「…が、最後のキーワードだ。」
「龍斗、地図をお願い!」
「ああ!」
「これで…。」
そう言ってマオが最後の場所に印をつけると龍斗に向き直る。
「あのドーパント…今まで、ただ単純に支社のビルを狙っていた訳じゃないわよ。」
「単純に狙っていた訳じゃない?」
「ええ、向こうが知っていたかは疑問だけど…狙われた場所には三つの共通点が有るの。」
そう言ってマオは地図に付けた印を指でなぞって行く。
「一つは『元々本社に勤めていた幹部が支社長になった会社』、同時に何人かは本社の社員も居るわね。」
「…一つ目は偶然と片付けられる共通点だな。」
「ええ、でも、二つ目は『社長となった本社の元幹部は数年前のある詐欺事件の関係者』である事。」
今までの事件で特に無残に殺されていた被害者達の共通点…それを上げられると、真実の欠片が集まり大きな答えを作り出そうとしてくる。
「三つ目は…優先的に狙っていただけかもしれないけど…『これまでの詐欺の被害者達に関係の有る土地だった場所にあるビル』…。多分、この点は時間が経てば消えるわね、飽く迄これは優先順位…。それと、その優先順位も…次で最後よ。」
「そうなると…あのドーパントの動きを被害が出る前に待ち伏せできるのは…。」
「次がラストチャンスね…。それに…ここを優先順位の最後に残していたは…。」
ホワイトボードに張られていた地図を剥がしてテーブルの上に置くと、ホワイトボードにマジックである名前を書く。
「此処よ。この…一連の事件の犯人の店が有った土地…。そして、其処は唯一支社ビルじゃないわ。…支社長の自宅…。その住人は…犯人を直接騙した男とその家族…。」
「…最悪だな…。…それに、ある意味、あのオッサンよりも恨んでいる相手…か。」
そう、数の上では今までの事件よりも少なくなるだろうが、無関係で有るはずの家族まで犠牲になる場所…。
「ええ。そして、あそこで社長を襲ったのは犯人としても予想外の偶然の遭遇からの突発的な犯行だった訳よ。」
そう言ってテーブルの上に置いた地図に印をつける。…其処こそがマオが予測できる最後の犯行場所。
「此処でこれ以上被害者が出る前に倒さなきゃ…。」
「ええ、此処で犯人を止めないと…待っているのは、支社ビルや自宅を狙った無差別な犯行よ。最終的には本社に行く事だけは予想できるけどね。」
ここでサイクロプスドーパントのメモリをメモリブレイクしなければ、次に相手の動きが予想できるのは、最終的な犯行現場のみ。
ここを逃してしまうと間違いなく何人もの犠牲が生まれる、予測出来ないサイクロプスドーパントの無差別の犯行が開始される結果となる訳だ。
「ただ、問題は犯行時間が分からない事…人が集まる午前の十時から夕方の五時の間って事だけね。」
そう言うとマオは溜息を吐きながら、テーブルに突っ伏す。
「これ以上はマオちゃん、お手上げ~。だって、この事件って犯行の順番位しか計画性なんて無いんだもん。この事件はそれ以外には完全にガイアメモリの力に任せただけの無差別破壊よ。」
「そうだろうな。」
マオに言われてサイクロプスドーパントと戦った時の事を思い出すと、龍斗はマオの言葉に同意する。どう考えても、今は複雑な計画が立てられる状態とは思えない。だが、計画が単純な分だけ、読み難い。
(いや…待て…。)
其処まで考えた後、龍斗は、
「…時間は限定できない上に、予想だけど……今日だ。」
戦った時のサイクロプスドーパントの精神状態を想像すると、僅かに行動を読み取れた。完全にメモリの力に負け、自らの憎悪とメモリの力に支配されるまま暴走している。
「あいつは恨んで居る相手をオレと戦っていた所為で逃がしたんだ。…あの精神状態で待っているなんて出来るとは思えない。」
ならば、計画等無視して最も恨んでいる相手に復讐に行く。そう予想が出来る。…場所が自宅ならば、本人を逃した所で家族を殺した事で、最低でも恨んでいる人間に対する復讐に繋がるのだから。
だから…
「そんな事はさせない!」
「ふふん、何時もの龍斗らしくなったわね♪」
「ああ。止めるぞ…マオ、この復讐劇を…。…オレが…いや。」
