仮面ライダーW ~双世の探求者~   作:龍牙

21 / 26
EX10『Wの断章10/Bの嘆き・切り札はJ』

「くそ!」

 

 

 

リボルギャリーの置かれたガレージを改造した部屋の中、龍斗は悔しげに拳を床に叩き付ける。

 

 

 

『マオが攫われた』

 

 

 

彼の苛立ちの原因はその一言に尽きるだろう。何を考えていたのか、マオは自分自身を囮にして今回のドーパントの居場所を伝えると言う訳だ。それを考えるとどうしても苛立ち以外の感情が浮んでこない。

 

 

 

「ダブルドライバーはここにある…けど!!!」

 

 

 

唯一の幸いは装着した時にはマオと龍斗、互いの意識が共有できるダブルドライバーがこうして龍斗の手元に有る事だろう。彼の手元に有る以上は、ある程度はマオの安全は確保されている。これを使えば直にでも行動に移ることが可能なのだから。

 

 

 

だが、龍斗の中に有る一つの感情が彼に行動を途惑わせている。

 

 

 

「どうして…オレは気付かなかった…!? 気付いて…やれなかった!?」

 

 

 

悔しげに龍斗が握り締めるのは彼の元に残されたジョーカー、メタル、トリガーのボディサイドの三つのメモリ。この三つのメモリは自分ではなく兄の、自分があの時の師の言葉に従っていれば師の手元に有っただろう。

 

 

 

自分の相棒(マオ)のそんな考えも知る事の出来なかった自分がダブルで有る資格が有るのか? そんな疑問が龍斗の中に浮んでくる。

 

 

 

これが、兄だったら、師だったら、マオの考えに気付いて止めていたかもしれないし、何らかの対策を立てていたかもしれない。だが、自分は…そんなマオに対して…何も出来なかった。

 

 

 

「…何処まで行っても…半人前(ハーフボイルド)以下だな…オレは?」

 

 

 

それでも今は行動するしかない。そう判断し、龍斗は立ち上がって部屋を出て行く。

 

 

 

「くそっ!」

 

 

 

事務所の方でダブルドライバーを装着するが、当のマオは気絶しているのか幾ら名前を呼んでもマオからの返事は返って来なかった。

 

 

 

幸いにもマオに着けているスパイダーショックの発信機があるから彼女の居場所は分かる。だが、

 

 

 

(…仮面ライダーになれない…今のオレに何が出来る…?)

 

 

 

仮面ライダーに変身出来なくなり、改めて自分の無力さを鑑みてしまい、そう思わずには居られない。

 

敵の元に居るのは、能力が低いプロダクトモデルとは言っても大量のドーパント達とそれらの上に立つドーパント。マオの存在が無ければ仮面ライダーになれない自分に何が出来るのか、そう思わずには居られない。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

意を決して、ダブルドライバーは装着したまま、ポケットの中に所持している三つのガイアメモリを押し込みながら探偵事務所を出て行こうとした時、今まで無かった何かの気配を感じ取り、事務所の中に戻る。

 

 

 

(…誰か居るのか?)

 

 

 

確かに自分以外誰も居ないはずの探偵事務所の中からは………確かに他の誰かの気配が感じ取れる。

 

 

 

警戒しながら探偵事務所の中に戻るが部屋の中には誰も居ない。だが、探偵事務所の中に誰か(・・)が存在している気配を感じる。

 

 

 

「っ!? そこに居るのか?」

 

 

 

ふと、ガレージを改造した部屋…リボルギャリーを停めてある部屋の方に視線が向くと…気配の主がそこに居る事に気が付いた。

 

 

 

警戒を露にしながらスタッグフォンと擬似メモリを取り出して部屋の扉を開くと、

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

目の前に飛び込んで来た光景に思わず言葉を失ってしまう。

 

 

 

「そ…そんな…。」

 

 

 

彼の目の前…ガレージの中に佇んでいたのは…

 

 

 

「どうして…?」

 

 

 

此処には居ないはずの男…

 

 

 

「確かにあの時…。…でも…。」

 

 

 

その最後の姿は龍斗の目に焼き付いている。

 

