過去と今の交差する中で逢う者達……
謎を抱える二人の姉妹、師の娘、そして……兄の友人にして新たな仮面ライダー
《アクセル!!!》
今、物語は加速する。
この話はファングジョーカー登場後のエピソードとなります。
「これは、凄いですね。既存の記憶から此処までの品を生み出すなんて……」
「ああ、君から提供してもらったメモリガジェットのデータから作り上げた新型のガイアメモリさ」
凍也の視線の先に有るのは一機の鳥型のメモリガジェット。他にもカプセルの中に入っている様々な形状のメモリガジェットの数々。
「取り合えず、この試作品は通常流通に流してデータを集めましょう。他のメモリにデータを繁栄させる必要も有りますからね」
凍也の掌に鳥型のメモリガジェットが降りるとそれを握り、再び手を開くと巨大な翼のパーツの着いたガイアメモリへと変わっていた。
「ドクター、今後も私達ミュージアムは貴方の働きに期待しています。資金、データ、必要な物が有れば何時でも仰ってください」
ミュージアムの一般に流通させるガイアメモリはその多くは可動データと言う形で彼らの元に集まりより強力なメモリの開発に活かされる。同時に売買した際の金額も組織の活動資金となる。
ミュージアムに所属する仮面ライダーにして、その最高幹部の一人『園崎 凍也』はゆっくりと一礼と共に新たなメモリを見て笑みを浮かべる。
そう、それは二人で一人の探偵達に起こった一つの転機。此処からの物語は数多くの出会いの物語となる。これは、その最初の出会いの一ページ。
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一ヶ月前、鳴海探偵事務所……
「『ファングメモリ』か」
「そっ♪ たった一つの、マオちゃんメインのダブルに変身できるメモリね♪」
今までは変身したマオの意志を超える程の暴走を引き起こすほどの凶暴な『牙の記憶』を内包している。それを含めて二つのデメリットが存在しているが、それさえ克服した今となってはダブルの形態の中でトップクラスの戦闘力を誇る。並のドーパントでは相手にならないほどに、だ。
「でも、気を付けてね、龍斗……。ファングメモリを制御できるのは、龍斗との適合率の高いジョーカーメモリだけよ」
そう、ファングメモリを使っての変身は『ファングジョーカー』限定だ。メタルでもトリガーでもファングメモリを制御することはできない。もっとも、相性的に格闘力の高いジョーカーでこそ能力を十全に発揮できると言うのも有るが。
……取り合えず、ファングジョーカーを使い始めて、何度も体が危険に晒されているマオの気持ちが心底理解できたとだけ付け加えておく。確かにあれは心臓に悪い。
「なるほど。……って、そうなるとオレがロストドライバーで変身できるのは、ジョーカーだけって事になるのか?」
「そうなるわね」
「うわぁ……」
改めて言われると思わず頭を抱えたくなる。それでも高い格闘能力を持ったジョーカーは単独で変身した場合はダブルとはまた違った強さを持っていると言える。
まあ、メタルやトリガーと言ったメモリの力がロストドライバーでは単独で使え無いと言うのは確かに痛いが。
「マオちゃんの場合も、ヒートやルナよりもサイクロンとの相性が高いって感じね~。ファングはどちらかって言うと相性とは関係無さそうだし」
「つまり、これから先ダブルの大幅なパワーアップが有るとすれば……」
「私達との相性の良い、サイクロンジョーカーの進化って事になるわね」
そんな会話と共に握り締めるのはジョーカーとサイクロンのガイアメモリ。より強力なメモリによって引き起こされる今後のガイアメモリ犯罪の解決に向けて、現在の戦力の再確認をしている。そんな時だった。
