「はぁ!!!」
ドーパントに向かって殴りかかるダブル。だが、
「っ!」
ドーパントが再び光弾を打ち出すと空中でそれは黒いクワガタへと姿を変えてダブルへと突進していく。
「なにっ!?」
『嘘、これって……まさか、スタッグフォン!?』
現れたクワガタがダブルへと襲い掛かる。ダブルがドーパントに近づくのを阻止するように襲い掛かるクワガタに迎撃される形で、ダブルはその動きを阻まれる。
「こいつ……まさか」
『盗んだ記憶を利用する事も出来るって訳……?』
ドーパントはダブルの疑問に答える様にクワガタに翻弄されているダブルへと向かって腕を振り上げて向かっていく。
「『っ!?』」
ダブルへと振り下ろした腕は直前で姿を巨大なクマを思わせる様な姿へと変わり、地面へと叩きつけられる。
「くっ、厄介な奴だな。マオ、ヒートメタルだ!」
『オッケー!』
先程は恐らくは別のドーパント……別のガイアメモリから吸収した記憶を利用しているのだろう。スタッグフォンの場合は恐らくギジメモリの記憶だったからクワガタ程度で済んでいると思われる。逆に考えれば、ギジメモリの能力=スタッグフォンの能力と考える事が出来るが。
その点から考えて、サイクロンジョーカーよりもヒートメタルのパワーで圧倒するべきと判断しメモリチェンジの決断をする。
『HEAT!』『METAL!』
『HEAT!/METAL!』
「はっ!」
赤のヒートと銀のメタルの半身を持ったヒートメタルへとチェンジすると、自身へと襲い掛かるクワガタをメタルシャフトを抜いて迎撃する。
「次は!」
『お前よ!』
メタルシャフトでクワガタを叩き落すと次はドーパントヘと向けてメタルシャフトを振るう。ドーパントとの距離を詰めると同時に突きから横凪に繋げた連続攻撃を浴びせ、ドーパントを後退させる。
「ぐわっ!!!」
(……思ったより打たれ強くないのか?)
『このまま押し切るわよ、龍斗!』
「ああ!」
相手に反撃の隙を与えずメタルシャフトでの連続攻撃を浴びせながら、片手で新たにトリガーメモリを取り出す。
組み合わせは派生フォームの一つである『ヒートトリガー』。バランスこそ悪い派生フォームの一つだが、扱い方さえ間違わなければヒートトリガーは高い攻撃力を発揮するフォームだ。
『TRIGGER!』
トリガーメモリのガイアウェスパーを響かせながら横凪にメタルシャフトを振るい、それに直撃と同時にダブルドライバーのメタルメモリと交換させようとした瞬間、
『っ!? ダメ! 罠よ!』
突然マオの警告が響く。だが既にそれは遅かった。
「もう遅い!」
「っ!? しまった!」
ドーパントの放った光弾がダブルが取り替えようとしたトリガーメモリに直撃する。同時にダブルHMの持っていたトリガーメモリの青が白に変わり、Tを書く様に描かれた銃の絵が消え去ってしまう。
「ぐっ!」
トリガーメモリの記憶が失われた事で出来た意識の空白を逃さず、ダブルHMの体を蹴りダブルHMを己から離すと、ドーパントはトリガーメモリに直撃した光弾を吸収する。そして、それによってドーパントの肩に現れるのは黒いトリガーマグナム。
「こいつは、中々イカしてるな」
「っ!?」
ドーパントはダブルHMへと引き金を引いてトリガーマグナムを乱射する。
『ハウっ!? ちょっ、そんなのって有り!? 反則でしょう、私達の力まで使えるなんて!』
「スタッグフォン辺りで予想するべき所だったけどなっ!」
そう、最初のスタッグフォンや腕の肥大化で予想すべき所だった。目の前のドーパントはガイアメモリの記憶さえも吸収し、その記憶を利用して戦う事も出来る最悪の“ドーパントキラー”と言うべきドーパント。上手く戦いさえすれば眼前の相手は仮面ライダーだけでなくミュージアムの幹部にさえ勝利できるだろう。
仮面ライダーでは有るが、精製されたメモリやダブルドライバーと言う変身システムと言う点が違うが、ダブルもまたドーパントに一応分類されている。ダブルにとって目の前の相手は最悪の能力のドーパントの天敵だ。
『っ!? こっち、ルナに変えるわよ!』
「いや、このままヒートメタルで行く!」
『ハウっ!? ちょっ、龍斗!』
この状況で万が一ルナメモリの記憶まで奪われたら、敵にルナトリガーの能力を与えてしまう事になる。それだけは最低でも避けたいと言うのが