 

 

「生きていたんですか…先生?」

 

 

 

自分の記憶の中にあるモノとは色が違う帽子とマフラーを見に着けた『仮面ライダースカル』…『仮面ライダースカル・アナザー』が彼の目の前には存在していた。

 

 

 

龍斗の前に立つスカル・アナザーは無言のままガイアメモリを挿入するスロット部分が単一になったダブルドライバー…スカル・アナザー自身が装着している物と同じドライバー…『ロストドライバー』を机の上に置き、龍斗の隣を通って立ち去っていく。

 

 

 

「これは…。」

 

 

 

そう呟きロストドライバーを手に取り、

 

 

 

「…ロスト…ドライバー…。」

 

 

 

記憶の中にあるそれの名を呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某所…

 

 

 

「ご苦労様。」

 

 

 

イカロスレイダーに腰掛けながら凍也はスカル・アナザーへとそう告げて書類の入った封筒を差し出す。

 

 

 

「………。」

 

 

 

無言のまま凍也からそれを受け取るとスカル・アナザーはその場を立ち去ろうとする。凍也はそんなスカル・アナザーの背中を眺めながら、

 

 

 

「心配するな、あのロストドライバーは一回限りの使い捨てとは言え、機能はオリジナルと遜色は無いから心配するな。」

 

 

 

そう告げるが、スカル・アナザーは無言のまま凍也の前から立ち去っていく。

 

 

 

「…さて…。試験的に流出させた幻獣型メモリを持った…“劣化ガイアメモリを作っている組織”もこれで潰せるな。」

 

 

 

ソルメモリを握り締めながら凍也は静かにそう呟く。

 

 

 

何時もと変わらない口調だが、凍也の言葉の中にははっきりとした怒りの感情が込められていた。

 

 

 

劣化版のガイアメモリの製作とそれの流出…はっきり言ってミュージアムと言う組織の名を汚す、組織に対する侮辱とも言える行為だ。しかも、凍也がデータ収集の為に流出させた幻獣型ガイアメモリを持っている者がトップに立って行っている。凍也としてはそれを許す訳には行かない。

 

だが、現在は直接的に手を出せない凍也に変わって彼は龍斗に組織に対抗する為の力を、ロストドライバーを託した。しかも、それはたった一度だけの使い捨てと言う形を取り、何れは敵となる仮面ライダーWに力を与えない形で。

 

 

 

「…まあ、あのロストドライバーの稼動データも手に入って一石二鳥…利益はあるな…。…だが…。」

 

 

 

自分や組織にとっての利益を思い浮かべ、感情を落ち着かせようとするが…それでも怒りを抑えきれない。

 

 

 

出来ることならば、仮面ライダーイクスの手で、己の行いを後悔させながら始末を付けたい。そして何より…どちらも知らない事とは言え…あの組織は…。

 

 

 

「…オレの妹(・)を傷付けた…。」

 

 

 

己の家族を傷付けられたと言う事実、それが凍也を何よりも苛立たせているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風都

 

 

 

スカル・アナザーからロストドライバーを受け取った龍斗はスパイダーショックの発信機の反応を頼りにハードボイルダーを走らせていた。

 

 

 

「ここか…?」

 

 

 

発信機の反応が有る場所…マオの行った検索に出てきた女子高の前でハードボイルダーを停める。壁の影に隠れて中の様子を伺うと丁度今日は休日なので人は居ないはずなのだが、誰かが入っていく様子が見えた。

 

 

 

 

 

『BAT!』

 

 

 

 

 

擬似メモリをバットショットに刺し込み、蝙蝠型に変形したバットショットを先ほど目撃した校舎の中へと入っていた者達の後を追わせる。

 

 

 

「これで良し。バットショットに中を探らせれば…。」

 

 

 

『グルゥ…。』

 

 

 

スタッグフォンに映し出されるバットショットからの映像に視線を落としながらそんな事を呟いていると、獣特有の唸り声が聞こえてくる。

 

 

 

「来たか。やっぱり、ここで正解だったみたいだな。」

 

 

 

現われたチータードーパントを一瞥しながらダブルドライバーを装着し、ジョーカーメモリを押すと、

 