―ガチャ―
「え、お客さん?」
「依頼人だろ」
取り合えず、マオの間違いを訂正しつつ探偵事務所に入ってきた二人の依頼人へと視線を向ける。双子なのだろう、よく似た外見をしているやけに暗い目をした二人の姉妹。
「ムッゥ……」
思いっきりマオが不機嫌な表情になるがその辺は流しておく。二人を探偵事務所の中に通すと彼女達からの依頼を聞く。
『私達を探してください』
「はぁ?」
二人から受けた依頼は思いっきり哲学的な代物だった。
(……ガイアメモリに関係している事件でも無さそうだしな)
実際、ガイアメモリ関係の事件は全て携帯サイトの依頼と言う形で引き受けている。それが仮面ライダーと言う風都の街の都市伝説の不鮮明さに拍車をかけている。まあ、それが二人の狙いでも有ったのだが。
それ以前に、現在鳴海探偵事務所は……
「あー……悪いんだけど、オレは正式にはここの探偵じゃないから……」
「違うの?」
「そう言う事、龍斗は探偵見習いの見習いって所ね」
龍斗の言葉を補足するマオの言葉に思わず口篭ってしまう。流石に認めているとは言っても改めてそう言われるのは色々と思う所がある。
「そう言う事だ。此処はオレの探偵の先生の事務所で、オレの兄さんが助手……って言うか見習いをしていた所で、オレの立場は単なる見習いの見習いって所で、此処の管理をしているんだ。今はちょっと、此処の正式な探偵が居ないんで依頼は受けられないって事になる」
一気にそう言い切った。此処の正規の探偵は龍斗とその兄の師である鳴海壮吉だけ、龍斗も兄もまだ一人前の探偵として認められている訳では無いので、正式な探偵と言う訳ではない。その為に半人前以下の龍斗としては名探偵と言われた鳴海壮吉の名を汚さない為にも、迂闊に依頼は受けられない。ドーパントによる犯罪に対する依頼だけは例外としているが。
「あ……そうだったんですか……」
黒いリボンで髪を束ねた少女が気落ちした様子で呟く。
「だったら」
もう一人、先程の少女に比べて気が強そうな少女が立ち上がり龍斗へと視線を向ける。
「へぇ……」
「ふ~ん♪」
彼女の言葉に龍斗だけでなく一人話を聞いていたマオも面白そうな笑みを浮かべる。
「ねえ、龍斗、中々興味深いから、話だけでも聞いてあげたら」
「マオ、お前は!? まあ良いか。詳しい話、聞かせてもらおうか」
それが、二人だけの鳴海探偵事務所の仲間に加わった新しいメンバーの最初の二人……『白鐘 沙羅』と『白鐘 双樹』との最初の出会いだった。
現在、
「ふざけるな…」
ゆっくりと目の前の光景に怒りを露にする龍斗。警察関係者の連続殺人事件、しかもその全てがガイアメモリによる犯行だ。
「最初の被害者達は、ある事件を担当していた刑事さんと捜査に関係してた人達ね。確か、龍斗の先生が捜査記録で『冤罪の可能性がある』って言っていた事件でしょ?」
「ああ。探偵や刑事なんて人から感謝されて好かれる事も有るけど、同時に恨みだって買う事もある。まして、冤罪なんて恨まれて、殺されても文句は言えないって思ってる。……だけどな!」
「完全に無差別殺人になってるわね」
「最初の被害者は事件の捜査を担当していた当時の刑事、そこから捜査に関係した人達に、証人になった人達……。これだけでもやり過ぎになっているのは分かる。でも、これ以上、放っては置けない」
今の被害者は何の罪の無いタダの警官。既に警察に関係した人間を無差別に狙う連続殺人になっている。
「マオ、これ以上……オレ達の街を泣かせさせない」
「オッケー、これまでの手掛かりから検索してみようと思うけど……二人は?」
「あー……」
思わず忘れていたと言うのが顔に書いてある。一応人手が出来た事で探偵業も形態サイトでのガイアメモリ関連の事件だけで無く、鳴海探偵事務所の方で簡単な依頼も受けるようになったのだが……。幸か不幸かその二人は現在別行動中である。
