仮面ライダーW ~双世の探求者~   作:龍牙

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EX09『Wの断章09/Bの嘆き・捕らわれるW』

「退け!!!」

 

 

 

鞭状のメタルシャフトを振るいながらドーパント達を薙ぎ払いながら、ダブルLM(メナメタル)はハードボイルダーへと戻り、メモリを抜いて変身を解除すると、龍斗と意識を取り戻したマオを乗せてその場所から走り去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…。」

 

 

 

「なんて言うか、最悪の動物園って感じね。」

 

 

 

「行きたかねぇよ、そんな動物園。」

 

 

 

「私も…暇でも絶対行きたくないわね、そんな動物園。」

 

 

 

無事に探偵事務所に戻った二人はリボルギャリーが有る部屋でそんな事を話していた。ドーパントの動物園等、絶対に行きたくないだろう。間違いなく。

 

 

 

「それで…お前が作ってないメモリがプロダクトモデルで存在しているって言うのは、本当なのか?」

 

 

 

「うん、何かの目的でプロダクトモデルのテストをしているんだと思うけど…。これで、キーワードが出たわね。」

 

 

 

「ああ。あとは隼一からの情報待ちだな。」

 

 

 

「そうね。それまでは一休みしてましょうか。」

 

 

 

マオがそう言ってソファーに深々と座ると、龍斗は冷蔵庫の中からジュースを取り出して自分とマオの分のコップの中に注いで彼女に渡す。

 

 

 

「ありがとう。」

 

 

 

「ああ。」

 

 

 

一体一体は、はっきり言ってプロダクトモデルの能力が低い固体とは言え、量産型のマスカレイドドーパントよりも高い上に、人間よりも高い身体能力を持った動物が変身したドーパントが複数も相手になるのは流石に避けたい。

 

 

 

「…あの子…助けられなかった。」

 

 

 

「マオ…。」

 

 

 

項垂れながら視線を下に落とすマオ。

 

 

 

「人に比べれば軽い何て言う人が居るかもしれないけど…あの子達だって生きてるのに…。」

 

 

 

「マオ…。」

 

 

 

「…ガイアメモリが作られているのは…私の罪。」

 

 

 

龍斗に聞こえない様にマオは静かに呟く。そんなマオの呟きが零れた時だった、スタッグフォンが着信を伝えたのは。

 

 

 

「着信? 隼一からか? もしもし。」

 

 

 

『よお、龍斗。お前から頼まれていた事だけど面白い事が分かったぜ。』

 

 

 

興奮した様に告げられる第一声がそれだった。それに反応し、表情を変えるとマオへと視線を向け、マオにもスタッグフォンから隼一の声が聞こえる様にする。

 

 

 

「それで、どんな話なんだ?」

 

 

 

『ああ。実はお前が調べているって言う事件だけど、その場所の近くで何件か行方不明事件が起こってるんだ。』

 

 

 

「「行方不明事件!?」」

 

 

 

隼一の言葉に龍斗とマオは思わず声を揃えて叫んでしまう。流石の龍斗達もそんな事件の事など聞いた事もなかったのだ。

 

 

 

『ああ。此処最近に起こっているし、それ程多く起こってはいない事件だから、警察も同一犯の連続事件とは思って無いらしい。だから、ただの失踪だと思っているから…。』

 

 

 

「刃野さん達もこれが連続事件やドーパント犯罪とは見えなかった…か? お前はどうして分かったんだよ?」

 

 

 

『ネットで行方不明者の一人の家族や友人が情報を集めてたんだ。それで、最後に目撃された場所って言うのがそこだったから…。』

 

 

 

「最近の行方不明者達が最後に目撃された場所が其処だったって訳か?」

 

 

 

『ああ。鳴海探偵が居ればお前の事務所に依頼も行っただろうけど…。』

 

 

 

「今は…先生は居ない…。」

 

 

 

『だから、お前も気付かなかったんだろうな?』

 

 

 

隼一の言葉にマオの表情が僅かに暗くなる。

 

 

 

「…鳴海探偵が死んだのも…私の罪…。」

 

 

 