「オラァ!!!」
メタルシャフトを前方に向けて回転させながらドーパントヘと向け、それを盾にしながらドーパントとの距離を詰める。
トリガーの能力が強力だと言っても、二つの記憶を引き出したダブルと単独のメモリの力だけで戦っているだけだ。優位に立っているのはダブルの方だ。
仮にジョーカーとサイクロンジョーカーのダブルが戦ったとして、状況にもよるがサイクロンジョーカーの方がジョーカーよりも数字の上では優位に経っているだろう。
トリガー単独のドーパントとヒートメタルのダブル……他のメモリの力が有るとは言っても、今のドーパントではダブルには勝てない。
「このままならまだこっちが有利だ!」
『なるほど、マオちゃんのルナメモリの力を取られる危険性を無くせば、私達の方が有利ってわけね』
「そう言う事だ!」
仮面の奥で笑みを浮かべながら龍斗はマオの言葉に答える。相手の持っているのがトリガー単独の能力では、ヒートとメタルの二つのメモリの能力を使っている限りダブルHMの方が総合的には優位だ。
トリガーマグナムでは反撃不能な相手の懐に飛び込みトリガーマグナムを弾く、そのまま相手の顎を振り上げたメタルシャフトで打ち上げる。
「これで!」
「どうするんだ?」
「っ!?」
片腕が変化した大剣でドーパントはメタルシャフトを受け止めていた。
『これってまさか……』
ある意味重い出深いドーパントのメモリの一つ、
『『アームズメモリ』? まさか……』
今度は残った片腕がある種の猛獣……否、恐竜の頭に変化しダブルHMを噛み砕かんと襲い掛かる。
「今度は『ティーレックス』!?」
『過去に戦ったメモリのオンパレード?』
「それで済めば良いけどな……」
このまま長期戦を繰り返していては、自分たちの方が不利と考えて素早くメタルメモリをダブルドライバーから外し、
『METAL MAXIMAM DRIVE!』
ガイアウェスパーと共にメタルシャフトの両端が炎に包まれ、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!! メタルブランディング!!!」
メタルシャフトから全身が炎に包まれたままドーパントに突撃し殴打する。ダブルのヒートメタルの姿での必殺技『メタルブランディング』の直撃を受け、ドーパントはそのまま爆散する筈だった。
「なっ!?」
ダブルHMの手の中からメタルシャフトが何時の間にか失われていた。それだけではない、ヒートメタルの半身であるメタルサイドが半透明になって消えかけていく。
「あっ……ああああああっ……!!!」
『龍斗ォ!? ちょっ、これって……』
突然襲われた激痛に悲鳴を上げる
『JOKER!』
『HEAT!/JOKER!』
消えかけていたメタルサイドがジョーカーサイドに変わった瞬間、
「マオ……悪い、助かった」
『気にしなくて良いわよ、龍斗。マオちゃんもあいつの能力を読み違えていたみたい。……相手から記憶を吸収できるのは、光弾だけじゃないみたいね、これは……』
ダブルHJの手の中に有るのはトリガーメモリと同じく色彩も文字も失った“メタルメモリだった物”。同時にドーパントの手の中には黒いメタルシャフトが出現していた。
「トドメとイくか」
メタルシャフトを構えて襲い掛かるドーパント。先程の激痛のダメージが残っていたために反応が遅れたダブルHJ(ヒートジョーカー)の体に容赦なく叩きつけられる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
『きゃああああああああ!!!』
『TRIGGER MAXIMAM DRIVE!』
吹飛ばされるダブルHJへと向けて響き渡るガイアウェスパー。メタルシャフトと同時に持ったトリガーマグナムをダブルHJへと向けて構えているドーパントの姿がダブルHJの視界に移る。
「ぐっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」
『くっ……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!』
トリガーフルバスートとは違い収束された弾丸がダブルへと襲い掛かる。
