仮面ライダーW ~双世の探求者~   作:龍牙

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オルタナティブ編 第一話

「「「「ロストメモリー事件?」」」」

 

 

 

ここ鳴海探偵事務所で龍斗とマオ、それから助手の沙羅と双樹の計四人が思わず声を揃えて呟く。

 

依頼人曰く『過去の思い出がなくなってしまった』と言うのだ。たかが昔の記憶と言えるかも知れないが、時に過去の思い出が今の人格、今の自分を作っている事も多い。忘れてしまったのだろうと思って過去のアルバムを開いて初めて記憶から消えている事を知ったと言う例や思い出を失って別の人間の様になってしまったと言う例もある。少なくとも、後者は大問題だろう。故にこの不可解な現象を人は『ロストメモリー事件』と名付けられ噂になった。

 

この事件を深刻に捉えるか楽観的に捉えるかは人それぞれだが、少なくともこれだけは言える。この不可解で超常的な人間の手によっては引き起こせない事件は『間違いなくそれはガイアメモリ関連の事件だ』と。

 

 

 

「最近私達の掲示板にこの依頼って多いのよね、気に入らない事に。マオちゃん達と同じ風都七不思議の一つにランクアップしそうな事が特に」

 

 

 

龍斗もそうだがマオも意外と都市伝説としての『仮面ライダー』と言う名前には拘っている。だからこそ、自分も含まれている都市伝説である風都七不思議の中にガイアメモリ関連の事件がランクインされるのが不満なのだろう。

 

 

 

「それでどうするのよ?」

 

 

 

「決まってるだろ、どんな事件だろうが……ガイアメモリを使って街を泣かせる奴を倒すのはオレの……いや、オレ達の使命だ。その事件、終わりにしてやるぜ」

 

 

 

「おー!」

 

 

 

「「オー!」」

 

 

 

双樹の掛け声に続いてマオと沙羅も声を上げる。

 

 

 

「ああ、でも……もう遅いし、正式に調べるのは明日からな」

 

 

 

そう言って龍斗がカーテンを引くと星も疎らな夜空が広がっていたりする。時間的には世間一般には夜と呼ばれている時間帯だ。

 

 

 

そんな訳で龍斗とマオ、沙羅、双樹の三人は分かれて三人の姿がリボルキャリーの格納されている一室に消えていく。最近はそっちが女性陣の寝室になっているのは気にしてはいけないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凍也SIDE

 

 

 

 

 

「妙な連中にメモリが強奪されている……ですか?」

 

 

 

「ええ。本当に、使えない連中ね」

 

 

 

苛立たしげに告げる冴子の言葉を聞いている凍也。長姉が言うには何でも最近妙な連中によるメモリのセールスマンからのガイアメモリの強奪事件が続いているらしい。それだけならば対立組織によるものと考えられる。

 

 

 

「それで敵の特徴は?」

 

 

 

メモリのセールスマンは今は亡き霧彦ほどではないが、必須科目としてそれなりに生身でドーパント相手にも戦える程度の訓練は積んでいる上に護身用で性能が劣るとは言え量産品の『マスカレード』のメモリも持たせている。

 

ガイアメモリは高価な代物で有る以上はメモリを購入した人間がそれを利用して他のメモリを奪おうとする者も出てくる。そんな事例に対応できる実力が無ければ勤まらない商売でもある。……だから、優秀なセールスマンは貴重なのだが……。

 

 

 

「今更ながら、義兄さんの件は惜しかったですね」

 

 

 

「言わないでちょうだい」

 

 

 

そこで一度会話を切り上げて再び、話題を元へと戻す。

 

 

 

「……それで、ミックが動くほどでは無いでしょうが、“ホッパー”や“ゼロ”でも使いますか?」

 

 

 

「ミュージアムが誇る処刑人を動かすほどじゃない…………と思いたいわ」

 

 

 

「? っ!?」

 

 

 

頭痛でも堪える様に頭を抑えながらそう告げる冴子を不思議そうに眺める凍也。そして、彼女の眺めていた写真……メモリの強奪犯の写真なのだろうが、それを見た瞬間思わず言葉を失ってしまう。

