで人の涙で塗れた金で生きてきたんだ…そんな連中が悲しんだ所でオレは哀れとも何とも思わない。」

 

 

 

「龍斗…。」

 

 

 

思わず彼の名前を呼ぶ。今の彼からは何時もの龍斗からは想像出来ない『闇』の部分を見た気がした。

 

冷たい表情を浮かべながら龍斗の横顔を見ていると、何処か恐ろしい物を感じてしまう。……その表情は以前、機動六課の隊長陣に出会った時に彼女達に向けていた物と重なってしまう。

 

 

 

「何か…前にも見た顔ね、今の龍斗の顔って?」

 

 

 

「…無知は罪だ…。あいつは…間接的にとは言っても…兄さんを殺した。あいつが奪って行ったドライバーとメモリさえ有れば兄さんは死ななかった! …兄さんが居れば、先生だって…。」

 

 

 

誰にとも無く呟きながら、憎しみの表情を浮かべながら、龍斗はテーブルに拳を叩きつけて立ち上がる。

 

 

 

「…あいつ等は、その事も知らずに…知ろうともせずに居る…。…もう一人の仇の近くに居る癖にな! もしかしたら、あいつ等もその事を知っているかもしれない、友達面していながらな! だったら、あいつ等も同罪だろ? だから、オレにとってあいつ等も…敵だ! …兄さんのもう一人の仇は必ず…オレが討つ! ミュージアムも機動六課も絶対に叩き潰す!!!」

 

 

 

「…龍斗…。」

 

 

 

龍斗の纏っている雰囲気に押され、何も言えないまま隠し部屋を出て行く龍斗の後姿を見つめる事以外出来ないマオだった。

 

 

 

「…ねえ…龍斗…龍斗のお兄さんのもう一人の仇って誰なの?」

 

 

 

憎しみを吐き出す様に叫ぶ龍斗に対してマオは答えが返ってこないかもしれないと思いながら、不安気に問い掛ける。

 

 

 

「…時空管理局執務官…『クロノ・ハラオウン』…。そいつが、兄さんのドライバーとメモリを奪った…兄さんの仇だ!」

 

 

 

予想に反して帰ってきた答えと初めて知った龍斗の兄の仇の名…。一度その人物について検索してみようと思いながら、部屋から出て行く龍斗の姿を視界の端に捉えながら、マオは連続ドラマへと変わったテレビへと視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

数時間後…

 

 

 

「それで、此方がドーパント事件の専門家と聞いて出向いた次第です。」

 

 

 

鳴海探偵事務所の表の部屋で龍斗が報告書を纏めていると、身形の整った中年の男が秘書らしき男を伴って現れ、依頼を申し込んできたのだ。

 

身形の整った中年の男は先ほどニュースでやっていた事件の被害を受けた会社の社長であり、師と兄が捜査していた事件の関係者…もっと言うなら犯人と思われていた男だ。

 

依頼内容はこれまでの事件の犯人から守る事。恐らくは携帯サイトの方への依頼してきた者と同一人物なのだろう。

 

 

 

「さあ、貴方達が人に恨まれる様な事をしているのでは? 色々と悪い噂は多いですよ。」

 

 

 

「いえ、我々は真っ当な商売をしております。」

 

 

 

「…どうなんだか? 火の無い所に煙は立たないしな。どちらにしても、その依頼は受けかねます。」

 

 

 

前半の言葉を小声で言いつつ、丁寧な口調で断りを入れる。

 

 

 

「何故!? お金でしたら、幾らでも…。」

 

 

 

「残念ですが、今はこの探偵事務所は所長不在です。なので、その依頼は受ける訳には行きません。ですので、お帰り願いましょう。」

 

 

 

「くっ! もういい!!!」

 

 

 

先ほどまでの丁寧な態度とは違う乱暴な態度で探偵事務所を出て行く男達を見送りながら、報告書をファイルに閉じて棚へと収めていく。

 

 

 

「…行っちゃたけど、あの依頼、受けなくて本当に良かったの?」

 

 

 

「ああ。オレ達はここを利用させてもらっている代わりに掃除とかをしているだけで、探偵事務所としては活動していないだろ?」

 

 

 

「…それは…そうだけど…。」

 

 

 

「飽く迄、オレは携帯サイト(こっち)で依頼を受けてる非公式な探偵な訳だしな。」

 

 

 

そう、携帯サイトを通じてのみ依頼を受け、ドーパント関係の事件を解決する仮面ライダーと同じく都市伝説としての存在、それが今の龍斗達の探偵業なのだ。

 

 

 

「それに、オレはあの会社の関係者に被害が集中している間は中立を貫く。」

 

 

 

「…でも…。」

 