龍斗に聞こえない様に呟かれた言葉が静かに響く。

 

 

 

『そんな訳で最近起こっている行方不明事件の大半がそれだ。被害者は…若い女性が大半だな。』

 

 

 

「分かった。何か分かったらまた連絡をくれ。」

 

 

 

『ああ。情報料、宜しくな。』

 

 

 

そこで通話が切れる。

 

 

 

「…女性を狙ったドーパントによる誘拐事件か…。どう思う?」

 

 

 

「…多分、動物型のプロダクトモデルのテストを兼ねて人体実験の対象を集めていたんだと思うわ。動物を使ったのは…命を落としても変わりが居るから…動物実験って感じね。」

 

 

 

「それで、動物実験の結果を調べるのを兼ねた…人体実験の対象の確保か。」

 

 

 

「うん。だから、多分…あの子達を従えさせる…動物を従える力を持ったドーパントが居るはずよ。」

 

 

 

マオの言葉を聞き、龍斗は暫くの間考え初め、

 

 

 

「…『ビーストテイマー』とかか?」

 

 

 

「猛獣使い…悪くない線ね。でも、そう判断するのも危険だと思うわよ。…最近、出て来る様になった、地球には存在しないはずの幻獣型のドーパントの事も有るしね。」

 

 

 

「動物を自由に操れる幻獣のドーパントか…。」

 

 

 

流石に龍斗も伝説等に詳しい訳ではないので、そう言われて直に思いつく訳は無い。

 

 

 

「でも、動物を操る能力を持っている可能性があるって覚えてた方が良いわ。プロダクトモデルとは言っても、ドーパントを大量に操れるなら、それはそれで下手な武器よりも強力よ。」

 

 

 

「ああ、そうだな。マオ、今までのキーワードから検索出来ないか?」

 

 

 

「ええ、やってみるわ。何か分かるかもしれないしね。」

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、マオは意識を地球(ほし)の本棚の中に飛ばす。

 

 

 

「…最後のキーワードは『行方不明事件』…これはダメね。」

 

 

 

最後のキーワードを告げた瞬間、本は全て飛び去ってしまった。

 

 

 

「…次は、『誘拐』。」

 

 

 

そのキーワードを告げると今度は本が一冊だけ彼女の手元に戻ってくる。

 

 

 

「ビンゴね。っ!? これは…。そう…なんだ…。」

 

 

 

その本の内容に目を通した瞬間、マオの表情が凍りつき、無言のまま意識を現実へと戻す。

 

 

 

 

 

 

 

「龍斗、分かったわよ。」

 

 

 

そう言ってマオはホワイトボードに現場周辺の地図を描いていく。

 

 

 

「これって…あの辺の地図か?」

 

 

 

「うん。それで、誘拐が起こった場所、私達が調べている事件の場所も、ここになるわ。」

 

 

 

そう言ってマオは赤い丸を地図の一部に描く。

 

 

 

「ああ。そんな事件が有ったなんて思いもしなかったな。」

 

 

 

「うん。攫われた人達は実は殆ど無差別に攫われてるのよ。でも、一つだけ共通点が有るの…。」

 

 

 

「共通点?」

 

 

 

「…単純な話…誘拐された子の年齢よ。私や龍斗と同じ歳の子ばかり狙われてるのよ。それに…行方不明事件には、実は一日ほどで帰ってきた子も居るみたい。」

 

 

 

マオのその言葉に龍斗は思わず表情を変える。

 

 

 

「まさか、それは!?」

 

 

 

「ううん、私を狙っているんじゃない。単純な話よ…相手はガイアメモリの被験者を探しているだけ。多分、帰って来れた子は…作られたばかりのガイアメモリの力に運良く耐えられた例だと思うわ。」

 

 

 

龍斗の言葉にマオは首を振ってそう答える。

 

 

 

「そして…もう一つ…あそこの近くに…地下に工場が作れて人を隠して置けるだけの広い土地が有ると思う?」

 

 

 

「それは…まさか?」

 

 

 

あの近辺にはビルが多く、工場が地下に作れそうな土地は無い。…………一箇所を除いて。

 

 

 