トリガーメモリを単独で使っていれば、『ライダーシューティング』とでも称されるであろう一撃が、ダブルHJが直撃し、それによるダメージでダブルへの変身を強制的に変身が解除される。
『つぅ……しかも、最悪……。マオちゃんのヒートメモリもやられたわ』
「くっ……」
幸か不幸かダブルドライバーをまだ装着して居る事で龍斗とマオの意識はしっかりと繋がっている。
マオの言葉に慌ててジョーカーメモリを確認するが、どうやら奪われたのはヒートメモリの記憶だけでジョーカーメモリは無事だった様子だ。
地面に倒れ付しながら見上げる龍斗の視線の先には、ヒートメモリの力でも使っているのだろう握り締めた手には炎が燃え上がっている。
ダメージが残る為に立ち上がる事も出来ない体を引きずりながら、龍斗はドーパントヘと手を伸ばす。
「これは中々の収穫だったな」
「くそっ……」
そう言い残して立ち去っていくドーパントの背中を睨みつけながら龍斗の意識は闇へと沈んでいく。
『つっ……龍斗! 沙羅ちゃんと双樹ちゃんに連絡……』
最後に龍斗の耳に聞こえたのは、マオのその言葉だった。
『………斗……龍斗…………』
どれだけ時間が経ったのだろうか、誰かの声が龍斗の意識を覚醒させる。
「うっ……沙羅に、双樹……?」
最初に龍斗の視界に飛び込んできたのは心配そうに龍斗を覗き込んでいる二人の姿だった。次に手の中に有る触れ慣れた感触の物……ジョーカーメモリを己の視界の中へと持っていく。色彩もJの文字も存在していると言う事は意識を失っている間にジョーカーの記憶までは奪われなかった様だ。
「心配したんだぞ、バカ!」
「無事でよかったー」
「悪い、心配かけた」
素直に二人に謝る。実際二人に心配かけたのも事実だ。最近ではファングメモリと言う力や相手が強敵と言える程ではなかった事も幸いし、ファングメモリを入手してからは逃げられる事は有っても一度も負けることは無かった。何よりも二人が此処の助手となってからは一番の大き過ぎる敗北だ。
「そっ、沙羅ちゃんと双樹ちゃんに心配かけたんだからちゃんと謝るのよ、龍斗」
そう言って行儀悪く机に腰掛けながら何も描かれていない三つのメモリを手の中で玩んでいる相棒のマオ。
「分かってる。……それはそうと……机の上座るなよ」
「りょーかい。それよりも、最悪ね……あのドーパントに私はヒートを、龍斗はメタルとトリガーを盗られるなんて」
机の上から飛び降りて持っていた三つのメモリを三人に見せる。
「うわっ、真っ白」
「これって、二人の持っていたメモリなの?」
「一応な……。それで、どう言う状況に陥ってるのか分かるか?」
「調べてみた所……入っていたはずの記憶が空っぽになっちゃったって所ね。今になってはどれがどれかなんて分からないわ」
「くっ!」
最悪な事にトリガーのメモリだけでなくヒートメタルの能力を完全に奪われた結果となってしまった。これでダブルの持っているメモリの力はジョーカーとサイクロン、ルナの三つしか残っていない。
「だけど、これで向こうのメモリの正体も少しくらいは、見えて来るはずよ」
「『シーフ』とか『ドレイン』か?」
「そうなるわね。それで、三人とも、何か収穫は有った?」
「オレの方は最大の収穫は『忘れさせ屋』との遭遇って所だな。情報は無い」
「想定内だけど、支払った物は大きかったわね」
「言うなよ、自覚してる」
敵についての情報に対して失ったのはメモリガジェット一つとメモリ三つ。
「相手の能力は記憶を奪う事、奪った記憶を自分の物に出来る……そう考えるべきだと思う」
記憶が能力に直結しているドーパントにとっては最悪と言っていい能力だろう。
「それで、そっちはどうだった?」
「えへへ」
「隼一さんに教えて貰った人達はダメだったけど、途中で刃野さんから良い事教えてもらったんだ」
沙羅と双樹の二人から聞いた、刃野からの情報を聞いて思わず笑みを浮かべる。
「よし、これで……。マオ、早速検索だ」
「オッケー」
必要な情報は揃った。検索で調べるべき事は二つ。一つは相手のメモリの正体、もう一つは……。
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