 

 

そして、告げられるのは、怒りの感情と共に冷たささえ感じられる龍斗の判断。そんな彼らしくない考えにマオは不服を覚える。そして、それ以上何を言っても無駄だと判断し、バットショットを飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

某所…

 

 

 

「お気に召して頂けたのなら、光栄です。」

 

 

 

サングラスをかけスーツ姿の凍也が一人の男性の前に立ちながら一礼する。

 

 

 

「ああ。この力…最高だ。でも、良いのか?」

 

 

 

「ええ、代金は要りませんが、モニターとして定期的に検査を受ける事、それがそのメモリを差し上げた条件です。では、これからもお楽しみください。」

 

 

 

「ああ。」

 

 

 

何処か狂気に染まった笑みを浮かべながら立ち去っていく男をサングラス越しに一瞥しながら、凍也はオウルアイを飛ばし、サングラスを外すと偽装状態のイカロスレイダーへと腰掛ける。

 

 

 

「…一ヶ月…比較的毒素の除去に成功した幻獣型ガイアメモリの『サイクロプス』のメモリを使わせてみたが、一ヶ月の間、使い続けてあの程度の汚染なら制御には成功した方か。ドライバーが有れば毒素も十分に中和できる。」

 

 

 

イカロスレイダーに置いてあった小型のモバイルを開き、『サイクロプス』のメモリのデータを表示させると、

 

 

 

「次は今までのドーパントとの戦闘データか。連中も購入している様子だからな…メモリを。」

 

 

 

「やれやれ、彼等はお得意様なんだけどね、凍也くん。」

 

 

 

「まあ、最近は欲張りすぎて録でもない考えを起こしている様ですけどね、霧彦兄さん?」

 

 

 

現れたスーツ姿の男性、霧彦は凍也に近づくと彼の手元に有るモバイルのデータを覗き込む。

 

 

 

「これが、『幻獣型ガイアメモリ』の試作品かい?」

 

 

 

「ええ、『サイクロプス』のメモリは能力こそ僅かに劣っていますが、市場に出回ってしまった『イフリート』のメモリよりも高い安全性が出ています。」

 

 

 

モバイルを操作しながら他にも様々な幻獣型メモリのデータを表示させていく。

 

 

 

「そして、これが流通ルートに乗せる予定の無い、シルバータイプのメモリの一覧です。ですが、『マーメイド』と『ユニコーン』以外はまだ調整段階ですね。今回のモニターのデータから安全性が確認できれば良いんですが。」

 

 

 

「データの上ではどれもが、従来のメモリを上回っているか。素晴らしいね。」

 

 

 

「ええ、自然、物質、生物…現在のガイアメモリは以上の四種類に分類できます。ですが、幻獣型ガイアメモリはそれらを上回る戦闘力を発揮します。ミュージアムの盾となり武器となる最高の兵器ですね。」

 

 

 

冷たい笑みを浮かべながらそう選言する凍也に霧彦は怪訝な表情を浮かべる。

 

 

 

「兵器かい? 君は義父さん達とはガイアメモリに対する考えが違うようだね?」

 

 

 

「いえ、そうでは有りませんよ。オレは、イクスは、ミュージアムの剣であり盾です。幻獣型ガイアメモリは純粋にミュージアムを守る力として作り上げた物。故に…『兵器』と呼んだまでです。」

 

 

 

「なるほど。」

 

 

 

霧彦の言葉に答えながらマンティスフォンを開くと、凍也はその表情に冷たい笑みを浮かべる。

 

 

 

「それはそうと…面白い見世物になりそうですよ、霧彦兄さん。」

 

 

 

「これは?」

 

 

 

「…サイクロプスドーパントの対戦相手のガイアメモリは『アイアン』。防御と攻撃に特化した『アイアンドーパント』は中々丁度良いテスト相手です。」

 

 

 

そう言って凍也の見せたマンティスフォンのディスプレイには鈍色の鉄を打ち付けた様な筋肉を持った大柄のドーパントと、巨大な鉄槌を持った単眼の巨人を意識させるドーパントが映し出されていた。

 

 

 

「まあ、今回はゆっくりと観戦させて貰おうか…。もう一人の仮面ライダーさん。」

 

 

 

 

 

 

 

鳴海探偵事務所から出て行った男達の乗る車の前に、凍也からガイアメモリを受け取った男が現れる。慌ててブレーキを踏む運転手を務めていた秘書らしき男。

 

 

 

「また、お前か?」

 

 

 

「アンタもしつこいな。」

 

 

 

車の前に立つ男をどかそうと秘書らしき男が車から降りて男に近づいて肩を掴むが、男はその手を振り払い、

 

 

 