「そうよ、この近辺には一箇所だけ女子高が有ったのよ。規模的に考えて工場を設置する場所としてはギリギリだけど…面積は十分よ。」

 

 

 

其処を指差しながら、マオは溜息を吐き、

 

 

 

「誘拐された人達は全員この地下で捕らわれていると思うけど…。」

 

 

 

「残念ながら、証拠は無いか。それに、地下室への行き方も分からないよな…。」

 

 

 

「うん、残念ながら…私達にはそれを探す方法は無いわね。だったら方法は一つだけよ…向こうから出て来て貰うだけ。プロダクトモデルと言っても数は限られているはず…倒していけば…向こうから出てきてくれるはずよ。でも、一応、その学校を調べた方が良いと思うわ。」

 

 

 

微かにマオの様子が可笑しいと感じ取りながらも、

 

 

 

「そうだな。じゃあ、オレは行ってくるけど…着いて来るなよ。」

 

 

 

「OK、退屈だけど私は留守番してるわね。」

 

 

 

敢えて気付かない振りをして、そう言って手を振りながら出かけていく龍斗を、手を振って見送りながら、彼が出かけていった事を確認すると、

 

 

 

「これで良いわね。…嘘は言ってなかったけど。」

 

 

 

マオは立ち上がって探偵事務所の外に出る。

 

 

 

「…ゴメン、龍斗…。…これは私の罪だから…。私が遣らなきゃならない事…。力は借りるけど…例えあのメモリを使っても…私の手で決着を付けなきゃ…。」

 

 

 

そう言って走って行くマオだったが…

 

 

 

「ったく、あいつは…自分一人で背負う奴が有るかよ?」

 

 

 

ハードボイルダーと一緒に影に隠れていた龍斗が、何処かに向かっていくマオの背中を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動物のドーパント達が現われた場所にマオの姿は有った。

 

 

 

「これで良し。」

 

 

 

自分の服にスパイダーショックの発信機を取り付けて、周囲を見回す。幸か不幸か、プロダクトモデルのドーパント達はまだ出て来ていない。

 

 

 

「…何が良しなんだよ…お前は?」

 

 

 

「ハウ!? りゅ、龍斗、どうして此処に!?」

 

 

 

後ろから聞こえて来た声に驚いて思わずそんな叫び声を上げてしまう。

 

 

 

「それで…騙した相棒に対して言う事は…?」

 

 

 

「え…えーと…ごめんなさい。」

 

 

 

「…それで、一人で此処に来たんだよ、お前は?」

 

 

 

「…そ、それは…。」

 

 

 

明らかに怒っていると言う視線を向ける龍斗に、マオは視線を逸らしながら言葉に詰ってしまう。

 

 

 

 

 

『グルゥ…。』

 

 

 

 

 

「チッ、空気の読めない連中だな。」

 

 

 

「動物に期待するだけ無駄だとは思うけどね。」

 

 

 

そんな会話を交わしながら、自分達の前に現れた狼の姿をしたドーパント、ウルフドーパントを見据えながら、龍斗とマオはダブルドライバーを取り出し、ヒートとジョーカーのメモリを取り出す。

 

 

 

「話は後、あの子を助けた後に…全部話すから…。」

 

 

 

マオのその言葉を聞きながら龍斗がダブルドライバーを装着すると、マオにもダブルドライバーが現われる。

 

 

 

「後で、全部聞かせて貰うぞ。」

 

 

 

 

 

『JOKER!』

 

 

 

そんな言葉と共に響くジョーカーメモリのガイアウェスパー。

 

 

 

 

 

「うん。」

 

 

 

 

 

『HEAT!』

 

 

 

 

 

「「変身!!!」」

 

 

 

 

 

『HEAT!/JOKER!』

 

 

 

 

 

声が重なり響いた瞬間、マオの側からヒートメモリが転送され、意識を失って倒れると龍斗もジョーカーメモリを刺し込み、ドライバーを開くと…仮面ライダーWヒートジョーカーへと変身する。

 

 

 

「さあ、熱いのをお見舞いしてやるぜ!!!」

 

 

 