「うん。」
「「オレ(私)達が!!!」」
声を揃えながらそう叫び、マオに見送られながら龍斗は事務所を飛び出していく。
某所…
「大体データは揃ったか…あとは最後にダブルとの戦闘データが有れば良いが…。」
机の上に置かれているノートパソコンに映し出されている今までオウルアイから送られて来たサイクロプスドーパントの映像と、これまでの稼動データを纏めながら、凍也はそう呟く。
「欠点としては…やはり適合率がどうやっても50%以上にはならない事か。こっちのデータは冴子姉さんに渡すとして…と。」
『幻獣』…自然系、物質系、生物系と言った従来のガイアメモリとは違い、人間との間に関係が存在しないデータの詰ったメモリで有るが故に適合率が伸びないのだろうと予測できる。現にサイクロプスメモリと使用者の適合率も現時点での最高値である50%だ。
「またダブルが戦いに行くだろう。メモリブレイクされるまでオウルアイでの監視を続けるか。」
そう呟きながら冷たい笑みを浮かべる。…イフリートドーパントとの戦いでは自分も手を貸した事で勝利した。
今度は純粋に…幻獣の力を持ったガイアメモリを使った兵器としてのドーパントと、凍也の目指すガイアメモリの兵器としての理想系であるダブルの一戦。その結果には凍也としても興味がある。
「…精々頑張ってくれ…。お前なら勝てると期待しているぞ…ダブル。」
画面を切り替え、リアルタイムでモニターに映る今回の事件の犯人である男を一瞥しながら凍也はそう呟くのだった。
ある場所では虚ろな瞳をした男が家を見ていた。
「…ス……ツブス…ツブス…コワス…コワス…。」
正気が宿っていない狂気と憎悪に支配された瞳で男は家を見上げながらブツブツと呟いている。
そして、男は懐から茶色で一つ目の鬼が描く『C』の文字が描かれているガイアメモリ『サイクロプスメモリ』を取り出し、スイッチを押す。
『CYCLOPS!』
ガイアウェスパーが鳴り響いた時、
「セーフだったな。」
ハードボイルダーに乗った龍斗が男の前に現れる。
「あんたの気持ちも分かる。……だけどな…こんな方法は…大勢の人を悲しませるお前のやり方は…間違っている!!!」
「…邪魔ダ…。オマエモ纏メテ…潰シテヤル!!!」
既に男に龍斗の言葉が届いているかどうかは分からない。
龍斗の姿を見据えた瞬間、掌のコネクターにサイクロプスメモリを差し込むと、その姿を巨大な鉄槌を持った単眼の巨人、サイクロプスドーパントへと変える。
「グオォォォォォォォォォォォォオオオ!!!」
理性を失った咆哮を上げながらサイクロプスドーパントは龍斗へと向けて鉄槌を振り下ろす。それをハードボイルダーを走らせる事で回避すると、ダブルドライバーを装着し、ジョーカーメモリを取り出す。
「行くぞ、マオ!」
『JOKER!』
「龍斗の読み通りだったみたいね。…オッケー、龍斗。」
『CYCLON!』
別々の場所で同時に鳴り響く『ジョーカー』と『サイクロン』の二つのガイアウェスパー。
「「変身!!!」」
『JOKER!/CYCLON!』
重なる叫び声と共に龍斗とマオはハードボイルダーを操りながら仮面ライダーW・サイクロンジョーカーへと変身する。
「『さあ…お前の罪を数えろ!!!』」
サイクロプスドーパントを指差しながら重なる声でダブルはそう宣言する。
「ガァァァァァァアア!!!」
咆哮を上げながら振り下ろされた鉄槌を避けながらサイクロンジョーカーのスピードを活かしながら、懐へと飛び込み、
「ハッ!!!」
連続でパンチを打ち込み、回し蹴りを打ち込む。だが、
『っ!? ダメね、サイクロンジョーカーじゃ、スピードで圧倒できても、ダメージを与えられそうなのは、マキシマム位しか無いわ!』
サイクロプスドーパントはダブルを捕獲しようと腕を伸ばすが、ダブルはその腕を掻い潜りながら、背後に回りこむとサイクロプスドーパントの背中を蹴り上がりながら後頭部へと回し蹴りを打ち込み、肩を足場にジャンプし脳天へと踵落としを放つ。
「幾ら打たれ強くても、頭を狙えば…。」
『少しは効くでしょう!?』
