「平和だな~。」
「平和ねぇ~…じゃないわよ、龍斗!!! 暇よ、暇! ひ~ま~!!!」
ゆっくりと探偵事務所でコーヒーを飲んでいる龍斗とマオの二人。
「暇だって言ってもな、依頼なんて何にも入って無いだろ?」
「…携帯サイトの掲示板にも依頼は入ってないし…。」
「「はぁ…。」」
声を揃えて溜息を吐く二人。ふと、携帯サイトの依頼を受ける掲示板に視線を落とすと…。
「…同じ内容の書き込みが幾つも有る…?」
「…ホントね、ちょっとだけ気になるわね、この書き込み。」
マオは龍斗が見ていた携帯の液晶画面を覗き込むと、そこに書かれている書き込みに視線を落として呟く。
「確かにな。…内容は…『夜な夜な同じ場所で獣の鳴き声と獣を目撃する』か…。」
ガイアメモリと関係のある事件…そう考えて龍斗はその依頼を受ける事に決めた。
…それは、
数日後…
「これで、全部か。」
「これって、見事にバラバラよね。場所は同じだけど…。」
依頼人達から聞いた話を元に纏めると、ある人は『ライオンの鳴き声を聞いて狼を見た』、ある人は『像の鳴き声を聞いて虎を見た』等々…同じ依頼人であっても目撃した獣も聞いた声もバラバラと見事に共通点が見られない…依頼人達の話で共通する点は精々場所くらいなものだ。
「それに場所もこんな動物が居るなんて場所じゃないだろ? 場所はビル街、近くに動物園も有る訳じゃ無いしな。」
「もし、近くに動物園が有ったとしても、これだけ何度も逃げ出されてたら、どう考えても営業停止になるわよ。」
「そうだよな。…間違いなく、ガイアメモリが関係してる…だろ?」
「そうね。でも、これだけだと、検索の為のキーワードが全然足りないから何も出来ないわよ。」
「そうなると…行ってみるしかないか…その動物が目撃されてるって言う場所に。マオ、お前は留守番…。」
「私も行くわよ♪」
「って、おいぃ!!! だから、お前は自分がミュージアムに狙われているって言う自覚有るのか!?」
マオからの返答に思わず突っ込みを入れてしまう。
「だって、ヒマなんだもん!!! お手軽に動物園感覚が味わえるなんて、お得じゃない!?」
「だから、今回は特に遊びに行くんじゃ無いんだよ!!!」
…そう、EX01の遊園地の事件の時と今回とは特に違う。
「う~…でも、私が一緒なら直に検索できるわよ。」
「…その時は二人揃ってマグマのドーパントに襲われたけどな。」
マグマドーパントとティーレックスドーパントの時の事を思い出しながらそう告げる。
「うぅ~…じゃあ、下調べに行く時位は良いでしょう、まさか下調べで事件に遭遇する訳でも無いだろうし~。」
「はぁ…下調べの時だけだぞ。」
「りょ~かい♪」
このまま続けても無駄だと考え、マオの言葉に結局折れた龍斗だった。
暫くマオを乗せたハードボイルダーを走らせると、風麺の屋台の近くに止めて、龍斗はそこの客の後姿を見て声をかける。
「よう、隼一。」
「ん、龍斗に…マオちゃん、久しぶり!」
「ハウ!?」
事件の現場に向かう途中、風麺の屋台に立ち寄って事件現場についての調査を其処に居るであろう隼一に依頼しようとして来た訳なのだが…。マオの存在に気が付いて、龍斗の横を避けてマオの手を握る。
「いや、久しぶり、全然会えなくてさ…。」
「ハウ!? い、何時の間に;」
「あー…それで、隼一。お前に依頼したい事が有るんだけど…良いか?」
「ああ、それでどんな情報が知りたい?」
このままでは話が進まないと思って、『だから、マオを連れて来たくなかった』と思いながら隼一をマオから引き離しながらそう言って、隼一の言葉に龍斗はポケットの中から今回の事件現場の場所のメモを取り出してそれを隼一に見せる。
「ここは?」
動物騒ぎもそれ程大きな噂にはなっていないのだろう、隼一でさえ場所を聞いただけでは気が付かない様子だった。
「妙な事件が起こっている場所だ。其処の周りで起こっている事件について調べてもらいたいんだけど、大丈夫か?」