『ちゃんと手加減してあげてね。あの子達も…被害者なんだから…。』

 

 

 

「分かってる!」

 

 

 

ダブル(マオ)の言葉にそう答えて拳を握るダブル(龍斗)。そして、ダブルHJ(ヒートジョーカー)がウルフドーパントに向かっていこうとした瞬間、

 

 

 

「っ!? 何!?」

 

 

 

豹の姿のドーパント、パンサードーパントがマオの体を捉えて走り去っていく。

 

 

 

『良いのよ…これで…。私の体にはスパイダーショックの発信機を取り付けてあるから…ダブルドライバーを使って私と意識を繋げて…そうすれば…私の居場所を伝える事が出来るはずよ。』

 

 

 

「お前、何て無茶な事を!?」

 

 

 

『…良いのよ…これは…私の…罪なんだから…。』

 

 

 

搾り出すように響くマオの言葉に思わず言葉に詰ってしまう。

 

 

 

『さあ、私の行動を無駄にしない為に…早くあの子を開放してあげるわよ!!! 何処に連れて行かれたか分からなくなるのは、やめて欲しいんだからね!』

 

 

 

「…ああ!」

 

 

 

意を決して炎を宿した拳を握りながらダブルHJはウルフドーパントへと向かっていく。

 

 

 

『キャン!』

 

 

 

炎に怯えながら悲鳴を上げて逃げ回るウルフドーパントに対して機動力に劣るダブルHJでは上手く攻撃は当らない。

 

 

 

「くっ、サイクロンに変えてスピードで対抗するか?」

 

 

 

『龍斗…されには及ばないわよ。』

 

 

 

そう言ってマオは拳を開き炎を消すとそのまま力を抜いて立ち尽くす。

 

 

 

「…っておい、どうする気だ!?」

 

 

 

『そ・れ・は。』

 

 

 

『グルゥ…ガウ!!!』

 

 

 

咆哮を上げながら牙を剥いて飛び掛ってくるウルフドーパントの動きに反応して、ダブルHJはカウンターの形でパンチを叩き込む。

 

 

 

「カウンターか?」

 

 

 

『そう言う事よ。動きが早くても、攻撃の瞬間は…私達の射程にも入るわ。ふふふ~、昨日ボクシングについて検索しておいて良かったわね。』

 

 

 

妙にダブル(マオ)の言葉に背筋が寒くなる思いのするダブル(龍斗)だった。何の為にボクシングについて検索したのか…自分の精神安定の為にそれ以上想像しないことにする。

 

 

 

『どんどん行くわよ!』

 

 

 

そう叫び炎を燃やした拳を次々とウルフドーパントの体に叩き込み、倒れた瞬間を逃さず、

 

 

 

「今だ!」

 

 

 

 

 

『JOKER MAXIMAM DRIVE!』

 

 

 

 

 

ジョーカーメモリを抜き、右腰のスロットに刺し込むと紫電が流れる。

 

 

 

『さあ、これで休みなさい!』

 

 

 

「これで決まりだ!」

 

 

 

ダブルは相手に向かって飛び上がり、ダブルの右手に赤い炎が、左手に紫の炎が燃え上がり、相手の目の前で体が分裂する。

 

 

 

「『ジョーカーグレネイド!!!』」

 

 

 

左右に分裂したダブルHJの連続パンチがウルフドーパントの体に連続で叩き込まれ、ウルフドーパントは爆散すると、後には砕けたメモリと一匹に子犬の姿があった。

 

 

 

『…ゴメンね…。』

 

 

 

その子犬に駆け寄りそう呟くと、ダブル(マオ)はダブルドライバーに触れる。

 

 

 

「おい!」

 

 

 

『ゴメン、龍斗、絶対に私を助け出しに来て…。』

 

 

 

そう言ってベルトを…ダブルドライバーを閉じる。

 

 

 

「おい!」

 

 

 

変身が解除されると龍斗は虚空を睨みつける。

 

 

 

「マオォォォォォオ!!!」

 

 

 

その瞬間、マオが攫われた事を改めて実感してしまったのだ。

 

 

 

 

 

EX09 END

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