「まあ、こう言うハードな事件は私達で担当すれば良いしね」
「そう言う事、早めに犯人を止めるぞ」
「オッケー♪」
実際、知り合いの刑事である刃野さんから手掛かりは既に貰っている。後は犯人を見つけ出してメモリブレイクするだけだ。
さて、場面は変わり風都の一角……中国人(?)を後ろに乗せた少女の乗ったバイクが疾走していた。
「ほっ、本当に大丈夫か!?」
「金さん、確か警察はナシでウチの探偵事務所に来たのよね」
「ナシナシ! 私も捕まってしまうよ!」
「で、中国マフィアにも捕まりたくないと……」
少なくとも、これが龍斗だったら情け容赦なく問答無用に警察に突き出してたかもしれないが。少なくとも安全だろうし、警察には知り愛が多いし。根本的に『兄さんや先生ならどうしていたか』と言う考えの元で行動する事が多いし。
何気に彼女に任せる形で依頼を受けてしまったが、龍斗が聞いたら泣いて師と兄に謝っているかもしれない。
「りょーかい! ならうちの所長代理見習いと会うまでは私のやり方で貴方を守らせてもらうわっ! 『白鐘 沙羅』にお任せよ!」
手早くバイクを運転しながらスタッグフォンを取り出す沙羅。
「先ずはあいつに電話!」
何度コールしても出なかったりするが。
「早くでろー! 何処に居るのよ、バカー!!!」
その頃の龍斗とマオ。
「っ!? お前はイクス!」
「ふっ、これもお客様へのアフターフォローと言う奴だ」
現在、犯人を追いつけながらもダブル・サイクロンジョーカーに変身してイクス・ソルエッジ(凍也)と戦闘中でした。
その日、龍斗達と出会うまで二人は寒空の下、
「沙羅ちゃん、ここは? 小林探偵事務所」
「ダメよ、其処は前も行ったじゃない」
「探偵さんって沢山居るんだね」
「うん」
公衆電話のした電話帳を広げながら何かを探していた。寒い空気が身も心も凍えさせる中、
「あったかいね」
「うん」
互いの温もりだけがその寒さをやわらげてくれる。
―私達は、私達を自由にしてくれる人を―
―何かのために私達を必要とするんじゃ無くて、私達を一人の人間として見てくれる人を―
それは本の偶然なのかもしれない。偶然に吹いた風が広げた電話帳の一ページ。
「あ……」
―探してた……―
「「鳴海探偵事務所」」
其処は、風の街にて名探偵と謡われる男が、風と切り札の戦士の居る場所……。
現在……
「犯人に逃げられたか」
「でも、スパイダーショックの発信機は着けておいたから」
無事イクスを撃退した龍斗とマオは、マオのスタッグフォンに表示されるスパイダーショックの発信機の示す犯人の位置を確認していた。
「本当ならバットショットも着けておきたかったけど、流石にイクスと戦いながらだとこれが限界ね」
「だろうな。急ぐぞ、これ以上アイツが被害を出す前に」
「オッケー」
イクスかドーパントとの戦闘中にダメージを受けたのか、地面に落ち居ている龍斗のスタッグフォンを回収しつつ、サイドカーモードのハードボイルダーに乗り込む二人。……着信には気付かずに。
「出ないっ! 電話留守電にくらいしときなさいよねっ!」
「こわいよー、こわいよー!」
バイクに乗りながら龍斗達に連絡している沙羅達に後ろから近づいてくる一台の車。
「おおっと!」
すれすれを通り過ぎていく車を慌てて避ける。
「バカッー! 足ブチュって行くところだっただろー!」
思わずそう叫ぶがゆっくりと車は迫ってくる。
「もしかして……壁にくっつけてペチャンコにする……気……?」
「うそっ」
ゆっくりと迫ってくる車に思わず冷や汗を流す沙羅と金さん。