 

 

『ふわぁ…龍斗?』

 

 

 

「マオ、無事だったのか?」

 

 

 

チータードーパントの攻撃を避けながらやっと聞こえてきたマオの声に安堵する。

 

 

 

『今の所はね。でも、マオちゃん大ピンチなのは変わりないわね。それと、ドーパントは無視して来れない?』

 

 

 

「無理そうだけど…な。」

 

 

 

『うーん…私も逃げられない様に腕を縛られてるのよね。これじゃ、変身は無理ね。』

 

 

 

意識こそ共有できるが、肝心のガイアメモリがダブルドライバーに装填できなければ、変身は不可能だ。

 

 

 

「仕方ないな、助けに行くから待ってろ!」

 

 

 

『一人で戦えるの?』

 

 

 

「心配するなよ…切り札(ジョーカー)は託された。オレが何処まで出来るかは解らないけどな! ダブルの半分程度の活躍は……してみせる!」

 

 

 

『オッケー、龍斗。じゃあ、捕らわれのお姫様を堪能させてもらうから、なるべく早く助けに来てね♪』

 

 

 

「ああ!」

 

 

 

チータードーパントの攻撃を避けながら、マオの軽口に答えてダブルドライバーを外し、ロストドライバーを装着するとバックル部分からベルトが伸び、装着される。そして、

 

 

 

 

 

『JOKER!』

 

 

 

 

 

響くのはジョーカーメモリのガイアウェスパー。

 

 

 

「行くぜ、変身!」

 

 

 

ジョーカーメモリを挿入口へと刺し込み、ロストドライバーを開くと斜めになったLを意識させる形にロストドライバーが開き、

 

 

 

 

 

『JOKER!』

 

 

 

 

 

龍斗の姿をダブルのジョーカーサイドが全身に来た仮面ライダーへとその姿を変える。

 

 

 

「これが…オレの切り札だ! オレ自身が切り札なんて言えないけどな…オレは、『仮面ライダージョーカー』!!!」

 

 

 

黒い仮面ライダー…『仮面ライダージョーカー』へと変身した。

 

 

 

ジョーカーはファイティングポーズを取って唸り声を上げて襲い掛かるチータードーパントに対応する。

 

 

 

「ふっ!」

 

 

 

『ガゥ!!!』

 

 

 

ジョーカーの放ったパンチを避けてチータードーパントは牙を剥き出しにし、ジョーカーへと飛び掛る。だが、ジョーカーは体を僅かに横にずらし、チータードーパントの牙を避け、右足を蹴り上げ、チータードーパントの腹の部分にキックを打ち込む。

 

 

 

『ギャウ!!!』

 

 

 

悲鳴を上げて地面を転がるチータードーパントにジョーカーが追撃を加えようとした瞬間、

 

 

 

『パオーン!!!』

 

 

 

突然聞こえてきた雄叫びに背筋が凍える様な悪寒を覚え、慌てて大きく横に走ってその場から逃げると、巨大な何かがそれまでジョーカーが立っていたアスファルトを砕いた。

 

 

 

「おいおい…。」

 

 

 

巨大な体を持った象の様なドーパント、エレファントドーパントがジョーカーを押し潰さんと雄叫びを上げて足を振り下ろす。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

慌ててそれを避けるジョーカーだが、エレファントドーパントの攻撃の合間に回復したチータードーパントの爪がジョーカーの体を引き裂く。

 

 

 

「これは…拙いよな。」

 

 

 

タダでさえ二対一と不利な状況に加えて、敵はパワーに優れている分動きが鈍いエレファントドーパントと、パワーに劣っている分スピードに特化したチータードーパントの二体のドーパントの組み合わせは能力的にバランスが取れている。

 

それに対してジョーカーは結局の所…スペック上ではWサイクロンジョーカーの能力の半分…ジョーカーサイドの能力しかない上にハーフチェンジによる能力の変化も出来ない。

 

 

 

『グルゥ…。』

 

 

 

『パオーン!!!』

 

 

 

再び雄叫びを上げて襲い掛かる二体のドーパントの攻撃を避けてジョーカーはハードボイルダーの元まで移動し、ハードボイルダーを走らせてそのまま学校の壁を飛び越えて、校庭に飛び込む。

 

 

 

ジョーカーを追い掛けチータードーパントが壁を飛び越え、エレファントドーパントが壁を突き破って校庭に入ってくる。

 

 

 

二体のドーパント達と間合いを取る傍ら、ジョーカーはスタッグフォンに映し出される校舎の中の映像を確認する。

 

 

 

(…地下への入り口か…。場所は…確認できた!)