「潰す…潰す…潰してやる!!!」

 

 

 

ガイアメモリを取り出し、スイッチを押すと

 

 

 

 

 

『CYCLOPS!』

 

 

 

 

 

ガイアウェスパーが鳴り響き、男は掌のコネクターにガイアメモリを差し込む。その瞬間、男は単眼の巨人の姿のドーパント『サイクロプスドーパント』へと姿を変え、巨大な鉄槌を出現させる。

 

 

 

「ガァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

目の前に現れた化け物に対して残された男達は落ち着いた様子で、

 

 

 

「なるほど、こいつが支社を襲っていた犯人か? 役立たずの探偵に依頼する必要も無かった様だな。おい、始末しろ。」

 

 

 

「はい。」

 

 

 

身形の整った中年の男の言葉に答え秘書らしき男は懐からガイアメモリを取り出し、スイッチを押す。

 

 

 

 

 

『IRON!』

 

 

 

 

 

腕を捲り上げた所に有るコネクターに刺し込み、秘書らしき男は鉄を打ちつけた様な肉体を持つ『アイアンドーパント』へと姿を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

鳴海探偵事務所…

 

 

 

「龍斗、ドーパント同士が戦ってるみたいよ。さっきの依頼人が襲われてるみたいだけど、依頼人もドーパントの関係者だったみたいね。どうするの?」

 

 

 

スタッグフォンに送られてくるバットショットからの映像を見ながら告げられたマオの言葉に笑みを浮かべながら立ち上がり、龍斗は、

 

 

 

「決まってるだろ。二体のドーパントを纏めてメモリブレイクするだけだ。あいつ等は依頼人なんかじゃないからな。」

 

 

 

「了~解♪」

 

 

 

敬礼のような仕草と共に龍斗の言葉の答え、スタッグフォンのディスプレイへと再び視線を落とすと、

 

 

 

「一つは『アイアン』…鉄の記憶のドーパントね、最初からヒートメタルで行きましょう。もう一体は………何これ?」

 

 

 

アイアンドーパントからサイクロプスドーパントへと視線を向けた瞬間、マオは呆然とした表情を浮かべる。

 

 

 

「どうした? …こいつは…。」

 

 

 

「このドーパントも…私は知らない。私が作ったメモリの中には無いから…多分、一目見た感じだと、前に戦ったイフリートと同じ幻獣型のドーパントだと思う。」

 

 

 

「今度も幻獣型か? 油断できない相手って事だろ? 行ってくる!」

 

 

 

「気を付けてね、前に戦ったイフリートもそうだったけど…幻獣型ドーパントは私にも想像出来ない能力を持ってるから!」

 

 

 

前回のEXの時に戦ったイフリートドーパントの時もそうだったが、幻獣型ドーパントはマオの持つ地球(ほし)の本棚でさえ全貌を把握できない未知のドーパント。はっきり言って何処で作られているのかさえ疑問な物だ。

 

 

 

走り出していく龍斗を見送りながらマオは白紙の本へと視線を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃ…ひぃ…。」

 

 

 

車から降りた身形の整った中年の男が腰を抜かして慌てて逃げ出そうとしている。

 

 

 

「ガァ…ア……助けて…。」

 

 

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァアア!!!」

 

 

 

咆哮を上げながら打ち付けられる鉄槌によってアイアンドーパントの体が変形していく。既にドーパントとしての原型を残さない姿になりながらアイアンドーパントは、不幸にも、まだ生きていた。サイクロプスドーパントが鉄槌を振り下ろす度に変形していくが、それでも辛うじて生かされている。

 

 

 

そして、サイクロプスドーパントの視界に逃げようとしている男の姿が映り、足元にあるアイアンドーパントの一部を打ち出す。

 

 

 

「ギィャァァァァァァァァァァァァアア!!!」

 

 

 

「ヒィ…ヒィィィィィィィィィ!!!」

 

 

 

体の一部を無理矢理切断された激痛に絶叫するアイアンドーパントと、近づく死の恐怖に怯えながら悲鳴を上げる男。そんな時だった。

 

 

 

 

 

「「変身!!!」」

 

 

 

『HEAT!/METAL!』

 

 

 

 

 

男とサイクロプスドーパントの間に割り込み、打ち出されたアイアンドーパントの体の一部をロッドで弾いたのは、闘士の記憶を宿した銀の右半身と、炎の記憶を宿した赤い左半身を持った、

 

 

 

「「さあ、お前の罪を数えろ!!!」」

 

 

 

メタルシャフトを構えてサイクロプスドーパントを指差しながらそう宣言する仮面ライダーW・ヒートメタルの姿だった。

 

 

 

 

 

EX05 END

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