 

 

 

「こ、これは何ですか?」

 

 

 

「……認めたくないけど、メモリの強奪犯よ……」

 

 

 

それは“イカ”だった。ディフォルされた妙に憎たらしい顔のイカだった。間違ってもそのナマモノがドーパントで有るはずがない。それだけは二人ともミュージアムの幹部として断言できる。

 

だが、それと同時にそんなナマモノに量産型とは言えドーパントが負けたという事実に頭を抱えたくなる思いのミュージアム幹部だった。序でにこんなナマモノ相手に処刑人を動かしたくもない。実力云々言う以前にプライドが許せないのだ……組織の幹部と言う以前に人として。

 

 

 

「…………取り合えず、このナマモノについて調べるように手配しておきます。それから、セールスマンの護身用のメモリの強化を視野に入れた方が良さそうですね。プロダクトモデルのメモリでも渡しておきましょうか?」

 

 

 

「ええ、マスカレイドメモリを強化するよりも、直ぐに効果が出そうね」

 

 

 

「あとはドクターに頼んで量産体勢に入ったガイアロイドを何機かこっちに回して貰いましょうか?」

 

 

 

「それも視野に入れた方が良いわね」

 

 

 

こうしてミュージアムの戦力強化が視野に入れられる事となったのでした。

 

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―何が風都の街を襲ってる。これは夢……? そうか、あの日の夢か?―

 

 

 

 

 

 

 

「先生、兄さん、こっちにも来るから早く逃げないと!」

 

 

 

幼い日の龍斗の言葉に目の前の二人の男達、名探偵として謡われた男『鳴海 壮吉』とその助手にして龍斗の兄『風凪 天馬』はビルの屋上から眼下に広がる光景を黙って見つめていた。

 

 

 

「龍斗。逃げて……それで全部解決するのか?」

 

 

 

「そう言う事だ。逃げてちゃ何も解決しない。探偵が逃げたらその場で事件は迷宮入りだ」

 

 

 

互いに装着するロストドライバーとロストドライバーとは違うベルト『ウイングドライバー』を装着する壮吉と天馬。

 

視界の隅に居る全身に包帯を巻いた女性服を着た人物……『ミイラ女?』と呼称するべき人……後に『シュラウド』と名乗って龍斗とも知り合う人物が、一人頭痛を堪える様にして頭を抱えている姿はあえて無視するべきだろう。ブツブツと呟いている様に見えるから、多分『何であんなのと……』と言った所だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

『SKULL!』

 

 

 

『WING!』

 

 

 

 

 

 

 

響くのは『スカルメモリ』と『ウイングメモリ』のガイアウェスパー。ドライバーの挿入口に挿し込み二人の姿を『仮面ライダー』へと変える。いや、正確にはまだこの頃は『仮面ライダー』の都市伝説は生まれていなかった。だが、今の二人を指す名はこれ以外には存在していないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

『仮面ライダースカル』

 

 

 

『仮面ライダーウイング』

 

 

 

 

 

 

 

と。彼らもまた仮面ライダーW誕生以前に生まれた二人の仮面ライダー……故にそう言うべきだろう。

 

 

 

 

 

―……ある意味感動すべき所だろうが、相手が相手だからな……―

 

 

 

 

 

呆れた視線を其方へと向ける龍斗。空を飛び風都の街を攻撃しているのは“烏賊”だった。ドーパントの様な怪物でもなければ、烏賊のドーパントでもない、妙に愛嬌を持ってディフォルメされた烏賊だった……顔は憎たらしいが。

 

 

 

 

 

―妙な烏賊の大軍と戦う二人の仮面ライダーって、どう反応すれば良いんだよ?―

 

 

 

 

 

「逃げるも何も、あんな数相手に勝てるわけが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢か……ずいぶんと懐かしい夢を見たな」

 

 

 

目を覚まして伸びをする龍斗。ロストメモリー事件等と言う妙な事件の話を聞いたからかもしれない、だが……。

 

 

 

「何で烏賊?」

 

 

 