 

 

 

映像を確認すると、ジョーカーはスピードを上げてハードボイルダーを走らせてチータードーパントとエレファントドーパントに向かう。

 

 

 

『ガゥ!!!』

 

 

 

流石はプロダクトモデルとは言えチーターのドーパントと化した獣と言った所だろうか? チータードーパントはハードボイルダーのスピードに着いて行く。

 

 

 

だが、エレファントドーパントはそのスピードについて来れない様子だ。

 

 

 

(良し! 分断成功!)

 

 

 

二体のドーパントの連携を崩し、確固撃破の好機(チャンス)が巡って来たことを確信すると、ジョーカーはハードボイルダーを走らせチータードーパントとチェイスを続けながら、ベルトからジョーカーメモリを引き抜き、

 

 

 

 

 

『JOKER MAXIMAM DRIVE!』

 

 

 

 

 

マキシマムスロットへと装填する。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 

 

ハードボイルダーのスピードを上げてチータードーパントとの距離を取るとそのままUターンし、チータードーパントへと向かう。

 

 

 

「ライダー…パンチ!!!」

 

 

 

自身へと向かってくるチータードーパントに擦れ違い様に紫電の光を纏った必殺のパンチを叩き込む。

 

 

 

『ギャン!!!』

 

 

 

そのままチータードーパントの体が横に吹き飛ばされ爆散すると、破壊されたチーターのメモリが排出され、ドーパントにされていたのだろう子猫が倒れていた。

 

 

 

(…悪い…。許してくれなんて言わない。…でもな、お前達の仇だけは討ってやる! オレが…いや、オレ達が!!!)

 

 

 

エレファントドーパントの振り回す長い鼻と、振り下ろす巨大な足、それをハードボイルダーを巧みに操り避ける事でジョーカーはエレファントドーパントを翻弄する。

 

 

 

『パオーン!!!』

 

 

 

焦れた様子で雄叫びを上げながらハードボイルダーを追いかけるが、長い鼻の間合いに入らない限り、脅威ではなく、チータードーパントと違いスピードもハードボイルダーには追いつけるものではない。

 

 

 

 

 

『JOKER MAXIMAM DRIVE!』

 

 

 

 

 

ジョーカーがマキシマムスロットに差し込む事によって、再び響き渡るマキシマムドライブのガイアウェスパー。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

 

エレファントトドーパントの背中を取ってそのままハードボイルダーをジャンプさせると、ハードボイルダーを踏み台により高く跳躍する。

 

 

 

「ライダー…キック!!!」

 

 

 

『パオーン!!!』

 

 

 

紫電を纏った足を向けて放ったジョーカーの必殺の飛び蹴りがエレファントドーパントに突き刺さり、爆発すると跳び蹴りを放ったジョーカーが踏み台にしたハードボイルダーに空中で座し、そのままハードボイルダーと共に着地する。

 

 

 

地面に倒れているのは一匹の猫と破壊されたメモリ。その猫は弱々しく立ち上がりながら、チータードーパントだった子猫へと近づき、倒れている子猫を舐めながら力尽きた様に倒れた。

 

 

 

「…ゴメン…な。」

 

 

 

その光景を見て声を噛み殺す様にして呟く。

 

 

 

二匹の猫は親子だったのだろう…。人は救えたとしても、たった二匹の猫も救えない自分の無力さに思わず嫌気を感じてしまう。

 

 

 

心の中で犠牲になった二匹の猫に謝りながら、こんな事をした者達を倒す為にジョーカー(龍斗)はハードボイルダーを後者へと向けて走らせる。

 

 

 

 

 

EX10 END

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。