「ああ、依頼料は後払いでな。」
「じゃあ、前払いでここの食事代はオレが出す。」
そう言って、龍斗は隼一の食べていたラーメンの代金を支払い、マオを乗せたハードボイルダーを走らせる。
「ここか…。」
「動物が居るなんて思えない場所よね。本当にここなの?」
「間違いない…はずだ。」
依頼人達から聞いた話からメモした紙を持ち上げてマオの言葉に答えるが…流石に自信がなくなって来た龍斗だった。
何故なら、そこはどう考えても象や狼といった猛獣が居るとは思えない様な…ビル街の真ん中だったのだから。
「風とかで動物が居た形跡なんて吹き飛ばされるだろうし…。この場所を検索のキーワードに入れたとしても…それほど情報は絞り込めそうに無いわね。」
「そうだな。他の場所との違いも無さそうだし、あとは隼一からの情報待ちか…暫くバットショットでも飛ばして監視するしかないか。」
「そうね、はっきり言って私もお手上げよ。この場所と動物だけしかキーワードが無いなら…それはそれで絞り込めそうな気はするけど…何か、あと一つだけ検索のキーワードが欲しいわね。」
マオの言葉どおり、動物の姿一つ見えないこの場所で猛獣が出ると言う事件なのだから、二つのキーワードだけでも十分に絞り込めるだろう。だが、確実性を上げる為にもあと一つ位は何か新しいキーワードが欲しい所だ。
「考えられる理由は…幻を見たか…それとも…。」
「変身能力を持ったドーパントって所ね。」
そう考えを纏める二人。監視用にバットショットを飛ばそうとした時だった。
『グルゥ…。』
何処からか動物の鳴き声が聞こえてくる。
「昼間から出てきたみたいね。」
「そうだな。」
二人の目の前に現われたのは一匹の虎…大型だが、外見は普通の虎だが…。
「取り合えず、大人しくさせてから捕まえるとするか。」
「オッケー、龍斗♪」
そう言ってダブルドライバーを装着し、龍斗はメタルメモリを、マオはサイクロンのメモリを取り出す。
『CYCLON!』
『METAL!』
響き渡る二つのガイアウェスパー。そして、二人で『W』の字を書く様にメモリを持った腕を構え、
「「変身!!!」」
『CYCLON!/METAL!』
重なる叫びと共にマオがサイクロンメモリをドライバーに差し込むと、それは龍斗側のメモリに転送され、同時にマオの体がハードボイルダーに座り込む様に倒れる。そして、サイクロンメモリを刺し込み、メタルメモリを差し込み、『仮面ライダーW・サイクロンメタル』へと変身する。
「行くぞ!!!」
ダブルCM(サイクロンメタル)が背中からメタルシャフトを抜いて虎へと向けた瞬間虎は立ち上がり、その姿を虎の姿をしたドーパントへと変える。
「グルゥ…。」
虎のドーパント、タイガードーパントは呻き声を上げながら両腕の爪を伸ばし、牙を剥いてダブルCMへと向かっていく。
先手必勝とばかりに風を纏ったメタルシャフトをタイガードーパントに叩きつけようとするが、ダブルの振り下ろしたメタルシャフトが触れるよりも早く、タイガードーパントはその場から居なくなる。
「なっ!?」
『早いわね、メタルのスピードじゃ、サイクロンで側でも追いつけないわよ!』
「だとしても、ジョーカーじゃ不利だろ? ルナトリガーで行くか?」
『中々悪くない選択肢ね。でも、こんな街中でトリガーを使うのは止めた方が良いと思うわよ。』
「だったら、奴を捕まえるしかないか…。」
『ふふっ…それは名案ね。猛獣を捕まえるのは…猛獣使いの鞭と檻ね♪』
面白そうな響きを含んだ声でマオはサイクロンメモリをダブルドライバーから外し、ルナメモリを取り出す。
『LUNA!』
そして、それをダブルドライバーへと刺し込み、
『LUNA!/METAL!』
サイクロンの半身がサイクロンの緑からルナの黄色へと変わる。『仮面ライダーW・ルナメタル』へとハーフチェンジする。
「はっ!」