二人の予測どおりサイクロプスドーパントはふら付きながら、頭を押さえる。
「ガア!!!」
横凪に振るわれたサイクロプスドーパントの鉄槌を避け、ソウルサイドのサイクロンメモリを抜き取り、
『HEAT!』
『HEAT!/JOKER!』
ヒートメモリと入れ替え、ヒートジョーカーへとハーフチェンジする。
「はぁぁぁぁあ。」
炎を纏うヒートサイドのパンチを
「ガァァァァァァア!!!」
ダブルHJへと鉄槌を叩き付けようとしたサイクロプスドーパントの手首へと叩きつける。
「ガァア!!!」
「オラ!!!」
サイクロプスドーパント自身のパワーを利用したカウンターでダメージを与えられた事をも確信すると、先ほど攻撃した所へと何度も炎を纏ったパンチを連続で叩き込む。
サイクロプスドーパントの腕から鉄槌が落ちると、
「今だ!」
『METAL!』
その隙を逃さずメタルメモリを取り出し、ジョーカーメモリと入れ替え、
『HEAT!/METAL!』
ジョーカーからメタルへとハーフチェンジする。ヒートメタルへとチェンジしたダブルHMは、そのままメタルシャフトをサイクロプスドーパントに叩きつける。メタルサイドに対して天敵ともいえる能力の要である鉄槌を手放した事からの判断では有ったが、
「一気にトドメだ!」
『…ねえ、サイクロプスの伝説って、どんな伝説が有るの?』
「…どうしたんだ、急に?」
最後の突きによってサイクロプスドーパントを後退させると、
『…全部は閲覧している時間が無かったのよ。多分、金属に対する異常なまでの攻撃力…影響力って言った方が良いかもしれないけど、それはサイクロプスの語源『キュクロープス』が鍛冶技術精通している事が理由だと思うけど…。』
「だったら、どんな優れた鍛冶屋でも、道具無しならただのバカ力の巨人…だろ?」
『…だと良いんだけどね…。』
ダブルHMは注意深くメタルシャフトを構えながら睨みつけるサイクロプスドーパントに近づいていく。
「ガア!!!」
そして、咆哮と共にダブルHMの耳に聞きなれたエンジン音が聞こえて来る。
「『え゛?』」
ゆっくりと後を振り向くと…“無人のハードボイルダーがダブルHMを轢き殺すような勢いで疾走してきた”。
「うわぁ!!!」
『キャア!!!』
慌ててハードボイルダーを避けるダブルHMだが、ハードボイルダーはサイクロプスドーパントを守る様にダブルに襲い掛かる。
『ちょっと、龍斗、何かハードボイルダーに恨まれるような事したの!?』
「するか!? って言うか、出来るか!? って、うわぁ!」
足を滑らせて倒れると今度は自動販売機がダブルHMを押し潰そうと倒れてくる。慌てて転がって避けるダブルHM。足元へと視線を向けると足元には缶ジュースの缶が大量に落ち居ていた。恐らく倒れたのはこれに足を取られたのだろう。
『…この自動販売機って…後輩の所のじゃないわよね?』
「…違うだろ、どう考えても。」
ハードボイルダーに襲われたり、自動販売機に襲われたりと、妙な状況に多少混乱気味の二人だった。気を取り直してサイクロプスドーパントに視線を向けると、今度はダブルHMの持つメタルシャフトを睨んでいた。すると、
「くっ!」
『今度はメタルシャフト!?』
メタルシャフトがダブルHMの手から離れて持ち主であるダブルHMへと襲い掛かってくる。
『…もしかして…ハードボイルダーやメタルシャフトが私達に襲い掛かって来るのって…あのドーパントの能力?』
「…タダでさえ厄介な、打たれ強さとバカ力に加えて特殊能力を二つも持ってるって…どれだけ反則なんだよ、あのドーパント?」
『…ハードボイルダーの護衛付きだと接近戦は無理よ。トリガーに、私はサイクロンに変えるから。』
「ああ!」
『CYCLON!』『TRIGGER!』
『CYCLON!/TRIGGER!』
ヒートとメタルの二つのメモリをサイクロンとトリガーのメモリに入れ替え、ヒートの半身がサイクロンの緑に、メタルの半身がトリガーの青へと変化する。ダブルへと襲い掛かろうとしていたメタルシャフトはフォームチェンジの影響で消え去り、ダブルCTはトリガーマグナムの風の弾丸をサイクロプスドーパントへと撃つ。