そのコメントが夢と言うか過去の夢への全てだった。夢の中のシュラウドさんも同意見だったんだろう……間違いなく。いや、向こうは現実(リアル)だっただけ余計に性質が悪いかもしれないが。

 

 

 

「やっぱり、許せないよな」

 

 

 

改めてそう思う。過去の思い出と軽く捉える人間もいるだろう。だが、間違いなく過去と言うのは大切な物だ。それがどんな物であったとしても……。龍斗にとってのビギンズナイトの夜や、兄の最後の言葉の記憶がそうであるように。

 

だからこそ、それがガイアメモリ、ドーパントによる事件だとすれば、それを行っている者が誰であったとしても許すわけには行かないのだ。

 

 

 

「まあ、正式に依頼は受けた訳だけど……」

 

 

 

「この掲示板の内容だけだと検索するにはキーワードが足りないのよね~。メモリの予想は……『フォーゲット』とかだと思うんだけど、『忘却の記憶』って言うのもなんか可笑しいし、幻獣型って可能性も有るし……」

 

 

 

「そうだな、取り合えず……被害者の話を聞いてみる必要が有るな」

 

 

 

主にロストメモリー事件の被害者やその周囲の人に何か起こったのかを聞いたり、主に情報通の友人の隼一に情報を聞く等の聞き込み作業に暫く時間をかける必要が有る。どうも、直接掲示板に依頼してきたロストメモリー事件の被害者や関係者からの情報では、どうしても情報が不足してしまっているのだ。

 

 

 

「良し、マオは此処で留守番、オレと沙羅と双樹は隼一から話を聞きつつ聞き込み、情報交換は事務所に集合した後で、だ」

 

 

 

「「「ラジャっ♪」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で一時鳴海探偵事務所の面々はバラバラに分かれロストメモリー事件の調査を始めるのだが、運悪く隼一は捕まらず仕方なく龍斗が携帯電話に連絡し後で鳴海探偵事務所に来て貰ってロストメモリー事件の情報を聞く事となった。まあ、これで後でマオに説明する手間が省けたのは良いのだが。

 

 

 

「『忘れさせ屋』!?」

 

 

 

最初にロストメモリー事件に前後して同じ様に噂になっている、妙な噂らしい。

 

 

 

『そう言う事。何でも、そいつを見つけて依頼すると、自分の忘れたい辛い記憶や他人の思い出を消してくれるらしいぜ』

 

 

 

「龍斗、その忘れさせ屋ってのがこの事件の犯人なのかな?」

 

 

 

「状況から考えると……そうだよな」

 

 

 

唯一入手できた情報はそれだった。隼一には他にもロストメモリー事件について何か情報が無いか調べて貰うように依頼すると、沙羅と双樹と分かれて聞き込みを始めるのだが……。

 

 

 

「情報が全然無いな……」

 

 

 

ある程度は予想できていた事だが、悪い事に今回の依頼は『記憶』に影響がある事件だ。仮に噂となっている“忘れさせ屋”が一連のロストメモリー事件の犯人だとしても、被害者や依頼人からはその記憶についても消している可能性が高い。

 

 

 

その為に被害者が何かを目撃していたとしても覚えている可能性は低い。まして、自分の記憶を忘れたくて依頼した依頼人なら尚更教えてくれるわけが無い。

 

 

 

(やっぱり、周りの人達に何時から様子が可笑しくなったかを聞いて、地道に調べていくしかないよな)

 

 

 

ある意味探偵らしい行動だが、事件の被害者の当日の足取りを追ってそこで怪しい物を目撃した人が居なかったか調べていく。少なくともそうする事で“忘れさせ屋”と思われるドーパントを見つけ出す。

 

 

 

(記憶か……直接的に『メモリー』とか『フォーゲット』とかと思っているけど……後は……『レトロ(過去)』って可能性も有るけどな……)

 

 

 

記憶を過去に戻す事で忘れさせる。……そう考えれば有り得ると言うのがガイアメモリの怖い所だ。同時に記憶捜査の能力としては直接的なメモリーや、忘れさせる能力を持ったフォーゲット。だが、同時にそれも無い可能性もある。