ダブルLM(メナメタル)がタイガードーパントへとメタルシャフトを横凪に振ると、タイガードーパントは素早くそれを避ける。だが、
「『甘いぜ(わよ)!!!』」
鞭の様に伸縮したメタルシャフトがタイガードーパントに鞭の様に打ち付けられる。
「フギャ!」
「そら! そら! そら! そら!」
一瞬動きが止まった瞬間を逃さず、そのままメタルシャフトを巻きつけタイガードーパントの体を捕獲すると、何回か地面へと叩きつけ、
『えい!!!』
続けてそのまま真上へと投げ飛ばす。
「続いて…。」
『これよ!』
ダブルLMは空中に投げ飛ばしたタイガードーパントを伸したメタルシャフトで叩く。そのままタイガードーパントの体は地面へと倒れ、転がっていく。
どれだけ地上で素早く動けたとしても、一度捕まえてしまえばそのスピードには何の意味も無く、翼を持たない陸上生物が空中で自由に活動できる訳が無いと判断した結果からの行動だ。
『グゥ…!』
再び呻き声を上げてダブルLMへと襲い掛かるタイガードーパント。そのタイガードーパントの足元にメタルシャフトを叩きつけると、一瞬だが怯えた様子を浮かべてタイガードーパントの動きが止まる。
『…妙ね…。龍斗、気をつけて、あのドーパント、人間と言うよりも動物のそれに近いわよ。もしかしたら…動物にメモリを使っただけかもしれないわよ!』
「だとしたら…こいつ以外に今回の事件の黒幕が居るって事になるか?」
『うん、だから…気を抜かないで。』
「ああ! それに…それが本当なら、これ以上こんな前座に時間は掛けられないよな!?」
会話を交わしながらもダブルLMは鞭の様に伸縮するメタルシャフトを巧みに操り、タイガードーパントの動きを封じながら追撃を加えていく。
ならば…このドーパントを操っている犯人が他にいるのなら、これ以上時間は掛けられない。
『それじゃあ、そろそろ決めるわよ。』
「ああ!」
『METAL MAXIMAM DRIVE!』
『さあ、籠の中でもう休みなさい!』
そして、生成されたそれを何度も鞭状のメタルシャフトで弾きながら、自在にコントロールする
「『メタルイリュージョン!!!』」
必殺技の宣言と共にダブルLMは光輪を弾き飛ばし、タイガードーパントをエネルギーに攻撃させる。そして、最後にトドメとばかりに光輪が全方位から、一斉にタイガードーパントへと襲い掛かる。
それによってタイガードーパントは爆散、同時に地面に一つのメモリが落ちて砕け散り、それを挿し込まれたらしい野良猫が倒れていた。
『…ごめんね…。貴方は何も悪くなかったのに。』
倒れている猫に駆け寄って撫でながら
「これは…。」
『機械部分がこんなに露出してる。これって…製品じゃない…プロダクトモデルのメモリよ…。』
そう呟き、
「マオ…。」
『ハウ!? ど、どうしたのよ、龍斗!?』
「いや、お前の様子が少し変だと思ってな。」
『そう? マオちゃんは何時もと何も変わらないわよ。』
『ねぇ、龍斗…。』
「なんだよ?」
『…私の言葉を…龍斗は信じてくれる…? …私は
マオの言葉に暫くの間無言で答えると、
「信じる。マオ、お前はオレの相棒だろ? 相棒の言葉は…疑わない。」
『…ありがとう、龍斗。』
どこか嬉しさが篭った感謝の言葉が零れた。
『グルゥ…。』
そんな時だった。無数の気配がダブルLMへと近づいてきたのは…。
「チッ! 一体だけじゃなかったのか?」
『プロダクトモデルじゃ弱くても、数が多いと厄介ね。』
狼、象、ライオンと言った動物の姿を持ったドーパント達がダブルLMを囲む様に現われる。先ほど戦ったタイガードーパントと同じ様にプロダクトモデルの能力が低いドーパントだけだとしても…この数は厄介と言う他に無い。
「…どうする?」
『…下手に戦うより、ここは引いた方が良いと思うわ。』
「そうだな。」
ハードボイルダーの近くでメタルシャフトを構えながらそんな言葉を交わす。
EX08 END