『絶対にリボルギャリーだけは呼び出しちゃダメよ!!!』
「分かってる! そんな事したら、絶対にこっちが負ける!!!」
サイクロンの機動性を活かしてハードボイルダーを避けながらの銃撃で確実にダメージを与えていく。
『もう、厄介ね、あの能力!?』
「かなり同感だな。」
ハードボイルダーだけではなく、空き缶や信号機と言った金属製の物が浮かび上がって次々と襲い掛かってくるのは厄介としか言い様が無いだろう。
付け加えて言うなら、サイクロントリガーの銃撃もサイクロプスドーパントに効いている物の決定打には至っていない。
『うっふっふっ…だったら、操っても攻撃出来ない様にしてあげるだけよ。』
『LUNA MAXIMAM DRIVE!』
ルナメモリのマキシマムドライブを示すガイアウェスパーが響きダブルCTの手から離れたバットショットがサイクロプスドーパントの周りを飛び回りながら、バットショットのルナメモリのマキシマムの特殊発光が照らす。
「グガァ!!!」
その光を直視してしまい、目をやられた事で、目を押さえて苦しみだすと、ダブルを襲っていたハードボイルダーを含めた金属製の物が一斉に動きを止める。
『やった!』
「一気にメモリブレイクだ!」
バットショットがサイクロプスドーパントから離れ、ルナメモリを排出してスコープとなってトリガーマグナムと合体する。
『TRIGGER MAXIMAM DRIVE!』
「『さあ、お前の罪を数えろ!』」
スコープとなったバットショットと合体したトリガーマグナムにトリガーメモリを装填、
「『これで決まりだ(よ)! トリガーバットシューティング!!!』」
バットショットのスコープによってサイクロプスドーパントのガイアメモリを打ち抜き、サイクロプスドーパントは爆発し、後には倒れた男と輩出されメモリブレイクされたメモリが残された。
某所…
「サイクロプスドーパントは良い所までいけたな。だが、結果はオレの予想通りダブルの勝利だったか。」
メモリがブレイクされた瞬間を眺めながら凍也はそう呟く。
「だが、良いデータは得られたか。これで、次の幻獣型メモリの完成に繋げる事が出来るか。」
そう呟き、四つの幻獣型ガイアメモリを取り出し机の上に並べる。
「暫く副業の方に集中する必要があるから、サンプルの幻獣型メモリを冴子姉さんに渡しておくか…。」
そう言ってメモリを残して立ち上がるとノートパソコンを閉じてメモリを残して、姉に提出する資料を持って部屋を立ち去っていく。
後日…探偵事務所
『こうして、全てを奪われた男の復讐劇は多くの犠牲者を出しながらも終わった。サイクロプスのドーパントを追う過程で得た情報は犯人の男を逮捕する際に纏めて警察に届けた。…当然、詐欺の証拠に繋がりそうな情報も。』
そこまで報告書に纏めた後、テレビを着けると画面には逮捕されて連行されていく社長の男の姿が映し出されていた。
『なお、何人かガイアメモリを所持している者が居る事が分かったので逮捕の時はこっそりとメモリブレイクして廻った。この町に居る仮面ライダーがオレ達二人で一人だけだと大量に出た時は大変だ。』
報告書を纏めて棚に収めると天井に視線を向ける。
「やっぱりオレは中途半端な探偵見習いだな。ハーフボイルド…半人前以下だな。」
今回の犠牲者の多くは龍斗が早く動いていたなら少なくなっていたかもしれない。マオに言われて気付かなかったら…龍斗自身が町を泣かせる手伝いをしていただろう。
そんな事になっていたら、兄にも師にも顔向けできなかった事だろう。そう考えると、間違えに気付かせてくれたマオには感謝しても感謝しきれない。
「しっかりしてよ、龍斗…。間違えたなら、今度は間違えなければいい…。そうじゃないの。」
マオが後から抱きしめながら龍斗にそう告げる。
「そうだな。」
見上げた視界の中に映ったマオの顔を見上げながら、微笑を浮べそう一言だけ呟いた。
EX07 END
サイクロプスドーパント
備考
EX05~07の『Cの憎悪』に登場。
凍也が試験的に流通させた幻獣型ガイアメモリで『