 

 

 

「さて、あとは沙羅と双樹に期待するしかないか」

 

 

 

メモ帳に記されているロストメモリー事件の被害者の住所と名前に斜線を引いて行く。残念ながら、被害者や周辺の人達にも不審なドーパントの目撃情報は無かった。………………訂正しよう、ドーパントその物が元々不審の塊の様な物体だ。

 

 

 

幸いにも向こうからの緊急の連絡は無く、向こうにドーパントが現れたと言う知らせも無い。同時に一人留守番しているマオからの緊急の連絡もだ。ファングメモリを使ってマオが主体となったファングジョーカーへと変身できるが、残念ながらダブルドライバーを龍斗が装着する必要がある以上龍斗へ連絡しなければなら無いと言うのがファングジョーカーの欠点の一つだ。

 

 

 

まあ、そんな訳で相棒と助手達からは連絡が無い。便りが無いのは良い知らせと言うが、現状には結構当てはまっているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えていると突然悲鳴が響いてくる。何事かと思って其方へと走ると其処には全身が黒く塗られ、顔が無表情の仮面にCDを貼り付けた様な姿のドーパントとそのドーパントに襲われたであろう人が倒れていた。

 

 

 

「ドーパント!? マオ!」

 

 

 

それに気付いて素早くダブルドライバーを装着、ダブルドライバーを通じて繋がった意識でマオに向かって呼び掛ける。

 

 

 

『オッケー、龍斗! ドーパントに遭遇したみたいね』

 

 

 

「ああ!」

 

 

 

素早くスタッグフォンにギジメモリを装填し、ライブモードに変形したスタッグフォンをドーパントへと向かわせる。

 

 

 

 

 

 

 

『CYCLON!』『JOKER!』

 

 

 

 

 

 

 

スタッグフォンがドーパントの足止めをしている間に変身しようとした瞬間、響き渡る二つのガイアウェスパー。

 

 

 

『変身!』

 

「変しっ……なに?」

 

 

 

変身しようとした瞬間、思わず驚いてそんな声を上げてしまう。

 

 

 

ドーパントへと攻撃を仕掛けていたスタッグフォンを鬱陶しいと思ったのか、黒いドーパントは片手を翳して光弾をスタッグフォンへと当てる。その瞬間、携帯電話の姿へと戻りギジメモリが抜けたスタッグフォンとギジメモリが地面に落ちる。そして、スタッグフォンに当たった光弾はその場に留まりながら、ゆっくりとドーパントに吸収されていく。

 

 

 

『ちょっと、どうしたの、龍斗?』

 

 

 

「なんでもない。改めて……行くぞ!」

 

 

 

『「変身!」』

 

 

 

 

 

 

 

『CYCLON!/JOKER!』

 

 

 

 

 

 

 

緑色の風に包まれながら仮面ライダーW・サイクロンジョーカーへと変身するとドーパントへと向かって行き、

 

 

 

「はあ!」

 

 

 

相手に不意打ちの形でパンチを打ち込む。ダブルのパンチが直撃して吹き飛ばされた事で地面を転がるように倒れるドーパントに注意を向けながら、地面に落ちたギジメモリを拾い上げる。

 

 

 

「……やっぱり」

 

 

 

記憶の納められていない無色になったメモリを一瞥しながら龍斗はそう呟く。

 

 

 

『どうしたの?』

 

 

 

「相手の能力が分かった。あいつは記憶を消したりしているんじゃない。忘れさせ屋なんて言う名前から記憶操作って勘違いしていた。多分、あいつの能力は……記憶を盗むことだ」

 

 

 

先程の光弾がドーパントの中へと戻っていったのは恐らく盗んだ記憶を手にする為に。あの光弾には恐らくだが記憶を盗む効果が有る。そう考えれば理解できる。

 

 

 

『なるほどね、だったら……倒せば盗んだ記憶が開放される可能性もあるわ』

 

 

 

「だな」

 

 

 

ダブル(マオ)の言葉にダブル(龍斗)はそう言葉を返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

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