「あわわわわわ、玄さんのバイクがあ! つっのお、豆腐屋玄さんに借りたスペシャルバイクをなめんじゃあ……なぁい!!!」
壁に押し付けられたハンドルが摩擦で削られていく中、ジャンプして車を避ける。……考えて見れば、龍斗からハードボイルダー借りた方が良かった気がしないでもないが。なお、目標を失った車はそのまま壁に激突する事になる。
「じゃーね、マフィアさん」
『キラァン♪』と言う擬音が相応しい笑顔を浮べて走り去っていく沙羅。事故を起した車から降りた中国マフィアの皆さんは……。
「追え! 絶対にぶっ殺せ!!!」
かなり頭に来たのかそんな事も叫んでいる。
「追い詰めたぞ、観念しろ!」
「あいつ等のせいでオレの人生はぶち壊されたんだ……だから、これはオレの復讐だ!!!」
『NUE!』
ガイアウェスパーの響くガイアメモリを自分の腕に差し込む犯人の男。その姿は猿と虎、犬に尻尾が蛇となった日本に古くから伝わる妖の記憶『鵺』の記憶の入ったガイアメモリによって変貌した幻獣型ドーパント・鵺ドーパントへと姿を変える。
「グルゥゥゥ……」
獣の様なうめき声は既に男の心から人間らしい理性が消え去り、憎悪と本能だけが残ったと思わせる。
「止めてやる……オレが」
「そう言う事、私達がね」
ダブルドライバーを装着し、マオの側にもダブルドライバーが出現し、ジョーカーメモリとサイクロンメモリを取り出す。
『CYCLON!』『JOKER!』
「「変し…!」」
二人のメモリのガイアウェスパーが響き渡った瞬間だった。
ドガァァァァァァァァァアン!!!
「へっ?」
「え?」
流石の鵺ドーパントも唖然としている。龍斗とマオも後ろから聞こえてきた音に驚いて其方を振り返ると……
「何で、軍用ヘリが?」
「どう言う状況よ、これ?」
「龍斗ー、ハゲが追いかけて来るんだー!」
「沙羅と…………誰?」
「ちょっと、龍斗から離れてよ、沙羅ちゃん! …………と誰?」
混乱している龍斗に半泣きで泣きついてくる沙羅と金さん。
「やっと追いついたぞ!」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」
軍用ヘリから降りてくる中国マフィアの皆さんと、流石に怒っているのだろう無視されている鵺ドーパント。
「あっ、三人とも見―っけ」
そんな所に息を切らせてやってくるのは沙羅の双子の姉妹の『白鐘 双樹』。
「はあ、はあ。何か大変だったんだね。でも大丈夫、御飯有るから帰ろー」
「双樹、悪いけど仕事中だ。帰るのはその後だ」
取り合えず泣きついてきた沙羅と金さんを双樹の方へと移動させて改めて鵺ドーパントと中国マフィアの皆さんに向き直る。
しかも、なんかマフィアの人達もドーパントに変身している人も居る。
「……改めて行くぞ、マオ」
「オッケー、龍斗」
『CYCLON!』『JOKER!』
「「変身!!!」」
『CYCLON!/JOKER!』
風を巻き起こしながら現れる緑と黒の半身を持った仮面の超人。
彼女達と出会ったその日、偶然巻き込まれてしまったドーパント犯罪。
その時にも姿を見せた風の都を守る、悲しみの涙を拭う二色のハンカチ。
―もう、貴方しか居ないって思ったの―
―私達を……閉ざされて身動き取れない場所から助けてくれる?―
―ずっと一緒に居てくれる?―
『オレ達への依頼は携帯サイトの方からなら受け付けるぜ』
『それが私達の探偵事務所よ』
それは、都市伝説の中のヒーローと二人の少女の出会った日。
二人で一人の仮面ライダー。その名は、
『さあ、お前の罪を数えろ!!!』
この街を泣かせる者達へと投げかける言葉と共に現れる二色の風、その名は『仮面ライダーW』
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